りじょん

2004.12.15
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銀魂編2




 ずりずりずり…

 土の道路に、二本の轍。
 引きずられいく、翠さんの下駄の跡だ。
 (これって任意同行のはずなのにまるで護送じゃねえの)
 さすが、恐れられている真撰組。

「すいません、自分で歩くんで、離してもらえないですかねえ」

 着物の襟首をつかまれている翠さんは、ひきずっている張本人――土方副長を仰ぐ。
「駄目だ」
 つれない。
「というか、実は天人じゃないんで…この扱いはちょっと」
 ふと隣を見れば、困惑した顔の山崎。
 同じ苗字のよしみで、にっこり笑ってみる。(実際は「にへら」と。)
 すると山崎は、驚いて目を大きく開いた。
「ついた」
 副長が短く告げた。

 首を動かせば、目に入るは『真撰組屯所』の看板――

「屯所!!!」

 翠さんは目を輝かせた。
 (連行されるからもしかしてと思ったけど!!)

「あァ、今からとり調べさせてもらう。本当に密入国者じゃねえのか、な」
 そう言って副長は、翠さんを立たせた。
「入れ」
 なんか冷たい…。
 が、屯所に入れる喜びの方が強い。
 (例え犯罪者となろうとも!!)
 いや、いいのかよ。

 通されたのは狭い和室だった。
 ここが取調室らしい。
 総悟や局長がいないかと期待したが、どうも見回りに出てるらしい。
 (ちい! でも、総悟に先に会ったら井上に殺されるな…つうか、そういや井上は!?)
 いつも一緒に飛んでいた井上さんのことをようやく思い出す。
 (まさか……いや、有り得るな)

「取調べを始める」
 声がして、襖が開いた。
 副長自ら――という訳にはいかないらしい。見知らぬ隊士だった。
 しかし、その後ろに、ついているのは副長である。隊士の話も聞かず、翠さんは彼に見入っていた。

 黒く短く跳ねた髪…一文字に結ばれた唇に、銜え煙草。
 かっちりと隊長服を着込み、腕を組んでいる。
 そして、漫画で読んだとおり――瞳孔が開いてるのではないかと勘繰りたくなるような、鋭い目つき。

 ……きゅーん。
 翠さんはときめきを隠せず、うつむいた。
 (やっべ。まじで副長だ!副長だー!!)
 何を今更。

「えー、じゃあ聞きますが」と、隊士が始める。「貴方は天人なんですか?」
 核心的な質問に、それでも翠さんはうつむいている。
「……天人、と」
 隊士が取り調べ帳に書き加える。
「じゃあ次に、ちゃんとビザは……」
「は? ああビザ…持ってない(だって必要ないし)」
 隊士はふむふむ頷く。
「密入国、と」
 翠さん、話も聞かず、副長を見る。
 副長、じっと見つめ返す。
 翠さんときめく。
 副長、ふうと息を吐く。
 翠さん、更にときめく。
 副長、面倒そうに口を開く。
「入国管理局にしょっぴいてけ」
 翠さん、更にときめ…かない。

「ええ!? 知らぬ間に何故!! 人の話聞いてました!!??」
 無茶な言い分である。
「聞いてねえのはそっちだろうが」
「いや、私は副長を見てただけ…て何言わせてるんですかーやだもう!」
「ああ!? てめえで勝手に言ったんだろうがァ!」
 的確な突っ込みである。
「じゃあ密入国の天人ではない、と?」
 見かねた隊士が取り持つ。翠さんは威張った。
「あたぼうよ! 生まれも育ちも生粋の日本人!」
「空から降ってきといてか」
 副長が煙を吐く。
「いや、そんな人たくさんいるでしょう?」
 銀魂だし…
「たくさんいてたまるか! お前日本人を何だと思ってんだ」
「えー? もうしょうがないなあ…どうやったら証明になります? 生まれは西国で、名前は山崎 翠と申しますが」
 しょうがねえのはお前だ、という顔の副長が、ぴたりと止まる。

「山崎翠…?」

「ええはい。どうか?」
 こっちの山崎と同じ苗字だからか…と思っていると。
 隊士がのんびり言った。

「そういや今日、そんな名前の会計方の人が来るっていってましたねえ」

 ……はい?

 思わず副長を見やれば、彼は物凄ッく嫌そうな顔をした。


★★★

 とある茶屋。

 それでも動く舌。
 伏せ字伏せ字伏せ字の嵐。
 客たちの白い目も気にしない。

「でさ~、その時○○○が○○したらしくって」
「あ~、よくありますいぜぃ、そういうこと。×××も入ったりして……」
「俺もな~……」

 すっかりうちとけた感じの井上さん、沖田さん、局長であった。
 まったりゆったり……。
 青い空でも見上げながら……。

「あれまぁ、あんたらこんな所で何してくさるの」

 手に持っているのは大量のあんこの入ったうつわ。
 あっちこっちはねた銀の髪。

「あ―――――――――――――――!! 銀魂に主人公はってる銀さんじゃないの!!」

 一時、間。

 銀さんは井上さんを凝視しながら言った。

「真っ昼間から……やるなぁ」

 ……あ~あ。
 こうして、銀さんも加えての伏せ字談義が始まろうとした時だった。

「銀さん! あんた、またそんな大量のあんこ買ってからに!!」

 黒縁メガネの黒頭。

「……」

 咄嗟に名前が出てこない井上さん。
 とりあえず、観察。
 と、目があった。

「新しい隊長さんですか」

 ……確かに。
 井上さんが着ているものは真選組の隊服。
 しかも、沖田さんや局長と同じ隊長服ではあるが……。
 皆の視線がつきささる。
 井上さんはためらわなかった。

「うん」

 大きく頷く。

「ふ~ん」

 とは、銀さんと沖田さんの言葉。
 局長は少し上を向き、考えたようだが、「ふ~ん」と同じく呟いた。

「そうなんだぁ……」

 誰も何も言わない。
 にっちゃにっちゃとは銀さんがあんこをかき回す音だけが目立つ。
 黒頭の目がかあっと見開いた。

「って、知らんのかぁぁぁぁ……いっ!!」

 この世界にきて……初めての……つっこみであった。





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Last updated  2020.01.18 18:25:08


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