July's July

July's July

2012.03.18
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
と或る晨

それから食卓をかこんで喋言っているとき
<なんだかこの世界は変わったようだよ>
そんなふうにわたしが死に
そんなふうに信頼は死に そのかわり
この世界はいつ変えられるのか
              <信頼>

ああそうだ

拡大してゆく容器をもっている
彼女がわたしにたのんだ
京菜と漬物とさと芋と人参と豚肉を買うことを
そこでわたしが出掛けた
ひとつの冒険へだ

わたしの手のなかにはすぐ空になるほどの小銭と
ヴィニールのふろしきがあるだけだ
けれどいつの日かとおなじように今日
わたしあるいはわたしの骨になった幻は
そのようにさりげなく深い拠点から
出発する



とつぜんあらゆるものは意味をやめる あらゆるものは病んだ空の赤い雲のようにあきら
かに自らを耻しめて浮動する わたしはこれを寂寥と名づけて生存の断層のごとく思って
きた わたしが時間の意味を知りはじめてから幾年になるか わたしのなかに とつぜん
停止するものがある
<愛するひとたちよ>

にあらゆる名称をつけることをやめよ
・・・・中略
明からにわたしの寂寥はわたしの魂のかかわらない場処に移動しようとしてゐた わたし
ははげしく瞋らねばならない理由を寂寥の形態で感じていた

                              <固有時との対話>


ぼくの孤独はほとんど極限に耐えられる
ぼくの肉体はほとんど苛酷に耐えられる
ぼくがたふれたらひとつの直接性たふれる
もたれあふことをきらった反抗がたふれる
ぼくがたふれたら同胞はぼくの屍体を
湿った忍従の穴へ埋めるにきまっている
ぼくがたふれたら収奪者は勢いをもりかへす

だから ちひさなやさしい群よ
みんなのひとつひとつの貌よ
さようなら
                <ちひさな群への挨拶>

秘事にかこまれて胸を
ながれるのはなしとげられないかもしれないゆめ
飢えてうらうちのない情事
消されてゆく愛
かれは紙のへに書かれるものを耻ぢてのち
未来へ出で立つ
              <異数の世界へおりてゆく>

おれが愛することを忘れたら舞台にのせてくれ
おれが讃辞と富を獲たら捨ててくれ
もしも おれが呼んだら花輪をもって遺言をきいてくれ
もしも おれが死んだら世界は和解してくれ
もしも おれが革命といったらみんな武器をとってくれ
                       <恋唄>

行きたまえ
きみはその人のためにおくれ
その人のために全てのものより先にいそぐ
戦われるものがすべてだ
希望からは涙が
肉体からは緊張がつたえられ きみは力のかぎり
救いのない世界から立ち上がる
                        <恋唄>

昔の街はちいさくみえる
掌のひらの感情と頭脳と生命の線のあいだの窪みにはいって
しまうように
すべての距離がちいさくみえる
すべての思想とおなじように
あの昔遠かった距離がちぢまってみえる
わたしが生きてきた道を
娘の手をとり いま氷雨にぬれながら
いっさんに通りすぎる
                   <佃渡しで> 





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012.03.23 02:17:28


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: