雨の日は音楽を

雨の日は音楽を

2022年02月17日
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カテゴリ: 歌曲
​  ふと若者は気がついた。自分の髪が霜が降りたように白くなっていることに。思わず老人になったかと勘違いしそうな頭だ。老人になれば、死期を迎えるまでの日数が少なくて済むものと、少し喜んだという、一見すると滑稽な部分ではあるが、そこに至るまでの思考過程が気の毒である。早く死にたい!という思いからなのだから。

 第1連では白髪になったかななどとちょっぴり面白がってみたものの、第2連では、すぐに霜が融けて元の黒髪に戻って、ああやはりまだまだ死ぬまで間があるんだなと落胆する。「冬の旅」後半は、前半よりも死に対する渇望の気持ちが、より顕著になっている。まだ棺桶に入るには時間がある、つまり失恋の苦しみが続くことへの恐怖がより強くなってくるのだ。第3連では更に髪が一夜にして白髪になることもあるのに、自分は黒いままだ。こんなに長旅をして苦しんでいるのにと嘆くのだ。

 全体は p で始まり、最後の伴奏が pp で終わる、落ち着いたテンポ "Etwas langsam" 「わずかにゆったり」の曲である。最初の伴奏の4小節で、全体のメロディーを提示し、四分休符の静けさの後で、歌が始まる。伴奏の左手の和音は、トボトボとあるく若者の歩みであろうか。

 しかし数箇所で感情が激発する。最初に心が揺れるのは、第2連の歌い出し "Doch bald ..." であろう。伴奏の和音が小節の頭ではなく、四分休符を挟んで、8分音符でアルペジオ!心が揺れる。ああやはり髪の毛は黒いままなのだ。現実に引き戻された若者は21小節目で、激しく "Jugend" までクレシェンドして、伴奏のスフォルツァンドと響き合う。続く「棺桶に....」は、抑えめでなければ、感情移入過多に聞こえてしまいそうである。抑制して力なく歌うべきであろう。第2連は、29小節目の2分音符でおわる。その後の四分休符は、第3連に続く大切な転換点であるから、大切に休符として意識すべきである。

 第3連は30小節目のアウフタクトから、冒頭のメロディーを半ばなぞりながら入る。歌詞は「夕焼け時から朝焼け時までの一晩で白髪になる人も」と、大変カラフルな詩行で始まる。紅の空と白い髪の対比だから、印象深い部分である。でも強調しているわけではないから p で歌う。歌いながら、そうだもう何日も旅を続けているのに若者は髪が黒いままという、失恋の苦しみがまだこの先も続くことに思い当たり、40小節目で、少し憤りと苛立ちを感じて、"auf dieser ganzen Reise!" 「この旅全部歩いてきても!」と f で盛り上げ、最後は "Reise" の途中でデクレシェンドして、哀しく終わる。

​ 楽譜を(ベーレンライター版)を良く検討すると、6~7小節と32~33小節の3連符に、プラルトリラー が附されていることに注目したい。曲全体で、上記2箇所だけに附されていること、他の3連符にはなにも記述が無いことも、曲の本質を考察する種としたい。また、伴奏の部分も、10, 35, 44小節の頭に前打音が入っていることにも注目すべきであろう。 ​

----------------------------------- オマケの無駄口 -----------------------------



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Last updated  2022年02月17日 21時07分04秒
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