全2731件 (2731件中 1-50件目)
BUOYANCY OF DEATH死神の千葉が帰ってきた!?今度は長編。ゲームのように人をもてあそぶ本城に娘を殺された作家・山野辺と妻・美樹は自分たちで復讐を遂げるべく、本城を無罪に。復讐するために行動を始めた夫妻の前に千葉が現れて・・・。無情なやるせない展開も、ピントが合わなかったり、人のニュアンスをとらえきれずにずれた対応をする千葉が加わることによって何だか(不謹慎ながら)コミカルというか、不思議な空気感のある作品に。------------------------------------------本城は夫妻をさらに苦しめるため、娘の絵本通りにダムに毒を入れようとしていた。それを阻止すべく夫妻+千葉(はたまに邪魔してるとしか思えぬ行動をしつつ)らは行動。本城も同時期に千葉の同僚が調査に入っていた。死神世界は間違った規則の救済措置中らしく、同僚は還元キャンペーンを適用。本城の寿命は延びるが、その状態は問われてなかったため普通だったら死亡している(水中で身動きできぬ)状態で、寿命の延びた20年間 鰐に喰われ続けるのかも?という状況に。罪と罰・・・というよりブラックユーモアというか。千葉は山野辺夫妻と行動を共にして「可」の判断を下す。本城は死んだと思いながら山野辺は子供を助けて事故死。
May 8, 2014
~栞子さんと繋がりの時~もう第5弾なんだな。今までのシリーズについては→1、2、3、4大輔の告白の返事は・・・今はただ待ってほしいというものだった。----------------------------プロローグ リチャード・ブローティガン「愛のゆくえ」二ヶ月近くも待たされた告白の返事は・・・第一話 「彷書月刊」四月にしては肌寒い日、震災から二か月足らずの頃。五浦大輔は滝野蓮杖から「彷書月刊」を売って、後日買い戻す客の話を聞く。告白から半月以上たつが、栞子は大輔に大事なことを済ませてないから五月の終わりまで待ってほしいと告げる。噂の女性客・宮内が店を訪れ、「彷書月刊」を売り、買い戻す前に売れたことから、夫を探していることを告白。栞子は夫と思われる人物への伝言を言付かる。 断章1 小山清「落穂拾ひ・聖アンデルセン」 宮内の夫は志田だと見抜いた栞子は、宮内の伝言を告げる。 栞子は志田に智恵子と連絡を取りたいと頼むが、連絡が取れなくなってると知らされる。第二話 手塚治虫「ブラック・ジャック」五月半ば過ぎ。蓮杖の妹で栞子の妹・リュウが後輩の本の相談に訪れる。「ブラック・ジャック」4巻をめぐる親子の確執の謎を解く栞子。 断章2 小沼丹「黒いハンカチ」 志田の後、智恵子から連絡があったのはリュウ。 栞子が連絡を取りたがっていることを智恵子は知っており、 会いたければ本の問題を解くよう伝言アリ。第三話 寺山修司「われに五月を」太宰治「晩年」を狙い、栞子を襲った田中が保釈申請したという。一昨年、栞子が盗品を売ったため出入り禁止にした門野澄夫が智恵子の紹介で店を訪れ、自分に譲られるはずの兄の遺品を受け取れるようなんとかしてほしいという。謎を解いた栞子の前に智恵子が現れる。 断章3 木津豊太郎「詩集 普通の鶏」 栞子は智恵子に父とのことを聞き、 父はいつか智恵子がいなくなっても待っていると受け入れて付き合ったことを知る。 大輔のもとに帰る栞子に智恵子は「ここに残るなら気をつけなさい」と助言。エピローグ 「愛のゆくえ」栞子は大輔に好きだと告げる。自分がいつか母のようにどこかへ行き、大輔を置いていくんじゃないかと考えてしまったという栞子に大輔はその時も自分も一緒に行けばいいと告げる。直後、「晩年」をすり替えた栞子の猿芝居を知っているから連絡しろという田中からのメッセージが届く。
April 8, 2014
誰か、名もなき毒 の続編。・・・シリーズ第3弾かな?今多コンツェルン会長室直属のグループ広報室に勤める杉村三郎は取材先からの帰りに編集長園田と共に拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇。警察の突入、犯人死亡で事件はあっけなく解決したのだが・・・。宮部氏の物語が単なる事件に終わるわけはなく。バスジャックの真の動機があきらかになっていく。そして、三郎転機の一冊・・・といえるかも。----------------------------老人は迷惑をかける慰謝料を払うなどと巧みに誘導し、乗客を掌握。だが、老人の対応に強い拒否感を園田が起こし、杉村は驚く。警察の突入そして持っていた拳銃で犯人は死亡、人質は3時間ほどで全員無事に救出。後日、そのバスに乗り合わせた乗客・運転手のもとに、慰謝料が届く。なぜすでに死んでしまった、しかも貧しいはずの老人から大金が届いたのか?それを受け取った元人質たちは警察に届けるべきか否かで迷いが生じ、老人と金の出所について調べることに。バスジャック犯~犯行時は偽名を使う。明らかになった暮木という名も取り替えた戸籍。 本名・羽田光昭。 捜し出すよう要求した3人の人物は、以前ねずみ講に貢献した人物。 大きな事件となった詐欺の裏の人物の片腕だった。 引退後、死にかけたことがきっかけで改心。私財をどんどん寄付したりし、 みんなに償うことも、みんなを罰することもできないが 自分の播いた種を狩る一助になればとバスジャックを実行。早川多恵~光昭の幼なじみ。光昭を止められず、慰謝料送付を請け負う。人質になった人々杉村三郎 ~あおぞら副編集長。養父の理解もあり、事件の真相を調べることが可能に。 慰謝料の件などで会社に迷惑をかけるからと辞表を提出。 辞職、離婚後、三郎を勘当した病の父のいる故郷へ。園田瑛子 ~あおぞら編集長。犯人に強い嫌悪感を示し、その後トラウマで調子を崩す。 調査にも協力せず。昔受けた社員研修で反省室に入れられ、 自殺を図るほどの状態に陥り、休職したことがあった。 暮木が昔トレーナーかそれに類する仕事をしていたと肌で感じ、拒否反応を起こす。 労連の事務局に異動に。前野メイ ~パティシエ志望。調査に協力。坂本啓 ~大学中退した青年。調査に協力。田中雄一郎~金属加工業の社長。迫田とよ子~老女。詐欺商法の被害者。柴野和子 ~バスの女性運転手。菜穂子~三郎の妻。三郎を支えられるようになろうと思ったが行き詰まり、また寂しさから橋本と不倫。 自分のためにたくさん我慢してきた三郎を自由にすると離婚を申し出る。橋本 ~今多コンツェルン広報課員。傘下の会社に出向に。山藤~警部。バスジャックでは交渉役を務める。北見 ~亡き私立探偵・一郎氏の妻と息子・司。足立則生~新聞販売店店員。自分を巻き込んだ詐欺一味を告発したいと生前の北見氏に依頼したことあり。 再会した詐欺グループの一員が殺され、容疑者として追われることに。 死んだ男は、彼女の犯行を隠すために足立を利用した。あおぞら編集部園田・杉村間野~菜穂子の紹介もあって編集部に入った元美容員。家庭の事情で辞職。井手~もともと問題が多かったが、園田休職中にさらなる問題行動を起こす。野本~よく気のまわるバイトの青年。睡蓮のマスター~水田大造。社員研修のトレーナーが詐欺師になっていたりするというのはぞっとする話だ。
April 2, 2014
贖罪の奏鳴曲 続編。少年犯罪の過去を持つ“悪辣・豪腕弁護士”御子柴礼司が退院後すぐに無理を通してでも弁護を担当したのは、夫(津田伸吾)殺しの容疑で懲役十六年の判決を受けた主婦・津田亜季子だった。対する検事は因縁の相手・岬恭平。御子柴は、なぜ主婦の弁護をしたのか・・・?検事の岬はさよならドビュッシーシリーズの岬の父!噂の父が見れてちょっと嬉しかったり。--------------------------------御子柴の行動から、今回の方が「贖罪(の奏鳴曲)」って感じがしたけど、今回そのタイトルにするとネタバレになっちゃうか・・・。いくつかどんでん返しはあるけれど、予想の範囲内かな。長女を本当に襲った人物はよりえげつなく感じたけれど。亜季子は伸吾を殺したのは、伸吾に襲われた長女だと思い、娘をかばって犯行を身代わりに。長女を襲った張本人は、亜季子をかばい、息子・伸吾を悪く言っていた祖父。御子柴が過去に殺した少女の姉が亜季子であることから、御子柴は弁護を担当。亜季子の過去のPTSDによる診察などから、彼女には犯行が不可能であることを証明する。それを証明するためには過去の事件のことを話す必要があり、その過程で裁判に来た亜季子の母が御子柴=園部信一郎だと気付き、声を上げる。亜季子は御子柴を解任。岬は本当の真相(祖父が原因、止めなかった父を長女が殺した)を御子柴から聞く。東京弁護士会会長・谷崎は御子柴=園部を知っており、それでもなお彼を買っていたが、御子柴=園部が周知されてしまっては、もうフォローできないかな・・・。
March 30, 2014
三浦しをんによる元気な下町じじ小説。隅田川を舞台に、正反対と言っていいほど生きかたも考えかたも違うが、ずっとつきあいが続いている川沿いの問屋に商品を卸すつまみ簪職人である源二郎(73)・大学を出て銀行に入って定年となった有田国政(73)の幼なじみ、2年前に源二郎に弟子入りした吉岡徹平(20)、徹平の彼女の美容師・マミなども加わり、楽しいばかりではないけれど、なんだかのどかな!?生活が、しをん節で描かれる。つまみ簪・・・祇園の舞妓や文楽の人形、七五三の時などに挿す簪。-----------------------------一、政と源源二郎はマミに染めててもらった赤髪で告別式に参列。国政苦笑。源二郎は40代に最愛の妻を亡くし、お見合い結婚した国政の妻は数年前に家を出て長女一家と暮らしている。弟子入りする前に悪さをしていた徹平は元仲間にお金を取られたり、襲われたりしていた。話を聞いた源二郎と国政は徹平に元仲間を呼び出させ、大立ち回り後に盛りこみの脅しをきかけて撃退成功。社会科の授業で小学生が源二郎の工房を見学に来たりもする。二、幼なじみ無線源二郎は集中している時とずぼらの時の差が激しい。子供のいない源二郎だったが、今は徹平がかいがいしく世話をやいたりそばにいる。孫娘の七五三のお祝いにも呼ばれない自分と比べてしまって国政は面白くない。源二郎のもとを訪れなくなっていたある台風の夜、ぎっくり腰になった国政は様子を見に来た源二郎に助けられ看病される。国政が用意したお祝いの商品券を誤って水没させてしまった源二郎は代わりにお祝いのつまみ簪を作る。三、象を見た日お目見え通商店街の裏手にある水路に思いをはせたり、国政に孫娘の七五三の写真が届いて喜んだり、マミとの結婚を考える徹平が、親に結婚もつまみ簪のことも認めてもらえず悔しい思いをしたり、独自のアクセサリーを作って上野で売ったり、絡まれて逃げたり、ロマンについて考えてみたりする年の瀬。四、花も嵐も正月、源三郎の家でのんびりおせちをつまみ、カップルと幼なじみそれぞれ初詣へ。参拝を待つ間の話しているなかで妻が出て行った原因が分からずイラついた国政は源二郎に八つ当たり。ひどいことを言ったことを国政が後悔しながら思い起こすのは、源二郎が教師をしている花枝に惚れ、駆け落ちの手伝いをした日のこと、その後の幸せだったであろう暮らしのこと。お互いに謝罪。源二郎は国政にうじうじせずに一度かみさんに会いに行ってみろと助言。国政は自分と妻・清子がお見合いしてから平凡かもしれないが円満な家庭を振り返り、仕事ばかりで家庭を妻に任せきりだったが、不満はないのだろうと思っていた。五、平成無責任男国政は娘一家の家にいる妻に会いに行くが、疎外感にさらされ、妻からは不満を伝えていたが何もしてくれなかったと責められ、戻るつもりはないと告げられる。落ち込む国政を徹平らは励ます。父親に結婚を反対されていた徹平は、一部上場企業に勤めていた父がきちんとした仲人を立てることを条件に挙げられ、銀行に勤めていた国政に頼む。清子に連絡した国政だが、一蹴される。六、Y町の永遠徹平からの仲人の依頼は断りきれず、さらに清子はいまだ説得できない国政は、清子に毎日手紙を送ることに。根負けした清子は出席を承諾。家族の幸せを願いつつも清子は自分とは暮らせないということを痛感しつつ、確認できたことをよしとする。徹平・マミの結婚式は楽しくつつがなく。
March 16, 2014
シリーズ第六弾。ほのぼのは良いのだけど、進展が遅い気がしなくもない・・・。何とか進級できた瞬太だったが、相変わらず学校では寝てばかりの日々。---------------------------------------- 第一話 委員長、絶句する雅人に言われ、行方をくらませた葛城を捜す手掛かりに、葛城から依頼されていた人(月村颯子)捜しを続行することになった祥明。親族に化けギツネの血が入っていると見える竹内先輩の親戚に話を聞きに行くことに。新聞部に新入部員が入るが、高坂の木を引くために嫌がらせを自作自演。だが、高坂の面倒見の良さを俊太への好意だと思い込み、解決?高坂は個人的に部内恋愛禁止を貫いていた。 第二話 勝つと思うな、思えば・・・・・・?祥明の幼馴染・槙原から、柔道教室の教え子が柔道推薦で私立中学への進学を考えているのに、大会直前に体調を崩してしまうというので、必勝祈願を頼まれる。だが、その子が肉好き過ぎて食べ過ぎていたことが明らかに。竹内家で話を聞くが、月村捜しの手掛かりにはならず。 第三話 さかな記念日伯母夫婦に育てられたというクラスメイトの青柳が、正式な養子になると大根になり、演劇をやる身としてはそこが悩みだと相談してくる。実は養子になって再婚した父親がすっきりしてしまうのが面白くなくて迷っていたが、誤解が解け、前向きに検討することに。ようやく三井の想い人が祥明だと気付く瞬太。 第四話 猛暑には怪談が似合うめまい出た店前で倒れた青年を助けるが、彼は竹内先輩の兄・慎之介だった。ハンバーガーショップで二ヶ月以上働きづめなのに大丈夫の一点張りだという彼を助けてほしいと竹内母子に頼まれた祥明。断るが、霊障相談だと押し切られてしまう。慎之介は心を寄せるストアマネージャーにいいように利用されていたのだった。浅田姉弟が祥明らの行動からハンバーガーショップに霊が出ると誤解したのを利用。働きすぎが明るみになり、スタッフは休みを取れるように。進級しても寝てばかりの瞬太は新担任に一年からやり直すことを提案され、夏休みの補習後の追試次第で決めることに。三井の親友・倉橋が瞬太の気持ちを三井が気付かぬよう、他のこと誤解させるような情報を教えていることに気付いた高坂。竹内先輩との仲も三井に誤解された瞬太は思わず「好きなのは三井」と言ってしまう。瞬太の祖母・初江が陰陽屋を訪れ、捜し人の写真を見てみたことがあると・・・というところで続く。
March 9, 2014
夜宵の続編。何でも手に入るという細蟹の市で捕らわれた少女を助けようとする少年、「うろくづ」をさがす男と少女、そして同じものをさがす老人。赤腹衆サザは市を見まわり、マドウジを保護したり、様子を見たり。黒式尉を制作した人形師や、細蟹さまに次いで偉い、市の営業許可を出す獏の夜宵さん登場。市はこれからどうなっていくのだろう?---------------------------- ティア・ドロップ・ティア細蟹の市で見かけた、泣いていた囚われの身の彼女を助けたいと少年は友人に協力を要請。市に潜り込み、助け出した少女は人間ではなく飴でできており、涙が高価な売り物になるティア・ドロップ・ティアだった。泣ける映画ではもう良い涙は出ないと、彼女の持ち主が趣向を変え、彼女に恋した少年を利用。少年のしでかしたことに彼女は笑い涙を流す。持ち主は彼女を盗み、壊したと、石骨地区とはもめたくないから今回だけは見逃そうとしてくれたサザの忠告を無視した少年を連れていく。少年の友人はサザの最後通告を受け入れマスクを取ってマドウジとして保護される。 うろくづ(一)人形師の父と今年も細蟹の市に行くいと。父はいとが大好きなサザの手助けをしている黒式尉の制作者。うろくづをさがす男と目隠しをする少女メトメが親子の振りして細蟹の市を訪れる。独自のルールを持ち、分かりにくいシステムの市に圧倒されながらも、市で芸人として金を稼ぐことにした男は、迦陵頻伽の呼び声高いこえよしが束ねる芸人組合(うべなうべな)に入りカラカラと名乗ることに。よく当たるという巫(カンナギ)通称ガシャ婆にうろくづのことを尋ねるカラカラとメトメ。だが、ガシャ婆はうろくづを捕るいさりおとの仲介を買って出た何者かを口寄せしている最中、発狂死してしまう。 乞う者サザはちゃんと面は付けているが、少々耄けているような老人を保護。雪客衆の助言もあって様子を見ることに。老人はうろくづが見つかる気がするとサザの後をついてくるようになる。サザは倒壊した建物の下敷きになり、虎髭先生の代理・わらくばから治療を受けるが、わらくば(病葉)は以前、夜宵から市の許可書がもらえず、サザから追い出されたことの復讐に来ていたのだった。毒を盛られていたサザを助けたのは耄けたふりをしていた老人。 うろくづ(二)人魚の肉と思われるものを食べて不老不死になったメトメは、少女の姿のままなため庇護者を必要とし、何年も前から新たな庇護者となったのがカラカラだった。旅先でうろくづのことを聞いたメトメが欲したため、カラカラはうろくづを手に入れようとしていた。冬至の日、ガシャ婆を通して仲介を買って出た少年がカラカラの前に現れ、いさりおが捕ったうろくづ入手に成功。だが、目覚めると何も手に持っておらず、市に戻ると一年経っていた(仲介した少年への代価と思われる)。うろくづは水の精である妖刀で、正しい扱いをしないと憑りつかれ、水を求めるようになる。それは、人の持つ水分でもよく・・・死を求めたメトメはうろくづを欲したが、今はカラカラと一緒に居たいと告げる。すでにうろくづに憑りつかれたカラカラはメトメと一緒に入られなくなっていた。 うろくづ(三)水を求め、市の人々をミイラにしていくカラカラ。こえよしをも手にかけてしまったため、こえよしを慕うマヌイが暴走。カラカラとマヌイによって市は阿鼻叫喚の場と化す。カラカラの代わりにサザを求めたメトメは、直視することで相手を魅了する力を持っていた。黒胞衣はメトメを襲い、彼女を助けるためにサザは黒胞衣を燃やす。老人とサザは協力し、また細蟹さまを守る犬らを利用してカラカラを倒し、老人はうろくづを正しい方法で憑りつかれぬよう柄をつけ、鞘に収める。老人・竜胆丸はうろくづのことを話してしまったナヅキノから情報が漏れたと彼のことも探していた。ナヅキノはメトメにうろくづのことを教えたものであり、その正体は何でも知りたい欲求を持つ人形師・膝丸。膝丸は黒式尉に竜胆丸を襲わせ、うろくづを手に入れる。メトメはサザに銃口を向ける。助けたのは本物の生を助けるために存在していた人形であるいと。壊れたいととサザは来年の市での再会を約束。いさりおへの仲介者とこえよしの死体を目立つところに移動させたのはうつろなるもの。あさなゆうなが不吉とする水のにおいのする男であるサザ(カンナ)。今回で市の主要人物だったこえよしや多くの人が死んだ。サザ(カンナ)がいることで細蟹の市は終わりに向かっていくのだろうか?今回細蟹さまは出てこなかったな。サザ(カンナ)の夢の中に腰骨のあたりから下がなくなったまことは出て来たけど。
March 6, 2014
シリーズ第五弾。古道具屋「荻の屋」の閻魔顔の主人・喜蔵のもとに見合い話が持ち込まれた。喜蔵は妹・深雪のためになる縁談になるか思い悩む最中、なぜか妖怪たちに襲われる。危機を救ってくれた鬼の小春の様子もなんだかおかしくて・・・---------------------------------------縁談は深雪ではなく、喜蔵にだった。喜蔵は断るよう相手・初に言うが、初は縁談を進めてしまう。初の先祖には鬼の血が入っており、先祖による子孫を守るための呪が呪いに変わってしまい、妖怪に縁談を迫られていたのだった。初の祖母の血を飲んでしまったことから呪いにかかり、初を陰から守っていた桂男は初の初恋の男である喜蔵と婚礼をあげるよう画策。(喜蔵は幼いときに会った初を男の子だと思っており、気づかず)一度は断る喜蔵だったが、婚礼をあげるふりをすることに。守りから呪いに変わってしまった秋霜だったが、婚礼時に現れた縁結びの神によって浄化される。縁結びの神は初と喜蔵の縁を強引に結ぼうとするが、綾子がいつか自分と結ばれるかもしれないとやめてもらう。綾子の言葉は嘘だとわかっていても、いつかそうなれたらいいと喜蔵は告げる。小春は喜蔵らを守りつつも、天狗と再戦、今回は勝利しつつも次回が最後の戦いとすることに。また、小春に憧れ、猫股の長者に利用されて偽小春となって動くタマを多聞に預けたりもする。多聞は小春にはまだやってもらいたいことがあるから死なれたら困ると猫股の長者の前に出され、力の差を痛感する小春を助けたり、ついでに家に捕らわれていた初の両親を助けたりもする。小春はもうこちらに戻らぬ覚悟のようだったが、深雪の願いもあってか喜蔵にだけ聞こえる声でまたなと言ったようだった。
March 5, 2014
破曉・・・曉~あかつき という意味があるけど、破曉となったら意味は変わるのだろうか?明治20年代、元旗本の嫡男で縁故で煙草製造販売業につくも会社の業績が芳しくないことを感じ取り休職、また、自身の病気療養を理由に妻子を屋敷に残し東京郊外へ移った高遠は親の遺産で食い繋ぎながら気ままな一人暮らしをしていた。転居先で見かけた馴染みの四谷にある斧塚書店の丁稚小僧・為三から近くに版元とは違う、様々な本を扱う古本屋のことを聞いた高遠は早速その本屋を訪れる。街灯台に似た建物の軒に下がった簾には「弔」と書かれた半紙が張られているだけだった。主人が尋ねる「読むのが好きか、本が好きなのか」にはじまり、「本の中身ではなく本を売っている」「本は墓のようなもの」という言葉に刺激を受け、本の在り方を考えつつ一気に読了。明治時代に変化しつつある本の流通体制、新文体など言文一致の文章改革も始まったり、個人が本を所蔵できる時代の本の在り方(の変遷)などについても分かりやすく描写されている。店を訪れる客の話を聞き、それぞれの客にぴったりの一冊を主人が探し当てる構成はミステリにあたるのかな?客として実在の人物や、あの人やかの人につながる人が登場するのも楽しい。実在の人物ははっきり名乗らず登場するが、かなりの確率でわかるところも心躍る。こんなこともあったかもしれない。真相は「誰も知らない」。あの人やかの人につながる人の登場というところで、巷説シリーズと京極堂シリーズを繋ぐ一冊と言ったら言い過ぎだろうか。もちろんこの本単独で楽しめる。この本は最近読んだが、去年後半の入力前の読書メモ、どこいったかな・・・。数冊分しかメモ残ってない。一言一句大事に読んでなかったり、飛ばし読みしたり、というかそもそも所有せず図書館で借りることも多い自分は弔堂のご主人に顔向けできません。----------------------------------高遠彬~35歳。弔堂常連に。龍典 ~(りょうてん)弔堂主人。年齢不詳。元僧侶。 自分の1冊にまだ巡り会えず、読んだ本たちがぴったりの人と出会えるよう、 本を売ることが供養・弔うという意味を込めて弔堂を営む。 本だけでなく、錦絵、瓦版、雑誌、新聞なども扱う。 勝海舟の剣の師と、龍典の禅の師が同門。撓 ~書楼弔堂の小僧。女児と見まごうばかりの美童。年齢不詳。 高遠には憎まれ口を叩くように。----------------------------------ネタバレ内容メモは→コチラ
February 5, 2014
紹介は→コチラ以下、ネタバレ内容メモ。-----------------------------・探書壱 臨終地本問屋の秋山武右衛門の紹介で店を訪れた男は神経をやられ、病を患っており、臨終前に読む本を売ってほしいと弔堂主人に言う。男は昔、別れた女と赤子の幽霊をみた。しかし、近代人として生きようと合理的に考えようとした彼は幽霊は居らず、神経のせいだと思い、生涯を幽霊を否定するために費やし、神経衰弱に。主人は幽霊は居らずとも見えるもの。そんな男の現世が眠っていると一冊の書物を渡す。 男の正体は国芳に入門、残虐な血の絵で名を残しながらも歴史画や洋画も学び、新しい浮世絵をつくろうと研磨した最後の浮世絵師・月岡芳年。 男が帰った後に高遠は、主人が選んだ一冊が外国語で書かれた信心に因って得られる様々な体験についての講義の覚書(ノート)だと知る。男は目を病んでおり、実際には本を読めぬ状態であることを主人は察し、男の生き方のうらがえしの人生が封じ込められていると本の内容を伝え、読めずとも理解でき、男だけの現世が立ち上がるならば、それは読書だと、男に相応しい本だと薦めたのだった。・探書弐 発心高遠は東京郵便電信局庁舎近くで、郵便物を積んだ荷馬車を凝視する青年を見かける。直後、丸善で青年と出会った高遠は、青年が尾崎紅葉の弟子だと知る。青年は自分が文士を志すことを決めた、人生を変えた一冊は紅葉の小説だという。だが、師の作品に心打たれているのに自分の求める世界にはお化けがおり、それは師の意志に反したものを汲み出そうと、愚弄しているのではと苦悩する青年を高遠は弔堂にいざなう。主人は青年が釈迦の母・摩耶夫人信仰していること、出自などを推察。紅葉と青年には信頼関係があり、怪を好むのは師を裏切ることにはならず、また、怪談は文芸の極みだと説く。すでに自分にとっての一冊の本に出会っている青年は主人に観音力と鬼神力と共に困難な道を選ぶ自分に似つかわしくない本を所望。主人は14年前に起きた松木騒動(地租改正にまつわる暴力事件)について書かれた新聞など資料一式を青年の筆で読みたいと売る。青年は後に幻想文学の大家となる泉鏡花(泉鏡太郎)。3か月後、資料を基に人気作家・巌谷小波の肝煎りで新聞に連載開始。・探書参 方便高遠が休職中だった会社が畳まれることになり、静岡に戻るという社長の山倉と演芸場へ。その後、山倉が15年前に会ったことがあるという矢作剣之進に会う。山倉は以前、由良公篤の門弟(孝悌塾)で、由良卿の百物語怪談会で東京警視庁に勤めていた矢作と会っていたのだった。矢作は警察を辞め、15年前の疑問、事件について意見を聞きに行った不思議研究会で師・井上圓了と出会い、哲学館の学生に。圓了は現在妖怪研究会を立ち上げ、妖怪学の講義もしているのだという。次の日、弔堂で高遠は勝海舟が、後日訪れる圓了に哲学館運営するための金を稼ぐ知恵を算段してくれと主人に頼む場に居合わせる。後日、主人は圓了に彼の知見を求める大衆にも理解できるように講演し、書いた本を売ればいいと助言。今に通じる新しい方便に役立つ本として鳥山石燕の「画図百鬼夜行」を妖怪学の象徴に、妖怪迷信はこんなものだと説明するのに、伝統的なお化けを妖怪に見立てればよいと売る。その後圓了は妖怪学を広く世に問い、妖怪博士と渾名されるように。・探書肆 贖罪高遠が鰻屋で出会った男は勝から紹介された弔堂を探していた。その男はジョン万次郎(中濱萬次郎)であり、かつて自分を助けてくれた自らを死人という男(岡田以蔵)を連れていた。本は人を救うこともあるとの勝の助言を受け、萬次郎は以蔵を救いたいと主人を頼る。義の在り方の問答などを通し、処刑されたことになっている以蔵は死人としてではなく、勝の言葉通り名を捨てて生きろということだと主人は諭し、人がどうやって生きているか知るべきだと「重訂解体新書」を薦める。・探書伍 闕如久しぶりに実家に戻るも、だんだん居心地が悪くなり一人住まいに戻る高遠。戻った高遠は、世話になっている百姓夫婦が引き取ったが扱いに困っている猫を預かることに。弔堂で覚悟を戴いたという泉鏡太郎の話を聞き、店に興味を示した巌谷小波が高遠を訪ねて来たので案内することに。生涯の一冊(ドイツの少年少女のためのメルヘン集)をすでに持っているが、傷んでしまったため保存用が欲しいと言う小波は、その若さで後ろを向いていると自身のことを考えているのでは?と主人は指摘。小波の書く少年向け小説は、新たな、児童文学のひとつの形式になるのではないか、後退・終着点の一冊ではなく、出発点だと小波を肯定。件の本と共に「御伽草子」も付録として付ける。後日、小波は児童向け雑誌の主筆に。その後もその分野において活躍。小波は高遠に働く気はないかと誘う。・探書陸 未完実家に戻る決心も、働く決心もつかぬ高遠は、弔堂の買い取り依頼のあった神社が猫の貰い手でもあることから、手伝いがてら同行することに。依頼主は中野村にある武蔵清明社宮司の中禅寺輔。陰陽師を、父のする占いやお祓いを迷信だと後を継がず小学校教師になった輔だったが、父が倒れ、迷信は通用させてはならないが信仰は大切、氏子のためにもと陰陽師ではなくきちんとした神職として学び、17代宮司に。輔はこの世ならぬものはない。神霊妖物はこの世のものに非ず=ない、という考え。洲斎はそれを知る者のみが、それを操る(使役する)ことが出来るとした。主人・龍典は輔の父の蔵書・先祖代々伝わっているもの、知人から譲り受けたものなどを譲り受けるも社の由来書、安倍清明の書物、秘伝書、巻物はまだ「生きている」、洲斎の「ない」と知らねば「ある」ことが示せないというのは言葉そのものでもあると洲斎は今に通じる作法、新しい由来、伝統を信仰を作ろうとしていたのでは、輔に必要だと残す。輔は社を継ぐきっかけは父の言葉の真意を知りたかったからでもあると、父の書きかけ(未完)の由来書は死んでないことを理解。高遠は輔の未完の本の完成を予感。あらゆる決心がつかぬ高遠に、龍典は高遠は手に入れた幸せを手放したくないという思いが強いのではと推察し、生きているということはずっと未完ということだと英語の未完の本を薦める。高遠はその本を購入。その日を最後に弔堂には足を向けず、空き家を引き払うも家にも帰らず。個人の蔵書の中には、大坂の版元を中心にして読本人情本を開板した菅丘李山のものも。菅丘李山は、百助だったっけ?輔の父・洲斎が若い頃に知遇を得ていたとか。輔の一人息子は20年後に父と袂を分かち、耶蘇教の神父に。・・・輔は京極堂の祖父?としたら父は神父??高遠のその後も気になる。が、誰も知らないで結んであるあたり、ここで完結かな。高遠が明石先生になったり・・・はしないか。明石先生は知識人・・・撓だったり???
February 5, 2014
瀬戸内海の小さな島、冴島に住む池上朱里、榧野衣花、青柳源樹、矢野新の同級生4人は、島に高校がないためフェリーで本土に通う。母と祖母の女三代で暮らす、人の好い朱里。美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。熱心な演劇部員として活動したいのに、フェリーの時間から思うように練習に出られない新。17歳の彼らの故郷を巣立つ直前の物語。「幻の脚本」の謎、未婚の母の決意、Iターン青年の後悔、島を背負う大人たちの覚悟、そして、それぞれの恋は・・・?直木賞受賞、第一作は、”地方・故郷”小説。田舎を出る人、出ない人、島に対するスタンスも違ったり、それでも折り合いをつけて暮らす人、出ていく人・・・。久々に辻村氏の描く”地方・故郷”小説を読んだ気がする。でも、歴代のどこか閉塞感や劣等感があるダークな感じよりも、優しく、どこかほっこりさせてくれたり、明るさのほうが残った。もちろん、綺麗ごとばかりでなく、イライラさせられるところ(人)、島、田舎の人間関係ならではのやり過ごし方にはっとさせられたり、いいことばかりではないけど、読後感は良く、軽やか。なにより、懐かしのあの人が登場するのが嬉しかった!綺麗な終わり方だけど、その後の彼らの様子ものぞいてみたくもあり。--------------------------------------1島にやってきた自称作家・霧崎ハイジは、有名作家が書いた「幻の脚本」を探しに来たらしい。島に溶け込めず、人の心を荒らすばかりの霧崎を早々に追い出そうと、新の書いた脚本を「幻の脚本」だと偽り、彼に渡す。直後、霧崎は姿を消し、後に彼の名で、タイトルを変えた(多少手を加えた?)ものがシナリオコンクールで賞を取っていた。新は無邪気に喜ぶ。遣り手の大矢村長はIターンの受け入れなどに積極的。朱里の母・明実は、職が限られた数しかない島の中で、5年前に大矢村長が作ることを勧めた食品加工会社「さえじま」の社長だ(くじ引きで決めた)。Iターンの人の力や、国土交通省(離島振興支援課)の紹介で知り合ったという村長が連れてきた「地域活性デザイナー」谷川ヨシノの協力もあって会社は軌道に乗ってきている。役場の臨時職員をしていた蕗子も明実のスカウトで「さえじま」で働くことに。村には「兄弟」制度があり、助け合う仕組みがある。Iターンが島に溶け込む段階、素材のおすそ分けをもらう→手の入ったものが届くように誰かの家の庭が井戸端会議の場所みたいになる。2島の案内が届き、Iターンで冴島に暮らすことになったのんびりした本木は、島になじんでいる。シングルマザーの蕗子・未菜親子とフェリー内で話す椎名は、ヨシノの依頼でオリジナルの母子手帳を作ることになり、冴島のオリジナル母子手帳を視察しに来たという。だが、椎名は島を出て行った源樹の母・樹理の恋人で仕事のパートナーだった。冴島の母子手帳をデザインしたのは樹理。源樹は両親が離婚した5歳の時に島に残ることにしたのは、自分と兄弟になろうと言ってくれた朱里の存在のせいで、父を取ったわけじゃないと伝える。住民の間に入り、地域の課題を解決する手伝いをする、人と人を繋ぐのが仕事だというヨシノは島中の人と話し、島に溶け込んでいる。オリンピックメダリストで、地元の期待、栄誉を喜ぶ故郷に疲れ、既婚者だったコーチの子供を身ごもり、逃げなければとIターンで島に来た蕗子。彼女の両親が初めて島に来た。溝があるようだったが、未菜を可愛がる両親に蕗子の心も動く。故郷ほど、その土地の人間を大切にしない場所はない。・・・それまでの小説でも、有名になった人に対する故郷の対応は描かれていたが、直木賞受賞後に痛感したことも蕗子の描写に盛り込まれていたのではないだろうか。3テレビでヨシノが密着取材を受けることになり、「さえじま」も取り上げられることに。だが、村の行政、村長自身が取り上げてもらえないことに大矢村長が反発。それが発端で村に対立構造が。「さえじま」社長の朱里の母も矢面に立たされてしまう。また、村に病院がないのは村長の後援会にも入っている元医者の家の子供が医者になるまで待っているという裏の事情も判明。何も知らなかった朱里はショックを受ける。村活性化のために活躍する大矢村長のダークな面が明らかに。明実は会社を作ったのは居場所を作りたかったからだと、島を離れて亡くなった友人の死を悔やんでいることを話し、取材の話を断ることに。ヨシノは手伝いたい自治体もあり、冴島との契約が3月に満了したら、次は更新しないことを伝える。濃霧でフェリーが出ない日、未菜が血を吐いたと慌てる朱里はヨシノの言葉を受け、本木に知らせる。実は本木は医師免許を持っており、未菜は苺の食べすぎだったと診断。適切に処置する。本木は知らないが、島に医者を呼ぼうと画策していた新の母がヨシノらに相談、医師になる自信をなくし、どこか田舎で暮らそうとしている彼のことを聞き、彼に冴島のパンフレットを送っていたのだった。新の母は反村長派というか、大矢村長に期待してもできないことだけは自分たちで動こうとしていた。ヨシノは専属として福島に2年間住み、復興支援することに。村長はヨシノの契約終了を惜しみつつ、協力を約束。ヨシノは仕事としてではなく、友人として蕗子に自分に小4になる娘・奏がいることを伝える。彼女の仕事のよりどころを朱里らも知る。4網元の娘・衣花は、他の3人とは違い、高校卒業後は島に残る。亡くなった祖母の友人の遺品を、もう一人の同級生に届けられないかと村長に伝えられた祖母は怒った後に落ち込んでいるようで、朱里は心配する。祖母の友人は島が噴火した時に、島を出ざるを得ず、それを裏切られたように感じ、音信不通になってしまっていたのだった。修学旅行を利用して、その友人・千船碧子を探すことにした4人は抜け出すことにした舞台鑑賞の劇場で上演中の舞台の脚本を書いたと言う赤羽環と出会う。ヨシノの知り合いという環の協力を得て、友人探し続行。後に、碧子は亡くなっていたが、島で何人でも対応できるようになっている学校で続く劇の脚本こそが幻の脚本で、祖母と碧子が作家のウエノキクオ先生に頼んで書いてもらったこと、島から離れたのちに先生になった碧子の赴任先の学校でも上演されていたことが分かる。脚本を今でも、20人以上でも対応できるよう書き換えてほしいと環に依頼するも、環は新の才能を認め、新が書くよう提案。新は環の卒業した大学(文学部)、源樹はデザイン工学、朱里は看護学部を目指すことを告白。網元の存在、島に残ることは異存ないが、朱里と離れる寂しさに泣き出す衣花。男子のみで前例はないが、「兄弟」になりたかったという衣花の願いを叶えることに。また、島に戻ってくるつもりだという新は、衣花に待っててほしいと告げる。衣花はここで生きていく、とそっと胸に誓う。両想いなのは感じ取れるが、源樹と朱里のことがはっきり書かれてなかったのがちょっと残念。数年後、フェリー乗り場に迎えに出た衣花は村長に。そして「兄弟」の朱里が島に帰ってくる・・・。あたたかくも切なく、胸がいっぱいになる。
September 25, 2013
それでも、警官は微笑う、そして、警官は奔るに続くシリーズ第3弾。横浜みなとみらいに新規オープンしたホテル、ハーヴェイ・インターナショナル横浜が正体不明の多国籍グループに占拠された。周辺の携帯基地局も爆破され、連絡手段を断たれる中、見合いのため、偶然現場に居合わせた警視庁蒲田署の刑事・武本は異変を察知し、孤独な戦いを開始する。----------------------------怯えるホテルマン西島を守りつつ館内を逃げ回りながらも子供のヒットマンなどと死闘を繰り広げる武本。かつての上司で神奈川県警に所属する潮崎警視は、県警内で浮きながらも日々邁進中。ホテル内に武本がいることに気付いた潮崎は、捜査に参加し、武本の力になろうとする。また、武本という存在を通して部下の理解も得ることができる。。犯人グループは殺人を楽しむもの、信念のあるものなど人種、思想などバラバラ。だが、誰もがある者に救われ、一つの目的のために動いていた。ホテルスタッフとしてもぐりこんでいた文田は、どさくさに紛れて目的を遂げ、逃走。他は仲間割れや自滅によりほとんど死亡。潮崎と武本の絆は微笑ましいが、犯人グループがずるずる過ぎて微妙な気持ちに。あっさり仲間割れで殺し合いになったり、足手まといになったら殺されたりして武本との死闘はなんだったのか?と思ってしまう。ナチスに奪われた美術品を回収するという目的も、アクシデントからホテル占拠になってしまって、かすんでしまうし。文田は計画を一気に危険にさらした武本を敵でなければ力量を認めつつもマークしていたので、また出てくるかも・・・?武本のお見合い相手のはるかは(今の自分ではだめだと)断ったが、流されてではなく、自分で望んで何かを成し遂げた後に再び現れたら、いい感じになりそう。
August 30, 2013
意識不明のままの霧子が小梅村に戻る。磐音の願掛け、道場の活気、利次郎の存在なども力となり、ようやく目覚める。武左衛門の息子・修太郎は武士には向かず、その気力もなかったが、磐音に連れられて歩いた中で研ぎ名人鵜飼百助の仕事に感銘を受け、弟子に。研ぎに出されていた短刀には家康の名があり、佐々木家の隠された使命を示していた。夫に先立たれ、困難に立たされているであろう奈緒のことを聞き、文と金子を送る磐音。辰平と恋仲の博多の大商人の娘・お杏が、親の仕事について江戸に出てくることに。田沼に恩があり、磐音も唯一無二の対決者と認めた土子順桂吉成が一時江戸を離れることを告げる。田沼に家系図を奪われた佐野がまたもや余計な動きをして、弥助の手を煩わせる。なんだかんだありながらもつつがなく新年を迎え、新たな動きもありそうな感じ。
August 29, 2013
優しい人に囲まれながらも波乱万丈、才能を狙われ、悲しみを乗り越え、一歩一歩進む先に待つのは・・・めいいっぱいの幸せであってほしい。余談だけれど、”めいいっぱい”と書いて、あれ?正しくはなんだっけ?と思い調べたら「目一杯」(めいっぱい~限度まで達していることの意)だった。でも、発音では”めいいっぱい”と聞こえることもある、との注釈も。----------------------------・残月~かのひとの面影膳又次の死、辛く悲しい時をそれぞれかみしめるつる家の面々。江戸では疾風との異名を持つ疫痢が流行り、多くの子供が亡くなっていた。又次に助けられた摂津屋がつる家を訪れ、澪とあさひ太夫の関係、又次が今際の際に遺した言葉の真意を問うが、澪は答えることができず。又次の初盆にあたり膳を用意することになった澪は、乾物を使って精進料理を仕上げることに。ふきは澪の下働きに入ることが多くなり、下足番は老婆りうに。早帆に会い、里津の死と小野寺は妻となった娘と夫婦として幸せになる道を模索しているようだと伝えられ、想いびとだった人の幸せを心から祈れるものでありたいと思う澪。多くの人が誰かを亡くしている、澪はつる家の盂蘭盆会の三日精進に、又次に用意する膳と同じものを出すことに。そこには江戸っ子にはなじみのない氷豆腐(高野豆腐)を工夫したものも。噛むほどに味が出て昔のことを思い出すようなその料理は、面影膳と呼ばれるように。・彼岸まで~慰め海苔巻一から干瓢を作る澪。太一は絵の才があるようで、清右衛門の挿絵を担当する辰まさに本をもらう。元は扇屋の新造で藤代屋の女房となったしのぶが夫婦でつる家に。澪が拵えた剥き物を見て、佐兵衛と思われる男の話題が。内藤新宿の宿場女郎だったお薗に救われた佐兵衛は捨吉と名乗り、お薗と夫婦になり、釣り忍売りに加えて植木職の手伝いをして暮らしていた。しのぶに話を聞いた佐兵衛は今の暮らしを変えるつもりはないと芳へ別離の手紙を残し姿を消す。が、出水騒ぎの中、一柳の旦那の手助けもあり、話し合うことに。芳は料理の道に戻るつもりはないという佐兵衛の言葉にショックを受けるが、天満一兆庵再建を諦めることに。佐兵衛は澪に登龍楼と関わるなと告げる。・みくじは吉~麗し鼈甲珠伊佐三・おりょう夫婦は澪たちの長屋を出て、半身に不自由が残る親方のところへ引っ越すことに。登龍楼・采女は焼失した吉原の店の新しい板前にと言われた澪は一蹴するも、それを逆手にとられて采女が四千両出してもいいという一品を作れるか賭けをもちかけられる。清右衛門の助言もあり賭けを受けた澪は、卵を使った一品で采女をうならす。だが、認めぬ采女。それを断りの口実とした澪だったが、登龍楼との因縁は続く。源斉のとりなしで扇屋の寮へ出向き、あさひ太夫とつる家の料理人として野江と会い、又次の最期を伝える。源斉が又次の代わりにつる家の弁当を届けてくれることに。・寒中の麦~心ゆるす葛湯清右衛門が種市に澪と野江の関係などを話す。事情を知った種市は、吉原が再建されて仮宅から野江らが吉原に戻るのを目安に澪につる家を出るよう伝える。よし房の依頼で祝いの仕出しを拵えた澪。一柳の柳吾に家業を継がずに飛び出した息子・坂村堂が過去を詫る。だが、坂村堂が自分の娘に婿を迎えて一柳の跡継ぎにと言い出したことから激昂。その反動で倒れてしまう。芳が献身看病に駆り出され、料理屋の女将だった見識も役立て、一柳の店のものからも一目置かれる存在に。同じように息子が後を継がなかったり、勝手を言い出したという境遇に置かれた柳吾と芳は心を通わす。・特別収録 秋麗の客つる家を訪れた男は流山の白味醂を使った料理ばかりを食した。商いで諸国を回り、少々疲れていたが、澪の料理やりうの反応に力をもらった男は、白味醂の生みの親の相模屋紋次郎だった。いずれ天下を取ったなら恩返しをしたいと澪への言付けを残す。
August 20, 2013
花鳥風月シリーズ・ノーブルチルドレンシリーズ番外編、と言ったところか?初の単行本。だが、通常仕様でありますな。新時代の恋愛ミステリーという触れ込みなのだけれど、これってミステリー・・・なの?晴れて第一志望の教育学部に入学した榛名なずなだったが、離婚した母に頼らず、バイトを禁止した父からの仕送りだけで暮らす大学生活は苦労の連続。それでも絶対に譲れない教師になるという夢のため、弱音を吐くことは出来ない。そんな日々の中、彼女はとある窮地を一人の男子学生に救われる。その後もなんだかんだと言いつつ助けてくれる、寡黙で同い年かと思う童顔だが意外と年上で、突き放すような優しさを持った同級生・羽宮透弥に急速に心惹かれるなずな。だが、彼は一向に受け入れてくれず・・・。という前半と、後半・羽宮透弥サイドの視点で描かれ明かされるのは・・・。めげずにアプローチする女の子とぶっきらぼうな男の子というのがデフォルト(標準仕様)だな~。綾崎作品を読んでいれば、どんでん返し?はどんでん返しではなく、結末というか人間関係のミスリードは簡単に想像つくが、ちょっとしんみりほっこりできる話。-------------------------------------後半就職してから3か月ほどたったころに出会い、予期せぬ告白を受けて交際を始めた透弥と榛名。透弥は教師になりたい夢を諦め就職。榛名は教師になっていた。だが、2年後、榛名は別れの手紙を残して姿を消す。捜し出して知ったのは、彼女は移植手術が間に合わなければ余命わずかだということ。それでも彼女と生きたいと寄り添った透弥。榛名のドナーが見つかった時の手術担当医として麗羅と緑葉が登場。榛名は透弥にも遺産を残し、夢である教師を目指してほしいと告げる。彼女、榛名なつめは命をかけて、あなたのものになると約束し、永遠の眠りにつく。透弥が彼女の遺志を継ぎ、自分の夢も叶えるために教育学部に入学を決意したころ、なつめの両親の離婚によって離れてしまった妹・なずなも姉を慕い、教師を目指していた・・・。なつめの母親からなずなのことを聞いた透弥は、もしも同級生になった時は見守ることを約束。なずなの告白によってなつめを思い出し、涙を流す透弥。なずなもなつめと同じく透弥の幸せを願う。なずなが透弥の見守りの理由を知った時、どう思うか、描かれぬからこその余韻なのだろうけど、無粋と言われても気になってしまうなぁ。
August 18, 2013
毎回装丁ががらりと変わる。一作ごと話の内容に合わせてなのだろうが、並べるとまとまりのない感じがしないでもない。だが、タイトル「泣き童子」には合ってるか。題字を京極夏彦氏が担当しており、京極氏は相変わらず八面六臂の活躍だなと思ったり・・・。(大極宮繋がりだろうが、本当に器用な人だ)おそろし~三島屋変調百物語事始、あんじゅう 三島屋変調百物語事続に続く第3弾。-----------------------------・魂取の池おちかが三島屋に来て一年。今回の語り手は地主の用人を父(三島屋主人の囲碁仲間)に持つお文。想い合う相手の縁組を前に浮かれるお文に母が語った祖母の話。祖母の生まれた土地には人気を嫌う神さまが祀られた塚と池があった。〈鏡池〉は別名〈魂取の池〉と呼ばれ、悋気持ちの猪の神様(亥の神)は恋仲の男女が共に池の面に姿を映すと、その二人は必ず別れることになるという。勝ち気で悋気持ちの祖母は、相手の気持ちを試したくて戒めを破り、その相手と別れる羽目に。その後、旦那となった男に堪えきれず、再び鏡池に行くが、今度はお金と添うのだと言われた助言を受けてか、火事になって金を失ってしまう。その一件の後は夫婦共に出稼ぎに出て、ずっと一緒に居たという。自分に繋がった縁を大事にしなさいと祖母に言われた母は、好いた人の気持ちを試すようなことはしてはいけない、とも話したのだという。お文は好いた相手を試したりしない自戒を込めておちかに話すことにしたのだった。・くりから御殿灯庵老人からの紹介で来た語り手は、大病が治ったばかりの白粉問屋大阪屋の主・長治郎。妻のお陸は夫の体調を心配し、夫には知らせず影で控えることに(話の内容は知っている)。長治郎は幼い頃に山津波で家族や友人らを失っていた。その時に一時身を寄せた屋敷にいるときに、たびたび違う屋敷で友人らとかくれんぼをし、見つけた相手の遺体が直後に見つかるという体験をしていた。一人生き残ってしまい、みんなに仲間外れにされていまだにあの世に行けないと嘆く長治郎に、お陸はみんなは長治郎のことを案じて自分に返してくれたのだから後ろめたいとか恨まれてるなどと思ってはいけないと伝える。隠居した夫婦は、長治郎の田舎に帰り、友人の墓を守って暮らすことに。*くりから御殿とは、幼い長治郎がからくりと言い間違えたところから。・泣き童子霜月、三島屋で年に一度のねずみ鳴き興行が終わると、おちかに何としても話を聞いてほしいという老人が現れ、店先で倒れてしまう。瓦版で百物語のことを知ったという老人は家守(=大家=差配)をしており、妻に先立たれて男手ひとつで娘を育てていた。我儘に育った娘は父のすすめる縁談話をつっぱね、だが、想い人を紹介もしなかった。ある日、店子が引き取った赤子は3つになってもまるで口を利かぬが、突然泣き出すと泣き止まなかった。童子は悪事をたくらむ人間を見抜いて泣いていた。その後、童子を引き取るが、男に捨てられた娘が殺人を犯したのを童子が見抜き、泣き続けたため、娘は童子を殺してしまう。それを秘したまま娘を嫁がせるが、娘の産んだ男の子が3つになったとき、童子と同じ反応を見せ、危惧していた娘は自殺。孫(童子)を連れ出した語り手は、童子が「おれがこわいか」というのを聞き、殺してしまった。そして死ぬに死ねず、ここへきて全てを語り終え、番屋へ伝えるよう言い、再び倒れる。・小雪舞う日の怪談語り冬奉公に来たおこちは今年は娘のおえい(11)を連れてきた。前回の語りからいささか気が塞いでいたおちかは、紅半纏の半吉という岡っ引きに誘われ札差の井筒屋が肝煎役になり、心の煤払いとして年に一度、師走に行われる怪談語りの会に誘われる。そこには深考塾の青野も一緒に誘われていた。おちかはお勝も連れて行くことに。 第一の語り~大工の棟梁が悪夢を見、普請のやり直しを告げるも父が強行させた新屋は 人が迷子になり、家に喰われて父は亡くなり、 その後の火事ですべてを失った。が、母の再縁後は平穏な暮らしに。 第二の語り~橋の上で転んでも一人で起き上がらねばならぬと言われのある橋で転んでしまい、 何者かの助けを借りてしまった妊婦はこの世ではない場所に 連れて行かれるが、自分の寿命を10年差し出すことで戻ってくる。 子も無事出産し、語り手の乳母になったという。 第三の語り~盲いた右目で人の病を見抜いた母だったが、人の運命、心の向きは見れず。 語り手も右目を失ってから、人の病を見抜くと言い、 お勝の痘痕を笑った娘に疱瘡にかかると告げ、母娘は怒って帰る。 語り手に人の病を見る力はなく、井筒屋と計りお灸をすえたようだ。 第四の語り~は帰った娘の母親。 第五の語り~半吉の話。当時の親分に言われて看取った男は、毎夜現れる影法師が触るところが 黒くなり、真っ黒になって死んだ。最後の影法師は男の娘で、 影は見届けてもらったことで供養になると半吉に言ったのだった。怪談の会の行き帰りの駕籠の中、橋のたもとでおえいを頼むと声をかけてきたのはおえいの田舎で拝まれている岩地蔵だった。・まぐる笛灯庵老人の紹介で来た江戸勤番のお武家様が幼い頃、国にあらわれたのは”まぐる”。人を、女子どもを好んで喰う化物。それを退治できるのはまぐる笛を操れる女だけ。当時、それは若侍の母だった。指笛を操り、まぐるに自身を喰わせるだけが退治法。母の死に際し、誰にも語れぬ話を若侍はおちかに語り、ならなくてよかったと思ったが、まぐる笛使いにはなれない妹の身を、遠い国許を案じるのだった。・節気顔半年前に夫を亡くしたというお末の話。お末が幼い頃、放蕩者だった伯父が正気に戻り、次男だった父のもとに身を寄せた。節気になると別人の顔になる伯父は、それは死人の顔で、その顔に会いたい人がいるかもしれないと探しに出かけた。伯父は商人らしき男と取引し、顔を貸すことと引き換えに消えない三両を前金として受け取っていた。取引成立と同時に病の症状は治まっていたが、顔を貸すごとに影が薄くなり、後払いの手間賃として心残りの人のところへ自分の顔をやり、心置きなくなったところで亡くなる。伯父が幸せな最期を迎えたと思えなかったが、自分が夫を亡くした時に伯父は良いことをしていたと思い、怪しい商人も邪なものではなかったのかもと考えるように。その商人とは、おちかが出会ったあの男のことだった。悪人だとばかり思っていたが、お末の想いを聞き、複雑な思いを抱く。お勝はおちかに商人にまた会ったら直接問い詰めればいいと助言する。
August 15, 2013
ロクヨン昭和64年に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件は未解決のまま、時効間近だった。刑事二課などで実績を上げ、不本意ながらも広報官になるが、警察と報道の板挟みになりながらも改善の道を模索していた三上だったが、娘の家出(失踪)を機に態度を変えざるを得なかった。再び硬化する記者との関係、最悪の事態を迎えんとする中、翔子ちゃんの家や事件現場を長官が訪れるという。当時、捜査に加わった三上は、翔子ちゃんの父・雨宮に長官訪問の許可を取りに行くが、彼の態度も硬化していた。そんな時、誘拐事件が起きる。事件を絡めつつ、刑事課と記者の間で板挟みになり、どちらからも裏切りもの扱いされたり、責められる広報官という仕事。ロクヨンと呼ばれる事件を調べ直している人事課エース・二渡の思惑は・・・?事件性よりも、警察内部の関係性に重きが置かれた小説、かな。エース二渡、久々に見た気がする・・・。-----------------------------次回の人事は地元生え抜きではなく、本部から配属されるかも知れぬと長官訪問を妨害しようとする派、暗躍あり。二渡に後れを取りながらも三上はロクヨン事件で隠蔽された事実(録音に失敗、犯人の声を取り逃していたこと、それが代々上層部に申し送りされていたこと)を知る。かつての上司、仲間にも協力してくれるものがでてくる。自分の娘を探すには全国の仲間(警察官)の協力が必要だと、信念を曲げて警察寄りの対応をせざるを得なくなった三上だったが、もう一度記者を信じ、また、いつか刑事課に戻るという意識ではなく、広報官として生きようと改めて行動する。新たに起きた誘拐事件の犯人は雨宮と当時隠蔽した事実を公にしようとして警察を辞めざるを得なかった幸田。実際は誘拐してはいなかったが、誘拐されたとされた娘の父親・目崎がロクヨンの犯人。雨宮は長年、電話帳で順々に無言電話をかけ、犯人の声を探していた。三上のかつての上司・松岡は、雨宮の計画を知りつつも泳がせていた。最終的に被害者の父とされる目崎がロクヨン事件の犯人として逮捕されることを踏まえて匿名捜査になっていたことも判明。父親にの顔を受け入れられず、精神を病んで家を出た三上の娘。病的に娘の連絡を待つ妻は、どこかで自分を受け入れられるところで生きていてくれればいいと考えるようになり、三上もそれを受け入れる。
August 14, 2013
東京バンドワゴンシリーズ第7弾。齢80になっても勘一は元気でほっとする。適当に見えて、いつでも我南人がいち早く真相にたどり着き、暗躍(!?)しているのもいつものこと。バンドワゴンシリーズ→1、2、3、4、5、6、…8----------------------------冬~雪やこんこあなたに逢えた・亜美の弟・修平と女優・折原美世(本名・三迫佳奈)結婚。・棚の一角に入っていた本をごっそり買っていった客は、高校時代に藍子にふられた三石。 病院の行き帰りに店をのぞいたが藍子のことを聞くのも気恥ずかしく、 また、長い入院生活に何か本を読むのもいいかとごっそり買っていった。 買った本棚の場所が高校時代の席順。・本を一冊ずつ売りに来る男は、勘一に足しげく会いに来ていたように見える池沢百合枝の 先輩格の女優・奈良勢津子の息子・前田茂治。 堀田家の〈呪いの目録〉の原稿を60年前に当時奈良の劇団のパトロンとなってくれた 草平(勘一の父)から預かっており、当時の話を持ち込んでも大丈夫な家か様子見していた。・勘一は我南人に家族の百合枝に対して他人行儀だと諭される。・我南人のミュージシャン仲間で故・淑子(勘一の妹)の隣人・龍哉の同居人の酒井光平と千田くるみが家に来る。最近、研人が龍哉のスタジオによく行くらしい。春~鳶がくるりと鷹産んだ・花陽高校合格。研人は中2に。我南人のことを馬鹿にされた研人は部活の先輩を殴って家出。 だが、その先輩の前で殴ったことは謝るが、義父のことを詰るのは許せないと亜美が 見事なドラムさばきを披露。亜美は高校時代にガールズバンドで鳴らし、 我南人の大ファンだったという経緯からも格の違いを見せつける。・M大学の通称〈山端文庫〉の書誌学の教授が勘一に恨みを持っているらしいと木島が忠告に来る。・カフェライブもするミュージシャンの中川が、認知した娘が大きくなり会いに来るが、 会社の社長をやっていると嘘をついてしまったため会えないと協力を仰いでくる。 嘘につきあう一同だが、中川は娘に真実を告白。夏~思い出は風に吹かれて・花陽と研人とマードックはイギリスへ。・数年音信不通だったすずみの友達・長尾美登里が訪れるも、蔵の本を盗む。 男で作った借金返済のために働く美登里がせっぱつまっての行動だった。 すずみは美登里に金を渡し、美登里は借用書を書く。・〈山端文庫〉の醍醐教授は以前、宝蔵のような堀田家の蔵に盗みに入って撃退されたことから勘一を恨んでいた。 だが、〈山端文庫〉にはサチの父親・五条辻の蔵書があるらしかった。 我南人は東京古書組合会長の大沼岩男に仲介を頼み、ライブ開催と引き換えに 五条辻家の蔵書から一冊だけ本を欲しいと交渉。・青は百合枝に、自分の母は堀田秋実ただ一人だが、娘・鈴花に百合枝をおばあちゃんと呼ばせていいかと確認。百合枝は快諾。・真奈美出産。名付け親となった勘一は、真幸と命名。秋~レディ・マドンナ・秋実と同じ施設で育ち、今では園長となっている智子が閉園の報告に来る。・愛人だった亡き母との思い出深い家に住み、母との関係から前にすすめない龍哉とくるみのことで光平が相談に来る。・淑子の遺言から、葉山の別荘は勘一が受け継ぐことに(名義は最初から勘一になっていた)。 龍哉の家と淑子の別荘を交換、龍哉の家は売却し、 智子の施設の改装費用と運営費用にしたいと提案。 提案を受けた龍哉とくるみは結婚。・研人と同じくかんなにもサチの姿が見えるようだ。
August 13, 2013
バンドワゴンシリーズ第6弾第5弾の次に第8弾を先に読んでしまって、慌てて第6,7弾を読む次第。バンドワゴンシリーズ→1、2、3、4、5、…8----------------------------春~林檎可愛やすっぱいか・我南人がワールドツアーへ。・三鷹、永坂とコウ、真奈美の合同挙式あり。・研人中学生に。花陽は中3、受験生、医者を目指すようだ。・絵本童話作家で我南人と高校が一緒だったという故・おかはし玲の生家が記念館になることになり、作品を集めることになったバンドワゴン。・我南人の曲でデビューした安藤風一郎が藤島のパーティで勘一に絡み一蹴され、その後、詫びに訪れる。・研人の中学の図書室の先生・森下は青の中学時代の先輩(初恋の人)だった。・店頭に置かれる林檎の謎は、研人が中学校に入って別れ別れになって淋しかった奈美子(小4)のしたこと。(芽莉依も研人が好き。研人の友人・光輝は芽莉依が好き。)夏~歌は世につれどうにかなるさ・風一郎の新曲には、我南人が新しい曲だと言って花陽のために着メロにしてくれたフレーズがあった。 葉山に住む淑子のご近所さんで我南人のミュージシャン仲間の龍哉も間に入り話すことに。 アル中の風一郎はヒット曲を出して妻とやり直したいと盗作してしまった。 が、作曲したのは研人だった。・花陽らの学費のことも考え、映画出演を受ける青と店を撮影に使わせることにした勘一。 だが、スタッフが草平の書いた家訓に手を入れてしまったことに激怒。 撮影現場は変更に。秋~振り向けば男心に秋の空・撮影場所のキャンセル→契約不履行で青のギャラもなくなり、マイナスをこうむった堀田家を救ったのは研人。 風一郎が作曲の名義を研人と一緒にしてくれたため、作曲印税が入ったのだった。。・我南人の幼馴染で建設会社を継いだ新ちゃんや記者・木島が店の周りをうろつく怪しい男がいるという。 その正体は介山マリアの妹の幸子の孫・義成で、生家を手放さぬため蔵書を売ろうと 曾祖父(陣一郎)の遺言に従いバンドワゴンにと思ったが、 どんなところかと様子を窺っていた。 本はくりぬかれ、酒の隠し場所になっていて売り物にならず。 だが、酒の入ったガラス瓶の一部がアンティークの香水瓶になっていて金策のめどが立つ。 冬~オブ・ラ・ディ オブ・ラ・ダ・藤島の後を追う2つの影。一人は藤島の亡き姉・麻里の親友だった、今は小説家の中澤めぐみ。 もう一人は麻里と心中未遂して生き残り、刑務所に入った元担任の高木だった。 勘一は高木には藤島ハウスの管理人になるよう、めぐみには麻里のことを小説に書くよう、 藤島にも大好きだった姉が自分を置いて死んだという過去をきっちり葬らせろと提案する。・勘一の妹・淑子逝く。葬儀は嫁いだアメリカで。・亜美の弟・修平と佳奈の結婚が決まる。・真奈美が妊娠。その間<はる>で働くことになったのは池沢百合枝。 真奈美の親戚のおばさん・慶子と言う設定で。
August 12, 2013
~栞子さんと二つの顔~五浦大輔がビブリア古書堂でアルバイトを始めて半年以上たったある日、あの震災に遭う。散乱した古書を本棚に収め、3日後に営業再開。耐震補強も必要となった店の工事が決まり、2階の栞子の古書を整理したり、移動する手伝いもする大輔。篠川栞子が捜していた母の残した「クラクラ日記」は、亡き父から妹・文香に預けられ、そこに記されていたメールアドレスに文香は返事はなくてもメールを送っていた。母親に対する感情の違いからぎこちなくなる姉妹。大輔が留守番をしているときにかかってきた電話の相手は、件の母・篠川智恵子だった。智恵子宛てにビブリア古書堂に依頼が入り、栞子が受けることに。それはパスワードもわからぬ金庫を開けることができれば、鹿山明が収集し、今は来城慶子が受け継いだ乱歩の蔵書を全部売るというものだった。今までのシリーズについては→1、2、3----------------------------蔵書整理など手伝いの礼にボーナスを出すという栞子に対し、大輔はデートをしたいと誘う。別の顔を持っていた父・明に対して複雑な気持ちを持つ鹿山の子供らに会い、彼らの遺恨、誤解なども解いたり解かなかったり。鹿山の娘・直美は、ビブリア古書堂を敵視するヒトリ書房・井上の幼馴染で、ヒトリ書房で働いていた。直美は不倫していた父を知りながら古書を売っていたビブリア古書堂(智恵子)を非難するが、実は明はヒトリ書房が軌道に乗るまで井上の店も優遇していた恩人だった。明の不貞を知りながら古書の売り買いをし、思いを寄せる直美には言えずに揺れ動いた井上。智恵子はそのことを知り、半ば脅すように井上に明を紹介させた。井上は智恵子に似ている栞子も警戒していたが、栞子には男女の機微などを理解しきれぬ隙があると違いを認める。井上は栞子に協力、直美に真実と謝罪、過去伝えきれなかった想い(出せなかった手紙の存在)を告げる。海外で古書を扱う仕事をし、帰国中の智恵子は金庫の中に乱歩の幻の第一稿があると予想し、手に入れたいと参戦。だが、栞子にヒントを与えたりもする。智恵子は文香にも本を残していたことを告げ、それは栞子が持っていたことが判明。見事金庫を開けた栞子は、慶子が妹と入れ替わっていたことも見抜く。金庫の中にあったのは、明が書いた小説だった。だが、別に第一稿もあった可能性を指摘した智恵子は、一緒に慶子を追おうと栞子を誘う。大輔の声を聞いた栞子は本よりも大輔とのデートを優先すると告げる。能力の高いパートナーを求めた智恵子を邪魔した大輔は、彼女の怒りを買ったかもと思う。デートした大輔は栞子に告白。せどりの志田は、恩人である智恵子の頼みでビブリア古書堂を時折窺い、家族のことを教えていた。志田の持つ「落穂拾ひ~」は智恵子が大事にしていた本だった。智恵子が出て行ったのは、正気では手に入らないような古書を追ってのことで、今も探しているらしい。
August 11, 2013
須賀屋が力を入れて売り出そうとする「神波碧空伝」の挿絵を依頼された宝仙は高揚するが、直後、襲われ隻腕に。燦は須賀屋から神波一族を恨む闇神波が、動き始めたことを知らされる。里に残った與次は殺され、篠音は襲われる。父が亡くなったことを知らされても圭寿に帰国は許されず。圭寿に亡き兄の側室・静門院から目通りの申し出が。妖艶な静門院に圭寿は大殿の種ではないと言われた伊月。伊月は静門院の屋敷から帰る道中、毒を盛られ危機迫る!・・・ところで以下次巻。文庫版連載のようなものだとしても一冊が短い。もうちょっとまとまって読みたいところ。
July 24, 2013
車視点で進む小説。車同士が喋ったり、貨物列車とは会話できても、自転車とは通じなかったりという設定が面白い。伊坂氏らしいテンポ、展開。舞台はやっぱり仙台。女手一つで3人の子供を育てた郁子、免許取りたての長男・良夫、彼氏と何かあったのか不穏な空気を漂わせる長女・まどか、頭の回転が速く、精神年齢も高い(だけに子供らしくはない)次男・亨の望月家の車・デミオ視点で展開。突然、良夫が運転する車に乗り込んできた芸能人・荒木翠。彼女はその後、不倫相手と目される丹羽の運転する車に乗り、事故死したという。彼女らの車を追った記者・玉田が追い詰めたのだろうか・・・?ちょこっとオー!ファーザーの一家が通り過ぎる場面も。----------------------------どうしようもない危険人物・トガリの手下に(死体を動かす)手伝いをさせられそうになるまどかの彼・江口。それに巻き込まれる一家だが、玉田や隣人の校長によって救われる。翠が死んだと思う兄弟は、玉田に会いに行き、たびたび行動を共にする。玉田はトガリと恋人が事故死した時に一計を案じ、翠と丹羽が亡くなったことにして翠たちを自由にしていた。(翠の夫は翠だけに酷い男だったこともあり、離婚できなかった。)その真相に気付いたのは亨のみ。亨に目をつけていた同級生らがいたが、苛められていた圭一の映像を逆手に取り、玉田の協力もあって強盗犯と結びつけることに成功、不安をあおることで形勢逆転する。望月家の車・デミオはその後売られるが、成長した亨が偶然にも買い戻す。
July 23, 2013
東京バンドワゴン第8弾は番外編短編集。いつもほのめかされるだけだった主要キャラクターの知られざる過去エピソードが語られる貴重な話多し!サチ視点じゃないところも新鮮。読了後、第6、7弾未読なことに気付く。読まねば。過去編がほとんどなので、未読でも問題なさそうなのが救いだったかな。----------------------------・紺に交われば青くなる 堀田紺サチが亡くなってから三年後。80歳の勘一は曾孫が増えてますます元気に。珍しく人が少ない夜、研人に青が来た時のことを話すことに。紺が8歳の時に我南人が突然自分の子供だと連れてきた赤ん坊。サチはすぐに受け入れ、その場で青と命名。紺と藍子も秋実の頼みでサチが命名。青い紺碧の藍色の空。がそれぞれ孫の名になっている。ちなみに、研人の名は亜美が命名。養護施設で育ち、荒れた生活を送っていた秋実が我南人に連れられ家に来た時にサチの優しさに触れ、一気に自分の境遇を話し、そのまま我南人のお嫁さんになったのだった。堀田家は他の兄妹と同じく育てるが、成長した青は出生の秘密を気にして一時荒れるも、青を守るための我南人の派手なパフォーマンスに敵わないと毒気を抜かれる。藍子の妊娠が判明したのもその頃。紺は頭が切れて勘が鋭かった草平似らしい。・散歩進んで意気上がる 堀田すずみ勘一の幼馴染・勇造の見舞いに一緒に行くことになったすずみ。勇造は一編だけ世に小説を残していた。勇造はその昔、恋人だった藤子の家に秘められたことを小説のかたちとは言え白日の下にさらしてしまい、それが彼女の家の没落の原因になったが(小説にする)誘惑に勝てなかったことを勘一らに告白。・忘れじの其の面影かな 木島主水木島のもとにマードックが薬物の密輸にかかわっているという情報が入る。堀田家のために動く木島だが、誤解だとすぐに判明。マードックは金がなく困っているときに勘一に助けられたことがあること、その時にご飯を作ってくれた藍子が、初恋の聖母マリアそっくりで一目惚れしていたことを告白。独身の木島は自分に認知した子供がいることを告白。・愛の花咲くこともある 脇坂亜美客室乗務員研修中の亜美は北海道一人旅中に鞄を盗まれてしまう。同じ鞄を持っている男に飛び蹴りするも、その男・堀田紺は姉のバックを借りているだけだった。家に連絡するのが気が重い亜美に、紺は東京まで車で送ると申し出る。紺の父・我南人のファンの亜美はその言葉に甘え、同乗。紺は我南人の友人である車の持ち主にこの車で最後の桜を見に行ってほしいと頼まれていた。・縁もたけなわ味なもの 藤島直也会社スタッフをうまく回せているか不安がよぎったりしながら忙しい日々を送っていたIT社長の藤島(25)は、東京バンドワゴンに初めて来た時「店の本を全部買いたい」と口走って勘一に怒られる。だが、藤島の選んだ本にちゃんと理由があることを聞いた勘一は感想文一枚につき一冊、本を売ってくれることに。そこに居合わせた我南人の記憶力によって藤島は探していた三鷹(修行中)と再会できる。・野良猫ロックンロール 鈴木秋実我南人らバンドメンバーにチンピラから助けられた秋実は、我南人に連れられ堀田家へ。短いが、語られることの少なかった秋実と我南人の貴重ななれ初め。・会うのは同居の始めかな 堀田青青が契約する旅行会社が大学で特別講義した時の生徒、成美と美登里の提案で合コンすることに。そこで知り合ったすずみは、青もよく行く多摩蘭堂の常連だった。その後、成美と美登里に(多摩蘭堂で)すずみの父が亡くなった直後に彼女と別れたことを問い詰められる青。自分が悪いと思ってくれという青に、多摩蘭堂の杏は自分の想像を伝え、2人が別れたらすずみ、青、藍子、花陽の4人が不幸になると助言する。・研人とメリーの愛の歌 堀田研人研人とメリー(4年生)は学校のバザーで古本を売ることに。だが、本を買った校長先生の様子がおかしく・・・。本に載ってたのは死んだはずの校長先生の恋人。実はメリーの祖母・優子で、若かりし頃の校長先生との交際に反対していた優子の両親が嘘をついたのだった。・言わぬも花の娘ごころ 千葉真奈美花陽(6年生・青の婚約者のすずみが異父姉と判明したころ)は真奈美に父親のことを聞く。藍子が22歳の頃、藍子が妊娠しているのを知った真奈美は事情を聴き、相手に黙って産むという藍子に反対して槇野教授に知らせることに。藍子には秘密だが、その後一回だけ真奈美は槇野に会っていた。それは槇野と学生が深い仲になっているという匿名の手紙が大学に届き、槇野は学生である藍子(ひいては藍子が守ってくれようとした自分の家庭)を守るため、大学の生徒ではない真奈美が相手だと言ってしまい、真奈美はそれに協力したのだった。・包丁いっぽん相身互い 甲幸光〈はる〉で働くコウは真奈美の頼みで亡くなった友人の息子が食べたいという柿のコロッケを作ることに。その友人の夫から、真奈美が昔手酷い失恋をして一人で生きていくと決意したこと、店に男性は雇わないと言っていたことを知らされる。コウは我南人に連れられ店に来て、我南人の調子に乗せられた(!?)真奈美に雇われたのだった。・忘れものはなんですか 堀田サチ新聞配達の青年・土井彰太が堀田家に新聞を入れ忘れた。彰太の亡くなった祖母がサチに似ており、サチを目撃して驚き、忘れてしまったのだった。彼と堀田家の縁が深まったきっかけとは…(「縁もたけなわ味なもの」)一人旅の途中で大事なボストンバッグを盗まれた当時20歳の亜美。偶然そのバッグと同じ鞄を持っている男を発見して…(「愛の花咲くこともある」)。
July 22, 2013
七つまでは神のうち名医と評判の青庵の娘・真葛は母亡き後、父の手伝いも器用にこなし、弟・太一の面倒も良く見ていた。大嵐の日、太一とともに往診から戻った青庵はそのまま倒れ臥してしまう。さらに幼い太一の体には、妖怪うわんが宿り、うわんは2人を助けたければ太一が解放してしまった九百九十九の妖たちを捕らえてこいと命じるのだった。小松エメルの新しい妖怪譚開幕、と言ったところか。---------------------------------第一話 うわんと鳴く声家族、使用人が次々に倒れた西国屋の跡継ぎ・竜之介が最後に頼ったのは幼い頃世話になった青庵だった。だが、そこにいたのは3つ年上の真葛。青庵は臥せっているというのだ。真葛を姉のように慕ったこともあるだけに複雑な想いの竜之介。不審な言動をする太一をいぶかしみながらも、家族は目覚める。2人の後をつけた竜之介は小川の主となった元父親に憑かれた娘が救われるところや、墓場に出た大勢の武者が退治されるところを目撃。自身も家で駆除された鼠(化け鼠)に憑かれており、太一に憑くうわんによって取り除かれる。(憑き物が取れると同時に憑かれていた記憶も失う)あと十ケ月の間に捕まえなければいけない妖は887匹。第二話 幸せな顔青庵と無理についていった太一の帰りが遅かった2か月前、(神さまの声を聞いたという)太一が墓を暴くことで地下世界の結界の封印を解き、妖を開放してしまった。太一に宿った地下世界を支配するうわんは、青庵の生気を吸う。桂木(青庵の)家に代々伝わる妖退治の道具(秘術)を真葛は使うが、それも利かず。太一が神のうちと言われる七つになる(一年後)までに妖を捕えてうわんの力を取り戻すならばと猶予を与えられた真葛。竜之介を救った後、出会った加絵には人面痕があった。神木が叶えようとした家族とずっと一緒に居たいという加絵の願い(妄執)が強すぎたための結果だった。第三話 赤子かえり吉原桔梗屋に往診に行った真葛は、遊女が赤子がえりする現象に挑むことに。紅に仕組まれた呪が原因。遊女の子で捨てられたと思った周市の仕業だった。真相を知り、呪は解けるが、呪が強すぎて周市は赤子になってしまい、吉原で育てられることに。第四話 三界の首枷青庵の古い知り合いで、母・凛の幼馴染の岡っ引き・弥吉が追う自殺にみえる事件。弥吉に助けられた白蛇が恩返しのつもりで、弥吉が憎いと思っているであろう罪人などを自害に追い込んでいた。だが、その魔の手は彼を思って喧嘩になった妻にも伸びており、彼女の死は白蛇の魔の手から逃れようとしての事故死だったことが判明。第五話 閻魔堂願いを叶える閻魔堂に参る真葛だったが、心理を試されることに。真葛に閻魔堂のことを教えた妖怪・采女は、義弟のいる地獄へ落ちる。青庵が目を開ける。赤子の太一を助けて凛は亡くなり、太一は真葛の弟として育てられることになったが、彼の出自が元凶だったりするのだろうか?
July 18, 2013
シリーズ第五弾。まったりのんびり・・・なだけに話が牛歩のごとく進まない(笑)ほのぼのできる。----------------------------・第一話 乙女心と冬の空それぞれ自由に行動する両親のため、一人になることが多い三井春菜が冬休み目前、とうとう両親に一緒に居たいと訴えるが、逆にどちらと一緒に旅行に行くか迫られ板挟みに。祥明の警告を受けた両親。予定変更できぬ母は次の旅行同行で譲歩。父親は三井希望の狐行列を見に来ることに。・第二話 ジロ・マイ・ラブ瞬太の飼い犬・ジロがいなくなり、保護してくれたのは以前遺言状の件で陰陽屋と因縁ある仲条伸郎だった。ジロを自分の犬だと言い張ったりするが、退職して時間持て余し、妻も帰ってこない状態の伸郎に祥明が優しい言葉をかけたのが逆に堪えてジロを返してくれることに。祥明のもとにクラブドルチェのバーテンダー・葛城が訪れ、月村颯子という女性を探してほしいと頼む。・第三話 怪奇!谷中化け猫騒動瞬太の祖母の家を買いたいと日参する町おこしプランナーの男を撃退するため、お祓いするふりをしたり、妖怪騒動をおこす。バレンタインの日は風邪を引いてしまい、三井からのチョコはもらえたかわからぬまま。・第四話 学校怪談調査隊委員長に絡んでくるパソコン部の浅田の姉の依頼で、学校の怪談に挑むことになった陰陽屋だが、姉と陰陽屋に一泡吹かせたいという浅田の計画が露見するだけだった。2年生の先輩・竹内由衣から月村颯子は化けギツネかもしれない思ったと言われる瞬太。また、竹内の祖父が化けギツネだと判明。以前病院に入院してた萩本も竹内の親戚。葛城に月村のことを問う祥明だったが、二人に化けギツネ疑惑が深まるだけだった。詳しく確認する間もないまま、葛城は姿を消す。
July 17, 2013
まんまことシリーズ第4弾。まんまことこいしりこいわすれお寿ずの死から一年。彼女の喪失をまだ乗り越えてない麻之助だが・・・。----------------------------・朝を覚えずお寿ずの又従姉妹の子・おこ乃は14になり、ますますお寿ずに似てきて、様子を見に来る彼女を麻之助はたびたび亡き妻と間違えてしまう。清十郎が持ってきた案件は、安価な眠り薬(売薬)を買った人の中に亡くなった者、別の体調不良を引き起こした者が出たというもの。薬のせいと決めきれないために奉行所には届けられず、町名主に訴えがあったのだ。麻之助は薬を調合した医師・太源に貧乏人で薬効を試すことをやめるよう言うが聞き入れられず。麻之助は太源と共に薬入りの食事をとり、怖ろしさを体感させて止めさせる。が、自らも無茶な摂取するなどした麻之助は、お寿ずが亡くなってから無茶に歯止めがかからなくなっていると周囲を心配させる。・たからづくし親戚筋から縁談を迫られた清十郎が姿を消した。お由有に頼まれた麻之助と吉五郎。言葉を交わしたことはなくとも清十郎が本気になった女性・お浩は(清十郎にひかれていたのかもしれないが)とある殿様に見初められ、輿入れが決まっていた。清十郎から相談を受けた高利貸しの丸三は、友である彼を匿い、後悔が残らぬよう彼女と話だけでもできぬかと機会を作ろうとしたがうまくいかず。・きんこんかん両国橋橋詰の盛り場を仕切る顔役・貞の配下から、そこに小店を出した娘3人が吉五郎に惚れているのではと知らされた麻之助だが信じられず。三人娘は後ろ盾となった島松屋に、吉五郎の判定によって選ばれた娘だけに菓子屋を任せると言われ競っていた。吉五郎は知らぬし、気付かず。その鈍さが義父ともうまくいく理由だと納得する麻之助たち。結局、事は露見し(島松屋は選ばれた娘を妾にしようと考えていたことなども)、貞の父(大貞)も絡んで三人娘は一緒に一店持てることに。以前麻之助に助けられた北国屋のお千夜は、麻之助に嫁ぐのはどうかと考えたが、妻と死別したばかりの人と添うのは難しいと父親に言われ、自分を想ってくれる人のところに嫁ぐことに。お千夜に自分以上に(お寿ずに似ているから)麻之助との縁談に向かないと言われたおこ乃は自分が麻之助をどう思っているか考える。・すこたん ~行違い。間違い、思うようにならぬこと。あての外れること。支配町にある小西屋と増田屋の跡取り息子2人の言い争いからはじまり、たびたびもめごとが起きる。両家の近所からも泣きつかれて、父と麻之助が交互に裁定することに。跡取り息子たちは同じ娘に惚れていることが争いの発端だった。その後、持参金の多いがちょっと難しい娘・緒すなとの縁談を押し付けあう2人。その娘自身が変わるきっかけを与え、別の活を入れたほうがいい跡継ぎ・春之助との縁を取り持ち、まあるくおさめる。緒すなの母に今度は小西屋・増田屋、両家の父が心奪われたようでもあるが・・・。・ともすぎ ~共過。持ちつ持たれつ世を渡ること。吉五郎が見慣れぬ店にいたこと、また、別の噂も聞き、彼を心配する丸三。嫁入りまでに小太刀を習っておきたいという武家の娘・お潤の願いを、彼女の父と同じ道場で交流のあった吉五郎の義父・相馬小十郎が受け、吉五郎に指導を言いつけており、仕事が終わると足早に姿を消していた(噂の一つ)。見慣れぬ店にいたのは(女性に小太刀を教えていることで)機嫌が悪い許嫁・一葉への贈り物を考えるため。許嫁の機嫌が悪い理由もお潤の本当の気持ちも吉五郎もちろん気づかず。丸三はお潤の許嫁に協力して賄賂を融通する金貸しを捜し出そうとするが、丸三の下で働く手代が隠れてしていたため、彼自身襲われてしまう。麻之助らの助けによって事なきを得る。丸三が今回気張ったのは、年の離れた大事な友らの役に立てればまた会えると思ったため。麻之助らはみんなで好きな時に食べようと飴の入った茶筒を丸三に渡す。・ときぐすり日々忙しく過ごす麻之助は、飼い猫を助けてくれた滝助(14)の相談に乗ることに。滝助は幼少から拾われた賊の飯炊きをしていたため、賊を追う吉五郎らから麻之助は隠そうと(行き場のない彼を)近所のむめ婆に託す。表立って職探しもできない彼のため、さらに近所に住む、息子を亡くした袋物職人・数吉に使ってくれるよう頼む。はじめは飯炊きとしてだったが、滝助は気難しい数吉に仕事を教えてもらえるようになり、むめ婆ともうまくやっていく。吉五郎らの調べもあって、残りの賊も滝助らを囮に使うことになってしまうが捕えることができ、滝助の真摯な気持ちも周囲に知らせることもできたため、ここで修行を続けられることに。麻之助は自分がつらいときに清十郎、吉五郎、両親ら周囲の皆がいて、”ときぐすり”に癒されありがたかったため、(事件解決は長引いてしまったが、)滝助も欲しいと願う”ときぐすり”を数吉から、むめ婆から、周囲の皆から受け取れたらいいと思って行動したのだった。時薬~本来は”じやく”。お坊さんに許されてる食べ物のうち、午前中に食べて良いもの。 滝助は”ときぐすり”と読み違え、時は薬になる、歳月が心を癒してくれると思った。 それに共感した麻之助だった。
July 12, 2013
ブックストア・ウォーズが書店ガールに改題され、その第二弾だそうな。福岡から吉祥寺に進出してきた大型書店の新興堂の店長になった独身女性店長・西岡理子(42)は今までと違う職責に戸惑いながらも試行錯誤。新規店開店のために福岡から送り込まれてきた副店長の田代は、部下の面倒見がよく、気も利いて、理子をサポート。ペガサス時代からの部下・亜紀(29)は文芸書担当となり、本屋大賞受賞作をプッシュしていたこともあってプレゼンターに選ばれるほど活躍していた。そんな矢先、亜紀の妊娠が判明。コミック編集者の夫・伸光は心配もあるが三歳児神話(三歳になるまでは母親がそばにいたほうが良いというもの)にこだわり、亜紀に仕事を辞めろと言う。仕事と育児を両立させたい亜紀、環境の良い大型店に転職したが地元書店にも思いをはせる理子、それぞれ新たな場所で奮闘。舞台となる吉祥寺の風景が店名を変えても(知ってる人間にはモデルの店々が)わかりやすくなっているのも楽しい。----------------------------本が好きでもさまざまなこととの板挟みとなって書店員を続けるか悩む者、力になりたい者、書店を盛り上げようとする熱意、他店合同のイベント・・・そんななか、理子と田代(既婚者)にも淡い想いが沸き起こるが、田代は家族のいる福岡に戻ることに。亜紀と伸光はぶつかるが、そんな時に伸光は同僚に足を引っ張られてコミック編集者(編集長)から外されてしまう。だが、伸光を慕う漫画家や亜紀の応援もあり、大手出版社に転職。その過程で伸光は亜紀の仕事を認め、見直す。亜紀も歩み寄り、産休明けは現場ではなく定時に上がりやすい仕入れ部門に異動することを承諾。
June 26, 2013
賄賂を受け取っていたとの濡衣をかけられた父は自刃、兄は蟄居の身に。22歳の古橋笙之介は父の汚名をそそぎたいという思いを胸に秘め、江戸へやってきた。深川の富勘長屋に住み、貸本屋・治兵衛からの写本の仕事で生計をたてながら事件の真相究明、父と同じ筆跡を再現できる人間を探すことに。一連の騒動には搗根藩の御家騒動がからんでいた。江戸に住む人々の悲喜こもごも、笙之介の淡い恋の行方は?というのも絡めて展開される。宮部作品の時代物だけに、ページをめくる手は止まらず一気読み。でも、設定などは様々な既読物語の寄せ集めのような・・・特に驚きはなく、とにかく既読感がぬぐえなかったというのが第一印象。-----------------------------第一話 富勘長屋治兵衛から起こし絵の再現を依頼される笙之介。また、押込御免郎が書いたという、このままでは使えない読み物の話をつないで書き直してほしいとも頼まれる。笙之介は治兵衛に手跡をそっくり真似られる人物探しを頼む。穏和な父を軽んじて認めなかった母・里江は、最初の夫とは死別、次の嫁ぎ先では姑との不仲に悩み、子宝に恵まれないこともあって離縁、三度目の嫁ぎ先となるために里江の実家の方が格が高く、豪気な素質を持つ嫡男に期待を寄せ、父親に似た笙之介には何も求めなかった。笙之介が通っていた月祥館の儒学者である老師・佐伯は、藩の家中学問指南のお役を拝命、藩儒の地位を持つ。父の死後、笙之介は老師のもとに書生として身を寄せて生活していたが、江戸留守居役・坂崎に家の再興を相談するようにという母の要請と老師らのとりなしがあって江戸に行くことに。実は笙之介の行く末を考え、江戸に出れるようにしたところもあり、再興の約束はただの方便。里江の最初の夫は坂崎の甥。騒動の裏には藩の勢力争い、出入り商家のお家騒動も絡んでいた。そこで使われた偽文書をつくれる者が、先代藩主の遺言を作られたら大問題になると坂崎は笙之介に父の仇にもなる人物を捜し出すよう命じる。指示あるままに富勘長屋に住み、長屋の人々と良好な関係を保って生活する中、早朝に桜の木の下で切り髪の美しい娘をみるも、娘の所在は知れず。皆で見物に行った大食い競べで、笙之介は件の娘・和香(19)をみかける。治兵衛によると笙之介は気付かなかったが、彼女には顔と体の左半分に赤痣があり、人と会うことを避けているという。第二話 三八野愛郷録前三八野藩主が書く符丁の謎を解こうと、その鍵となる人物を探す長堀が同姓同名の笙之介を訪ねてくる。笙之介は符丁を解く協力を申し出る。大殿が昔の片恋を懐かしんだものだった。子供らに手習を教える武部を手伝ったり、仕立屋和田屋の娘だった和香が会いに来たりする。第三話 拐かし和香の守役のつたが、治兵衛が行方不明なのだと笙之介を訪ねてくる。昔、妻が拐かしにあって殺された治兵衛は、娘が拐かしになったという三河屋の力になろうとしていた。娘の出自、気持ちの擦れ違い、利用しようとする男も絡んで展開するが、拐かしは狂言だった。第四話 桜ほうさら和香に起こし絵の作り方を教える笙之介。他人の手跡をそっくり真似ることのできる代書屋は押込御免郎と同一人物で、本人が笙之介を訪ねてきて父を陥れた偽文書を書いたと認めるも、笙之介の父親は捨て駒にされる価値しかなかったと言い放つ。治兵衛は彼のこと、彼から笙之介の父の身の上に起こったであろうことを聞いていて笙之介に伝えなかったことを詫びる。父を陥れたのは、出世のため(と檻のように感じる古橋家を消すため)に今までと別の勢力に与した兄・勝之介だった。坂崎は企てに気付きながら、勝之介を何とか助けたいと江戸に誘い出すためにまずは笙之介を呼び寄せ、密命を与えたのだった。企てが失敗し、笙之介を襲った勝之介は姿を消す。母は出家する。笙之介は江戸で死んだことになり、以前看取った行き倒れの侍の持っていた系図を拝借し、他人に成りすまし、藩儒のお役を辞し、江戸に戻った佐伯老師の書生に再びなることに。桜ほうさらは、ただしくは「ささらほうさら」=「いろんなことがあって大変だ、大騒ぎだというときに言う言葉」(甲州地方)桜が縁で出会ったからと「桜ほうさら」だと言ったのは和香。
June 18, 2013
Jig β knows Heavenひさびさすぎてどんな関係性だったかな?Gシリーズ第8弾?前巻読んだのが2008年で、これが2012年刊行だから、森氏にしたらずいぶん放置していたのだな、と言った感あり。 Gシリーズ φは壊れたね θは遊んでくれたよ τになるまで待って εに誓って λに歯がない λ~メモ ηなのに夢のよう 目薬αで殺菌します加部谷恵美は卒業して県庁職員に。雨宮純はTVレポータ、山吹早月はM大学助教(博士課程はN大に。博士課程2年目でドクタを取ったらしい)、海月及介はW大学生に。西之園萌絵はW大准教授。夏休みを利用して芸術家たちが自給自足の生活を営む宗教施設・美之里(の所有するコテージ)を訪れた加部谷、雨宮、山吹。彼らはそこで調査に訪れたという旧知の人物に再会。そんななか、芸術家の一人が作品と見まごうばかりのかたちで殺されていて・・・。教祖が名乗るはギリシャ文字β(神の次に偉いという意味もあるらしい?)。あの天才博士の影もちらつく。-----------------------------断れない筋から調査依頼を受けた水野涼子(仮名=赤柳は彼女の変装。萌絵の叔母・佐々木には見破られている。・・・=各務亜樹良??一瞬、紫子さんかもと思ったけど、紅子さんと25年以上ぶりに再会した、覚えててもらっただけでも感激という知り合いならば各務かな。)は、調査前に椙田(=保呂草)に会う。彼女はまだ犀川=へっくんだと気付いていないため、犀川の母が瀬在丸紅子だと知らず。宗教施設の管理人・海江田は、10年くらい前に椙田が東京に骨董店を持っていた時の雇われ店長だった男。店は数年で閉じてしまった。水野は加部谷らに自分が赤柳であったことを明かす。水野の調査対象の女性・隅吉真佐美は、芸術村の中の割り当てられた建物の中で、全裸で棺に入れられ、ラッピングを施された状態で亡くなっていた。芸術村のメンバの一人、ジェーンという女性は真賀田博士にそっくりだった。海月、遅れて合流。公安の依頼で確認のため、(一番現場に近かった)紅子が呼ばれる。紅子はジェーンは真賀田博士にみせようとしてるが役不足と判断。事件は外で起き、棺に入れられて芸術村に運ばれてきていた。被害者の隣人はジェーンに心酔しており、彼女と言葉を交わした後で犯行をほのめかして自殺するが、犯人は水野に娘・真佐美の安否を調べてほしいと依頼した父親・隅吉重久自身。重久は娘を真賀田の生贄に捧げたつもり。真賀田と言葉を交わしたのち、自殺(した様子)。佐々木と紅子が会う。関係良好の模様。紅子は真賀田四季の仕事(ネットワークという新しい頭脳)の完成は80年くらい先になると見積もる。曲川菊矢~美之里代表。姿は見えず、メールなど間接的方法で指示を出す。 水野は真賀田の信者・重久と考える。
June 18, 2013
組曲と書いてアルマンドと読む、らしい。白兎1・透明な旅路と、白兎2・地に埋もれて/3・蜃楼の主に続くシリーズ第4弾。白兎が罪を犯しているといい、気が済むまでここにいるという黯羽。山の中腹に建つ「ユートピア」は一流ホテルと見まごうほどの豪華な仕様・サービスが受けられる”選ばれた人”のための高級ホスピス。看護師長の仙道千香子は、最高責任者として他のスタッフとは違い完全住み込みで勤めている。だが、元女優の入居者・姫季凛子に「(自分の美質に気付いていない)かわいそうな人」と言われてしまう。ある日、土砂崩れでホスピスは孤立。そんな中、オーナー兼入居者の中条は巨額の遺産をこの時にこの場所に居合わせたスタッフのみに分配するという遺言を発表。しかも、その半分は「ユートピア」を引き継ぐことを条件に千香子に譲るという。想定外の事態の連続が千香子を困惑させるなか、窓の外には美貌の少年が。そして・・・巻末に作者の原風景にいたという、白兎に寄せてと言う文章(あとがき?)がある。これで完結なのだろうか?----------------------------千香子が幼いころ、他の男と駆け落ちしようとした母は父に殺された。父は獄中死。針の筵のような視線の中、祖母と同じ家に住み続けた幼少期の記憶。そのため、男を信じられず、どこか人と距離を置いてしまっていた千香子。中条は母の駆け落ち相手であり、娘の千香子に執着。彼女に殺されたい計画し、念願果たす。また、遺産相続の話を持ち出すことでスタッフ内にも諍いを起こし道連れにしたいとも考えた。凛子は中条の思惑に気付き、先に殺してしまおうとするも一足遅く。スタッフ内にも愛憎があったり、中条のスパイがいたり、さらにはスタッフに扮した黯羽が混ざっていて唆していたこともあり、連鎖殺人事件が起こってしまう。黯羽は人の隠し持った本性を引きずり出すのが面白くてたまらないらしい、千年近く彷徨いこの世にしがみついている、この世にいてはいけない魂。白兎はこの世にいてはいけない魂を還すのが仕事。だが、黯羽は扱いあぐねているらしい。白兎は、還るべき場所に送り届けた凛子の亡くなった息子の魂との約束により、彼の代わりに凜子が存命中は見守り続け、息子として会いに来ていた。白兎に生きねばならないと諭された千香子は、自分もまた白兎に見守られていたと気付く。千香子の弁護側の証人に立った凜子は判決の出る1か月前に息を引き取る。生と死のあわいに存在する者。生を司るでも死を操るでもなく人の傍らにいる少年。その存在が照射する人の営み、脆さ、強靭さを描いてみたかったという作者。死が救済にはならないというのは千香子への白兎のセリフに現れていた、かな。
June 12, 2013
絵描きの視点で見る日本美術史。山口氏は日本画ではなく、油画専攻だったな・・・とあらためて認識。だからこその視点というのもあるかもしれない。そしてまた、本書を読むことで山口氏の絵にある雲の意味が分かってくる・・・気がする。本書の内容は、以前「私見 にっぽんの古い絵」として語ったことをもとにまとめたものらしい。タイトルに”ヘンな”とついているように一般的な日本美術史の勉強には向かないと断りつつ、紹介しているものは偏りつつも、それぞれについて山口氏の率直な感想も織り込まれたり、技術や時代背景などにも言及されており、今まで気に留めたことのなかった一枚の絵を楽しむ入り口にもなっている。ただ、掲載された図版は一般的には多いほうなのかもしれないけれど、紹介されているものに対しては少なく感じる。どれもこれも何に対して述べているのか知りたくなるので、もう少し図版を増やし、出来ることならもう少し大きく載せておいていただけるとありがたかったかな。そうだ、と思い立って山口氏の作品集(第一集)についていたルーペも使ってみたけれど、本書の印刷はそこまで細かくないのであまり意味がなかったし・・・。取り上げられたもの鳥獣戯画、白描画、伊勢物語絵巻、伝源頼朝像、雪舟、洛中洛外図(舟木本、上杉本、高津本)、彦根屏風、岩佐又兵衛、円山応挙、伊藤若冲、河鍋暁斎、月岡芳年、川村清雄・・・など
May 22, 2013
透明な旅路との続巻。ソフトカバー版出版に際し、白兎と冠がついたらしい。シリーズだとわかりやすくなったが、どうも装画のイメージが合わないと感じた。・地に埋もれて心中を約束しながら男は土壇場で怖気づき、優枝は仮死状態のまま一人埋められた。救い出してくれたのは、白兎と名乗る謎の少年。彼は優枝に復讐をそそのかすが、優枝は死に直したいと思う。そんな時、両親の離婚後会っていなかった弟・慶介から母危篤の連絡が入る。優枝は昔襲ってきた男が逮捕後に自殺したことからいわれのない非難を受けたことがあり、そのことからどこか囚われ、不自由に生きていた。母は慶介は優枝の父との子ではなく、優しすぎる夫にそれでも許されていることが耐えられなかったと告白。優枝は幼いころに白兎に出会っていたことを思い出し、母の言葉もあり生きていく。・蜃楼の主昔々、大勢の人を殺した男。彼の帰りを待って自殺した妻。現代、怖ろしい夢を見た翌朝に起こる異変、それに合わせたかのように近隣で通り魔事件が発生していることに悩む高校生・爾は、事件の被害者(幼女)の母親にひかれていく。惑う爾の前に見知らぬ級友・白兎が現れる。爾は男の生まれ変わりで、その妻の霊に取りつかれた親友が事件を起こしていた。爾は爾だということを認識できていたため、男の意識が覚醒することはなかった。遠い昔にも白兎はいた。白兎の存在とは?最終巻と思われる次巻で明らかになるのだろうか?
May 7, 2013
関前藩の騒動は一段落。磐音は藩主と再会。次期藩主、磐音に弟子入り。磐音の両親は関前に帰る。磐音の元婚約者・奈緒の夫が怪我をした後も完全回復せず、介護が必要な身になったことが知らされる。吉原の足抜け騒動解決に手を貸す。心を入れ替えたかに見える武左衛門、その息子・修太郎が尚武館道場に入門するも続かず、よからぬ仲間がいるらしいと判明。周囲は心配しつつ、様子見。磐音の周辺にはまだ不穏な動きが多く、次期藩主も巻き込まれ、霧子ら負傷。磐音は策略をめぐらせた道場に尋常に勝負を申し入れる。
May 6, 2013
恋人と別れ、仕事にも疲れ、都会を離れた美容師の明里。引っ越したのは子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街にある元ヘアーサロンの建物。「おもいでの時 修理します」と言う奇妙なプレートを飾る時計店の店主兼商店会会長の青年・秀司と知り合う。秀司のところにしょっちゅう出入りする神社の居候大学生・太一らとともに商店街で起こるちょっぴり不思議な事件に巻き込まれ、解決?していく。どこか懐かしい商店街が舞台の連作短編集。-------------------------------------・黒い猫のパパオルゴールの落とし主を探すなかで出会ったのは、近々パン屋の息子と結婚予定で、昔黒猫を父のように慕っていたという女性。・・・死んだと聞かされていた父親は実は生きていて、秘境を撮る写真家という危険な仕事のため、娘には名乗り出ないが、こっそり見守っていた。父親の言葉を猫が喋ったと幼心に信じていた。ちょっと無理が・・・ある気がする。・茜色のワンピース商店会を離れるハルエさんに頼まれ、昔うまくいかなかった想い人との縁日デートを明里と秀司で再現することに。・季節はずれの日傘同じと思われるぬいぐるみを探すご婦人と女性。それぞれ娘と母を失っており、明里らが仲介によりそれぞれ心の整理をつける。・光をなくした時計師秀司の兄は実は時計師の夢があり、そのことなどから秀司に嫉妬。すれ違ったまま、一緒に車に乗っているときに遭った事故で亡くなってしまっていた。兄の角膜を移植し、失明を逃れていた秀司は時計師の夢を追うことができず、修理ばかりしていた。明里によって秀司は新たな一歩を踏み出すことに。・虹色の忘れ物心通わせたかにみえた二人だったが、秀司が幼いころに出会った、時計師になるきっかけとなったヘアーサロン由井の本当の孫ではないと明里は告白。だが、一時期身を寄せたこのヘアーサロンのおばあさんに再会。失った記憶を思い出し、結局、秀司と出会った少女は明里だったと判明。設定などに無理があったり、先が読めてしまったりするところもあるけれど、なんだか心温まる感じ。
April 28, 2013
相変わらずの三崎ワールド。日常にありそうでない、荒唐無稽なようで何かを暗喩したような物語。消え去るであろうもの、失われるために存在する、細々と継承された伝統工芸、埋もれようとしている技術、忘れ去られようとしている出来事・・・今まで見逃して、過ぎ去ってしまったものを取材したという架空のルポルタージュという形をとっている。架空の参考文献まで載せる手の込んだつくり。------------------------------------------------------------・玉磨き集落に伝わる伝統産業「玉磨き」の唯一の担い手である高橋家。「磨き」は「研き」であり、同時に「身欠き」である。「磨き」→「宿り待ち」→「機嫌読み」→「磨き」・・・この単純作業の繰り返し、磨き中は「お玉さま」がお移りなさるまで休みなく磨き続ける。それは、磨く「玉」がなくなるまで続けられるのだ。産業と言いつつも、何もつくりだすわけではない高橋。だが、我々は何をつくりだしているのだろうか?これは人生の意味を考えること(の無意味さ)にも通じるテーマ、かな。・只見通観株式会社無意味な通勤・・・一周5分程度、歩けば25歩程度、駅は2駅のみ・・・それが特定目的鉄道事業に分類されている通勤観覧車(略して通観)。通勤の質を向上し、通勤をコントロールするために作られた通観。だが、それを乗客に強いることはなく、街に溶け込み、ある日突然なくなっても何があったか立ち止まられることもないことを理想としていた。乗車する人々はそれぞれまわる回数を決めているようで、役目を終えた場所の最終日ですら人々はなんら変わらぬ様子。廃線となると途端に押し寄せる人々を揶揄したようでもあり、また、新規開業線は「近くなった」大都市に僅かばかり残った町のパワーを根こそぎ吸い上げられてしまうのではないか、その思いと対比するように何も残さず、何もなさずの通観を象徴的に表現したようでもあり、通勤に対する姿勢を問うているようでもある。・古川世代一時的に古川世代は優秀だともてはやされ、その信憑性が疑われると一気に信用失墜、バッシングされ、古川姓を改姓するまでになる。翻弄された古川世代(元「古川」姓)の人々を取材。マスコミによって持ち上げられ、貶められる様々な人、物事、(ブーム、流行)それによって風向きを見誤り、誰かを、何かを犠牲にしている、それに乗っかったり、翻弄される人々の反応をも暴き出す。自主規制に走りすぎるきらいは「図書館戦争」シリーズでもあったテーマ。・ガミ追い不安や不調を呼び起こす目に見えない「ガミ」を捕える「ガミ追い」の現場。昔と違い、復活された「ガミ追い」はネットを駆使し、その様はシステマチックで、捕獲後は売ってしまうという。だが・・・祟りを信じない建設業者に起こった悲劇、といったような原因不明の災厄が彼らに降りかかる。目に見えないからと言って無視できない「何か」。人に恵みをもたらし、ある時には一瞬で根こそぎ奪い去る「何か」は、確実にあると思わせる話。見えないからと言って軽んじてはいけないことはあると思う。・分業ひたすら一人で部品だけを作り続け、完成形を見ることのない分業体制。仕上がったそれが何かもわからぬまま、作り続ける。外界を遮断した生活を送る者だけが読み解ける仕様書、そのため、引きこもったまま働くという社会性をつけているようにみえて外界から遮断し続けられる人々。矛盾した皮肉な状況にみえる。でありながら、それは私たちと何が違うのだろうか?と問いかけてくる。・新坂町商店街組合海に沈んでしまった町の商店街組合を守る一人の男。「海に沈んだ町」てあったな。あの町はこの町だったかもしれない?震災、避難地域に対する人々の姿勢を彷彿とさせる描写あり。風化し、消え去ってしまう記憶に無言のまま抗おうとしている男。
April 17, 2013
経営していた会社も家族も失い、川辺の空き地に住みついた家具職人・東口。家兼工房のトラックで生活をしながら、様々な事情を抱えているだろう仲間と肩を寄せ合い、日銭を稼いでいる。ある日、突然現れた弟子入り志願の奈々恵は、仲間に歓迎されるも謎が多かった。川辺での悲喜こもごも。そこに、奇妙な修理依頼と、迫りくる危険が・・・。底で生きているような人々が、もう一度一歩を踏み出そうとするお話、かな。道尾氏にしては何か物足りないような気も。ハーレキン=道化師。涙を描いたらピエロ?(馬鹿にされながら人を笑わせているけれど、実は哀しみを抱いている)と受け取れるような描写があるのだが、表紙は道化師の仮面に涙が配置されていたなぁ。-----------------------------息子は事故で亡くなり、会社は倒産、離婚した妻は元取引先社長と再婚・・・東口だけが見えてた貧乏神は、東口が見ようとしなかった本心の一部でもあった。自分を変えたいと東口に弟子入りした奈々恵の父が警視監だったため、ジジタキさんの遺書が明るみになれば父に迷惑をかけるかもと一時隠した。ジジタキさんが協力させられた非合法の仕事は、アパートの大家・橋本が裏で人選しており、東口のもとにきた奇妙な家具修理の依頼主も橋本から紹介されていた。奇妙な依頼に仲間も巻き込まれてしまうが、初めて皆で仕事することで新たな道がみえてくる。無事に脱出できた一行は、橋本が姿を消し、アパートを片付けるよう言われたため場所を移動。(橋本の正体を知っているのは東口のみ。)その後も仲間は東口の仕事を手伝い、一度実家に帰った奈々恵も再び弟子入り志願。東口は会社再興の夢を抱く。自分や誰かを守るために素顔を隠して生きる必要があり、仮面が必要になる。どうせ素顔を覆うなら、笑顔で覆ったほうがいい。→道化師ということのようだ。
March 9, 2013
日本であっても、国家権力さえ及ばぬ無法地帯を抱える途鎖国。闇月に入国管理官の目をかいくぐってフチとよばれる途鎖国の山奥に広がる禁足地に集まる特殊能力を持つ在色者たち。フチには犯罪者や暗殺者たちも住んでおり、その頂点に君臨し、莫大な富と権力を持つとされるソクが新しくなったという。フチの中にある水晶谷にはホトケがいるという・・・ソクとなった男を追い、様々な人が交差する―――不穏な夢、能力者、閉ざされた国、禁足地・・・相変わらず不穏で不思議な設定を作り上げ、ぐいぐい引っ張っていくのはすごい。今回はギリギリまで引っ張っていってくれるので、彼や彼女の過去や未来をもうちょっとみたかった気もするけれど、このくらいのまとまりがちょうどよかったのかも?と思う。----------------------------土佐のお遍路さんがモチーフなのかな。闇月の表は巡礼、だが、闇月にはウラがある。有元実邦~かつて途鎖国から逃げ出した在色者。 東京で警察官となり、かつての夫でソクとなった神山を殺すため、 潜入捜査官として戻ってくる。 バイアスロンでオリンピックに出たこともある射撃の名手。 表面上は登録票が必要のないレベルだが、イロを貯め込む珍しいタイプで、 自分のイロの限界が分からず、 能力を使えばコントロールが効かないかもしれない危険性をもつ。 神山を撃つも、彼は別の存在になっていた。 葛城から逃げようと考えるも、かつて潰した片目の贖罪から彼を助け負傷。善法正治~途鎖国の刑事。妻子を殺されたことから神山を追う。実邦と組んでフチへ。 実邦をかばい、青柳に殺される。天馬~僧侶。フチで出る無縁仏を弔う元刑事。黒塚弦 ~幼いころ屋敷のもとでコントロールの仕方を学んでいた在色者。 実邦とも知り合っていた。欧州でアッパー系均質化手術を受けている。 屋敷を国際法廷の裁判の証言台に立たせようと途鎖国へ。 軍とともにフチに入るが、少年の意識と同化。 屋敷に連れられ地下へホトケ(ソク)に。須藤みつき~実邦の友人。医者。戻ってきた実邦に協力。軍勇司 ~屋敷門下生。葛城の高校・大学の同級生でもある。 みつきとともに紛争地で医者をやってたこともあるバーのマスター。 かつての仲間の仇と青柳を襲うも、体育館倒壊に巻き込まれる天野タミ ~藤代家家政婦。藤代夫婦の姪・実邦を今でもお嬢さまと呼び、可愛がる。 実邦との再会を隠したことから葛城に殺される。屋敷風塵~在色者の子供らにコントロールを教えたりしていた。在色者。 厭世もあり、精神衛生センターに自ら入っていたが、 神山博士の日誌の送り主が本人ではなく息子だったと気付き、 センターから脱走。フチへ。 黒塚と少年を連れ、巨大な生命体(ホトケ)に溶け込む。少年(眞秀)~神山の息子。在色者。水晶谷にひかれ、狂暴かつハイレベルな能力を示す。 そふは元山仏師。屋敷に連れられホトケ(ソク)に。以下、かつて山(フチ)に住み、すさまじい能力を開花させ、生き残った3人の在色者。神山倖秀~フチの水晶筋で子供らの能力を安定させようとした神山博士の息子。 様々なテロに関与したとし、指名手配中。 フチのソクに。夜の湖のような印象。葛城晃 ~恐怖で支配する入国管理官。実邦失踪後、藤代家の養子になっている。 過去、実邦に片目を潰されており、異常な執着を見せる。 山狩りを決意し、フチへ。最終的に実邦に助けられる。青柳淳一~傭兵などをしたこともある殺人鬼。フチの麻薬を狙い、入山。 神山博士を最終的に殺したことはトラウマに。 軍に刺され、実邦を襲ったため彼女を標的とする葛城とも争う。 降ってきた岩石に押しつぶされた?水晶の谷に子供のころ近づくと憑かれることがある。子供は粗暴になる精神的変貌を起こす。ホトケ=ホト(隠されていた場所)・ケ(隠れていたもの)→隠されていたものが白日の下にさらされる→この場合、水晶谷の奥でうごめくホトケとはソクたちのこと。 ソクは一人ではない。取り込まれた人々の融合した意識。 ホトケのように見える姿をしている。→太古の昔からある、常に複数形であると同時に限りなく大きな単数であり、 多くの人間を狂わせる存在。出てこようとしていたが、実邦のリミッターが外れるギリギリで崩壊?だが、なくなったわけではなく、ソクはいっぱいいるけれどひとり。世界のあちこちにいて皆をソクにしようとしているらしい。闇月・・・死者の季節集合する意識を持つ単体、夢、具現化するイメージ、能力者・・・さまざまな恩田作品を彷彿とさせつつ、新しい物語となっている。
March 8, 2013
以前のメモでは各話についてはふれておらず、新シリーズになって再登場している面々との出会いってそういやどうだったかな?と一部、読み返してみたり。----------------------------薬屋探偵妖奇談シリーズ1.銀の檻を溶かして 悪魔と契約してしまった市橋が店を訪れる。契約は秋の介入によって破棄に。 市橋の交渉相手の息子・小海ハジメは亡くなる前、寺を訪れ総和と知り合っていた。 ハジメの父の死の真相を知っているとハジメの母に疑われた総和は、命を狙われる。 リベザルが初めて一人で仕事を任され、調査中に総和と出会う。 事件について警察の捜査進度を「ホムサ」として探るザギは「シャドウ」と接触。 「シャドウ」を仲介し、情報を求める高遠と秋が接触。 秋の幽霊嫌い明らかに。 市橋の息子は零一の同居人。零一は息子と契約していたが、秋に壊された模様。2.黄色い目をした猫の幸せ 店を訪れた椚良太は他校生・佐倉康の死を願う。 康が殺され、良太の証言から疑われた薬屋を衒崎・高遠(葉山)が調べることに。 良太と友達になるリベザルだったが、良太は母と妹を殺され、リべの記憶などを失う。 ザギに恋する良太の叔母・空音。良太の祖父・甲斐智充は秋(ハル)の友人だった。 良太の実父は康の父。康は佐倉とは別の男の子供だった。主に佐倉母の犯行。3.悪魔と詐欺師 つながる短編集。 毒死した京都の外科医(高遠が居合わせる)、轢死した東京のプログラマー、 総和の先輩は自殺、…場所も日時も別々で互いに無関係な六人の死。 自殺、事故死、殺人としてすべて解決したはずのこれらの事件の共通点とは? ヘラのいる病院での異変があり、薬屋を訪ねてきたり。 違法移植手術後死亡した由高の意識を自分の中に同居させた零一は、 市橋の契約を破棄させた代わりに秋を手伝わせる。由高の友人としてふるまう秋。 秋を友人という由高(意識)・実は零一(身体)というのがほほえましい。4.金糸雀が啼く夜 盗難警備の依頼を受けた秋vsサファイアを盗む計画に巻き込まれたザギ・リベザル。 花屋・カイが拾った胭李の過去が明らかに。 ※胭李が頼った薬屋は秋(春日ら4人が一緒の頃。呪いを受ける前)5.緑陰の雨 灼けた月 「シャドウ」の片割れ・エリカと人間嫌いの柚之介の因縁。 柚之介が薬屋に来たのは零一の頼み。柚之介の幻術は秋には通じず。6.白兎が歌った蜃気楼 雪浜虎徹の一族に襲い掛かる殺意の連鎖に座敷童伝説は関わりあるのか? 総和の頼みで雪浜家に同行することになった薬屋一行。事件は雪浜家内の諍いから。 秋のバスケ友達直也登場。傷害事件を起こし(最悪の事態は秋に止められる)警察へ。 雪浜家で起こる事件を調べに来た警察官は、秋を知る妖怪・斯波と小町。 ※雪浜家家政婦・涼代(妖怪)は、その後、真鶴の事務所へ。7.本当は知らない 1通のメールを受け取りネット上から消えた8人。 病院から失踪した11人。惨殺された4人。3つの謎が絡み合い錯綜。 縄張りとする病院の問題を解決するように薬屋を訪れ、ヘラ登場。 事件に巻き込まれた直也は秋の正体を知る。8.蒼い千鳥 花霞に泳ぐ 過去編。秋は火冬と名乗っており、ドラックストアでバイト中。座木高校へ通う。 家を明け渡せと謎の手紙を受け取る言波家。小町のところから家出中のリドル登場。 桐子は人間だが、コカクチョウの娘でもあった(言波家と血は繋がっておらず)。9.双樹に赤 鴉の暗 弱気な社員・唐沢はアリス(秋)と出会う。直後、不思議な子供ら(妖怪)に助けられ 引き換えにと家に居すわられてしまう。彼らに影響を受けて変わる唐沢だが、 アリスの言葉で最後の一歩を踏みとどまる。唐沢は高遠の叔父で、その後幸せに。 唐沢パートは過去編。現代パートは事件の真相を独自に調べ直す高遠。 葉山は警察を辞め、高遠に反発する新人刑事・来田川登場。真相判明後、態度一変。 座木は鳥籠が壊れてから様子がおかしく、秋とリベがどうにかしようと動く。10.蝉の羽 カスガと聞いて依頼人が住む山村を訪れることにした秋。 殺人事件が起きた山村は、縁のある人間しかたどり着けない結界が張られていた。 縁ある人間として捜査に駆り出された捜査に不慣れな悠竒は秋らに同行することに。 ※カスガは河清で、春日ではなかった。11.ユルユルカ 交通事故に遭った少年が入院した病院にまかれた血は何かの儀式か? 妖怪の祭りで秋にあらぬ疑いがかけられる。 人間と裏切られた妖怪の心は通うことがあるのか?風冬暗躍。12.雪下に咲いた日輪と 高遠父が買おうとする別荘で起こる殺人事件。高遠の両親への誤解?が一部解けたり。 砂波から頼まれ、高遠を利用して別荘へ行く秋・リべ・柚之介。 砂波に正体がばれるリべ(柚之介)。風冬潜入。13.海紡ぐ螺旋 空の回廊(第一部完) 何者かに誘拐されたリべと胭李。秋の過去の一部が明らかに。逆行の呪いを受けた秋。 呪いを解くために必要とされたのは、秋の子供のような存在、 春日、夏林、山秋、風冬の命だった。 過去に友人だった垣谷(書類上は座木の養父)と良太の祖父・甲斐との交流明らかに。 誤解を解いたのち、秋は姿を消し、座木も後を追う。リべは残る。14.深山木薬店説話集(番外短編) 秋と零一やリベザルの出会いや、13巻直後の春日ら4人の話、 シリーズ中の裏話的短編、柚之介の協力を受けて薬屋を守ることにしたリベの話など。ミステリとしては微妙なのだけど、登場人物の繋がりとかが面白い。このシリーズのほうがめちゃくちゃだけど、勢いあったような。薬屋探偵怪奇譚シリーズ1.ソラチルサクハナ 7年後。一人で別の場所で「深山木薬店 改」として薬屋を守るリべザルは、 「成田構造研究所」の社員・桐生の依頼を受ける。事件が行き詰ったかに見えた時、 秋が現れる。高遠の後輩・來多川の部下として悠竒登場。彼が秋を「秋」と認識し、 秋がそれを受け入れたため、引き続き秋は深山木秋のまま。 (見た目と年齢の乖離の問題はあるが)。秋はリべに請われ専属薬剤師に。 歌とよばれる桐生の同僚は良太であり、良太は過去の記憶(妹を殺したことも)を 取り戻すが、知らないふりをしてくれているリベに付き合う。 依頼をリベが保留中の妖怪・灯視、斑女は店に滞在中。秋は直也とバスケしたらしい。2.天上の羊 砂糖菓子の迷児 失血死した姉は妖に殺されたと考えた少女・未瑠は真相を求め、 妖怪雑事相談所「深山木薬店 改」へ。柚之介再訪。 座木の友人の妻・言波桐子から依頼を受けるリべ。 座木は秋との再会時に犯したことの罰として、秋の前で人型になるのを禁じられている。 だが、その間は自分の前から姿を消せないだろうとその禁に従っている。 秋は天狗を探す少年につきあう。(花屋は天狗か?)3.ダウスに堕ちた星と嘘 斑女の話。 実体と住処を失うが、心通わせた娘が生き延び、人生をまっとうしたと聞き満足する。 リべは依頼の失敗を隠そうとしたことを秋に告白。秋は再び店長に。4.遠に呱々泣く八重の繭 呪いの噂が流れる学園に、秋の命令で教師として潜入することになった座木。 この依頼が成功したら座木は人型に戻る許可をもらうが、複雑な気持ち。 人間と学園を守る契約したテンの妖怪らが関わっていた。 ※歌とあらためて友人になる(歌が記憶を取り戻しているとまだ知らず)リべ。 のエピソードは前巻でだったか?5.童話を失くした明時に6.来鳴く木莬 日知り月 大事なことをはぐらかされたままのようなシリーズ。
March 7, 2013
碧空の果てに/白い月の丘でに続くシューマ平原の国々の物語・・・シリーズ?神官の託宣が決定力を持つファスール王国。国母の第一王女・アスタナ誕生時に出たのは、「この国に仇なす」「この国を救う」という全く異なる二つの託宣だった。「仇なす」と託宣したミーランは、思い余ってアスタナに毒を盛ろうとし、出奔。アスタナは同時期に生まれた異母姉妹と秘かに(知るのは神官長と父王のみ)入れ替えられ、第二夫人の娘として育てられることに。17年後、男勝りに育ったアスタナは、男子だけの学寮にも出没するように。その学寮に、シーハンからの留学生・サルーがやってくる。このシリーズのポイントは、2作目以降は・過去に故国からシーハンに移り、シーハンの国民となって故郷に帰る。・縁ある王族との恋。(女性の場合は男勝り)・政変。その後、シーハンへ。でまとまりそうだ。1作目のヒロイン・メイリンのもとで成長した2作目の主人公・ハジュン(結局禅譲するまで10年かかった模様)、その恋人で、シーハンに身を寄せてハジュンを待ったマーリィが、早世した父(ミーラン)に代わって親代わりだったサルー・・・そして、サルーもメイリンの村にいて、彼女の指示を受けて探索に出ているようだ。メイリンについてシーハンにたどり着いたティムが今はシーハンの首長だし、ターリのもとで目をし、メイリンの牧場に初期から参加したカイは、探索であちこちいっているようだ。と、時代は流れつつも人は繋がり続いている。カオリルもアインスの王となり、他国と友好を保ちつつ、良き王であるようだ。----------------------------過去、死を目前にした父・ミーランと一緒にファスールに来て、アスタナに出会っていたサルーは、再会した彼女にひかれていく。ミーランはサルーに罪を告白、アスタナを支えるよう遺言を残して亡くなっていた。第二夫人・カミーナが国母の娘・アルマラが実子だと気付き、次期神官長候補・モードンを操って国母に毒を盛り、アスタナに罪をなすりつけようとする。勘が良いアスタナは全てに気付きつつ、出奔。交流のあったタンダルの私塾に身を寄せる。また、飢饉に際して地方は特に困窮しはじめる。そこで起きた暴動の濡れ衣を着せられたタンダルの代わりにアスタナは捕まってしまう。サルーから(食糧)援助要請を受け、臨時公使として訪れたメイリンらによってアスタナ救出。(メイリン、マーリィと交流があったアスタナの叔母は、かつてハジュンの妃候補だった。)対策を講じない国に対し、地方に行ったアスタナは民衆を引き連れ、王都に戻る。飢饉を、ここまでの困窮を予見できなかった神官の怠慢を責め、神官の存在意義を問うたアスタナは、モードンに殺されそうになるが、それを助けたのはカミーナだった。アルマラが国母となり、神官長最後の託宣により神官府は廃止される。アスタナはサルーとともに旅に出ることに。タンダルや自殺を止められたモードンもシーハンへ。皆シーハンに・・・良いのだけれど、集まりすぎ・・・?国というシステムを考えさせられたりもする。けど。
March 6, 2013
recursive:再帰的な。自分自身に戻ってくるような。父が横領したとして姿を消し、義母、義弟・サトルとともに引っ越してきたハルカ。商店街のシャッターが閉じられたままの店が並び、中学の生徒数も減り・・・すでに“終わっている”ことがハルカにも感じられる町。住民が望みをかけた高速道路建設計画も中断されたままらしい。入学した中学でリンカと仲良くなるハルカ。気が弱く、臆病なサトルは予知能力の発現か、はじめてのはずのこの町のことや事故を見たことがあると言い出した。そして、この町にある「タマナヒメ」なる伝説上の女が、実在することを知る。不穏な空気と、不安定な年頃の主人公の揺らぎがうまい具合にリンク。転校したて、父が犯罪者ということで神経質になりすぎているのか、でも、それにしては怪しい住民の反応。ラストはちょっと唐突な感じもするけれど、一気に読める一冊。-----------------------------町は高速道路誘致に夢と最後の希望を抱いており、ハルカにタマナヒメのことを教えた外から来た教師・三浦は、高速道路誘致を見直す会のビラを持っていたことから反対派とみなされ、妨害を受け負傷。町のために身をささげ、自害する歴代タマナヒメと、直後に死ぬ関係のあった男たち。サトルは予知能力があったわけではなく、以前、この町に住んでおり、交流があった前タマナヒメが亡くなるところに居合わせていた。彼女からサトルが託された、高速道路誘致に有利な報告書を作成した亡くなった(殺された)教授のデータを隠した場所を現タマナヒメらは探していた。サトルを守るために町から離れた母は、生活の不安からサトルを利用されるとわかったうえで町に戻っていた。現タマナヒメはリンカで、サトルの記憶を取り戻させるために近づき、過去にサトルの前であったことを再現。それが未来予知に見えた。また、そのためにサトルを攫う。実父に見捨てられた自分はもとより、サトルも守る存在がいないと気付いたハルカは、疎ましく思ったこともあるサトルの話から隠し場所を導き出しリンカと交渉。サトルを取り戻し、死んだ前タマナヒメと火事の再現も阻止。タマナヒメは代々(適当に選ばれるのではなく)生まれ変わっているのかの疑問を抱きつつ、終幕。
March 2, 2013
なんと最終巻!でも、第一部完といった感じも。その後も期待したいのだけれど、どうかな。<戦国学園祭>で能力を顕現させた泉水子。影の生徒会長・村上穂高は、世界遺産候補となる学園トップを泉水子と判定。だが、陰陽師を代表する高柳は異議を唱え、再審を申し立て、穂高了承。穂高は泉水子に欲しいものがあるなら自分が何がしたいか考えるよう言う。また、高柳と交流のあるアンジェリカやクラウスらの正体も明らかに。泉水子と深行の選択。姫神による人類滅亡の未来を救うことはできるのか・・・。RDG/RDG2/RDG3/RDG4/RDG5----------------------------父から泉水子は、姫神は電気系統をも操れるため、能力が安定すればするほど軍事利用など世界中の研究機関に狙われる。また、山伏が研究していると明かされる。泉水子が山伏組織に不信感を抱いたことに同意し、山伏にならなくても泉水子が姫神にならない方法を一緒に探すと改めて伝えてくれた深行。泉水子の能力は生徒会も認めるところとなり、他のメンバーに対し、仄香も影の生徒会長・穂高の存在を明かす。アンジェリカとクラウスは国際自然保護連合[IUCN]の下で(内部の)予備調査をするために学園に来ていたことが判明。泉水子と高柳の一騎打ちの再審に際し、勝負の条件を決める。深行のことを本当に信じられた泉水子は、高柳との一騎打ちも姫神にならず、自分の力で打ち勝つことができる。学園は泉水子の結界が張られる。その時に泉水子の本当の気持ちを察したからこそ深行の中にいるのだと和宮から伝えられる。高柳に勝ったうえで、自分が世界遺産候補にならずに普通に高校生活を送ることができるよう高柳をトップに立てるように提案。陰陽師の対面もあり、そうすることで高柳を一応は味方につけることに成功。穂高は自分の後に影の生徒会長になるのが泉水子だと勝利者の意見として承諾。理事長の意向もあるようで、学園全体でクリスマス・イベントが行われることに。高柳をトップだとみせるため、学園の結界を解く泉水子。一目を避けるために着ぐるみの衣装を着たせいで、(閉所恐怖症だったらしく)不安になり、暴走。自分の中の闇を思い知り、式神や死霊らを増幅してしまう。深行の言葉によって落ち着き、表向きは高柳らが一掃したことに。高柳は泉水子の能力はすべての術の源泉で、陰陽師の術の一つ上の次元だとし、泉水子を隠す必要性を理解。泉水子は改めて自分がおかしな何かに利用されぬよう隠してほしいと協力を要請。父からの伝言を得たアンジェリカは泉水子と泉水子を守るチームとして世界遺産(複合遺産)になるかもと示唆。陰陽師寄りに見えた理事長の狙いはそこにあったらしい。深行の離婚した母は再婚し、アンジェリカの家と交流ある、IUCNの一員となっているらしい。深行のおかげで成績が上がった泉水子だったが、深行が留学を考えていることを知り動揺する。また、山伏以外の守りを得た泉水子(や和宮の憑いた深行)の研究を独占できなくなると危惧した母・紫子の友人で医師の中山瑞穂に騙され、海外に連れて行かれそうになる。助けに来て泉水子を逃がそうとする深行に、泉水子はどこでも一緒にいたいと告白。そこに雪政があらわれ、自分は組織内観察のような仕事をしていることを明かし、海外との取引で泉水子を連れ去ろうとした裏切り者の瑞穂を、公安でもある紫子が捕まえに来たと伝える。紫子は泉水子を守り、姫神の未来を変えるためには国家レベルの防衛が必要で、このために公安に身を置いたのだった。姫神が最も念入りにやり直したのは紫子の人生で、そのせいで姫神の人格には紫子の人格が色濃く反映されていること、自分が死ぬまで姫神の憑坐であること、本人である泉水子に姫神が憑いたのは深行を見に行ったからだということ(やり直す前の人生に深行はいなかった?)、鳳城学園の存在も新しく、学園で出会った生徒の分だけ泉水子の運命はずれ始めており、自分の代が必ず良い方向に変えてみせると、自分が何の影響も泉水子に残さぬことが未来の可能性になると選択したことなどを告げる。夫・大成はかわいい人、雪政はいっしょに死ぬことができる人だと言う。紫子はまた、泉水子に自分の年齢になった未来を心に描いても大丈夫だと伝える。一人ではないと感じる泉水子に深行はとりあえず留学するのを辞めたことを告げ、他におびえるくらいなら自分と一緒に大学に行って学び、自分で自分のことを研究するよう提案。未来への望みを持ち、外へと歩みだすことを選んだ泉水子ははじめは山倉山を出ることを阻止しようと計った和宮が、外へのはじめの架け橋としての深行と共にいることを理解。深行に感謝を伝え、心を通わす。神々は特別な岩に降りてくると古代の日本人は考えた。岩=鉱物=生命体から一番遠く、硬化して動かないように見えて、地球の芯にあってははるかに高い波動を持つ地球の本当の命。そういうものが地表に出てきて、降り注ぐ太陽に遠い自分たちの源を知る。歓び。神々とは歓びが本質。生き物にとっての善悪は超えた存在。姫神もそういうもの。古代の山伏は鉱物を理解し、火を扱う人々でもあり、金属精錬にも通じた集団だった。
March 1, 2013
「碧空の果てに」シリーズ、になるのかな?あの世界の別の国の話。だけど、ちらちらと彼女の影も。強国アインスに滅ぼされたトール国の王子・ハジュンは、秘かにシーハン公国へと脱出し、過去を捨てて成長していた。ハジュンは先代首長で、今は学院長になった人(ターリだろう)のもとで学び、卒業するまでにシーハンの市民権を得、ナンジャオ村の牧場で働き、各地の探索に当たっていた。村長であり、探索の采配を任せられているハジュンの市長はメイリン。10年ぶりに帰ってきた故郷はアインスに虐げられ、音楽まで禁じられていた。内心穏やかではないハジュンだったが、美しく成長した幼馴染で笛の名手のマーリィと再会。心通わせていく。だが、マーリィのもとに足しげく通ってくる青年・カオリルの存在が気になり、また、トールの民の一部は元臣下が中心となり、ハジュンを立ててトール国を取り戻そうと画策していた。暴動も起こり、ハジュンは否応なく巻き込まれていく。----------------------------カオリルはアインスの第一王子だった。カオリルが想いを寄せたために品定めされたり、王座を狙う王弟らの手のものに攫われたり、ハジュンと心通わせたことでも狙われることになったりするマーリィ。トール再興の気持ちは汲んでも、王になることは拒否したハジュンは理解者を得つつ、アインスの内紛の火種を解消するためにもトールから手を引くよう交渉。シーハン公国の調停者もたて停戦協議に臨み、トールの自治を含め10年の平和協定が結ばれることに。国のため、ハジュンは王となることに。ハジュンはマーリィに国を安定させ、譲位するまで3年待ってほしいと伝える。ハジュンの弱点として狙われる危険性もあることから、マーリィ一家はシーハンに移り、待つことに。
February 28, 2013
なんだか読み続けているシリーズですが、早く終わらないかな・・・。第体話 よつぎドール鏡に映らなくなった阿良々木暦は、臥煙を仲介し、影縫に相談することに。----------------------------問題解決のためとはいえ、忍によって吸血鬼化し過ぎた暦は、人間から変態し、吸血鬼化しつつあった。そんな時に、影縫と同じく不死身の存在を狙う手折正弦に駿河、火憐、月火、が攫われた。斧乃木余接の協力を得て、正弦に対峙することになった暦だったが・・・。正弦はこうなったのは自分を含め、駒のように動かす存在があるとほのめかし、暦を吸血鬼にするための手助けをする駒にされるのはうんざりだとかつて自分も制作に参加し、執着していた余接に自分を殺すよう頼み、余接はそれを実行。正弦は暦に忍野メメを探すよう言われる。裏にいるのは忍野扇のようなのだが、何が目的なのかまだわからず。2月13-14日の物語。
February 27, 2013
引き続き豊後関前藩の騒動。鑓兼一派の裏で糸引く田沼父子の存在。父・正睦を支え、速水の協力も得つつ、藩を守るために磐音奔走。50巻でラストになるのだろうか?まだまだあるが、こちらも早めの完結を希望・・・。----------------------------藩主と仲睦まじかった正室・お代の方は、世継ぎに恵まれず、いままでは話を受けなかったはずの藩主・実高が側室を受け入れたと聞き、乱心。国家老の正睦が側室を推挙したと思い込んだことなどから、江戸家老・鑓兼と結託していたが、すべて鑓兼一派の策略だったと知らされる。鑓兼は磐音の前に斃れ、お代の方は出家することに。正睦の狙いの一つは、性別のまだわからぬ側室の子ではなく、実高の選んだ養子を(跡継ぎと)幕府に認めてもらうことだった。また、笹塚らの協力も得て関前藩の物産事業の内紛の始末をつける。正睦は国家老を退くことを表明。だが、江戸家老がいなくなったため、しばらくは兼任することになりそうだ。
February 26, 2013
ポーランドで行われるショパン・コンクールの会場で、手の指をすべて切られた死体が見つかる。会場に居合わせたコンクール出場者のピアニスト・岬洋介は、取り調べを受けながらも殺害現場を秘かに検証していた。会場周辺ではテロが多発。しかし、コンクールは続行される。世界的テロリスト・通称”ピアニスト”が潜伏しているとの情報も入って・・・。ポーランド人コンテスタント、ヤン・ステファンスが本作の主人公。ポーランドのショパンと向き合い、父からの重圧を受け、テロに遭遇し、盲目のコンテスタント榊場隆平や岬の音に圧倒され、他のコンテスタンツの表現にも揺れ動きながらヤンは成長していく。実際にあったポーランド大統領の乗った旅客機墜落事故も盛り込まれ、コンクールでは辻井伸行氏がモデルだと思われる出場者も登場。ポーランドのショパンへの言及とポーランドの国民性は興味深い。コンテスタンツが弾いたのはどんな曲か、どんな表現の違いがあるのか聴き比べたくなるくらい音の表現が魅力的。榊場氏は辻井氏だとして、ポーランドのショパンの表現と岬の音はどんなだろう。ミステリとしては相変わらず微妙なところはあるのだけれど、岬と音楽の魅力の詰まったこのシリーズは今後も気になるところ。----------------------------ピアニストは審査員の一人でヤンの師でもあるカミンスキ。パキスタン国境の村でポーランド兵士による村民虐殺事件が起き、その時に止めようとした若いポーランド兵士である息子も殺された。アメリカ兵の告発で事が明るみになっても軍と政府は体面を守るために処分をうやむやに。そのことを恨み、復讐のために前大統領の旅客機爆破。コンクールの表彰式に出席する現大統領を狙った。自分の正体に気付いた2人の刑事も殺した。ポーランドのショパンの表現に固執していたヤンだったが、それだけではないことに気付き、本当に自分が望むピアノを模索して決勝で素晴らしい演奏を披露。見事優勝し、自分の、家の栄誉に固執する父と決別。岬は決勝で途中までは他を圧倒する演奏をするも、突発性難聴の発作が起き、演奏ストップ。課題曲の代わりにマリーの聴きたがったショパンのノクターン第二番変ホ長調を彼女への追悼に弾く。入賞は出来なかったが、アフガニスタン領内でパキスタン市民がタリバンの人質になっていたのだが、岬の演奏が流れていた間、砲撃も銃撃も一切やみ、人質が脱出できたとパキスタン大統領は岬に感謝の意を発信。岬のコンテストでの様子を日本で城戸晶や下諏訪美鈴、さよならドビュッシーの彼女が心待ちにしている描写あり。”彼女”はまた、ドビュッシーを弾くと呟く。岬と彼らとの再会はあるのだろうか?
February 22, 2013
トートロジィ・・・ってなんだろうと思い、意味を検索してみたが、トートロジー(Tautology)とは、ある事柄を述べるのに、同義語や類語を反復させる修辞技法のこと、らしいが、イマイチ意味を捉えにくい。「頭痛で頭が痛い」などの例文読んだらああ、と思うけれど。真面目な父に隠し子発覚の知らせを受け驚く僕。ある晩、仕事を終えて帰ってきた僕を待っていたのは、見ず知らずの女の子。中高校生と思われる彼女は、夢にも思わなかった異母妹だと言う。唯一の身内である放任主義すぎる叔母が突然海外留学へ。「実は、父親が生きているからそこでしばらく世話になれ」と言われ、訪ねた先で出会ったのは、腹ちがいのお兄さん。でも彼は、私のことを何も聞いていなかった・・・。上野鷲介の迷走、大塚鴇子の冒険、僕の結論/私の発見、の三部構成。視点を変えても驚くべきどんでん返しは少なく、どちらも軽いというか、うすっぺらく感じてしまった。----------------------------鴇子は実母は叔母・鳴海だと感じている。母は亡くなったという設定で上野家へ。実は鷲介の父の子ではなく、遊び人の祖父の隠し子が鳴海。でも、それも確認したわけではなく、あやふやなまま。鷲介はそれに気づき、父親はそれを了解したうえで引き取ることにしたと知る。鴇子の実の父親は不明。(鴇子はそのことを知らず)めちゃくちゃすぎる設定の割に、何の解決もしないというか、どこまでもあやふやなまま流してしまうので、それでいいのか?と疑問を覚えずにいられない。認知してない祖父の子かもしれない(鳴海)の子(鴇子)を、祖父の子(蔦夫)が、異母妹と思われる(鳴海)の子を自分の子として認知・・・(鳴海)が死んだわけではないのにめちゃくちゃだな。人が良い一家の話とはどうしても思えない。これもトートロジーというのか?違うような。同じことを違う視点で繰り返した構成だから?
February 16, 2013
幻想的な恒川光太郎「夜市」を彷彿とさせるところあり。さまざまな物語、昔話なども思い出す。でも、こちらのほうが各話の先は読めてしまったな・・・。夜宵ヶ淵という名の湖に浮かぶ小島の中で冬の一時期のみ開かれる細蟹の市では何でも売っているらしい。手に入れたいものがあって異形の市に来た私は人攫いにつけられ、助けてくれたと思った女にも襲われそうになったところを翁面を付けた赤腹衆のサザに救われる。何も知らずに市に迷いこむ人間(マドウジ)を保護する役目があるとサザはいう・・・。不吉を告げる双子、心の隙に忍び寄るようなうつろなるもの、機を織る細蟹さま、サザの手下の黒式尉の面の者(案山子)などの登場人物が幻想を作り上げる。----------------------------仮面をつけ、細蟹の市のルールで動く人々だが、れっきとした人間である、らしい。だが、人間でないものも交じっているようなのだけれども・・・。細蟹の市が何たるものか知る者はそれぞれ仮面をつけている。ごく一部の者、双子、うつろなるもの、細蟹周辺の者らは例外。それ以外で仮面をつけてないものはマドウジ(惑う児)がほとんど。市の季節以外は街で暮らす者と残る者がいるようだ。一ノ経 チョコレートスープサザを撒いた女はチョコレートスープを求めてシラ御前の館へ。スープの正体は胎児だった。女は妊娠しており、子のために良いと聞いたスープを求めていたが、それすらも騙されていたと知る。窮地を救ったのはサザだった。こういう話しあったよなー。細蟹さまが織り、限られたものしか身に着けることができない黒胞衣が不思議。一ノ緯 マドウジ気が付いた時には手枷をはめられていた。記憶のない少年は商品ではなかったようで、マドウジとしてサザに保護され、その後も身を寄せることに。血が水のにおいがする少年はカンナと名付けられ、細蟹の世話をしているという少女・まことと出会う。うつろなるものを名乗る少年は、カンナにナキが街で犯罪を犯し、刑務所に入ったため当分、市には戻ってこないと告げる。二ノ経 ヒナちゃんかくれんぼをしていて消えたヒナちゃんを探して細蟹の市に来た僕はサザに保護されるが・・・。ヒナちゃんを攫ったのは死体専門のブリーダー=ヒナちゃんは死んでいた→ヒナちゃんともっといたかった僕が殺してしまった。また、僕が少年ではなく大人だというオチ?には気づくが、真相に気付いたサザに市から追い出され、市の者たちの異常性を話す異常さは素直に怖い。二ノ緯 エフェメラの苗床カンナは稀少な生薬として高値で取引されるエフェメラの苗床だったらしいと判明するが、サザにその事実は他のものに話さぬよう言われる。小島に残るまことと市のたびにサザと戻るカンナはその度、再会。サザの持病は年々悪化しており、サザの仕事を手伝うカンナは赤腹衆になろうとするが、サザに向かないと言われてしまう。カンナにとって7度目の市、ナキが市に戻ってくる。市で仮面をする意味=市にいるうちは人間じゃない。人間のままでは細蟹の市に来てはいけない、商売もできないというルールが明らかに。人間であることを許されるのは魑魅魍魎のために機を織るたった一人の乙女・細蟹さまのみ。細蟹さまが一本足なのは他の有象無象と区別するため。三ノ経 雪客衆市のために働く雪客衆の仕事について。雑用と舞など。夜宵の宰相にあたる藐は営業許可を出し、街との渉外役でもある。三ノ緯 曼珠沙華カンナはナキに絡まれる。大人になりつつあるカンナとまことは、あらためて再会を約束。四ノ経 この世ならぬ色この世ならぬ色を求める男は、女に魅了される。サザの助けが及ばず、市のものが一枚上手だとこうなるという話。だが、求めるものが手に入った男は全てを失っても幸せだという。怖いおとぎ話にある結末、だな。四ノ緯 水のにおいのする復と子商品だったまことは、恩のあるねえさんたちが大事で、彼女らが仕える細蟹さまのお世話にも何の不満もない。だが、カンナにいるところに行きたいとだけは願っていた。サザの病は悪化するばかり。サザの仕事を代ってすることも多くなっても、カンナは赤腹衆にはなれないのだという。まことに会えない異変に気付いたカンナは、混沌のそばに在るうつろの手引きで細蟹さまらのいる禁断の〈奥の林〉へ。そこで見たのは、片足を切られたまことの姿。サザに捕えられたカンナは、代替わりでまことが足を切られ細蟹さまとなったことを知る。カンナは市を潰そうと決意するが、その時、ナキが現れ、サザの唯一の薬となったのはかつて苗床だったカンナの血だけだったこと、そのために罪も犯し、手遅れになった今、市を潰そうと戻ってきたことを告げ、薬になると知りつつもサザに大事にされたカンナを襲い、湖に落とす。サザに命をまたもや救われたカンナだったが、サザは力尽き、すきなところにいきなさいと告げ、息を引き取る。五ノ経 サザ雪客衆・タガネの昔話。今までの復習となる章。そして、四ノ緯の結末。ナキの企みは、仲間と共に市を爆破、市のものを片っ端から殺し、市の連鎖を断ち切るため、市の象徴である細蟹を殺すこと。サザ亡き後、黒胞衣に懐かれ、黒胞衣を纏ったカンナは、細蟹を守るためサザの名を継ぎ、ナキらを一蹴。赤腹衆は本来女のみがなれるものだった。サザは女。だが、黒胞衣に懐かれたことからカンナが異例でサザを継げることに。五ノ緯 サザ黒胞衣をマドウジを守るためにシラ御前に食べられてしまったサザが細蟹さまのもとへ。新たな黒胞衣を授ける細蟹(まこと)とサザ(カンナ)の一瞬の再会。もう市に来てはだめと言いながら、黒胞衣を渡す(まこと)。サザ(カンナ)は細蟹(まこと)を守るためにサザでありつづけ、解放するためにはうつろが死ねば市も亡くなると狙うも、うつろは死なず。章の名が経と緯になっているのは秀逸で、時系列としては一ノ緯~四ノ緯(女サザ)→五ノ経(サザ交代)→一ノ経(サザ/カンナ)~四ノ経→五ノ緯・・・二ノ経~四ノ経は補足、番外編と言った意味合いも持つかな。時系列を頭に入れて読むとまた違った側面が浮かび上がる。
February 15, 2013
Re-born はじまりの一歩に載っていた短編が含めた連作短編集として一冊に。なんとも伊坂氏らしい、と思う物語。夫婦は離婚、娘・沙希は寮に入るため、家族解散する日、父にかかってきた「友達になりませんか」メール。無視しろという沙希に対し、友達が欲しいという父、なぜか乗り気な母。なぜかメールの送り主・岡田と家族はドライブに行くことに・・・。----------------------------第一章・残り全部バケーションRe-born はじまりの一歩毒島から勝手に独立したことをとがめられた溝口は、つい岡田のせいにしてしまう。岡田には追手がかかって・・・?第二章・タキオン作戦父に虐待されている小学生・雄大は、溝口、岡田という大人と出会う。岡田は脅迫していた権藤に協力を頼み、雄大の父・坂本岳夫に権藤が未来から来た岳夫と信じ込ませ、雄大への虐待防止策を決行。(このままだと雄大から将来虐待を受ける。暴力をエスカレートさせた未来も最悪。次は暴力を辞めてみる策しかない。)岡田がまだ溝口と働いていた頃の話。第三章・検問溝口と岡田の後任の使えない相棒・太田に攫われた女。攫って移動に使う盗難車には金が積まれていた。議員が襲われたということで検問が敷かれていて・・・溝口が請け負った(下請け)仕事は、襲われた議員からで、女と不倫していた。女は気付くが、溝口らは知らず。女は議員に恨みを持つたくさんの人らと計画に参加し、凶器を捨てる役目を請け負っていた。金を見逃した警察官に疑問を持った溝口らは、誘拐を中止。金を三等分して逃げることに。溝口のあっけらかんとした適当さ、伊坂氏らしいキャラクターだなぁ。第四章・小さな兵隊実はスパイだという父親に担任の弓子先生に気を付けろと言われた僕。クラスの問題児・岡田君も先生の危機に気付いているようで・・・弓子先生はストーカーに狙われていた。母と違い、自分自身を信じてくれているような気がし、先生を守ろうとしていた小学生時代の岡田。ただ一つ、屋上から双眼鏡で小学校を覗いていたのはストーカーではなく、僕の父。出張中でもスパイでもなく、実は離婚していて、子供を見守っていた。・・・僕はその後映画監督になっており、インタビュー相手は岡田を探す太田。「嫌なことがあったら、バカンス(バケーション)のことを考えることにする。」作中に出てくるゴダールの映画「小さな兵隊」の主人公のセリフらしい。第五章・飛べても8分太田の後、毒島から秘密裏に命じられ、溝口と組んでいる高田。溝口が事故に遭ったきっかけになった相手は、毒島を狙っている人物らしい・・・。自分のせいで毒島にやられてしまった岡田のことを悔い、毒島へ復讐を企てた溝口。太田や、事情は知らないが溝口に親切にしてもらったりした人らもそれぞれ協力。毒島は怖い男だが、溝口のことが気に入っている。岡田のことも実はそれほど怒っておらず、部下への見せしめのために手を下したと思わせていた。条件は二度と姿を見せないで暮らすこと。毒島から教えてもらって溝口がチェックしていたサキの食べ歩き日記=岡田だったらしい。真偽を確かめるためにメールを送る溝口・・・希望のあるラスト。サキを名乗る岡田は沙希らとまだ交流あるのだろうか?どうやら岡田が小学校時代に出会った赤ジャージの男は毒島だったらしい?事情は知らずとも連動して事がなる。知っていて仕事分担。それらしくみせて騙す。とかも伊坂氏らしい。
February 6, 2013
―a story of stories-以前、「Story Seller」に収録された”光の箱”が、連作短編集となり、一冊に。地元の同窓会に向かう圭介が思い出す昔のこと・・・両親の離婚をきっかけにいじめられた圭介は、物語を作ることで寂しさを紛らわせていた頃、ただ一人、話しかけてくれた弥生が描く絵と一緒に絵本を作ったこと・・・切ない状況、つながる優し想い、物語。----------------------------最悪を想定させるも、そうならないオチに救われる。・光の箱いじめられ続けた中学時代はこっそりとだった弥生との交流。主犯格と別の高校になって醜い攻撃から解放された圭介は、同じ高校に通う弥生が絵の他にカメラに興味を示しているのを残念に思ったり、同級生の富沢から弥生を気にするマサキの存在を知り、不安に思ったりする。圭介にも気軽に話しかけてきた弥生の親友・守谷夏実が突然の引っ越しをする。弥生のカメラのフィルムには、夏実のありえない写真が撮られていて・・・弥生が夏実を襲った(脅した)のかと思った圭介は彼女と距離を置くが、同窓会までの時間に別の可能性に気付く。・・・圭介視点の話の主題は赤鼻のトナカイ。この歌を題材に「リンゴの布ぶくろ」という物語を圭介が、絵を弥生が描き、はじめて絵本を作った。実は夏実を襲ったのは弥生の父で、弥生自身も父にされていたことを明かしたくなかったため、弁解しなかった。弥生に助けられた夏実は、真実を知り、転校したのだった。誤解したままでも、弥生を嫌いにもなれなかった圭介は、卯月圭介の名で童話作家に。弥生視点の話で同窓会に向かう彼女が結婚しており、夫は正木・・・というリードの中、真相が明かされていく。同窓会は2年にわたって行われ、前年に真相を聞きに来た圭介と再会し、その後、結婚していた。(圭介視点の現在は前年、弥生視点の現在は今年)実は2年目の同窓会は、過去にこだわり結婚式をあげなかったのではと思った夏実が企画した二人の結婚お祝いパーティーだった。夏実は山岡昌樹と結婚。弥生視点での主題となる(圭介がつくった)物語は「光の箱」、ママがサンタにキスをしたの歌をベースにした物語。英語と日本語訳では歌詞がちょっと違い、英語版で子供はママにキスをしたのが誰か気づいていない(日本語版ではサンタ=パパと気付いている)。光の箱では、サンタがみんなにプレゼントするのは幸せとか、愛とか驚きとか、喜びとか、思い出・・・自分がこの世に一人ぼっちではないことを信じさせてくれる何か。としている。ちょっといい話かも。分かりやすく?正木と昌樹をミスリードさせようとする仕組み。正木圭介、葉月弥生、守谷夏実。・暗がりの子供自宅介護になる手術を控えた祖母、母のおなかには妹か弟が・・・。両親の祖母に対する自分の前でするのとは別の顔を見た(話をこっそり聞いてしまった)莉子は、図書館から借りた絵本・文 卯月圭介、絵 正木弥生の「空とぶ宝物」で、ばらばらになったものがあつまる穴に落ちた真子と空想で話すように。絵本はなくしてしまって結末が分からない。そんな中、真子は莉子に母のおなかの子をダメにする方法を教えるのだった・・・物語の結末・・・穴の中の王女は片羽をなくしていた。たまに皆が協力して鏡を持って地上にいき、鏡に写して両羽にみせ、王女は飛ぶ気分を味わうのだった。どんな嫌なことがあってももう平気だと自信がついた(物語の中の)真子は家に帰る。何をどう考えるかは自分で決めればいい、取り戻した絵本の結末を読んだ莉子は怖ろしい考えを捨てる。そして・・・中学2年生になった莉子は、4歳になる妹・真子と一緒におひなさまを飾る約束をする。あれから5年、祖母他界。あのころの義母介護に対する複雑な母の胸中を察する莉子だった。・物語の夕暮れ妻に先立たれた与沢は、妻と続けていた子供たちへのおはなし会を辞めることに。妻が亡くなってすぐにやめようと思っていたのだが、自分の作ったおはなしをしているうちに少し続けようと思ったのだった。偶然、自分が長年暮らしていた家に童話作家が住んでいると知った与沢は、その作家に祭囃子の音を(電話で)聴かせてほしいと頼み、なぜだか快諾される。祭囃子を聴きながら死のうとした与沢だったが・・・。与沢の作った物語は、かつて妻・時子に話したもの。かぶと虫から光の箱を盗んだ蛍の話、月を取りに行ったかぶと虫の話、力尽き、やもりの医者に手当てされながら何も残せなかったことを嘆くかぶと虫の話、飲み込んだ箱で苦しむ蛍を手術することになったのは、かつて落ちてきた水で再び生きることにしたやもり。その水はかぶと虫が月を取りに行くために落としたもの・・・名にも残せないと嘆くかぶと虫は、やもりを救っていた。蛍から光の箱を半分切り出したやもりはかぶと虫の元へ。かぶと虫はその光は自分には強すぎるようになったと、細かく砕いて周囲に撒く。誰も気づかない程度の光でも、世界は少し明るくなった・・・小学校の先生をしていた与沢夫婦には子がなく、生徒らにも何を残せたわけではないという思いがかぶと虫の姿にのせられていた。亡き妻を想いながら飼っていたインコを離し、彼女との思い出のなかで語らいながら彼女の元へ行こうとする与沢。だが、そのインコに導かれたのはおはなし会にきていた真子。祭囃子の音を聞かせることを快諾した童話作家・正木圭介は、実は与沢のかつての教え子で、与沢が現実から逃げ込む意味ではなく、物語の中でいろんなものを見て、優しさとか強さとか、いろんなものを知るために物語を作ってみたらいいと言った言葉がきっかけで物語を作るようになったのだった。その後・・・病院の休憩スペースで語らう老人、彼よりもずっと若い男女、女の子の姿を見る郵便配達員の姿が・・・創作物語と話をうまくリンクさせて展開。ご都合主義だろうと、”ノエル”だけに奇跡があってもよい。
February 2, 2013
本編感想などは→コチラ~ネタバレ登場人物メモ~佐伯清剛 ~病院長であり、総合外科教室教授。 次期病院長選挙再出馬宣言時に、大学病院機構改革を発表。 日本の医療の再生のため、各部門・教室の統合や、 病院長統括下にした救急センターでの新人研修一元化、 手術室と外科病棟の看護部門の統合、 非公然だった各特別室の一括管理を目指す。黒崎助教授~心血管外科トップ。40代半ば。佐伯外科の精神の体現者。 研修医を一括して初期研修させるという佐伯の構想に賛成。 天城ではなく自分にまかせてほしいと立候補。 8月から救急部創設に当たり新人教育も引き受ける。 佐伯外科の本道を継ぎ、2分割した第1外科教授に。 救急センター創設までは救急部を内包、多くの研修医を指導。垣谷講師 ~心血管外科ナンバー2。外科医歴12年目。前医局長。 世良のサッカー部の大先輩。高階講師 ~腹部外科。30代後半。 帝華大学第一外科出身。西崎教授の秘蔵っ子。 手術室からICUを分離し、創設した救急センターに統合、 総合外科教室で統括する構想を持つ。 天城は佐伯の新組織の理念とは相容れないと スリジエセンター創設中止をもくろむ。 その後の高階の丸投げ手法は佐伯から伝授されたもの。 佐伯外科の秩序と日本の医療を守ることのために動くが、 佐伯の過激な改革案に戸惑い、東城大の秩序を守るため、 また、佐伯が後継者に黒崎を選んだことなどから院長戦では江尻につき、 佐伯に引退を勧告する。だが、佐伯外科に敬意を払い、江尻の要請を断り 佐伯外科を2分割した第2外科稼働を選択。助教授に。 このあたりを見ると敵をいっぱい作って因果応報の感あり・・・。 天城を直属の部下にしたかったが帰国、世良も去り、あちこち計算違いが。藤原 ~元手術室、現総合外科婦長。 榊原の命を受け、高階と手を組み、江尻を院長にするよう画策。 坂田が高階を呼ぶのを聞いたことから”ゴン”呼びを知る。榊原 ~総看護婦長。患者の平等と利益を重んじ、 VIPのための特別室[ドア・トゥ・ヘブン]構想に反対。 佐伯院長の大学病院改革を潰すことを決意。藤原に協力を頼む。 榊原は次期総婦長に藤原をと考えていたが、 最大の立役者を外部に出せと江尻から横槍が入り、福井が総婦長に。 天城 ~モンテカルロから招聘された天才医師。 口八丁手八丁で周囲を丸め込んで思い通りに運ばせようとしたり、 名士の手術にあたって大金を寄付させようとしたり、 (スリジエセンター創設のためもあるが) 周囲を翻弄しながら奔走するも、高階の暗躍や、周囲の妨害にあう。 過去唯一の死亡者を出した症例にあたり、動揺。 高階、鏡の力を借りて手術を乗り切るも命運が尽きたとモンテカルロへ帰る。 その後、世良を呼び寄せるも事故死。世良 ~桜宮がんセンターと富士見診療所に研修→ →総合外科の医員として腹部外科グループに所属も、 天城の面倒を見ることになり出向したスリジエセンターに所属。 心血管外科グループと共に働く。 →所属が腹部外科に戻るも、天城のサポートは変わらず。 →医局長に指名される。 速水の天才の片鱗を見るにつけ焦ったり、天城、高階の間で翻弄される。 天城の理想実現を夢見ており、天城帰国後、 渡海も天城もいない大学病院を去り、富士見診療所に引きこもる。 モンテカルロへ行き天城の死を知る。自暴自棄になりかけるが、 天城の意志を継いだ自分ができる革命をと日本に戻る。 極北ラプソディーはそれから10数年後のこと。花房 ~天城の手術担当メンバーになったりし、世良とも順調だったが、 天城帰国後に大学病院を黙って去った世良と再会するも、世良は・・・。 速水 ~新入研修医。学生時世良の指導を受ける。学生時代の剣道部顧問は高階。 高階が垣谷らでは(速水は)手に負えないと判断し、世良を医局長に。 オペ室の悪魔・渡海先生直系の精神的血族by高階。 初日からソビエト当局に拘留された影響で遅刻する問題児。 学生時代に渡海から出た宿題の答えが知りたいと佐伯外科に。 大学病院というシステムを教え込む初期教育を徹底させるため、 (医局長・世良にも荷が重く、高階は剣道の教え子であることもあり、) 異例ながら偉大なる凡人・黒崎が新人研修責任者に。 医局での習得記録を塗り替えていく。天城の講義を胡散臭く感じる。 学会で佐伯、天城、高階、ら大半の医局員は東京に、 黒崎、世良らは江尻の主催する講演会に向かい、大半の医師が不在の中、 東城デパートで火災発生。・・・そして、伝説が生まれる。 黒崎のもと、若輩ながら救急部門の象徴的存在に。彦根 ~厚生省に入り、医療行政に携わりたいと考える学生。 医療は万民に平等に提供されるべき、最低限の安全保障と考え、 天城の講義を受け反論する。天城、坂田双方から医療行政に携わるつもりなら 現場の医療(外科)に触れたほうが良いと助言を受ける。 また、天城の手術を見て考え方を改める。 江尻 ~循環器内科教授。高階と手を組み院長に。 だが、業者との不適切な関係が表沙汰になり、着任半年で辞任。 その後、半年以上も病院長は不在になり、 佐伯教授の大学病院改革の素案は次々立ち枯れ状態に。 坂田 ~厚生省健康政策局医事課課長。 日本の医療を根っこから変える約束を高階としており、 天城が名士から寄付を受けるのを阻止するよう高階に頼まれ、協力。 佐伯外科の前身、真行寺外科の3人衆は患者第一の桜宮市民病院・鏡博之部長、碧翠院桜宮病院・桜宮巌雄院長、佐伯教授。桜宮市医師会(会長は真行寺・副会長は桜宮巌雄)常任理事の一人・三田村は産婦人科の名誉院長。
January 29, 2013
全2731件 (2731件中 1-50件目)