2006年11月02日
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■期待リターンの決め方

 どの銘柄が良いと思うか、ということについては大抵のファンドマネジャーが意見を言うことができるだろうが、では個別の銘柄の期待リターンを数字で何パーセントか示してみよ、と言われると、ほとんど答えられないのが現実ではなかろうか。そして、率直に言って、これは難しい質問だ。しかし、ポートフォリオの中で、ある銘柄なり、資産クラスなりのウェイトを決めているということは、リスク計算ができていることを前提とすると(できていないとすると、大きな問題だ)、何らかの期待リターンを決めているということと同じ意味になる。現実のポートフォリオを運用するためには、個々の組み入れ資産の期待リターンについて、自信をもって精確な値を求めることは難しくても、最善の推測値を決める努力が必要だ。
 期待リターンの具体的な決め方を考える前に、期待リターンというものの、イメージについて確認しておこう。たとえば、株式のある銘柄の期待リターンが10%だという場合、実際のこの銘柄の将来のリターンは、20%であるかもしれないし、8%であるかもしれないし、2%であるかもしれないし・・・、という諸々の可能性があって、それらの実現確率を考慮した上で、「予想される平均」として「期待値」を求めると10%だ、というイメージになる。将来のリターンをピタリと当てることができれば、その数値を使いたいところだが、実際にはそれは不可能だし、不可能ななりに、妥当な予想の平均値として期待リターンを使い、その数値の変動の具合も考慮して、ポートフォリオを作ろう、というのが、投資の理論とも重なる現実の運用作業のイメージだ。


■株式ポートフォリオを作る際のアクティブ・リターン

 先ず、現実にポートフォリオを構築する場合に用いる期待リターンの数字の大きさの見当をつけてみよう。株式のポートフォリオを作る場合には、ベンチマークのリターンも含めた「トータル・リターン」ではなく、ベンチマークに対して、どれくらいプラスかマイナスかという「アクティブ・リターン」の形で、期待リターンを求めてポートフォリオを作ることが多い。
 通常の株式のポートフォリオの運用であれば、アクティブ・リターンとして想定される数値は、絶対値でほとんど0%~5%の間、主として1%~3%程度の数字になるだろう。しかし、実際の株式のリターンは、もっと上下に大きく異なる印象があるから、意外に思われる方が多いのではないだろうか。理由を説明しよう。
 まず、個々の銘柄の対ベンチマーク・リスク(アクティブ・リスク)は、銘柄により、市場環境により、差があると考えられるが、ざっくり言って、年率の標準偏差で20%~40%見当の大きさを持っている。仮に、これを「30%」と考えるとして、個々の銘柄の期待アクティブ・リターンを(事後的実現値でなく期待値であることに注意)完全に推定できる場合には、相対的に1標準偏差プラスと判断した銘柄(模擬試験の偏差値でいうと60と評価した銘柄)の期待アクティブ・リターンは30%でいいはずだ。
 しかし、残念ながら、期待リターンの高い(低い)銘柄を100%正確に当てることは、実際にはまず誰にもできない。大まかにいって、ファンドマネジャーも含めて投資家の平均的な予測力は、50%あるかないか、つまり当たり・外れが半々というが現実だろう。
 ここで簡単化のために、仮に投資対象となる全銘柄の半分がプラス30%、残りの半分がマイナス30%のアクティブ・リターンを持つと考えて、これを55%の確度で予測できる投資家がいると考えてみよう。この投資家が、「プラス」と判断した銘柄は、平均的に55%のケースはプラス30%のアクティブ・リターンだが、45%はマイナス30%のアクティブ・リターンということになるので、差し引きを考えて平均すると「プラス3%」のアクティブ・リターンがあるという計算になる。

 予測の信頼度を期待リターンに反映させるためには、予測と現実の相関係数を予測した期待リターンに乗ずる方法を考えることができる。この相関係数の大きさが問題になるが、アクティブ・リターンを基準に考える場合には、投資家の平均は0のはずなので、相対的な能力としてあまり大きな値を考えることは難しいだろう。
 これは一つの経験値に過ぎないが、優秀なファンドマネジャー或いは投資情報の場合で、この相関係数は0.05くらいではないかといわれている。率直にいって、0.1は現実のケースとしては強気に過ぎるレベルといえるだろう。予測と現実の相関係数がプラスの0.05という状態は、単純な、「当たり・外れ」に換算すると、21勝19敗というくらいの能力ということだが、「優秀なファンドマネジャー」の能力がこれくらい、というのが現実なのだ。
 さて、信頼度を調整する相関係数が0.05、平均的な銘柄のアクティブ・リスクを30%と考えると、相対的に「プラス1標準偏差」と判断した銘柄の期待アクティブ・リターンの大きさは年率1.5%くらいと見当をつけることができる。この数値を使って、何らかの銘柄評価(程度の差が数値で表現されていれば、PERのような尺度でも、アナリストの評価を点数かしたものでも何でもよい)を、現実的なポートフォリオを作るための期待リターンに作り替えるための簡便法を一つ紹介する。







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最終更新日  2006年11月02日 22時30分11秒
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