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2017.01.02
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カテゴリ: 今日の出来事



それはロックでもポップでもジャズでもなく、クラシック。しかもベートーヴェンの交響曲をすべて聴くという、聴く方も演奏する方も疲れそうなライブだ。開演時間は13時。そして第9番「合唱」が終わるのが23時55分という長時間演奏会。チラシにある「振るマラソン」というのもうなずける。

その「振るマラソン」の指揮は炎のコバケンこと小林研一郎。ベートーヴェンを得意とする世界的マエストロだ。オケは岩城宏之メモリアル・オーケストラ。この年越しライブを始めた指揮者・岩城宏之に参集したメンバーによる年1回にわかオーケストラなのだろう。しかしコンサートマスターは、N響のコンマスで、愛称マロこと篠崎史紀。指揮者なしでベートーヴェンの交響曲をやってしまう実力者だ。う~む、これは期待できるぞ。


会場は、上野の東京文化会館。クラシック少年だった中学生の頃にN響のコンサートを聴きに来て以来、40数年ぶりだ。開演20分前にホールに入る。5番「運命」あたりから次第に客が増えていくのかなと想像していたが、意外にもけっこうたくさんの人が集まっている。紅白歌合戦も見ずにベートーヴェンとともに年を越そうとしている人がこんなにいるんだなあ。

13時きっかりに交響曲第1番が始まった。指揮台に譜面台はない。暗譜したコバケンは、いつものオーバーアクションでオケを引っ張り、それにオケがしっかりと応じていく。1つ1つの楽器の音が粒だってクリアにきこえる。いいホールだ。さすがクラシック音楽の音響ホールだ。多目的ホールであるNHKホールより数段上だ。

はつらつとした第1番。そして知られざる傑作=第2番。快演に気持ちよく酔う。
そして30分の休憩の後、第3番「英雄」だ。いよいよ大傑作の登場だ。心して聴かねば。でも右となりの席はまだ空席だ。いつ来るのだろう。
力強く躍動感に満ちている。感動的だ。連打されるティンパニ、うなりを上げるコントラバス、吠える・金管楽器・・・。これって今でいえばハード・ロックだ!ベートーヴェンは200年前のロック・スターだったのだ。

小休憩の後、第4番。右となりの客がやってきて着席。


このコンサートの企画者である三枝成彰がステージに現れ、ミニ講演。
ベートーヴェンがなぜこのような革新的な交響曲を生み出したのか?そこには当時の哲学者ヘーゲルの影響があるという話。人と違うことやることに意義があり、テーゼに対抗するアンチ・テーゼを提示することで人類の進化、世界の進歩につなげていくことが肝要。そのヘーゲルの思想に突き動かされ、ベートーヴェンは1曲1曲の交響曲で新しい手法、技法、様式を提示していったというのだ。なるほど、交響曲の生みの親=ハイドンやそれを次いで交響曲を作り続けたモーツァルトには見られない「革新性」を打ち出していったのだ。

昼食をとってなかったので、45分間の休憩中に上野駅構内のコンビニでウイスキーの水割りとおかきを買って腹に入れる。

ほろ酔い気分で、第5番「運命」と第6番「田園」の連続演奏を聴く。あれ?右となりの客は再びいなくなっていた。
世界で一番有名な交響曲が、この「運命」と「田園」の2曲だろう。「運命」は、古典派音楽の交響曲の頂点、「田園」は、後に出現するロマン派音楽の『標題音楽』の始まりと位置づけられている。どちらも音楽史上極めて重要な曲だ。この2曲の初演が同じ日のプログラムだったというのは驚きだ。いくらヘーゲルに感化されていたとしても彼の天才的な才能がなければ実現しなかっただろう。
この2曲に初めてトロンボーンが登場。これもベートーヴェンの新しい試みだったのだ。交響曲を連続で演奏すると、こうしたオケの編成の違いがわかって面白い。
いい演奏だった。この2大超有名曲を休憩なしで振ったコバケンと演奏したオケのパワーに脱帽。ブラヴォー!


ここで90分の休憩。
一緒に来た仲間と連れ立って夕食かたがたアメ横へ。もつ焼き屋や立ち飲み屋は満員状態。皆、思い思いに飲み納めをし初詣に行くのだろう。コンサートの余韻を味わうにはワインと洋食かなと思ったが、つい足はいつもの調子で立ち飲み屋へ。チューハイ、日本酒を飲みながら、枝豆、煮込み、赤ウインナー・・・。広い店だが、東京文化会館から来た客は我々だけだろうな。

酩酊一歩手前状態で、第7番、第8番を聴く。
ピアニスト=グレン・グールドが「音楽史上最初のディスコ・ミュージック」と称した第7番。特に第4楽章は革新的ロック・スター=ベートーヴェンの面目躍如だ。シンコペーションとアフタービートのリズムにチューハイの酔いが加わって興奮状態と化す。演奏終了と同時にブラヴォーの嵐。


そしてついに最後の曲=第9番「合唱」。22時40分にスタート。
最近聴いたパーヴォ・ヤルヴィやヘルベルト・ブロムシュテットのアップ・テンポよりは少しゆったりしたテンポだ。普段なら早朝のランニングに備え寝ている時刻。第3楽章の天国的なアダージョの時、少しだけ居眠りをしてしまう。そしていよいよ合唱の第4楽章。何度も聴いているメロディーだが、ナマで聴くと改めて胸に刺さる。

ああ、来てよかった。紅白歌合戦を酒を飲みながらボ~っと眺めているより20倍くらい有意義で密度の濃い時間だった。炎のコバケンさん、お疲れ様でした!コンマス=篠崎史紀さん、お疲れさまでした!そしてオケの皆さん、お疲れさまでした!

最後に一句。  「  年越しや   蕎麦の代わりに  ベートーヴェン  」





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最終更新日  2017.01.02 17:37:16
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