社会言語学を語る上で必ず登場する人物がいる。そう、Labovである。この人の修士論文がThe social motivation of a sound changeという1963年に書かれた論文だ。LabovがMartha’s VineyardというNYのリゾート地で行った実験はのちにこの学問分野に多大な影響を与えた。教授はLabovが社会言語学の研究手法の礎を築いたと仰っていた。非ネイティブの私にはMartha’s Vineyardの人とそれ以外の地域の人の微妙な発音の差があまりよく分からなかったが、この小さな小さな発音の差がGumperzが主張するimagined communitiesを形成するらしい。なんとなく教授のレクチャーはわかるのだが、論文は非常に難解で常に消化不良を起こしている。これからやってくるであろう課題に戦々恐々としている自分がいる。
Inoue (2006)の”An echo of national modernity”という論文が非常に面白かった。いかにして”schoolgirl speech”が広まっていったのか社会言語学的側面から考察した論文である。女子の通学率が当時低く男性中心の風潮の中、この”schoolgirl speech”が批判の的となる。ラジオ、新聞、雑誌といった当時のメディア媒体を通じて”schoolgirl speech”が卑しき言葉というラベルを貼られる異なる。