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2006年04月05日
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カテゴリ: 小説・詩など



「知らない」

「そうだよねぇ。何のお話しか言ってないもんねぇ」

なかなか、子供が寝付けない様だ、そこで考え、

お話し聞かそうとしている。

「始めるね」

そう言うと、一冊の古めかしい本を

取りだして、読み始めた。


『竹とんぼ』



慣れた手つきでボタンを1個づつ丁寧に付けて行っている。

その横で、おじいさんは、黙々と作っている。

「お茶にしますか」

そう言うと、おばあさんは、お茶と、お漬け物を

おじいさんに出した。

「おばあさんのお茶は、最高じゃ」

満足そうな、顔で、お茶を飲んでいる。

おばあさんも、下を向きながら、微笑みを浮かべている。

「さて、仕事、またやるかのう」

しばらく、糸の擦れる音と、加工する音がしていた。

「やっと、出来たぞ。さて売りに行ってくるかのう」



そうして、町まで、歩いて行った。

町まで着くと、いつもの店に入って行った。

でも、今日は、店主がいなく、代理の若い人が居るだけだった。

「いつも、納めさせて貰っているもんじゃが、今日もお願い出来ないですかのう」

若者は、ちらっと、おじいさんと作ったものを見て。



そう冷たく、ぶっきらぼうに言い放った。

その勢いに負けたのか。

「分かりました。また、お願いしますのう。失礼しました」

おばあさんの顔が一瞬、頭を過ぎった。

トボトボと仕方なく、家へと向かった。

向かっている途中に、一人しょんぼり、

顔を下に向け、木の下に座っている

子供がいる事に気づいた。

気になり、声を掛けてみた。

「どうしたんじゃ。何かあったのかのう」

事情を聞くと、どうやら、友達に、いじめられたみたいだ。

「そうか辛いのう。そうじゃ、これを上げよう」

そう言うと、竹とんぼをその子の手に渡した。

そして、こうやって、遊ぶんじゃ、と遊び方を教えた。

そうしていると。

その子の顔が、生き生きとして、夢中になって遊んでいる。

しばらくして。

「じゃ、そろそろ、帰るとするかのう。そうじゃ、これ」

そう言うと、持っていた全ての竹とんぼを、子供へと渡した。

「これを、友達に、配って、教えて上げろ」

そう言うと、また歩いて家へと帰り始めた。

振り返って見ると、その子供が、見えなくなるまで、

大きく、力強く、手を振っていた。

家に着き、その事を、おばあさんに話すと。

「良いことをなさいましたなぁ」

そう言いながら、お茶を入れている。

「良いことを」

お互いの笑顔が、清々しかった。




「おしまい、おしまい」

パタンと本を閉じた。

聞き終わるか、終わらないかで、子供は、夢の世界へ。

夢の中で。

澄み切った、真っ青の空へ向かって、竹とんぼが飛び立っていた。

何処までも、上へ上と上がって行く。

天まで届く、くらいに。


<おわり>






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最終更新日  2006年04月05日 00時50分25秒 コメントを書く
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