母から電話で聞く兄の容態は、「弱くなった」から始まった。
2週間前に見た兄の姿からは、もうこれ以上に削り取る体力はないように見えた。
その後の変化として「弱くなった」という言葉は、どんな状態を意味するのだろう。
首を支えるだけの力は無くなっていた。
ベッドの上で身体を小刻みに震わせながら耐えている兄の首は、ガックリと落ちている。
細くなった声で「首が痛い」と言っていた。
あんなに首を落としていたら、健常者なら1日も耐えられないだろう。
ずっとあの体勢が続いているのだから、痛くならない訳がない。
その言葉を聞いた父が「バンテリンを塗れ」と言う。
だが、兄の首にはバンテリンを受け入れる筋肉が無い。
塗っても何の改善もされないのは、もう随分前に試している。
だが、父は去年のくも膜下出血から、自分との違いを理解出来なくなっている。
食べられないのに、無理やり食べさせようとする。
食べないから痩せるのだと思い込んでいる。
父の言葉は、全て兄を責めているのかも知れない。
元気だった頃から、噛み合わなかった二人。
自分勝手で強かった父に、逆らえない兄。
いつも父の機嫌に気を遣い、争う事を避けながら生きてきた兄。
今日もその心が働いたようだ。
「バンテリンを塗ってくれ」
「頼むからじいちゃんに逆らわないでくれ」
父に逆らわないという事が、それほど大切な命題なのだろうか?
いや、ぶつかり合う事が厄介な事、鬱陶しい事なのだろう。
体力を失ってしまった兄にとっては、父だけでなく訪れる者全てが鬱陶しいだろう。
それが、天皇陛下や総理大臣の見舞いだったとしても。
鬱陶しいものを避けて、生きる事を選択している。
兄の気持ちは、まだまだ強く生きているのだと思いたい。
上手く先に繋いで欲しい。
命は、生きる事を止めるまで続いている。
その命が続いている限り、彼は勝者であり続けるのだと思いたい。
生きろ!!
Soul Aliveを聞きながら・・・ Mar 1, 2008
卒業して行ったキミへ Feb 26, 2008
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