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2018年06月12日
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2008年03月30日
縁を生かす

Oさんからとても感動するおハガキをいただいた。
掃除に学ぶ会に参加するたびに、その日あったこと、参加者の感想などを家族新聞風にまとめ、Oさんご夫婦に送っている。
今回はついでに「縁を生かす」を同封した。実に人とのご縁に恵まれた会となったからである。Oさんのハガキにはこうあった。

「GAIA様
 掃除に学ぶ会、ご挨拶もせず失礼いたしました。
名簿にもなく、今回はお休みかとも思ってました。
GAIA新報心をこめて頂戴します。

『縁を生かす』
2005・12月号特集、その感動を忘れていた。
今、頂いて、涙涙で拝読させてもらいました。
私の聴き違いかお気になさらずに
教師が動けば生徒に響く。
そこで、私、の先取りが教育を響育と説く。
感謝 O拝」

なんという感動的な文章であろう、生きているとは感動することでもある。
また、元校長のOさんからも同じくお葉書をいただいた。同じく「縁を生かす」への感動が述べられていた、私が感動したことを同じく感動していただく、なんと嬉しく楽しいことであろう。

「桜井小ではとてもすばらしい体験を共有できて幸せです。
さっそくすばらしい『学ぶ会』の新聞をいただき感激です。

・・・
いただいた五日市氏の講演会は娘と行きます。
『縁を生かす』も涙が出ました。
私も38年教員でしたが、すごい人がたくさん。
まだまだです。」



 「縁を生かす」

 その先生が5年生の担任になった時、一人、服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年がいた。中間記録に先生は少年の悪いところばかりを記入するようになっていた。

 ある時、少年の1年生からの記録が目に止まった。「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強もよくでき、将来が楽しみ」とある。間違いだ。他の子の記録に間違いない。先生はそう思った。

 2年生になると、「母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻する」と書かれていた。3年生では「母親の病気が悪くなり、疲れていて、教室で居眠りをする」。後半の記録には「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる」とあり、4年生になると「父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子供に暴力をふるう。」

 先生の胸に激しい痛みが走った。ダメと決めつけていた子が突然、深い悲しみを生き抜いてる生身の人間として自分の前に立ち現れてきたのだ。先生にとって目を開かれた瞬間であった。

 放課後、先生は少年に声をかけた。「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない?分からないところは教えてあげるから」。少年は初めて笑顔を見せた。

 それから毎日、少年は教室の自分の机で予習復習を熱心に続けた。授業で少年が初めて手をあげた時、先生に大きな喜びがわき起こった。少年は自信を持ち始めていた。

 クリスマスの午後だった。少年が小さな包みを先生の胸に押しつけてきた。後で開けてみると、香水の瓶だった。亡くなったお母さんが使っていたものに間違いない。先生はその1滴をつけ、夕暮れに少年の家を訪ねた。雑然とした部屋で独り本を読んでいた少年は、気がつくと飛んできて、先生の胸に顔を埋めて叫んだ。「ああ、お母さんの匂い!今日はすてきなクリスマスだ」

 6年生では先生は少年の担任ではなくなった。卒業の時、先生に少年から1枚のカードが届いた。「先生は僕のお母さんのようです。そして今まで出会った中で一番すばらしい先生でした」

 それから6年。またカードが届いた。「明日は高校の卒業式です。僕は5年生で先生に担当してもらって、とても幸せでした。おかげで奨学金をもらって医学部に進学することができます」。十年を経て、またカードがきた。そこには先生と出会えたことの感謝と父親に叩かれた体験があるから患者の痛みがわかる医者になれると記され、こう締めくくられていた。「僕はよく5年生の時の先生を思い出します。あのままだめになってしまう僕を救ってくださった先生を神様のように感じます。大人になり、医者になった僕にとって最高の先生は、5年生の時に担任してくださった先生です」

 そして1年。届いたカードは結婚式の招待状だった。「母の席に座ってください」と1行、書き添えられていた。

 本誌連載にご登場の鈴木秀子先生に教わった話である。

 たった1年間の担任の先生との縁。その縁に少年は無限の光を見出し、それを拠り所として、それからの人生を生きた。ここにこの少年の素晴らしさがある。

 人は誰でも無数の縁の中に生きている。無数の縁に育まれ、人はその人生を開花させていく。大事なのは、与えられた縁をどう生かすかである。





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最終更新日  2018年06月12日 05時14分53秒


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