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2008年05月14日
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カテゴリ: 本
流れ行く者(偕成社ワンダーランド36) 上橋菜穂子 著 二木真希子 絵 (2008年4月 初版第一刷 偕成社)



守り人シリーズ「番外編」にあたる短編集

父を王に殺された少女バルサ。
親友の娘を助けるためにすべてを捨てたジグロ。
ふたりは追手をのがれ、流れあるく。
二度と戻らぬ故郷を背に。


「浮き籾」

山畑のネェやが山犬に襲われた。大した怪我はなかったが、青白い鬼火がまとわりつきそれがオンザの顔に見えたという。
オンザはタンダの遠い親せき筋。祭りの頃にやってくるひょうきんで笛がうまいおじいさん。

若い頃から浮かれて過ごし弟たちに田畑を押し付け街に逃げていったため、「あれは浮き籾だ」とタンダの父方の祖母も言っていたらしい。
オンザはこの夏、ひどい死に方をした。ぼろぼろの衣でがりがりに痩せて村の入り口で行き倒れていたところを獣に食い荒らされていた。
村の男衆は山犬を探したがつかまらず、田に手のかかる時期になり騒ぎは下火になったがオンザが恨んで化けて出たという噂は村人の不安を煽った。
間もなく稲の刈り取り。黒虫が出た!煙棒で退治するが煙で目や喉を痛める。
山家に住む呪術師・トロガイおばさん(!)にナヤの皮を水に浸した薬水が目に効くことを聞いていたタンダは薬水を作る。薬水は効果があり、兄や父にも喜ばれ、隣家のニィにも感謝される。しかし突然の黒虫発生をオンザの祟りか?話すニィたち。
ナヤの皮を遠畑に住む母方の祖母に持っていくと出かけるタンダ。祖母はヤクー。オンザも遠畑の生まれ。村人が噂するようにオンザが祟るような人かどうかを聞きに行くタンダ。
そして…


子どものタンダが、可愛い!
トロガイ師(まだおばさんですよ!まあ夢の守り人の時に回想で娘時代も出てきましたっけ?)もジグロも仕事で留守にしている間も鍛練するバルサに遊んでとせがんだり、バルサに自慢げにタボ釣りの方法を教えるのにバルサの方が先にコツをつかんでむくれてみたり、うまくいって喜んだり…魚釣らずに屋根を作ってやったり…
優しいですよね、タンダは。黒虫や魚の心配したり、オンザのことも。
それに対してタンダよりお姉さんのバルサはこんな頃から男前!

稲刈りの手伝いも台所を手伝う娘たちにはもちろん入らず、若い男手と混じって稲刈りですよ!しかも仕事が綺麗と来てる!!

でもタンダと違って気が短いため飯炊きは苦手なようです。魚をさばいたり焼いたりするのは大丈夫みたいですが…
仕事が出来ないと三男坊は婿の貰い手がないと言われるタンダですがもうこの頃からバルサの嫁になる運命?だったのね。

タンダの母に脛当てをつけてもらうバルサに涙。

山犬が本当にオンザかどうかを確かめようとするタンダとタンダを心配してついてきてくれるバルサが良い感じ。死んだオンザに拘るタンダをバルサには見えない何かに引かれていきそうなタンダを怒りながら案じるバルサも良い。




「ラフラ〈賭事師〉」

ユリイカに掲載されたもの を読んだ時となんとなく印象が違うなあと思ったら加筆されたようです。

とある酒場の用心棒として雇われたジグロ。十三歳のバルサも給仕として働いている。
バルサは六つの年に故郷を逃げ出し七年。養父・ジグロと旅から旅へと流れ歩く暮らし。
今日は酒場は休み。
奥の賭博場でススットと呼ばれるサイコロを使う賭博をやっている客がいるだけ。
歓声が上がった。誰か大勝しているらしい。大柄な男・ズカンの弟。
青ざめた顔の男が一人。給仕仲間のマナと恋仲のアール。どうやら大勝している奴らは組んでアールを陥れ領土を広げているらしい。
中で一人、全く領土を獲得していないのに大勝している奴らより金を稼いでいる老婆。専業の賭事師・ラフラ。老婆に見えても名のあるラフラだという。

アールはススットが得意なバルサを見つけると助けを求める。
バルサは器用にゴイ(サイコロ)を振りアールの借金を酒を一壺ずつおごるくらいの負けにまで取り戻してやったが…
逆恨みした連中はアールとバルサに因縁をつける。

突然ぶちまけられた水。手を止めるバルサ。
「それ以上やったら殺しちまうよ。」
ラフラの老女だ。
ススットの勝負の因縁を基盤の外に持ち出したことをいさめる老女に説教するのかと短剣を振りかざすズカンだが、
「わたしは、ナカズさんの<預かり>だよ。」
この一帯の賭博場を支配するナカズから財産として保護されているほど腕を買われている老女。老女はバルサにアズノだと名乗る。

雑用と開店前の合間の休憩時間、アズノからススットの手ほどきを受けるバルサ。バルサが習得するたびに顔をほころばせるアズノ。
アズノは大負けしないコツを尋ねるバルサに職業上の秘密だと笑うが、絶対に大負けしないコツはうまく逃げることだとささやく。

ススットにはロトイ・ススットと呼ばれる何十年にもわたっての勝負の記録を羊皮紙に綴られるススットもある。羊皮紙を出して次の手を読むアズノ。
ある日、アズノの元にこの地域を治めるラダム氏族長の重臣・ターカヌの使いが訪れる。ターカヌはアズノのロトイ・ススットの相手。
五十年にわたる勝負の続きを綴ろうと迎えに来たのであった。あの続きが見られると思うと喜ぶバルサだが…


十三歳バルサ、鍛えられています!強いです!!流石に用心棒とはいきませんが…こんな年から酒場でも働いていたのね。
ジグロはバルサが借金で痛い目を見ても自分の力で返済させるのね。厳しいけど案外手を差し伸べないで見守っているのも辛いと母は思いますよ。
アズノさんが良いです。酒場でのススットの時ののらりくらりと交わす狡猾さも、ターカヌとのロトイ・ススットの時の伸びやかな潔さも。
でも最後は賭博場のラフラとして勝負したのでしょうか?大負けしないお金が手元に残るような手でした。


「流れ行く者」

ジグロが突然倒れた。水をかぶったように汗にぬれ唇が小刻みに震えていた。熱さましを飲ませても下がらない。
翌朝、やってきた医術師は白眼に黄疸の跡から肝ノ病と見立て、薬をとりだしどうするかと尋ねる。よく効くがバルサが半年働いても返せぬほど高価な薬。しかし一流の評価状を持つジグロは高給取り、旅暮らしは費えも多いので贅沢は出来ないが蓄えもある。養父の命より金を惜しむ様に思われたことに腹立たしさを覚えながらも薬を求めるバルサ。
今まで一度も、刀傷を負ったとしてもここまでの不安は覚えなかったバルサ。
これは少し前に起きた死闘で負った傷のせいではないのか?

あの時、突然、因縁をつけ、剣を抜いてきた男たち。既に異常を察知し、男たちの動きに合わせ肩を押さえるジグロ。
計画的な襲撃だったが、ジグロは次々に男たちを倒す。
客を守って利き手を切られるジグロだがものともしない。
感謝する主。沢山のお礼は貰ったが…
初めこそ見舞いにも来ていたが思いのほか長引きそうな様子に新しい用心棒を雇う主。

ジグロはいつもに比べゆっくりと回復していった。そして数か月滞在したロタを後にし隊商の護衛をしながらヨゴにトロガイの家に戻ろうと言った。

隊商会堂に向かう二人。高価なトッツアル<薬草酒>を運ぶ隊商を護衛する仕事だ。
そこで腕を試され、自ら自分の居場所を獲得したバルサ。そして旅は始まった。


襲撃を撃退するジグロの姿はアニメで見てみたいかも!
流石に男の子として扱えませんよね、十三歳ともなると。色々とね。そのうち見た目でも娘だってわかるようになりますし。
給仕のお姉さんたちはあまり登場しないけどバルサの良い姉貴分でした。
流行の服、バルサは身につけたのでしょうかねえ?つけたとしたらトロガイの家に着いてからでしょうか?ジグロも本当はバルサにそのままトロガイに匿ってもらい娘として生きてもらいたかったのでしょうねえ。
護衛士のスマルが何とも言えません。バルサに息子の姿を見たのか、娘と聞いたためか随分と気にかけてくれましたが…
バルサにとっては身を守るために鍛錬しているのではなかったのね。でもそれは…
運命だったのでしょうね。

ジグロがバルサの父・カルナについて語る場面も切ない。
何があったのか理解し取り乱すバルサを強く抱きしめるジグロ。生き残るためとはいえ辛いですよね。

「寒のふるまい」

冬の間獲物の取れない山の獣のためにタンダは人の食べ残しを持っては<寒のふるまい>と山に行った。寒のふるまいなら怪しまれずに山に行ってトロガイの家にも行けるのだ。
トロガイおばさんは言っていた。もうすぐいいことがあると。
それから毎日峠の里の守りのお社で焚き火を焚いて餅や芋を焼いて食べながら夕仕事までの間一人で過ごすタンダ。今日こそはと…

やっぱりタンダ可愛い!そして浮き籾の時の別れからずっと待っていたのね。
バルサにとって辛いこともあったけれど、トロガイの家に行けば、タンダは変わらず待っているのです。
旅に生きるバルサにとって、優しく温かいタンダが待っていてくれるというのはうれしいことだろうと思う。次の旅にすぐに気持ちを切り替えることができるバルサだけれど。大人になっても。多分、大人になってからの方が尚更。
でも子どもの頃からずっと待っていてくれるタンダだからこそだと思う。

バルサはタンダが褒められるとうれしいのにうれしそうに見えるのが嫌でわざとつっけんどんな態度をとってましたがタンダはバルサが褒められるとほんとにうれしそうでした。
その辺りもらしくて良かった。


それにしても、守り人を読むと毎回思うのですが、今回も食べ物がおいしそうでした!
稲刈りの手伝いの人たちにふるまうアショ飯も美味しそうだったし、熱いラルウも食べてみたい!そして何より、おばあさんを訪ね猪肉をふるまってもらうタンダがうらやましかったです。





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最終更新日  2008年05月14日 15時48分46秒
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