秘密のシチュー

秘密のシチュー

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

秘密のシチュー

秘密のシチュー

Freepage List

Comments

コメントに書き込みはありません。
2010.05.01
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
いつもお見舞いに行っている病院のベッドで彼女が、

そっと僕に派手なピンクの長財布を渡した。

「…こ、これを…」

「こんなの受け取れないよ」

彼女は、申し訳なさそうに僕に言った。

「ポ……」

耳を近づけると、もう一度彼女はか細い声で僕に言った。

「ポ…ポイントカード使いきってきて…」

それから、病床に伏したままの彼女の代わりに、




マツキヨのポイントで粉末のコラーゲンを安く買う。

僕のお肌もぷりぷりだ。

ダイコクドラッグにも行ってみる…え、会員割引?これポイントカードじゃないの?

スーパーのポイントでプロッコリーを買う。ピロリ菌撃退!

ビックカメラでは、ポイントでデジカメ用のSDメモリーカードを買う。

ヨドバシカメラでは、ポイントで新しいDSソフトを買う。借りパク出来なかった逆転裁判だ。


「ポイントお貯めしてよろしいですね?」

「いいえ、使って下さい!」

拒否するのってなんて楽しいんだろう。

チュチュアンナのスタンプをためて、入院中の彼女のパジャマを月曜から日曜色まで揃えてみる。

月から金は黒で、土曜色は地味な青色で、日曜はインクっぽい赤色をチョイス。


そして、小心者の彼女が、毎回勧められる度に
「あー結構です」
と言うことが面倒で
作ってしまった某ショップの入会金1000円のポイントカード。

五パーセントオフで、まだセーター4000円しか買っていない。


僕は山ほど服を購入して、1000円の元を取った。

そして、元気になった彼女に着てもらうために買った白いニットのワンピースを、鏡の前で自分に合わせてみた…。

可愛い…。

コラーゲンとブロッコリーでお肌の色つやも良くなった僕に、とても似合っていた…。


そして、財布の中のすべてのポイントカードのポイントを使いきって、

「買って来たよー」

と彼女に手渡した。


「あ、ありがとう…嬉しい…」

病床の彼女は瞳に涙を浮かべて喜んだ…。

そして僕の頬をそっと撫でた…。

「…私のコラーゲン、飲んだわね…?」

僕はぷりぷり肌を隠すように、俯いて首を振った…。

「でも、もう…お見舞いには来なくていいわ…」

「な、なんで!?…も、もうコラーゲンは飲まないよ!いや、自分で買うよ…」

「ポイントカードが溜まったの……」

彼女は、スタンプのいっぱいになったポイントカードを見せた。

スタンプは僕が甲斐甲斐しく彼女のお見舞いに病院に行った日付だった。

「病院から、退院おめでとうセットが貰えるわ!」

彼女は、弾んだ声で、僕の買ってきた洋服に袖を通し、

ポイントカードがなくなって薄くなった財布と買い物袋を抱えて、スキップしながら、病院の白い扉を閉めた。

僕は…スキップする彼女の背中を見つめながら、とっても……

とっても…  退院おめでとうセット の中身が知りたかった。



そして、僕は、一人ぼっちの部屋に戻ると、

彼女に隠して持っていた白いニットのワンピースに着替え、

ハンバーグの美味しいお店に、一人で食事をしに行くことにした。

「…そういえば、ここもポイント、溜まったなぁ…」

僕が学生時代から財布に入れている、

有効期限なしの、失恋レストランのポイントカードは、

初失恋の日から数えて、あと一つでスタンプの升目が、

割れたハートのスタンプでいっぱいになるのだった。

今夜はハンバーグもう一皿無料だ!


僕はスカートの裾を捲りあげて膝を高く上げ、レストランまでスキップして行った。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2013.04.16 23:21:13


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: