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【カーラ13】
ジイドは取り出した小さなガラス瓶を、
岩天井の一端の下に慎重に立てると、
一瞬の後には、
リカムの横に回りこみ、共に支えていた。
ついさっきまで、死人のように倒れこんでいた者とは
到底思えない機敏さであった。
そしていつもの癖で、
左の人差し指をちょっと舐めてから、
二人の目の前に突き出した。
大きく息を吸い、声を合わせて、術を唱えはじめた。
その声は、互いに心強い見方を得て、
意気揚々といったふうにさえ聞こえた。
指が指し示すその先には、
手を握れば完全に隠れてしまうほどに小さなガラス瓶が、
精巧な細工が施されたその先端に、
わずかな明かりを集めて、
きらきらと輝いていた。
暫らくたっても、何事も起こらないかのように見えた。
だが一息に唱え続ける二人の眉間に、
さらに深いしわが寄った時、
それまでとは違う光が
その裡(うち)に芽生えたかと見る間に、
目を覆いたくなるような強い光が、辺りに満ちた。
「今だ!」
ガラス瓶がその大きさを変えて、支えとなったと見るや
それぞれが一人ずつを抱え、
外に向って飛び出した。
もの凄い重圧から一気に開放されて
身体を持て余したように足がもつれ、
リカムはあと少しというところで従者を外に投げ出し、
下半身を残してうつぶせに倒れた。
支えとなったガラスは、
早くも、ひびが拡がりつつあり、
不吉な輝きを宿しながら、
重圧の下で砕け散ろうとしていた。
(つづく)
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