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武田泰淳『新・東海道五十三次』中公文庫、 1977 年。
百合子夫人の運転する車に乗っての、東京から京都への旅。
一気に走り抜けたものではなく、何度も東京に戻っては「出直す」ということを繰り返して達成したもののようである。「いつ(何月何日)」が書かれている箇所が少ない。ただし、その一方で、「イナリズシ四コ(五十円)」などの、妙に細かな記載もあり、不思議な本である(なお、もともとは毎日新聞に、 1969 年 1 月から 6 月に連載された文とのこと)。
途中、三つの企業の自動車工場、武田氏の父の故郷、川崎大師や三井寺などに立ち寄っているが、観光や見学が主たる内容でもない。武田氏も解説者(車に同乗していた毎日新聞社員)も本作品を「小説」と表しているが、様々な事柄を思い浮かべながらの随想と言ったほうが適当だろう。筆者は運転をせずに、気ままに酒を飲んだりしながら、夫人に運ばれている身であるから、軍隊にいた時代のことや、他の作家諸氏とクルマのことなど、もの思いにふけるのも自由である。
読み終えた後、不思議な印象が残った一冊であった。
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