10月7日(水)
「眠れぬ夜のために」(ヒルティ)(第一部)(233)
発行所 岩波書店(1973年5月16日)
(注) あくまでも、訳に忠実にしていますが、簡略化や意訳や
表現の変更(例えば、「…である」を「…です」に変えたり)をしました。
☆ ☆ ☆ ☆
(前日)
四月一日(2)
深き底より
今や近づく、うみの大波とむざんな死が。
まことにおまえは地獄の門の前にきた。
古き人は断末魔の苦しみにあり、
生れたばかりの新しき人はなお苦しげに 吐息 する。
わたしの道は不思議な国へすすんだ、
いや果のかなたの恐しいところへ。
闇に包まれ、いいがたい思いに沈んで、
われらは深淵のふちをたどった。
審 きが下された、私の知るのはそれだけ。
この道が気も狂うばかりのほとりを過ぎるからだ。
この世はすでに遠くわが背後に、
私はいま月桂冠でなく、 痛 矢 を受けた。
胸の呻きのみが私の救いです。
救い主よ、あなたに私をお任せします。
戦いはあなたのもの、栄光もまたそうです。
私を死なせ、あなたの 命 によみがえらせて下さい。(よりつづく)
四月二日(1)
いつもできるだけある種の暗がりに身を置きます。そして、美徳の仮面をさえかぶろうとするのが、悪の政策です。享楽欲を、けちでありたくないからだといいます。憎しみや妬みを、真理を愛するからだと言います。野心を、神のみ心へ任せきっているからだと弁解します。ただ、時おり、大胆不敵な哲学者や現実主義の政治家が現れて、彼らの本当の悪の素顔を見せて、「一切の価値の転換」(ニーチェ)を企てます。 (つづく)
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