今回は、前回に引き続き、1-2を掲載します。
1-2 代理による契約の締結
第1. 設問(1)について
1. 2004年4月14日に、AはXを代理して、AのYに対する1億円の債務に代えて、Xが甲をYに譲渡する旨の代物弁済契約(民法482条、474条)を締結している。当該契約の効力がXに帰属するためには、【1】Aが代理権を与えられており、【2】Xのためにすることを示して、【3】有効な法律行為を行っていることが必要である(99条1項)。本件では、【2】・【3】は充たすが、Aは甲を譲渡することにつき代理権を与えられておらず、【1】を欠くため、Aの行為は無権代理行為となる。とすれば、本件契約の効果はXに帰属せず、Xは所有権に基づき甲の返還を請求できるのが原則である。
しかし、XはAの抵当権設定の依頼を了承し、甲の権利証やXの実印・印鑑証明書、同人の記名押印ある委任状(以下、「権利証等」という。)をAに交付していることから、表見代理の規定により、当該契約に拘束されないか。
2. 109条による表見代理の成否について
1) 109条の表見代理が成立するためには、【1】「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示」し、【2】その他人が「その代理権の範囲内」で法律行為をした場合であって、【3】第三者がその他人が代理権を与えられていないことにつき善意・無過失であったことが必要である。
2) まず、【1】について、本条は第三者の信頼を保護する趣旨であるため、客観的にみて、本人が代理権授与表示をしたと評価される事態が存在すれば、【1】を充足すると解する。本件では、Xは、同人の記名押印ある委任状をAに交付していることから、客観的に見て代理権授与の表示があったといえる。
3) 次に、【2】代理人が「その代理権の範囲内」で法律行為をしたといえるか。Xは、「甲に抵当権を設定してもらえないか」というAの依頼を了承し、委任状を交付していることからすると、甲を譲渡したAの行為は代理権の範囲外とも思える。
しかし、Xは、委任事項と受任者欄を空欄にした委任状を交付しており、このような場合、空欄部分についてどのように補充してもよいという権限を与えているかの「表示」があるといえるので、【2】を充たすと考える。
要するに、不動産処分に関する包括的な代理権の表示と捉える。
4) では、【3】の要件はどうか。Aは、権利証等をYに示していることから、一般的にはYの善意・無過失が推定される。この点、確かに、XはAの実母であり、かつ、老齢ではあるが、Aと同居しているわけではないので、権利証等を持ち出すことが容易とはいえず、そのことだけをもって当該推定が覆るとはいえない。
しかし、本件契約締結に至る経緯に着目すると、Aは、2004年3月31日の期日に貸金を返済することができず、Yに懇請して、2週間の猶予を取り付けた後、同年4月10日に突如として代物弁済を持ちかけている。しかも、当該代物弁済契約は、利益が本人Xには一切なく、代理人Aに偏在している。これらの事情からすると、YはXにその真意を確認するべきであり、かつそれは可能かつ容易であったといえるにもかかわらず、なんら確認することなく、わずか4日後に契約を締結している。したがって、Yには少なくともAが代理権を与えられたと信ずるにつき過失があったといえるため、【3】の要件を欠く。
5) よって、109条の表見代理は成立しない。
民法総合事例演習 1-2 代理による… Jun 20, 2012
民法総合事例演習 1-2 代理による契… Jun 20, 2012
民法566条1項解除事由の基礎事情 【追記】 Jun 15, 2012
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