地を這う虫

2006/05/01
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数年前に知人から新居を建てたから遊びにこないか とのお誘いを受けたのでお祝いを持って訪問した。家の近くまで来てみると頭上に関西電力の高圧送電線が走っていた。家に着いた。玄関先から水平距離約20mのところに送電線鉄塔が建っていた。
友人曰く、「この地域は結構地価が高いのだけれど、ご覧のとおり送電線が近くにあるのでこのあたり一画は結構お手頃価格なんや。送電線の近くというのは気分のいいものではないが、土地付き一戸建てを持てると思ったら、気にしておれんわ」でした。
知人の子供はこの家を購入した時点で中学生と小学校高学年の二人。既に家を購入した知人に高圧送電線の発生する低周波電磁界と小児白血病の発症リスクについて語ることは避けておいた。

週刊文春の4月27号を今日読んだところ、室井滋の「すっぴん魂」に送電線と鉄塔近くに建つマンションの購入是非に悩む室井の知人の話が載っていた。結論としては、購入予定マンション及び知人夫妻が以前住んでいたマンション(この建物近くにも送電線がある)で電力会社に電磁界強度を測定してもらったところ、購入予定マンションが1.7ミリガウス、以前住んでいて知人夫婦に健康被害がなかった(らしい)マンションで10ミリガウスとの測定結果であり、電力会社係員による説明で、「一般家庭内の生活環境には、例えばテレビは1~20ミリガウス、エアコンが10ミリガウス、高いのではヘアドライヤーが20~500ミリガウスとか説明され、送電線を心配されるなら、むしろ家の中の方が凄いですね」、「WHOが示す見解では5万ミリガウス以下では有害な生物学的影響は認められない」と説明され安心したとある。

国立環境研究所(国立とついているが独立行政法人なんです)の サイト から以下に引用します。



現在、人体への影響などが問題になっている一般生活環境中の電磁波は、可視光より周波数の低い領域です。まず、携帯電話(アナログでは800メガヘルツ帯、デジタルでは1.5ギガヘルツ帯)や電子レンジ(2.45ギガヘルツ)などが出す「電波」は、その信号が医療機器の誤動作を引きおこす可能性と、発生する熱が人体に与える影響が問題になっています。送電線や配電線から出る「超低周波」領域(50~60ヘルツ)では、磁界が問題となっています。磁界の強さは、高電圧の送電線の真下でも最大200ミリガウス程度ですが、地磁気では500ミリガウスもあります。 しかし、地磁気が瞬時に大きく変化することはありませんが、送電線の交流がつくる磁界はその向きが1秒間に50~60回変わり、大きさもたえず変化しています。 人体への影響について注目されているのは、この「変動磁界」なのです。10ミリガウス(1マイクロテスラ)よりも小さい値の変化が、小児白血病の発症との関連などで問題視されています。

引用終わり

小児白血病と低周波電磁界については、科学技術庁(当時)の予算約7億円を使った国立環境研究所の兜主席研究官が責任者となった精緻な疫学研究があります。 ここ をよく見ればDLできます。 低周波電磁界の有無で小児白血病のオッズ比は2(発症確率が2倍)というのが兜班研究の結論です。小児白血病の発症率自体が多分相当低いこと(よく知りませんが・・・)や低周波電磁界と小児白血病に有意な関係があることを政府が公式に認めることになれば、極論に至ればとんでもない対策費(例えば、人が住んでいる地域の高圧送電線を平行2本線にして2本に180度の位相差を与えて電磁界をキャンセルする)が必要となります。だからかどうか判りませんが、週刊金曜日の記事にあるように、兜班の研究は文部科学省の評価で評価項目全て(11項目)で最低ランクと評価され、研究は継続されませんでした。小児白血病の発症リスクが2倍になることへの行政対応をどうすべきかの議論は多々あれど、約7億円を要した兜班の精緻な研究に対して文科省が下した最低ランク評価は、 週刊金曜日
結論としては、室井滋の「すっぴん魂」を読んで送電線近くのマンションを買った夫婦に赤ん坊が生まれたら、上記のようなリスクがある可能性が高いということであり、室井のエッセイは罪深いものになるかもしれない ということです。

送電線





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Last updated  2022/04/04 02:38:57 PM
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