釜石から帰り、井上ひさしの「花石物語」が読みたくなった。その本は1983年に買い、1998年にふたたび読み、今回は3度目。半分は忘れていたが同じ本を三度も読むのは稀有なこと。
高炉ありし頃の製鉄所、花街の風景描写は実に生き生きしているのに、内容は前半あまり面白くない。花街の日常描写がリアル過ぎ、ちょっと鼻白む。釜石小学校校歌の作詞者が、ご当地をこんな風に書いているのを大人はどう説明するのだろう?
半分まで読むと俄然面白くなる。「釜石」にせず「花石」という架空の町の話にした理由も何となくわかってくる。
最後は、気持ちが通じた娼婦を追って国立釜石病院に就職するが、悲劇的結末が多い井上作品の中で、珍しくほのぼのとした読後感が残る。
その国立釜石病院で書かれたことになっている「新釈遠野物語」は、一気に読んでしまう面白さが満ちている。作品中では職安の紹介で国立釜石病院に就職したことになっており、無論娼婦の後を追ったという楽しい方の話がフィクションだろう。
釜石の観光案内では、井上ひさしゆかりの釜石病院について、一言も触れられていない。目星をつけて行ってみたところ少し特殊な病院のようで、一般の人が興味だけで行くところではないと感じた。
裏の山で井上ひさしが薪拾いをしていた情景が目に浮かぶ。
花街があったらしい朝日町周辺も、津波で跡形も無くなり新しい街ができていた。


国立釜石病院 市中心部から6kmほど離れ、三方山に囲まれた静かなところ (2016.3撮影)
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