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危ういところをカーラに助けられたリカム。
【カーラ25】笑顔の陰
カーラに上から睨まれ、しどろもどろのバイロンだった。
「ひ、姫君。これは、その……、
こ、婚礼のことで、ちょっとした行き違いがあったのだ。
それでリカム殿に、その事を、確かめていただけですよ」
苦しい嘘に、バイロンの笑った顔は引きつっていた。
「それではあなたは、誰かにものを尋ねるときには、
刃をお向けになるというわけですね」
毅然とした態度を崩さないカーラであったが、
リカムは、彼女のにぎった手が
わずかながら震えているのに気がついた。
「今度リカムに何かしてごらんなさい!
私がただではおきませんよ!」
「わ、私は何も……」
バイロンが言いよどんだ時、
様子を見に、魔法医師が部屋に入ってきた。
「これはこれはッ、王女姫様ではございませぬかッ!
おいでになられたのに気が付きませんでしたなッ」
それからひざまずいているバイロンと、
包帯のほどけたリカムを見比べた。
「 して? これはいったい何事ですかな、バイロン公爵殿?」
バイロンと同じ目線の高さで、
魔法医師が疑わしそうに尋ねた。
バイロンは血の滲んだ腕を隠すようにして立ち上がると、
いつもの美しい笑顔を浮かべた。
「実は私の国に、傷によく効く薬草が生えておりまして、
彼の傷がどの程度のものか、確かめていたのです。
ですがこの傷に、果たして効くかどうか……」
バイロンは心配そうに眉を寄せた。
それからカーラを見て笑顔になると、言葉を続けた。
「そこへちょうど、姫君が見舞いにいらしたので、
婚約者として挨拶を交わしたところだったのですよ」
その偽りの笑顔を見たカーラも、
不自然ではない程度に、微笑みを返した。
カーラが肩に掛けた小さな布の袋を確かめながら、
魔法医師に何かを言おうと口を開きかけたとき、
突如、廊下のむこうで、激しく玄関が開かれ、
誰かのわめく声が聞こえた。
「大変だッ! 王様が、お倒れになられた!
王様がお倒れになられた! 誰か早くッ!」
(つづく)
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