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2010.11.27
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半年に1回開かれる東大農学部の公開セミナーに行ってきた。今回は「生物多様性」というタイムリーなテーマのためか、定員300人の会場は大入り満員。会場の一条ホールは木材をふんだんに使用したぬくもり感あふれる建物だが、それに加えて希望者には座布団というサービスも行われていた。

最初に、生圏システム学専攻の鷲谷いづみ教授が「深まる生物多様性の危機」という題名で、生物多様性に関する評価文書(GBO3とJBO)の概略を紹介された。GBO3というのはCOP10に先立ち条約事務局によって公表された文書で、2010年までに達成すべきとされた21の目標について、地球規模では達成することができなかったと結論している。しかしながら、目標達成に向けて何が必要で何が効果的かといった知見を得ることはできた。そしてCOP10では2020年までに達成すべき20の目標からなる「愛知ターゲット」が採択された。これは他の国際会議のフレームワークと同様に先進国と発展途上国の意見が対立した結果としての妥協案ではあったが、経済的な観点もあってマスコミにより大きく取り上げられた遺伝子資源に関する「名古屋議定書」よりもCOP10においては主要な位置付けを持つものである(と鷲谷教授はおっしゃっていた)。また、JBOは生物多様性ホットスポットの1つである日本の生物多様性への影響要因と状態を評価したものであり、それによれば要因としては開発・改変の影響が最も大きく、それに加えて里山の縮小や外来種の影響が拡大しつつあるという。鷲谷教授によれば地球の生物多様性の損失は臨界点に近づきつつあるとのことであった。

次に、水圏生物科学専攻の古谷研教授が、「海の恵みを支える生物多様性」という題名で、海洋生態系についてお話しされた。農耕の発達した陸上と比較して、人類が海洋資源を主に漁獲という手法で利用しているのは、海洋で有機物を生産する植物プランクトンの更新力の大きさのためである。海洋生態系における物質循環は大変多くの構成者からなる強靭なネットワークを作っており、環境変動に対して安定な系を維持しているのである。しかし、人間活動の影響により、海洋でも肥料用窒素の流入による富栄養化や漁業資源の乱獲、外来種の持ち込みや海洋酸性化など、生物多様性が脅かされつつあるという(が、陸上に比べて実態はよく分かっていない)。愛知ターゲットでは沿岸及び海洋の10%を海洋保護区に、ということが謳われているものの、実はこれらの用語の定義はあいまいにされたままだという。それも先進国と発展途上国の意見対立のためとのことであった。

最後に、森林科学専攻の寳月岱造教授による「森林の地面の下の多様性」というお話があった。森林の安定な保全という立場から、林床の下での樹木と菌根菌との共生による物質やエネルギーのやりとりの重要性を強調された(なんと樹木の有機物の1~2割が菌根菌に渡されているとのこと)。例えば富士山の荒地の植生で菌根菌が樹木の成長を助けていることや、樹木の種多様性と菌根菌の種多様性に相関があることが紹介された。最後に、寳月教授の森林学の立場からの生物多様性に関する考えが述べられた。森林を安定に保全するためには、種多様性以外にも、種の機能の多様性や環境の多様性への適応といった要素も重要ではないか、生物多様性以外の、より具体的な新たな指標を設定すべきではないか、と問題提起されていた。

生物多様性に関しては、地球温暖化などとは違って単一の指標がなく人によって考え方、向き合い方もまさに「多様」。「多様性は大事だよね」という一般論に反対する人はいないだろうが、何をどれだけ、どうやって守るべきかという具体論になると立場は人それぞれ、国それぞれ。とりあえずCOP10議長国としては、少なくとも「愛知ターゲット」には率先して取り組むべきだろうけど。

http://www.a.u-tokyo.ac.jp/seminar/seminar39.html





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Last updated  2010.11.27 20:59:26


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