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ある雑居ビルの地下の一番奥にある「スナックゆうこ」
扉を開けるとムワッとタバコのにおいが鼻に突く。
何十年も前から時間が止まったような薄暗い空間。
客はいなかった。
カウンター越しに、壁に背をもたれ虚ろな目をした女性が佇んでいた。
彼女がこの店のママだ。
「いらっしゃい、何にする?」
吸っていたタバコの煙を吐き出したあとに、めんどくさそうに言った。
、が、いざふところに入ると、
気だるそうな対応とは裏腹に話しを親身になって聞いてくれた。
彼女のか細い右手にはウイスキーが入ったロックグラスが握られていた。
店内のBGMはグラスを傾けた時にあたる氷の音だけだ。
ふと、彼女は思い出したように音楽をかけた。
藤圭子の曲だった。
ハスキーボイスな声で歌う幸の薄い女の詩が不思議と店の雰囲気と合った。
「私ね、藤圭子と年が一緒でさ、好きだったんだけどね、
でも、自ら死んじゃだめよね、死ぬこと以外はかすり傷よ、
時間が経てば何事もなかったように傷は消えるのよ、馬鹿ね」
遠い目をしながら、言った。
まるで自分に言い聞かせるように。
店を出ると小雪がちらついていた。
今日は大寒、一年で一番寒いとされる日だ。
寒さに肩を縮こませながら帰路に着いた。
乾いた冷たい風が痛みに感じるほどの寒い夜だが、
ほっくりとした温かい夜でもあった。
※こちらの「スナックゆうこ」、
あるテレビ番組の企画で一日だけ実在したお店です。
なので今現在は営業はしてません。
ただ、初めて名刺を見たとき猛烈に行きたい衝動にかられました。
なので妄想で「スナックゆうこ」に来店してみました。
こんなんでどうでしょう、ゆうこさん?
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