マックの文弊録

マックの文弊録

2005.07.09
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ほおずきというのは、東アジア原産の茄子科の多年草である。英語ではChinese Lantern Plant(中国提灯草)といい、和名では「鬼灯」と恐ろしげな漢字を当てる。

鬼灯を市で商うのは、東京は浅草の観音様が有名である。
七月十日は四万六千日という観音様詣での特異日だ。元々観音様の縁日は毎月十八日とされていたが、室町時代に、それだけでは中々集客できないと思った知恵者が「功徳日」というのを考え出した。つまり、功徳日に観音様に参詣すれば、その一日の参詣だけで、百日とか千日参詣したと同じだけのご利益を受取れる、というわけだ。

何のことは無い、スーパーで特売日にクーポンを普段より二倍、三倍と配るのと同じことだ。大体人間の考えることは、古来余り変りがない。

功徳日の中でも七月十日は大盤振る舞いの日で、この日のお参りは千日分のご利益があるとされた。この日は「千日詣で」と呼び習わされて観音様の境内は「手抜きをしたがる善男善女」で大いに賑わったのである。
暑さも暑し、放って置けば夏枯れで閑古鳥も鳴きかねないこの頃に、観音様が集客するための戦略でもあったのだろう。

やがて時代が下って江戸時代(18世紀)になると、浅草の観音様が抜け駆けをして、この日の参詣のご利益をなんと46倍にした。つまり千日詣でを四万六千日詣でにしてしまった。
大型量販店が乗り込んできて、べらぼうな安売り合戦を仕掛けたというわけだ。



それで、元々薬草として珍重され、千日詣での縁起物として売られていた鬼灯を「鬼灯市」と仕立て上げて展示即売することにしたのだ。明治の中頃の事だという。

それまでは縁日で鬼灯を売るのは東京は芝の愛宕神社が元祖筋で、江戸中期からの伝統があったのだそうだが、如何せん46倍ものインフレ商戦を仕掛けられてはひとたまりも無い。功徳日も鬼灯市も、本家筋を浅草の観音様に持っていかれてしまったのである。
神仏の世界も、商才がないと中々伝統だけでは立ち行かないものなのだ。

イベントがあると一番乗りをしたがるのは人のさがである。十日の四万六千日に一番乗りをしようとするものが増えてきて、前日の九日も「手抜き信徒組」が参詣するようになった。それで、鬼灯市は九日から催されるようになった。

そういうことなんだそうだ。

ところで、鬼灯の実は、口の中でくちゅくちゅブゥブゥ遊ぶだけでなく、ちゃんと食べられる。しかし、本来は薬草なので余り美味しいものではないのだろう。これを改良した「フルーツ鬼灯」というのがある。

東北地方で作られているようだが、色が赤ではなく、黄色である以外は普通の鬼灯と違わない。僕はどこかの料理屋で二三度いただいた記憶があるが、冷たく冷やしたのをいただくと、甘酸っぱくジューシーで中々美味しいものであった。





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最終更新日  2005.07.10 09:28:16 コメントを書く


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