2010年07月30日
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http://www.zakzak.co.jp/sports/golf/news/20100729/glf1007291601002-n2.htm
知人の企画したコンペが千葉県内のゴルフ場で開催されることになり、「渡部プロもぜひ」と誘われた。昭和44年秋のことである。当日の朝、「どうしてもご一緒してほしい方がいる」と頼まれたので、同じパーティーで、ある年配の紳士とプレーすることになった。政財界の黒幕といわれていた児玉誉士夫氏だった。戦時中、海軍の嘱託となり上海で児玉機関を運営。戦後、莫大な財産を持って引き揚げてきたことや、右翼の大立者としてフィクサーと呼ばれていたことなど、私にも多少の知識はあった。当日の朝もお付きの人間が数人、遠巻きに我々を見守っていたが、そんなことは私には一切関係がないことだった。私はアシスタントプロになった20代の頃から、人の肩書や収入などで差別・区別することがないように努めてきた。縁があれば誰とでもゴルフをするし、飯も食えば酒も飲む。ただし、ゴルフを冒涜するような行動をしたり、向上心の見られない人が相手なら、それがたとえ総理大臣であってもレッスンを辞退してきた。黒幕だろうが右翼の親分だろうが、ゴルフ場に足を踏み入れれば私は先入観を持たずに一人のプロゴルファーとして接するだけなのだ。私にとっての児玉先生は、実に人間味溢れる人だった。初対面のゴルフ。バンカー内でクラブをソールして打とうとしていたから、「先生、バンカーからナイスショットするいい方法があります。クラブを多少宙に浮かせて打つのがコツなんですよ」と指南すると、ニヤリと白い歯を浮かべて即座にスイングを改めた。後で聞かされたのだが、「先生はバンカー内ソール禁止のルールは当然知っていて、これまで直接的に注意したコーチの言うことは一切聞かなかった」のだという。当時、先生の秘書として行動を伴にしていた太刀川恒夫さん(現東京スポーツ新聞会長)から聞かされた。私のアドバイスの仕方がよかったからなのかどうかはわからないが、ラウンドを終えると「こらからもレッスンを頼みます」と頭を下げてきた。私に断る理由はない。以後、月に1度のペースで主に神奈川県内のコースを舞台に個人レッスンは続いた。世田谷の自宅にも度々招かれた。朝食をよくともにしたが、先生は炊きたての白米に温かい味噌汁を躊躇なくぶっかけては勢いよくかき込み、「これが一番うまい」と言っていた。横にいた夫人が「貴方、お客さまの前ではしたない」とたしなめたので、私も負けずにぶっかけ飯をかっこむと、先生は腹の底から声を発して笑っておられた。自宅の玄関前には、桜や松の大木がそびえており、その真横には小さなお地蔵様が祀られていた。先生は毎朝、庭の野花一輪を摘むと、お地蔵様に供えるのが日課で、「戦争で死んだ仲間たちを弔っているのだ」と言っていた。昭和51年、ロッキード事件が勃発。収賄の罪で裁判に臨むことになった児玉先生の自宅に、小型セスナ機が特攻した。右翼思考の青年が自爆攻撃を仕掛けたものだった。このとき、セスナは自宅前にそびえ立っていた桜や松の大木に接触。進路を変えて2階の一部に突っ込んだ。私はこのニュースをテレビ画面で目にしたとき、瞬時に確信した。「あのお地蔵様が先生を守ったのだ」と…。大木の陰に隠れるようにして祀られていた小さな地蔵。飛行機が樹木に触れていなければ、先生が伏していた部屋にそのまま突っ込んでいた可能性が高かった。児玉家の敷地内をよく知る者なら、誰もがそう思ったろう。日米を震撼させる収賄事件の主人公となった先生は、天下に裁かれて当然であったと思う。ただ、それは私のあずかり知らぬ部分であり、ゴルフを通じて私が接してきた児玉先生は、野花一輪を英霊にささげ、真面目に練習に取り組む好々爺だった。真夏のゴルフが終わると、私は全身滝のように汗をかいた先生の頭によく水をかけた。じゃぶじゃぶと頭や顔を洗ってあげると、先生はヒャアヒャアと子供のようにはしゃいで喜んでいた。暑い夏が巡り来ると、先生の笑顔が今でも浮かんでくる。

わたべ・ひでろう 1935(昭和10)年4月16日、長崎県長崎市生まれ。18歳のときに福島県いわき市湯本でゴルフ修行に入る。22歳で上京し、アシスタントプロに。政、財、スポーツ、芸能各界の著名人とレッスンを通じて膨大な人脈を築く一方、1967年にはトーナメントプロライセンスも取得。ワタベゴルフ企画代表取締役、社団法人日本プロゴルフ協会会員。

編注 ゴルファーとしての児玉センセイです センセイの人間的な魅力を取り上げたものですが ある面では 人には芝居っけと取られかねないことが センセイはごく自然にできたということなんですかね ジローさんとゴルフをすると どうだったんでしょうか





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最終更新日  2010年07月30日 21時25分42秒
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