ヘナヘナライター 生態日記

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加藤美保

加藤美保

2003.10.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
「レッド・ドラゴン」を観た。「羊たちの沈黙」「ハンニバル」に続く、人食いレクターシリーズ(?)の最新作だ。

この三作品は、それぞれ違う監督によってディレクションされている。「羊たちの沈黙」はジョナサン・デミ、「ハンニバル」はリドリー・スコット、「レッド・ドラゴン」は、プレット・ラトナーだ。

以前、「なぜ、『羊たちの沈黙』への出演を決めたのか?」という質問に、「ジョナサン・デミがモラルの高い監督だから」と答えていたジョディ・フォスターのインタビュー記事を読んだ記憶がある。刺激の強い内容そしてテーマを持つ作品だからこそ、娯楽性と抑止力のバランスをうまく取れる監督が必要だという内容だった。
私はこのジョディ・フォスターの話を「ハンニバル」を観て、改めて実感した。モラルに裏づけされたエンターテイメントなくして、この原作の本当の旨味は引き出せない。この作品は、ストーリーを忠実に映像化しただけだとサイコ映画というより、単純なスプラッタ・ホラー映画と化してしまう。

「羊たちの沈黙」が当時あれほど話題を呼び、客を集め、アカデミー賞まで受賞したのは、あの作品が単純な、スプラッタ・ホラー作品だったからではないはずだ。
レクター博士の持つ闇と、FBI捜査官クラリスのクールでありながらどこか不安定で危うい精神との邂逅。文字通り純粋に惹かれあうふたりの間に漂うものは、一触触発の危険な空気。優しく触れ合ったその手で、前触れもなく相手の急所をえぐるような、そんな緊張感をはらんだ関係性だ。それこそが、作品の魅力でありベースでもあったはずだ。余談だが、ジョディ・フォスター演じるクラリスの眉間の皺がピクピクと神経質にゆれるとき、そこには、クラリスの複雑な思いが現れる。レクターに対する嫌悪感や恐怖感、法の番人としての強い志などと同時に、それらとはまるで正反対の彼女の思いが、レクターの闇に強く惹かれ、抗いがたい魅力を感じてしまっている彼女の苦悩が現れる。徹底的なクールでクレーバーな仮面を被って自分をコントロールしているクラリスが、そのコントロールの箍をはずし暴走する、いや、すんでのところで暴走を食い止めそうな、そのジレンマも魅力的である。

というわけで、超エンターテイメントスプラッタ・グロ作品、「ハンニバル」に、ジョディ・フォスターが出演をしなかったのは、よく理解できるお話である。
そして「レット・ドラゴン」について、巷では、「羊たちの沈黙」とよく似た作品というような評価を受けているらしい。

私がこの作品を観て思ったことは、プレット・ラトナーはあまりにも「闇」から遠く離れた位置にいて作品を制作する監督ではないのかということ。


同じ小説家によって書かれた作品、同じテーマと同じ主人公という世界を、違う監督にディレクションさせるとどう変わるのか、このシリーズではそんな楽しみ方ができる。当然のことながら、リドリー・スコットのエンターテイメントを極めつくした演出方法を好む人も大勢いるし、プレット・ラトナーの人間味溢れる作品を好む人も多いだろう。
私は、ジョナサン・デミの描く、ピンと伸びた一本のピアノの弦の上をそろそろと歩くような、そんな緊張感をはらんだ精神的な世界観に強く惹かれる。





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Last updated  2003.10.14 11:53:57
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