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気が早い?
これってとっても幸せなんだけど、水分不足になっちゃって風邪ひくらしいよ。
だから、お茶たっぷり飲んでからうたた寝しましょ。 (結局するのね
―真矛・告白― (17)
彩葉は私が言った魔法という言葉に恐れをなしたのか、
学校であっても、目をそらしていた。
やはりいきなり魔法という言葉を出したのは、不味かっただろうか。
でも私には、あの現象を理解させるのに、
他にどうしたらいいのかわからなかったのだ。
それどころか、勝手に言葉が口をついて飛び出したといった感じで……。
でもそれが却って、彼女を警戒さてしまったのだろう。
とにかくこのままではいけないと思ったので、
私はリカさんに相談して、彼女を家に呼ぶことにした。
彩葉は最初、来るのを嫌がっていたが、実夏が横から
「本当よ、リカさんの焼いたケーキ、すっごく美味しいんだから。
あたし達と一緒に食べよう」
というと、彩葉はさっきまでの警戒心がウソのように、あっさりOKした。
魔法ごっこのときもそうだったが、
実夏は人を誘うのが、本当に上手なのだ。
当日私たち3人が家の玄関を開けると、
香ばしい匂いが鼻をくすぐった。
リカさんが、ナッツやベリーがぎっしり詰まった
チョコレートブラウニーを焼いて、私たちを待っていた。
「いらっしゃい。彩葉さんね?
真矛がお友達を家に連れてくるのは、あなたが二人目よ。
私はリカ。リカさんって呼ばれてるの。よろしくね」
彩葉は、差し出された大きな手にほっそりした手を重ねると、
ホッとした笑顔を見せた。
おやつの後で私たち三人は、庭続きの森に入っていった。
実夏が小鳥達を呼び寄せて見せた。
それを見た彩葉が大きく目を見開き、瞳がかちりと輝いたように見えた。
その一方で、山本も私を避けていた。
幼なじみの彩葉とは口を利かず、
あんなに仕切りたがっていた理科の実験も、やろうとしなかった。
私と彩葉は、葉脈に色をつけたり、顕微鏡の倍率を調整したりしながら、
それなりに楽しい授業だったが、
ふと横目に入る山本が、
私たちをまるで汚いものであるかのような目で見ているのが
癪に障った。
彩葉が、「山本君も何か手伝ってよ」と声をかけても、
ちょっと身を引きながら、ぷいと横を向いてしまうのだ。
そして私は、彼に対する《必要な人間だ》という言葉を思いだし、
さらにイライラするのだった。
いったい彼が、何に必要だというのだろう。
魔法を使ったことがあるわけではないし、
魔法の存在を認めているようではあっても、
まるで悪いことのような目で見ているのが気に入らなかった。
リカさんに相談してみても、困った顔で、
「私にも分からないわ。もう少し様子を見てみましょう」
というのだった。
その後、彩葉のことを山本がしゃべった様子もなく、
何時もどおりの日が続いていた。
ただ、裏庭の魔法ごっこはそれから間もなく、
終わりになった。
まるで彩葉の魔法がきっかけにでもなったようにして、
それを知るはずもない人たちがなぜか急に、
魔法に対して興味を失っていったようだった。
それは夢見がちな子どもが、
現実に戻る時期と重なっただけなのかもしれなかったけど……。
(つづく)
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