今朝の、3年生達との約束を果たす為、まずは、余り人目に付かない場所を探してみることにした。
急いで昼食を摂り、使用していない教室を探す。
本校舎の方は、余分な教室など ほとんどない上に、どうしても人目に付いてしまうので、狙い目は、やはり旧校舎だろう。
とはいえ、築年数が相当経っている上に、旧校舎は昔、病院を買い取って そのまま使用していたとか。
螺旋階段の下には霊安室があり、夜な夜な泣き声が聞こえる・・・という、噂のある場所なので、余り良い気分ではない~★
だが、背に腹は代えられないので、取敢えず、行ってみることにした。
昼食時間ということもあり、他に人影もないまま、旧校舎のすぐ側までやって来た。
その昔、いわくつきの病院だった、という古めかしい建物を見上げると、やはり、1人で来たことを後悔しそうだ。
俺はともかく、生徒達は来たくないよなぁ・・・等と思っていた時だ。
微かだが、ピアノの音が聞こえて来た。
ピアノ・・・一体、誰が!?
耳に神経を集中させて辺りを見回すと、どうやら、旧校舎の中から聞こえて来るようだ。
誰か、居るのか?
怖いというより、好奇心だったのかもしれない。
いつの間にか、音のする方へと、吸い寄せられて行った。
その音は、旧校舎一階の一角にある『第一音楽室』から聞こえていた。
緊張の面持ちで近付くと、目の前の扉に手を掛け、ゆっくりとスライドさせた。
ガラガラガラ・・・
立て付けの悪い扉は、派手な音を立てて開き、当然のように、ピアノの音はピタリッと止まってしまった。
シーンと静まり返った 薄暗い音楽室は、不気味そのもの。
「あの・・・誰か、居るんですか?」
教室の片隅に置かれた、グランドピアノの方に向かって声を掛けてみたが、返事はない。
「気のせいだったかな」
そう呟きながら、光を閉ざしている 目の前のカーテンを開けた。
すると、薄暗かった室内が明るくなり、聞き覚えのある声が響いた。
「霧野先生・・・」
振り返ると、ピアノの陰から遥が顔を出した。
「す、鈴木!? どうして、こんなところに」
俺は、側へと駆け寄った。
「勝手に入って、すみません。練習時間が欲しかったんです」
そう言って、頭を下げた。
「発表会でもあるのか?」
「・・・・・・そんなところです」
曖昧に答えると、遥は俯いた。
「確かに、旧校舎へ勝手に入るのは、良くないことだよな・・・って、俺も同罪だから、他人(ひと)のことは言えないな」
「クスッ、クスクス・・・」
彼女がこんな風に笑うところを、初めて見た気がした。
新米教師の悩み(14) おわり
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