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カテゴリ: 小説

かんなの花.JPG

    一 母の目の中で 3



この年の冬は、寒い日が幾日も続いた。

煎餅布団から出るのが億劫な日が続く。
あの日以来、清は、朝早くから床を出、ばさばさ
の髪をすきもせずに朝食の支度をしていた。
重治の眠むたそうな声が、冷たく強張った早朝の空気に這いでる。
「まっちゃん、寝ときなさい。寒いだろうが。
身体に悪いよ、怒るなー、物思いするなー、子供
の言ったことじゃないか。親の気持ちなど、何も
分かっとらんよ」と清に言っているのが信夫の耳
に入る。まっちゃんとは清の幼いころからの呼名である。
「我が子ながら、親に死ねなんて、なんと情けない
子なんだろう・・・・」と声を詰まらせて、独り言のように呟いている清の声がした。
それからというもの、信夫にとっては、重苦しい日
が続いた。
朝となく、昼となく、夜となくあの日の清への口答えが耳元に澱み、信夫の心を苛んでいた。
そんなある日、肌を突き刺すような寒い風が、信夫の眠りを打ち破った。
「えいっ!」と掛け声をあげて、重治が起床し、
畑への身支度を始めた。
その身支度のまま朝食の準備を始める.

いつものように始まった朝だったが、この日は、清が苦しげな声で、
「かにむい、今日は家にいてくれない? 心細くて。
それに、なんだかとても息苦しいの・・・・」と重治に頼んでいる。
「晩の芋だけ、掘ってくるさ」
「そうねー。早く帰ってきてくれないかしら。
一人ではなんだか怖いの・・・、今日は」
「姉さんに、幸を預ける時、言っとくよ。
ちょっとの間、おまえを見てくれって。
それから、幸には絶対に、近ずくなよ。直ぐ帰ってくるから・・・・」
幸は、清の乳の味を知らず4歳になっていた。
「わかってるよー。かにむい、少し背中さすって
くれないかしら。
胸に力がはいらんさー」
重治は、やりかけの朝食の準備の手を止めて、
添出しの台所の出入り口をくぐり、東側に面した清の寝床に向かった。
清の寝床も母屋からの添出しで母屋より一尺ばかり低くなっていて、
地面より一尺ばかり挙げて床が敷いてあった。
重治はしばらく清の背中をさすっていたが、手を止めて、
「どうだ? 少しは楽になったか?」と清の顔を覗
き込むようにして話しかけている。
突然、何を思ったのか、清が、
「かにむい・・・・、ウイスキーボンボン食べたい
さー」
と少し目を細めて何かを思い出すように呟いている。
「どうしたんだ、まっちゃん、ウイスキーボンボン
だなんて。
ないものねだりだよ、いまどきそんなものあるわけないだろう、こんな田舎に。
戦争負けて、引き揚げてきて、毎日の食べ物も大変だと言うのに・・・・・。
贅沢言うんじゃないよ。そうそう、ぜんざい作ろうか・・・・・」
と重治は清のことを精一杯聞き遂げようとしていた。
信夫は(ウイスキーボンボンってなんだろう。
母が言うからには、きっととても甘いものに違いない。
僕も食べたいなあ)などと、食い意地の張った想像を床の中でしていた。
小用に耐えながら横になっていた信夫も限界に達していた。用足しに庭に降り立った。
そこは、まだ、闇の底に沈んでいた。空では、
明澄な空気の中で、星々が凍りつくような光を放っていた。
甕から、そっと水を掬って口にふくむ。全身に冷気が走った。
「・・・・また寝るの?」
清が、か細く弱々しい声で聞いていたが、信夫は
答えずに床に潜り込んだ。
冷たい空気に触れたせいか、すぐには寝付けなかった。


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Last updated  July 2, 2006 02:37:00 PM
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