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2011年06月11日
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「遅かったですね、勇平さん。時間厳守だと、念押しした筈ですが」

冷やかな口調で、上座に座る 美代子が窘(たしな)めた。

「申し訳ありません。いささか所用が重なり、遅れてしまいました」

そう言って、深々と頭を下げた。

素直に謝罪する勇平を見るのは、もちろん初めてだった。

「まぁ、まぁ、美代子さん。堅いことはおっしゃらずに。少し遅れてしまったとはいえ、勇平さんも、こうして駈けつけて下さったことですし。良いではありませんか、ねぇ 京橋さん」

恰幅の良い女性・池上享子が、見合い相手の母親・京橋咲子に視線を移しながら、おっとりとした口調で言った。

鈴木家と遠縁にあたる享子は、いわゆる“世話好き”で、勇平にとって 迷惑以外の何モノでもない この一席も、彼女が持ち掛けたものだ。

「ええ、勿論でございます。私どもは、全く気にしておりませんので。どうか、お気になさらずに」



「ええ、私も同感ですわ」

「本当に、申し訳ございません」

美代子は、見合い相手の京橋親娘に深々と頭を下げると、勇平に手招きした。

「勇平さん、皆さん お待ちかねです。こちらへいらして」

「いいえ、俺達・・・私どもは、ここで」

そう返事をし、襖の陰に隠れるように立っている俺を促した。

「涼、入って」

ええっ!? この雰囲気の中に、入れと言われても・・・って、もう入ってるし~★

心の中で拒否したが、腕をグイッと引っ張られ、中へ連れ込まれていた。

突然現れた侵入者に、誰もが戸惑っているようだ。

お見合いの席に、見知らぬ他人が入って来るなんて、普通、あり得ないよなぁ。



「・・・・・・勇平さん、そちらの方は?」

誰もが固唾を飲んで見守る中、鋭い視線を向けながら 美代子が訊ねてきた。

「は、初めまして。私は、勇平さんと同じ職場で、数学の教師をしております、霧野と申します」

緊張の面持ちで、自己紹介し始めた俺の言葉を、勇平が遮った。

「申し訳ありません。この話は、なかったことにして下さい!」



勇平の言葉に、真っ先に反応したのは享子だった。

「ゆ、勇平さん!? 突然、何を言い出すんですか?」

「御怒りなのは、御尤もです。しかし、私には、既に 心に決めた人が居るんです!」

新米教師の悩み(28) おわり






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最終更新日  2011年06月11日 05時05分16秒
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