村上春樹は長編で作品を残す作家さんですので、短編は長編につながるネタだったり、試行錯誤だったりといった位置づけでしょうか。したがって、長編を読み始める時のようなワクワク感は特になく読み始めました。
ところが、この短編集「女のいない男たち」はちょっと違います。村上春樹作品全般に密接に関わるテーマで纏まっております。タイトルの意味するところは、何らかの形で妻や彼女を失った男がテーマになっており、6編の短編からなっています。最後の1編がこの短編集の纏めになっている、タイトルと同名の書き下ろし作品「女のいない男たち」という構成です。
どの作品も楽しめましたが、「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」がお気に入りです。「シェエラザード」も村上ワールドと言う意味で楽しめました。
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女のいない男たち [ 村上春樹 ]
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<ここからはネタバレ>
この経過を主人公は運転手として雇った、口数が少なく運転のうまい「みさき」という24歳の女性に話す。村上小説にしては珍しく美人ではない。物語としては、主人公もだんだん原因究明など、どうでもよくなり、浮気相手を恨むでもなく彼とは疎遠になってゆく。最後のほうで、みさきが口にした結論らしき言葉が印象的です。
「奥さんはその人に、心なんて惹かれていなかったんじゃないですか」とみさきはとても簡潔に言った。「だから寝たんです」・・・中略・・・「女の人にはそういうところがあるんです」(緑字は本文から抜粋)
なるほど。これでは原因もへったくれも無いですね。男は道理(常識、理性)と本能のはざ間で行動する。本能で起こした行動でも、自分を本能が支配したと言う理屈になる。女は各人の直感(感性)で行動し、これは男の本能とも異なる各人それぞれの尺度なのです。男の道理-本能の座標系にはプロットできない、定義の異なる座標軸なのでしょう。
「ねじまき鳥クロニクル」の主人公も突然妻が失踪。「ノルウェーの森」の直子は自殺。「スプートニクの恋人」の「すみれ」に至っては接点さえ得られない。。。この様に村上春樹作品には、これまでも「女のいない男たち」が数多く登場し、男たちは翻弄されるのです。
「イエスタデイ」は話の展開は全く違いますが、登場人物の配置は「ノルウェーの森」とよく似ています。主人公の「僕」は語り手で、友人とその彼女はある時から交わることの無い別々な座標軸の上を進んで、お互い独身で過ごしている話です。
本書6編の間にも同じ登場人物や場所が出てきて、なるほどこう繋がったのかとか、村上作品を読んでいる人には、「あれっ!どれかの作品であったな。いたな」という場面も時々出てきて、それも楽しめます。出版前に問題になり差替えた「ドライブ・マイ・カー」に出てくる北海道の地名もその1つでした^^)
村上ワールドの冒険部分を除いた、重要なテーマをいくつかのケースの話に凝縮した面白い短編集でした。
「死神の浮力」--- 伊坂幸太郎 2017/08/18 コメント(1)
「象の消滅」 --- 村上春樹 2016/11/05 コメント(1)
「パン屋再襲撃」 --- 村上春樹 2016/10/28
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