2007年06月01日
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■前回のつづき

 前回、分散投資について検討する際に、「(保有)銘柄数が多すぎると、(ポートフォリオの)管理ができない」という見解について、検討した。結論は、個々の銘柄に関して、完全な管理などというものができる筈はないから、むしろ、管理が不完全であることを前提として、多くの銘柄でリスク分散したポートフォリオを作る方が合理的だ、ということだった。

 それでは、管理が不完全なのは仕方がないとしても、個々の銘柄の管理とは、一体何をすることなのだろうか。

 機関投資家のファンドマネジャーは、日々、何をしているのだろうか。会議をしている、と言えば、実態に近いが、会議はもちろん、個々の銘柄の管理ではない。

■個々の銘柄の日々の取引状況と「情報」

 皮肉を言うのを止めて、実情に即して振り返ってみると、先ず、保有銘柄の、毎日の市場での取引の様子を見ている。どのような株価で、どのような売り買いがあって、不自然な売買や、新しい動きを示唆するような変化がなかったか、というようなことを「見て」いる。

 たとえば、大口の売り物が出てきたので、機関投資家か大株主か、新たな売り手が出てきたのではないか、というようなことに気付いて、市場関係者に何か情報がないか、確かめてみるようなことはあり得る。市場関係者といっても、主に証券会社の、顧客担当のトレーダーやトレーディング関係の仕事をしている知り合い、或いは、その銘柄をカバーしているアナリストということだが、売買の意思決定につながるような重要な情報がそこからもたらされることは、ほとんどない。

 市場の噂話や、企業を巡る情報のようなものは、証券マンが探すと、直ぐに幾つか見つけてくることができるが、 (1)その情報が真実かどうか、(2)その情報がどれくらい投資のリターンに影響するかどうか、(3)どの情報が現在どの程度市場の参加者に伝わっているか、 ということが分からないと、本来は、運用の意思決定に反映させようがない。しかも、(1)、(2)、(3)は掛け算のように作用するので、全てが分かっていないと、評価ができない。評価ができないなら、じっとしていればよさそうなものだが、心情的には早耳情報や噂話に影響されることはある(一種の人情だろう)。従って、この種の作業は、控え目に見ても余計な売買につながり、かえって、運用内容を悪化させることがある。



 はっきり言って、日中の取引の様子と、銘柄にまつわる情報を毎日探ることは、「平均的に見て」運用を改善しない。しかし、毎日マーケットを見ていると、ある時自分が何か感じたことが、事後的に役に立った、と思える事例が必ず出てくるし、こうした事例の方が、自分の感じたことに意味がなかった事例よりも、間違いなく印象と記憶に残るので、日々の作業を過大評価しないことが重要だ。

 機関投資家も、株価をチェックした際に、情報端末でチャートを見ることがあるが、これも、運用パフォーマンスを改善するものではない。

 個々の取引状況と、ニュースや噂話のチェックは、やろうと思うと大変で、プロであっても、これを数十銘柄に関してやろうとすると時間が足りないだろうが、運用パフォーマンスを改善しない(厳密には、少しマイナスに働くかも知れない)のであれば、この点を気にする必要はないし、これを保有銘柄に関する必要な「管理」だと考える必要はない。

■業績に関わる情報のチェック

 それでは、業績に関わるチェックは、どうか。

 この場合、先の、(1)、(2)、(3)を考えると、(1)と(2)は、完全に正確ではなくても、ある程度評価できる。(3)についても、たとえば、会社が利益予想を修正したり、アナリストや情報媒体が利益予想を修正したりした場合に、どの程度の範囲の投資家に伝わっているかは、推測できよう。

 また、投資のゲームにあっては、(1)、(2)、(3)の次に、(4)その情報に対して他の投資家はどう感じてどう行動するか、という評価の段階がもう一つあり、筆者の思うに、投資戦略を考える上では、ここが一つの勝負所だ。

 この(4)の段階について評価するための、データを得るには、(1)、(2)、(3)を見た上で、これらに対して、市場の参加者がどう反応したか、という事実を、数多く集める必要がある。

 たとえば、決算発表に伴って発表される企業の利益予想が、これまでの利益予想からみて、どのようなインパクトを持つもので、それを、実際に市場の参加者がどう評価したか(一日だけ見ればいいというものではない)、という事実は、直ちにチャンスに結びつくものではないが、見ておく価値があると思う。

 これは、筆者が、この種の情報を元にした投資戦略を使ったことあるし、好きだから、そのように思うのかも知れないが、この種の投資戦略を検討する大きな理由は、(1)、(2)、(3)、(4)のある程度の部分が評価しやすいから、残りの部分についても、効果を絞り込むことができる、という事情による。

 特に機関投資家の場合、こうしたチェックは、自分が保有する銘柄だけについて行えばいいというものではない。厳密にいえば、「ベンチマークと勝負せよ」といわれている訳だから、ベンチマークを構成する銘柄についても、情報を収集し、これと、自分が保有する、あるいは保有しようとする銘柄を比べるのでなければ、投資の意思決定のための十分な情報収集と検討をしたことにはならない。



 ただし、(1)、(2)、(3)、(4)、何れの段階にあっても、確度の高い優位性を得ることは容易ではないから、こうした作業を行ったからといって、直ぐにチャンスに結びつくとは限らない。

■会社訪問などの情報収集

 ファンドマネジャーや会社の仕事のスタイルにもよるが、証券会社や運用会社のアナリストのように、会社訪問をはじめとする、外に出かける情報収集活動を行うファンドマネジャーもいる。企業の経営者やCFO(財務担当責任者)などに会って、インタビューをすることもあれば、証券会社などがアレンジした説明会のようなものに出て、「会社訪問/ヒアリング調査1回」と仕事にカウントする人もいる。

 こうした作業は、時に社会見学として面白かろうし、相手も、それなりに親切に応対してくれることが多いのだが、筆者は、運用のリターンを改善する上で、この種の作業をあまり評価しない。

 先の、(1)、(2)、(3)、(4)、でいうと、(1)の部分について他の市場参加者との間に差を作ろうとする戦略なのだが、(2)、(3)、(4)の不確実性が大きいと、(1)の活かしようがないことが多く、また、(1)で、ポジティブで有意味な差が作れるのかどうかも、定かでない。



 なお、筆者の個人的な見解だが、運用会社のアナリストは、証券会社のアナリストのように、会社訪問をして詳細なレポート(往々にして、社内のファンドマネジャーは読んでいない)を書くような仕事をせずに、もっと多数の銘柄に関して、データのスクリーニングや、有価証券報告書を読み込むなど、運用にもっと直接活かせるような仕事の仕方をした方がいいのではないかと思っている。

■手を抜くとどうなるか?

 個々の銘柄に関する情報収集法は、ここで述べたものの他にもあるし、ある意味では、情報収集活動も、投資の楽しみの一つだ。しかし、情報収集が「面倒だ」というのも、一方の事実である。

 この場合、幸いなことは、情報収集活動で手抜きをしても、運用パフォーマンスにはほとんど影響がないことだ。その時に反映可能な情報や知識の多くは株価に反映しており(「正しく」かどうかは分からないが)、しかも、当たり外れに関してはポートフォリオによるリスク分散が効くので、ファンドマネジャーの「手抜き」は、結果にほとんど影響しない。これは、同時に、努力によって結果を改善することの難しさにもつながっているのだが、運用ゲームの独特の性質だと思う。





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最終更新日  2007年06月01日 11時33分50秒
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