くんちゃんの・・・

くんちゃんの・・・

そして今…

そして今…


 私には片方の乳房がない。医学のめざましい発展に伴い、失った乳房を再建することは可能になった。正直言って、出来ることなら再建もしたい。でも、家族に再び負担を掛けることはイヤ、またメスを入れらること(つまり手術)にはかなり抵抗がある、経済的にもかなり厳しい…何よりこれだけの犠牲に見合うだけの成果が得られるか?そのことがもっとも不安であり、ネックとなっている。自信がない…。でも、それよりも…。

 加入しているMLでメンバーの一人が言った。
『それは再建すれば済むということではなく 例えば大事なお気に入りのお茶碗を割ってしまって接着剤でくっつけたものではなく そして同じものを買ってくるということでもなく 前から使っていた思い出のたくさんあるお茶碗が欲しいんです。まるで駄々をこねている幼い子供ですね…。』
今の自分の心底をズバリ言い当てられた気がした。

 そうだったんだ~!ぺちゃぱいでも、垂れてても、しぼんでても…何でも良いから‘元のおっぱい’が帰ってきて欲しい。こんなにも愛おしい・恋しいなんて…、やはり未練以外の何者でもない…。

 優しい夫は 私の胸を見て
『傷跡すごく綺麗になったね!もう、どこがキズなのか殆ど分からないよ!』
と誉めてくれる。誉めて貰っても素直に喜べない可愛くな~い私がここにいる…。
『…でもね、私が欲しいのは綺麗な傷跡じゃないの。
傷跡が綺麗なことは、今の私にとってなんの意味もないんだよ。
かえってあばらむき出しの胸が私の心を締め付けているんだよ。』
そう叫びたい気持ちをぐっと抑え…引きつるほっぺたで淋しく微笑むしかないじゃない…。

 欲しいのは…、5年前のままのおっぱいなんだ…。そうなんだ、私が欲しいのは、‘綺麗なキズ’じゃなくて、むかし夫が誉めてくれた‘綺麗なおっぱい’なんだ。夫の掌にちょうどおさまる、お手頃サイズの、夫が好きだったあのおっぱい…。もういちど暖かい両方の掌で、昔のように優しく 二人だけのおっぱいを包み込んで欲しい。いたわるのでなく、気遣うのでなく、昔のように…。
 ずっと胸にくすぶってたのはこれだったのか!?隠し続けてきたそんな思いに気付かされ、なんだか泣けてきた。

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