人生は10段変速の自転車みたいなもの

人生は10段変速の自転車みたいなもの

2015/01/04
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カテゴリ: 読書


間違いなく、この本はお薦めです!

短編集として1話1話を楽しんで読みましたが、その中の何話かが見事に一つの話につながるのです!全ての話が繋がっているわけではないのがミソなんですね。だから最後に来て、アッ!そうなんだ!!と思い当たるのです。もっとも、最後まで来てぶっ飛んだのは私だけかもしれませんが。。。



主人公は死神。この設定が面白いのです。登場する死神は昔話に出てくるような重厚感も恐ろしさもなく、システマチックな組織から人間の世界へ調査員として派遣され、対象となる人物と接触して7日間の調査を行い、死ぬことを「可」とするか「見送り」とするかを報告するという役割です。「可」の場合は対象となった人は8日目に死亡し、それを見届けたところで任務完了となります。

死神は任務ごとに適切な人間の姿で現れるが、なぜ対象の人物が選ばれたかの理由も知らされずに派遣されてきます。主人公は人間の姿で現れ、名前はいつも「千葉」。死神の調査員はいたる所にいて皆地名の名前が付けられている。人間が不慮の事故で死ぬのは全て死神の判断による。

主人公の死神の姿は若く格好良い男性の場合が多く、音楽を聴くのが大好きで、他の死神と同様に人間の死には興味も感情移入もなく、殆どの場合対象人物は「可」となり死を迎える。実のところ生死の判定基準は定かではなく、本人任せで何のための調査かもよく分からない。一見、生死を分ける判定が各話のクライマックスになりそうに思うが、判定結果自体にはあまり重要な意味を持たせていないのも伊坂幸太郎流の気がします。

主人公の死神のキャラクターが全編を通して、とても良い味を出しています。死神は神と名はついているものの全知全能とは程遠く、人間の言葉、習性や習慣の理解も心もとない。それだけに死神の視点というか、われわれが普段常識として捉われているものとは別な視点でものごとを表現するところが面白いのです。ちょっと常識を知らない、天然な怖くない死神なんです。

いくつか小説の中に出てきた死神のフレーズを挙げてみます。

★調査対象は大手電機メーカーの苦情処理電話を受けるあまりパッとしない女性。彼女と食事中の会話。。。
「わたし、醜いんです」とぽつりと言った。
「みにくい?」私は本当に、聞き間違えた。目を細め、顔を遠ざけて、「いや、見やすい」と答えた。
 ---「死神の精度」より

感想:人間なら間違えませんね。でも、悪い雰囲気を激変するのに使えるかも。

★ヤクザの下っ端との会話。。。
「おっさんくらいの年齢だと、年貢の納め時、とか言うんじゃねえの」・・・
「おい」私は疑問に感じたので訊ねた。「年貢制度は今もあるのか?」
 ---「死神と藤田」より

感想:いくら頭の軽いちんぴら相手でも。。。爆笑。

★人を殺した若者が死神を人質に逃走する途中で、滝を見て人生にたとえた時に。。。
以前、同僚の死神が言っていたのを私は思い出した。人間は、何を見ても人生と結びつけるのだ。
 ---「旅路を死神」より

感想:確かに!わけ知り顔の人が言うと説得力ないやつですね。

★老女が一人で営む美容室で常連の女性客が2年前から来ていると話した時に、一人の少年が発した言葉を捉えて死神は思うのでした。。。
「僕はその前から来てるよ!」少年が自慢げな声を出す。人間というのはどうしてこうもつまらないことに差異を見出して、優越感を覚えようとするのだ。こんな幼い頃からそうなのだから救いようがない。
 ---「死神対老女」より

感想:なるほど。そのとおり!わが身を振り返って反省しながら笑ってしまいました。

伊坂幸太郎さんの小説には面白いフレーズがよく出てきますが、特に「死神の精度」には満載です。まだまだ有りましたが、これも楽しみの一つです。
ちょっとウェットな実直さが垣間見える、クールな死神の千葉くんが、いろいろな人物の人生を浮き彫りにする短編集でした。


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Last updated  2016/06/28 08:52:31 PM
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