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一 母の目の中で(6)
「おーい、おーい、この屋敷に入るなとよお。母ちゃんが言ってたけど、この屋敷に肺病のおばさんがいるとよお」
「この野郎! 殺されるぞおっ」
信夫は激怒して店から飛び出し、子供たちを追いかける。子供たちは、路地に隠れて見つからなかった。信夫は、小さな子供であるにせよ、このような形で清を去したことを許せなかった。
母の枕元で胡坐をかいて信夫がどかっと座る。床は大きな軋みを上げた。今朝、枕元に置いたぜんざいも、少しだけ食べたようであったが、側のタオルに吐き出されていた。お椀には、朱塗りの箸がきちっと置かれていた。ぜんざいは椀の中で硬く張り詰め黒い光を放っていた。
「信やん・・・・、学・・・・」
「学校? うん、行かなかった」
清は黙って、信夫を見ていた。
*「殺されるぞおっ」=沖縄地方では「ぶん殴るぞオ」程度の意味。復帰直後、本土から来た裁判官が書記官の調書を見て「くるさりんどー(殺されるぞお)」と言う記載から「殺意あり、故意犯」と認定したとかしないとか。
*「一母の目の中で」 (おわり)、 次回から 「二 野辺送り」。
ゴーヤーチャンプルー、ゴーヤーの酢の物などに。