島流れ者 - 悪意なき本音

島流れ者 - 悪意なき本音

2003.12.01
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カテゴリ: 米国雇用事情
先週は、久しぶりの社会復帰でどっと疲れた後、有難い事に木曜日からサンクスギビングデーと言うホリデーで日曜の今日まで休みだったのでようやくほっとして日記が書ける。今日はアメリカ企業の社員に対する扱いを日本のそれと比較して考えてみようと思う。

新しく短期派遣社員として働き始めた二日目の職場で、部長がみんなを集めてその部署が企業の再編成により、フロリダのオフィスに移動すると言うことを告げた。そして、もしもこのままその会社で働きたい人は、一番近くはサンタアナ、(ロスアンジェルス郡内)か、もしくはフロリダに移転しても良い言うことだった。そして、会社にとどまるか否かは別として、社員全員に一か月分の給料に相当する手当てが支給されると言う。

現実問題として、同じカリフォルニア内でもサンタアナは、そのオフィスがある場所から約三時間ほど車で掛かるし、フロリダなんてまったく反対の海岸沿い。家族を持った人や、地元に家を持っているような殆どの社員がそんな簡単に移動できるはずが無いのである。このニュースは実は一ヶ月ほど前から噂が流れ始めたらしいが、しばらく会社から何も聞かされずに不安な日々を過ごしていた社員は、この部長からの最終報告でどうなっていくのかが分かってほっとしている反面、次に仕事をすぐに見つけられるかという不安で、誰もが皆、混乱したような表情であった。短期派遣社員であるが偶然にもそこに居合わせた私は、このオフィスが閉鎖されることを派遣会社から聞かされてはいたものの、その社員たちの心境が痛いほど分かって悲しい気持ちになった。それは自分でも体験していた悲劇だったからである。

私が解雇された経緯と言えば、去年の7月から勤めていた会社は再利用可能エネルギーの開発をしている企業で、アメリカ全土、メキシコなどのあちこちに風力、水力発電所を建てて、軌道に乗って利益を出せるほどになったら別の投資家に施設ごとそっくりそのまま売ると言う商売をしていた。この会社が株式になってからたったの三年で、社員数20人という小さい会社だが、私が勤めていた一年足らずの間に10人以上新しい社員を入れてどんどん急成長していた。が、その急成長に見合った経営体制を整えておらず、経済困難に陥り、私を含めて一気に10人ほどの社員が解雇されてしまった。

バケーションから帰ってきて一日目の出社の朝、ボスから呼ばれ、私のいない間に大量解雇が行われたときかされ、締めくくりにあなたもそのリストに入っていると告げられた。今までのボスの中で一番気の会う彼女にはとても気に入られていて、バケーションをとる際に、‘今日がラストの日だから’と言っているのを隣の席で聞いた同僚が、‘え?辞めちゃうの?’と言うのに対し、ボスは、‘違うわよ、明日からバケーションで日本に帰るのよ。XXが辞めるといっても私は承知しないわよ!’と、言われるほどとても頼りにされていたので、この解雇は正に寝耳に水であった。

実は同じようなことがこの前の会社でも起こった。勤めていたのは地元の二つのショッピングセンターのマネージメントオフィスだったが、このセンターは、ミシガンを本拠地とする大きな会社の傘下に入っていて、一年半勤めた頃に、これらを親会社が売り払うと言う噂が流れ始めた。社員全員実際どうなるのかをはっきり知らされないまま、しばらく数ヶ月変わりなくやっていたが、とうとう支部長から、二つのショッピングセンターをどこの会社が買収するか、この先どうなっていくのかと言う大まかなことを知らされた。この時点では、管理体制はさして変わらず、ただオーナーシップが変わるだけだと聞かされていたが、社員は全員解雇の可能性さらされ、びくびくしながら更に数ヶ月間過ごした。そしてようやく半年後に新しい会社の経営側から一人一人の面接があり、その中から数人が解雇されていった。私の仕事は、新しい会社の部門に統合されたため、残念なことにそのポジションはなくなってしまった。

こんな悲劇が二回も続けて起きたために会社に対しての忠誠心なんて完全に消えうせてしまった。そう、アメリカの会社は大変シビアなのである。たとえ大変な学歴と経験をつんだ社員でも、会社の経営方針によっていとも簡単に解雇されるので、誰もが一つの会社に何十年も奉仕しようなんて考えず、5年もしたらもっと待遇のいい会社にどんどん移っていく。

また、アメリカ企業の多くは社員を育てていくという姿勢が少なく、ポジションが開いたり、新たに作ったりする場合、その仕事内容の経験をたっぷり積んだ人を雇うことが殆どた。よって、いくら有名な学校を出たからって言ったって、日本の企業のように自動的に有名企業に就職できると言う保証はまったく無い。そのため学生たちは、忙しい勉強(日本の学生と違って本当によく勉強している)の合間を縫って、インターンシップでどこかの企業にパートタイムとして働いた経験を将来の就職活動に生かすのである。

就職活動といえば、履歴書から始まるが、日本のように、決まったフォームが無いので、各自でまずは職歴、そこでどういった仕事をしたのか、どういった業績を挙げた課などを連ねて、最後に学歴と学生生活の中でのを功績を付け加える。あくまでも、経験優遇なのである。こうしたやり方は、日本のように新卒がまず優先と言うわけではないので、一旦社会に出てある程度働いた人が同じような仕事を別の会社で探す際には有利であるが、経験の無い新卒者や、まったく仕事を変える人にとってはとても不利なのである。



日本企業のいい所は、一度入社した社員を位置から育てて、その後労働意識の低下を防ぐために比較的大きい企業なら、いろんな部署に数年経ったら配属しなおすので,社員もまた初心に帰って仕事に打ち込むことが出来ると言う点。それと同時に社員の会社に対する忠誠心も培われると言うものだ。が、最近の日本企業は変わり始めているらしいので、これも過去のものとなりつつあるわけだが、そう考えたら、日本企業は利益のみを追求するアメリカ企業のようになりつつあるんではないかと危惧してしまう。

経済のことはあまり詳しくないので詳しくはあれこれと分析は出来ないが、簡単なデータを見ると、失業率は、アメリカ全土で6%と、(2003年10月現在  http://www.bls.gov  参照 )落ち込んではいるが、それでも、アメリカ経済全体を見ると、日本の不景気に比べたらまだまだ良いほうだ。と言うのは、不景気だといっても人々はSUV(Sports Utility Vechicle)などのでかい車を乗り回してがんがんガソリンを使っているし、住宅購入者もうなぎ上りだし、今頃はクリスマスショッピングで一世帯あたり何百ドルの出費をしては物が溢れた生活をしているのを見ると、何が不景気なんだろうと疑問に思ってしまう。

このように表面上、物が溢れ、あらゆる便利なものが比較的安価に手に入り、殆どの家庭では、古いアパート暮らしでも蛇口をひねればさっと熱いお湯が瞬間に出るような、経済国家として成功しているように見えるこのアメリカだが、一方では、労働者の休みはまとまってとることが出来るが、実際には年間の有給日数を取ると日本のそれよりも少なく、労働時間も職種に依るが、週に50時間以上働く人もざらにいる。家庭を持った多くの労働者は子供を預けて共稼ぎで長時間の残業や、二つ仕事をもって何とか生計を立てている。ベービーブーマーが第一線として活躍していた頃は、あくせく働いた報酬に家を買うことも出来たが、この異常な不動産価格の上昇により、(殊にカリフォルニアにおいては)そのアメリカンドリームの基本となるマイホームですらも手に入れることが出来ない人が山ほどいる。

このようなアメリカの雇用状況を見ると、終身雇用制度が崩壊した現在の日本とさして変わらないように思える。どちらの国も、利益至上主義の企業に振り回された労働者が、物質上は豊かでも、人間として満ち足りた暮らしを送るのを犠牲にして失業するかもしれないと言う恐怖におびえながら身を粉にして働いている。最近ではこういった傾向が、一ヶ月ほどの有給休暇を認めたりする、労働者に有利な環境が整っていると言われたヨーロッパのほうでも広がっていて、生産性を挙げ、世界的経済で勝負してゆくためにこういった社員に有利な待遇を削る会社がどんどん増えていると言う。大変悲しいことだ。

ちょっとまとまりの無い文章だが、私なりに分析すると、この物欲主義の世の中で、豊かな時間と心のゆとり保ちながら暮らしていくのは大変難しいが、企業に合わせるのではなく、まずは自分を守る、つまりある意味で勝手な人間にならないと生きていけないわけだ。そんな悲しい現実をしみじみ感じながら、正規の仕事に就く為に日曜でもこうしてインターネットや新聞上の募集を見て仕事探しに余念が無い島流れ者なのである。





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最終更新日  2004.10.13 04:07:26
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