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2008年05月13日
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カテゴリ: 本
夏の名残りの薔薇 恩田陸 著 大嶽恵一 写真 京極夏彦with Fisco 装丁 (2004年9月30日第一刷文藝春秋)




バスが大きく揺れ目に飛び込んできたのは煉獄のような色彩。
裾野まで広がる広葉樹林の豪奢な絨毯を思わせる紅のグラデーション。
秋も終幕。山頂にはどす黒く厚い雲。あそこから冬が来る。

山奥のクラッシックなホテル。贅沢な監獄。
ロビーから二階に通じる階段の左右に分かれる踊り場におかれた柩に似た柱時計。
優に高さが二メートル近く。これほど大きければ七匹の子山羊の最後の一匹が滑り込む余裕があったろう。ボーン。三十分毎に一回、一時間毎に数字の数だけ。ドグラマグラを思い起こさせる。

年に一度、そこに招かれる人々。伊茅子・丹伽子・三州子の三姉妹がそれぞれ開くお茶会。そして夕食の席で三姉妹が繰り広げるグロテスクな作り話。それは三人だけが参加するゲーム。

桜子・時光の美しい姉弟は長女・伊茅子のお茶会に招かれ、二人の関係を終わらせるように言われる。

それに現れるはずのない桜子の夫・隆介が。おばである伊茅子たちが主催するこのお茶会を苦手とする隆介はけしてここには訪れないはずだったのに…

丹伽子の娘で舞台女優の瑞穂。瑞穂のマネージャーの田所。
高級外車のディーラーの辰吉。
そして三姉妹の父の代から招かれており他の客とは一線を画している天知。

繰り返し差し込まれる映画の場面。

何故三姉妹は人々をパーティーに招き、お茶会を開き、嘘とも真ともつかない作り話を聞かせるのか?

突然起こる惨劇。しかし…




第一変奏は時光、第二変奏は田所、第三変奏は隆介、第四変奏は天知、第五変奏は桜子、第六変奏は辰吉。それぞれの視点で語られる物語は連続していながらも違う結末。
先の章の結末は何だったのか?と思いながらも続いていく。章ではなくまさしく変奏。繰り返しを持つ所が恩田さんの作品らしくて楽しめます。
差し込まれる映画が場面と妙に一致していて最後には思わぬ人物が思わぬ人物と…



三姉妹の登場時は中々凄味があるのですが、徐々に擦り減っていく感じが哀れ。

でも三人で語る作り話は息が合い下手な怪談よりも聞きごたえがあるらしいのでお茶会なしなら聞いてみたかったかも。

三姉妹の父はとんでもない人だったようで…
あの三姉妹も父の呪縛からは逃げられなかったようですし、未だに続いているわけですから。

天知も天知の父も良く仕えたよなあ。

一見牧羊犬な隆介と言い、怯えていた瑞穂と言い、なんだかんだと血は争えない感じ。



でも○○が…これ以上は言うまい。


巻末には恩田さんの後書き、杉江松恋による解説とインタビューも!

夏の名残りの薔薇が刊行されるまでの作品リスト付き。

作品中の映画はアラン・レネ監督「去年マリエンバートで」。


在庫なしですか…

引用文献として「去年マリエンバートで/不滅の女」(アラン・ロブ=グリエ著 天沢退二郎・蓮実重彦訳 筑摩書店)が使われていますが、おお!天沢退二郎の名が!



光車…に出てくる水たまりからのびる手が、伊茅子の語る水たまりから黒い手と一致しているように思ったりして…



2008年3月に文庫も出ているようです






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最終更新日  2008年05月14日 00時08分50秒
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