日々のあぶく?

日々のあぶく?

December 7, 2005
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カテゴリ: 本
「濱松中納言物語」を典拠とした夢と転生の物語とする「豊饒の海」(Mare Foecunditatis)シリーズの第1巻。

綺麗な文章、旧仮名遣いと旧字(漢字)も物語のもつ雰囲気を高めている。
この頃はそれが当たり前だったのかもしれないけれど…。
最初のほうでは文章に見ほれて内容がおろそかになったりして(行きつ戻りつして読んだので)読むのに時間がかかってしまった。
旧漢字をと今のものを比べるとかなり違いがあり、略すことによって本来の意味を失っているものも多いのだと今更ながらに感じた。

松枝清顕は幕末にはまだ卑しかった武家の家柄を羞じた父侯爵により、幼時は公卿である綾倉の家へ預けられていた。
そのため、優雅さに潜む優柔不断をもって育った清顕は彼に恋をする綾倉伯爵の娘・聡子の気持ちに応えず、彼女のことを時に疎み、時に利用し、翻弄していた。
二人の気持ちがすれ違う中、聡子に皇族(宮家)との縁談が上がり、話は進む。
どうにも事態を動かせなくなったとき、清顕は自分の気持ちに気付き、聡子との先のない恋に身を投じる。


自らに原因がありながらも美しい悲恋と感じさせる物語。
最後まで夢見がちな清顕と覚悟を決め凛とした美しさの宿る聡子、
地位安定を図る松枝侯爵と自らは対処しきれず、すべてを人任せにしながらも優雅さを失わない綾倉伯爵は対照的である。
また、自らの屈折した思いを忠義と名を変えて仕える飯沼や蓼科の存在、
シャムの王子達、清顕との微妙な距離を保ちつつ、友情に応える本多も印象的である。
束縛の中の自由、学ぶことへの態度、時代背景も含めて興味深い。

登場人物たちが語る自らの意志と歴史の流れの関係性や輪廻についての考え、
こんなに考えが違う者たちが居合わせている時代でありながら、未来から振り返ってみれば一緒くたにされるだろう虚しさは三島氏がひしひしと感じていたことなのだろう。
他の著書も読んでみようと思った。





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Last updated  December 8, 2005 02:51:09 PM


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