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お久し振りの こえめ
です![]()
あいだ開けてしまいました。
黙って休んでごめんなさいデス。
連休終わるまで、しばらくゆったり更新になります。
いよいよ人間界へ。
でもその前に、もうひと波乱あるようなッ。
【カーラ】
カーラとリカムは、
預言者セテの指示通り、
小さな森番の小屋に来ていた。
人間界と魔法界を繋ぐ〈風門〉の前にいは、
ここから程無いところにある。
カーラは、右手の中指にはめた指輪をそっとなでると、
勇気を得たように、
小さな皮袋から、薬の入ったビンを取り出した。
それは、今回の出立に先駆けて、
預言者セテのもとに出向き、
リカムの事を相談した際に手渡されたものだった。
*
その時セテは、こう言った。
「姫様。リカムをつれて行かれるのはよいでしょう。
では、是非これをお持ちくだされ。
この魔法薬は、
リカムを女の姿へと変えるものでございます」
カーラは息を飲んだ。
「リカムが……女に……?」
「さようじゃ。さらに、これまでの記憶も
新しく書き換えられることになるでしょう」
「新しくとは……それは、どういう意味ですか?」
カーラは震える声で尋ねた。
セテが一瞬、言いよどんだように息を深く吸い込んだ。
それから、珍しく硬い表情で言った。
「こちらでの一切の記憶がなくなるということです」
カーラは二の句が告げられなかった。
生まれた日より、常にそばにある逞しいリカムの姿。
当たり前だと思ってきたものが、
失われるということであった。
更に全ての記憶までなくしてしまえば、
それはまさに、カーラの一部とも言うべき部分が形を変え、
見知らぬものになってしまうことを意味していた。
セテが言葉を続けた。
「しかし、記憶をなくしても、リカムの忠誠心は、
本質として残るじゃろう。
姫様。そういう意味では、これまでと同様、
リカムが姫様のおそばで一生尽くす事に
なんら変わりは御座らぬのです」
「しかしッ、それではあまりにもリカムが……」
「可哀想じゃと、申されますかな」
セテが、緊張した面持ちを崩して言った。
「よろしいですか。これは姫様のためであり、
それと同時に、リカムのためでもあるのじゃよ」
セテは、二人が互いに惹かれあっている事を
見抜いていたのだった。
*
カーラが、魔法薬を差し出した。
その手が震えている。
「姫様。私は大丈夫です」
全てを了解していたリカムは、穏やかな笑みを浮かべ、
薬ビンに手を伸ばした。
(つづく)
魔法の真矛ちゃん【カーラ38】の2終 July 8, 2009
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