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2007.01.21
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●「枢密院 第9回 審査委員会(1946年5月29日)」(吉田内閣では一回目)の概要

○林顧問官:三月六日の政府草案要綱発表以前に発表された各政党案よりも政府案はより革新的であるために、世間では驚いた位であつて共産党は別として、他の政党はこの草案の大体については賛成している。
 この草案はポツダム宣言の趣旨に基き民主主義を充分に現し、戦争抛棄も宣言してゐる。
 そして議会を通して国民の意思によつて決しようと云ふことになつてゐるのであるから、ポツダム宣言に充分に適合し聯合軍司令部も全面的に支持してゐる。
 二・三の国が反対意見を持つてゐるとしても、聯合各国を動かすことは出来ない。
 故に国際関係から見てもそんなに急ぐ必要はない。

○吉田総理大臣:先方は、議会で修正すればよいではないか、草案としてはこのままで出せばよいではないかと云ふ意向。

○吉田:なるべく早く主権を回復して進駐軍に引上げてもらいたい。
 そのためには先方の望の様に日本再軍備のおそれはなく又民主化は徹底した、と云ふことを世界に早く証明し、占領の目的完成になるべく早く近づきたい。そのためには憲法改正が一刻も早く実現することが必要である。


○林:民主主義と云つても一様ではない。ソ聯としては共産主義もプロレタリヤ・デモクラシーだと云つてゐる。即ちこの草案は英米式デモクラシーを完全に取り入れたのだが、ソ聯式デモクラシーではないから、之を以てポツダム宣言の完全な履行にはならない。

○吉田:最近はソ聯の方が多分に緩和を示して来てゐる様に見へる。ソ聯も戦争の考へはなく、対日戦争に関しては米国の犠牲が最も大きかつたことを考へ、対日政策に対する米国のみの発言権が強いことを認めてゐる。ソ聯の干渉も、主としては日本以外の問題について多いので、日本に関する問題は結局は妥協する傾向にある。横槍も最後までがんばると云ふ様なものではないと考へてゐる。

○吉田:マ元帥の意向は草案の基本的な原則や形が崩れなければ細目の修正は勿論差支へないと云ふ点にあると思ふ。

○林:主権はどこにあるのか。国民か、天皇、国家か。主権在民だと云ふことは新聞、学者その他国民全般が疑なしとして認てゐる。マ元帥も三月六日の声明で「この草案は主権を明白に国民に移した」と明言して賛成の意を表したのである。しかるに前回松本国務相は、それは政治上のことなので法律論としては国家に帰する。従つて天皇は国家の機関であると説明された。この考へ方については根本的に疑がある。
 新内閣に於てもやはりこの様な見解をとられるのであるか。又議会に於ける答弁にも政府は公けに右の様な考へを明言され得るか。又それがマ元帥生命にも副ひ、各国も亦納得するものであらうか。

○吉田:マ司令部との交渉の経過を述べれば第一条によつて陛下のpersonが守られる。又畏れ多いことではあるが戦争責任からも陛下をお救ひすることができると云ふ考へである。即ち政治上の責任からはなれられることが肝要である。日本国が戦争を遂行出来たのは皇室があり又神通と云ふ好戦的宗教があつたからであるから、聯号国としては第一条の表現が適当であると考へる。かう云ふ事情であつたから私として、そこで安心をしたのである。


〓勝手に独断と偏見〓

 林顧問官は「そんなに急ぐ必要はない」と「枢密院での審議継続」を主張、吉田首相は予定通り「国会での審議」を始めたい。

 林顧問官の
 「この草案は英米式デモクラシーを完全に取り入れたのだが、ソ聯式デモクラシーではないから、之を以てポツダム宣言の完全な履行にはならない。」

 は、もちろん天皇制否定の主張ではない、ソ聯式を強調したかったとも思えず、単に枢密院での審議引き延ばしを望んだと推察する。


 「日本国が戦争を遂行出来たのは皇室があり又神通と云ふ好戦的宗教があつたからであるから、聯号国としては第一条の表現が適当であると考へる。」

 「天皇制」と「戦争放棄」は交換条件だったのだろう。


※林頼三郎:検事総長、大審院長、広田内閣司法大臣、中央大学学長、枢密顧問官、1947年 公職追放
 (『Wikipedia』より)





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最終更新日  2007.01.21 09:49:51
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