マックの文弊録

マックの文弊録

2005.07.14
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◇木曜日:旧暦六月九日 己亥(つちのと い) 熊野那智大社扇祭

三嶋ろうそく店
昔理論物理学なんてモノをやっていた所為で、日本語には敏感である。(説明になってない…か?)
他人 ひと サマの用語法や、構文法が妙に気になる。気になるだけなら良いけれど時に癇に障る。

別にわが国固有の現象ではないと思うが、母国語に対する感性はどんどん変質しているようだ。否定の修飾語であったはずのものが、いつの間にか肯定形で使われるようになった。「チョー普通」などと、僕の頭の中の論理構造がひっくり返されるような表現もフツーに使われるようになっている。
こういうのは例を挙げればきりが無い。
良し悪しではなく「変質」とニュートラルに云っておくのは、言葉というのは時代とともに変化していくものだと思うからだ。それに、そう云っておかないと、若者から「オジ」だとか「ウザイ」と云われてしまう。僕だって人の子、そうは云われたくない。

「良し悪し」とは 畢竟 ひっきょう 好悪のことだ。好悪のことであれば僕個人の局所的な意見だから、存分に云っても構わないだろう。

一頃「…じゃないですかぁ」とやたらに云って回る語族が大量に 出来 しゅったい かぁ 」は音程を下げ気味に発音される。或いは時に「 か 」に強勢が置かれて「ぁ」を下げ気味に発音されたりもする。
典型的には「私ってこういうヒトじゃないですかぁ」などと使われる。そしてこの後には、例外なく自己弁護か或いは手前勝手な主張が続くのである。

最近では、「メール送ってあります。」だ。

今時のオフィスは例外なくといっていいほどIT化されている。一人ひとりの机上にパソコンが据えられ、そのパソコンはLANで相互に結ばれ、そしてインターネットの世界に繋がれている。情報の収集や分析・集計をパソコンで処理するのは当たり前だ。業務の指示や連絡はメールで届けられる。
おかげで、オフィスの雰囲気は一変した。一言でいえば静かになった。

電話でやり取りする代わりに、メールで連絡することが圧倒的に増えた。だから、キーボードでカシャカシャカシャ・・・
社内の連絡もメールでカシャカシャカシャ・・・
カシャカシャカシャ・・・そうやっていれば、仕事をしているフリができる。楽なもんだ。

メールは、一斉同報といって、数多くの人に同じメッセージを一挙に伝えることが出来る。To:やcc:それにBcc:などの宛先区別の機能を利用すれば、微妙な伝達構造も作ることが出来る。それに記録も残る。電話と違って相手の時間を拘束しない。
要するにうまく使えば非常に便利で強力なコミュニケーションの手段になる。


一瞬見せる発語の逡巡、微妙なイントネーションの変化、強弱のリズム、うっすらと額に滲む汗、目の動き・・・そういった、相手や自分の気持ち・感情を伝えるには、メールは如何にも非力である。
だから、携帯メールなどでは、絵文字が多用される。ビデオ画像付きメールが流行っているのも、メールの非力さを補うための方策であろう。

ところが、これを理解しない連中が増えている。
何を隠そう、僕が以前に関わっていたWang Laboratoriesというアメリカのメーカーは、世界で始めて電子メールを実用化し、この分野のリーダーとしての地位を誇っていた。1980年代中頃のことだ。

その時すでに、「Use of mail vs. abuse of mail」というのが社内での議論になっていた。


メールは基本的に「対話」にならない。そして、問題が解決したり、新しい着想が出てくるのは「対話」からなのだ。

そこで、「メール送ってあります。」だ。
例えば社内で少し離れたところにいる社員に声をかけて、「おーぃ○△■君、あの件どうなった?」とたずねると、「その件はもう送ったメールに書いてあります。」と、こういう返事が返ってくる。

なぜその場で説明しない?
或いは、「例の件ですが、詳しい説明はメールで送ってありますから、時間のある時に読んでください。」などと、予め口頭で報告しない?
5キロも離れたところに居る訳じゃない。5メートルと離れていないところに席があるのだ。

「メール送ってあります。」の後には、『だから、自分はもう責任は果たした。未だ読んでいないのですか?めんどくさいなぁ。大体読んでないあなたが悪いんでしょう・・・』などという気持ちが透けて見える。

この辺は、その押し付けがましくも無礼である点で「私ってこういうヒトじゃないですかぁ」と同類である。





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最終更新日  2005.08.07 13:16:58
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