りじょん

2004.12.21
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銀魂編8

(聞く必要性がわからないよ、井上!)
 ……とは、翠さんの密かなつっこみである。

「はれんち娘」

 ……なんですと?

「そんな印象だったから」

 皆さん、目が点である。
 井上さんはぽんと手を打った。

「じゃあ、『はんなり』で」

(何だっけ……雅な感じだし、これでいいや~)
 通じてないのか。
 通じているのか。
 沖田さんもぽんと手を打つ。

「じゃあ、『なす』で」
 どこから出た、沖田さん。
「それなら『トマト』が」
 それでいいのか井上さん。

 べっしぃっ……!!

 井上さん、沖田さんのでこに平手が飛んだ。
 井上さんには……。

「緑黄色野菜名で呼ばれて満足なの、井上!!」

 多少ずれたつっこみが翠さんから。
 沖田さんには……。

「名前に関連づけろ、名前に!!」

 ごもっともなつっこみが土方さんから。
 井上さん、沖田さんはむすっとふくれた。

「じゃあ、姫で」
「じゃあ、それで」

 いいのか、沖田さん!

「うわあい、王子!」
「いや、それは勘弁……せめて殿でお願いしまさぁ」

「姫……」
「殿……」
「……」

 翠さん、土方さんが眉間にしわをよせ、つぶやいた。
 局長は口元を袖で押さえ、笑いをこらえていた。

 ……こうして……朝っぱらからテンションの高い呼び方会議は幕を下ろした。

★★★



 真撰組の一日のお仕事。
 特にテロも事件も張り込みもない日は、市中見回りがそのメイン。

 しかし、井上さんと翠さんには、それより先に大きな仕事、むしろ使命があった。


 朝ごはんである。


 隊士が全員住み込むこの屯所では、朝ごはんも皆一緒。

 となれば当然――

「ふっくちょー!!」


 こういう騒ぎが起きるわけで…

 広い座敷で各々好き勝手に朝餉を摂っている所、新人二人はやはり騒がしい。
 お膳を持ったまま、上座に駆け込んでくる。

「どやかましいッ! 埃が立つだろうが! 新人は隅で食え! つーか給仕とかしろやテメェら!」

 副長は気になるツッコミ所を一気にまくし立てた。
 井上さんの呼びに関しては、言及する気も起きないらしい。
 …だが、思い切り玉子焼きにマヨネーズをかけている場面なので、威厳はない。

「いや~! やっぱ、どうせ給仕するなら…ねぇ、井上ちゃん!」
「やっぱねぇ~、翠さん!!」

 ずざっ、と膝を進める。


「ご飯のお代わり如何ッすか、副長!」
「味噌汁のお代わり如何かしら、殿!」
「私が丹精込めて炊いた米で!」
「私が心血注いで作った味噌汁で!」

 こいつらが丹精込めたり心血注ぐと、背筋がぞくっとするのは何故だろう……

 米と味噌汁は山崎にでもやろう。

「味噌は白ですかィ、赤ですかィ」

 横の沖田は、そんな当たり障りのない質問をする。
 見れば判るはずなのに。

「情熱の赤、むしろ赤い薔薇の赤! ですわ殿!」
 答える井上さんは、呼称に応じてなのか口調が可笑しい。

「普通、味噌の種類はそんな風に形容しねえんじゃねえのか?」
 という局長の素朴な疑問は流される。
 ちょっとショックな局長に、翠さんが、

「やだ局長、血の赤とか言わないだけマシでっさ!」
「そうか? そうだなー、あはははは」
「あははははは」

 その会話を耳にして、副長はげんなりする。

「どうでもいいからささつとテメェらの席に戻れ。気安く上層席にくんじゃねェ」

 沖田と味噌について怪しい談義をしていた井上さん、それを聞きつけ、

「あーら! 私は一応、隊長なんですけどね! 上層でしょ!」

 ぐわ、と、沖田と副長の間に膳を押し入れる。
 自分の席は此処だといわんばかりに。

「馬鹿野郎、『一応、隊長』の、『一応』の比重がでかすぎるだろうがァッ!!」
 副長はその膳を返さんばかりだ。

「うわー巧いこと言いますね副長。あははははー」
「あはははー」
 と、これは局長。

「まあまあ、朝餉くらいいいじゃないですかィ土方さん。大人気ないですぜ」

 明らかに面白がって、沖田が進言する。
 井上さんはぱぁっと顔を輝かせ、

「ほうら! 殿もこういってることですし!」
「どういう理屈だ」
「え、だってやっぱ『つちのこ』よりは『殿』の方が身分が」
「俺は『つちのこ』じゃねェって何回言やあ判るんだッ!!
 つーか身分って!!」

 つっこみが脱線してます、副長。
 これでは朝の二の舞になると踏んだのか、慌てて局長、

「そうだ、トシ、朝餉くらい我慢しろ! 何も見回りに同行するなんていってる訳じゃねえんだし…」 

 二人はそこに便乗し、
「そうそう、見回りに同行するなんていってるわけじゃあ…」
 といいかけて、ふと止まった。

「市中見回り…」

 ぽつりと呟く。
 どうも局長は、余計なことを言ってしまったらしい。

「どこまでもお供いたしますわ、殿!!」


 そりゃあもう、鼻息を荒くして土方さん、沖田さんに飛びつく二人。
 あ~あ……とどこからか、声が聞こえる。
 もう手遅れだが。

「……今日の見回りは中止……」
 顔色を悪くした土方さんが飯もそこそこに立ち上がる。
 それにすがりつく翠さん。
 目が血走っている。

「何言ってるんですか!! 市内安全!! 安全こそ、生きがい!!」

 何を言っているのか。






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Last updated  2020.01.18 18:22:41


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