りじょん

2004.12.22
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銀魂編9


「何が言いてえ!!」

 まとわりつく会計方を振り払いながら、やっぱり副長はつっこんでくれた。

「ちょっと警察っぽい言動で攻めてみました★」

 敬礼をする翠さん。ついでに失敗したウィンクとか。

「何処がだッ! むしろ攻めれてねぇだろうがァッ!!」
「つっこむ所が違いますぜ土方さん! 正しくは、『攻めるって何をだァァ!』、ですぜ!」
「あっはは、総悟に駄目出しされちゃおしまいだぞぉ、トシ!」

 幹部までおかしくなってきた。
 平隊士たちはそそくさと逃げを打つ。
 減っていく人口に気付かぬまま、論争は続いた。

「だって、何事も経験じゃないっすか! 一回どんなものか体験してみて、無理っぽかったら諦めますから! 
お願いしますよ副長~見回りできないなんて何のために真撰組入ったんだか!」

 両手をすりあわせ懇願する。

 いや、何のために入ったんだよ。
 てめぇ、会計だろ。
 副長の脳裏には、クール(原級)・クーラー(比較級)・クーリスト(最上級)な返答が浮かぶ。
 しかし、敢えてそこをつっこむのもいい加減飽きていた。

「殿! 私は隊長だし、やっぱ行くべきよね!」

 会計よりは正当な権限があると踏み、井上さんは手を挙げた。
 沖田は焼き魚を冷静に頬張りながら、

「ほれはふぇつにはまいまふぇんぜぃ」

 口の中に、まだ魚が入っているのだ。
 井上さんは自信満々に、副長を振り返った。

「愛しい姫のためならどんな願いも叶えますぜ、ですって!」

 そんなことは言ってないのは誰の目にも明らかだ。
 副長はつっこみ疲れたのか、はー、と息を吐いた。

「……仕方ねえ。今日だけだぞ」

 半ば、というよりはほぼ自棄で、副長は許可を下した。

「きゃあやっぱりつちのこも愛の前にひれ伏すのね、殿! さっ、早く二人で、見回りという名のランデブーを!!」

「誰がンなこと許可したァァ! 山崎!」
「はーい!!!」
「…お前じゃねェ、退出しようとしてるそこの山崎!!」

「は、ははは、はいッ!!!!」

 そろーりと、膳を持って退散しようとしていた最後の一人、山崎は、びくりと顔を上げた。

「お前、総悟とこいつに同行しろ」

 副長は顎で、井上さんを示した。

「ええええーッ!!!!」

 双方向から抗議があがる。

「そんな!せっかく手に入れた公式二人きりタイムが!!」

 二人きりを邪魔された井上さんと、…青ざめた山崎から。

「お、俺がですか! いや、それなら俺はむしろ翠ちゃんととか…」

 完全なる最凶ボケコンビよりは、つっこみ時々ボケの翠さんの方が、害は少ないと判断したのだろう。
 しかし、副長は無慈悲だった。

「こっちには俺がつく。総悟たちだけじゃあ、色々不安で仕方ねェからな…」

 何せ、前科がある。
 いつまたどこで、騒ぎを起こすか知れない。
 しかし、翠さんと山崎だけにするというのも不安である。

 というより……
 つちのこ呼ばわりされるのとか、
 どちらの山崎、といちいち付け加えるのが嫌だっただけかもしれない。

「ふふ、ふふふふふ副長! いいんですか!!」

 踊りだしそうなほど喜びたがっている翠さんたちに、言う。

「甘くはねぇぞ。とっとと着替えて準備しろ」

 鋭く言っても、そんなことが効く二人ではないのである。


★★★


 てくてくてくてく……道中を歩く三つの影。

「殿!! パトロールって退屈ですね!!」
「そうですねぃ」
「そこらへんに座って語り合いましょうよ!」
「ああ、いい場所が……」

 沖田さんは通りかかった川原に足を迷わせた。
 緑の上にどっかり腰を下ろす。
 井上さんもにこにことそれにならう。

 空は青く、白雲が長く這っていた。

「いい天気ですね……」

 暖かい風が背の高い草を揺らす。

「どうですねぃ……」

 側では黄色い小さな花がなびく。

 ほぼ同時だったと言う。

「ぐご―――……」
「ぐご―――……」

 二人が寝たのは。

「……お二方」

 目撃者、山崎退はそう語る。
 声をいくらかけても起きる気配は全くない。

 ただ……。

「殿~……」
 井上さんは意識があるが如く、沖田さんに近寄っていったという。

 しばらく待ってみた。
 一向に起きる気配は無く……むしろ、寝息の浅いその姿は深く深く眠っていることをうかがわせた。

「……どうするんだ、これ……」

 こっそりつぶやき、ため息ひとつ。
 まぁ、無理もない。

「よぉし……」

 山崎は覚悟を決めた。
 そろおっと手を二人の頬に伸ばす。
(軽く、軽く叩くだけ……)
 ぎゅつと目をつむる。

(すいません……!!)

 ――ばちこ~んっ!!!

 山崎は吹っ飛ばされた。
 沖田さんと井上さんの拳によって。

 砂煙と、派手な音を立てながら山崎は倒れ伏した。

(おっ、起きた……?!)

 それでも、うれしそうに顔を上げた。
 が、しかし。

「す―――……」

 二人に変化は全く無かった。

「……もう帰りたい……」

 山崎は空を見上げた。
 頬を冷たいものが伝っていった。







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Last updated  2020.01.18 18:22:17


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