小さなライブハウスで弾き語りでやっているかのような錯覚さえ覚えるこのアルバムはメンフィス・スリム珠玉のアルバムといってもいいだろう。最初に尊敬するブルース3人が紹介される。 ベッシー・スミス、ビッグ・ビル・ブルーズィー、リロイカーである。知る人ぞしる大御所である。メンフィス・スリムのピアノは弾き語りに最高の味を醸し出してくれる。淡々としていて、それでいて透明度が極めて高く、極上のワインの輝きである。時に激しくブキを奏でたり、スロウなブルースではしっとりと、情感をこめてピアノで歌ってくれる。エレクトリックギターは安物のアンプなのにその輝きを失っていない。フレーズが素晴らしくいいのだ。ジャズライムの「New key to the highway」の輝きはどうだ。これを聴いてクラプトンも演奏したのかと思われる程素晴らしい。このアルバムを聴いて確信したことがある。音響は良いに越したことはない。しかし歌心が失われたら、音響は価値を持たない。 このアルバムは安物の音響施設の雰囲気がぷんぷんとするが、肝心な歌心、フレーズは極上である。