10月8日(木)
「眠れぬ夜のために」(ヒルティ)(第一部)(234)
発行所 岩波書店(1973年5月16日)
(注) あくまでも、訳に忠実にしていますが、簡略化や意訳や
表現の変更(例えば、「…である」を「…です」に変えたり)をしました。
☆ ☆ ☆ ☆
(前日)
四月二日(1)
いつもできるだけある種の暗がりに身を置きます。そして、美徳の仮面をさえかぶろうとするのが、悪の政策です。享楽欲を、けちでありたくないからだといいます。憎しみや妬みを、真理を愛するからだと言います。野心を、神のみ心へ任せきっているからだと弁解します。ただ、時おり、大胆不敵な哲学者や現実主義の政治家が現れて、彼らの本当の悪の素顔を見せて、「一切の価値の転換」(ニーチェ)を企てます(よりつづく)
四月二日(2)
しかし、それと同時に、すでに健やかな回帰がはじまります。あらゆる善に対するこのような不敵な挑戦に一時は茫然自失した一般大衆も、結局はそのような企図を欲しなくなります。こうなると、悪の方でも、しばらくは仮面を再びかぶるわけにはいきません。そこで仮面は一時はげ落ちて、人びとは悪のありのままの醜悪さをすっかり目の前に見ることができます。わたしたちは今そのような時代に生きているのです。なにかの哲学や倫理でキリスト教の代用をさせようとするすべての試みがしょせん失敗だとわかったら、そののちにキリスト教はふたたび本当の覚醒に向って進むことになるでしょう。 (つづく)
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