マックの文弊録

マックの文弊録

2005.08.10
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◇水曜日:旧暦七月六日 丙寅(ひのえ とら)亡父の誕生日、京都清水寺千日詣り、西鶴忌
夏の夕雲ー2

今日は我が愛読するブログ作家である釈迦楽教授のお父上と共に、我が亡父の誕生日である。
釈迦楽教授のお父上は無論健康にご存命の様子でご同慶の至りではある。一方の我が父はもう九年ほど前に幽明界を別って、アチラのほうにいらした。彼は大正三年生まれであったから、まぁ世の標準に照らしても無理の無いことではある。

彼は東京生まれで、父親(つまり僕のお祖父ちゃん)はお金を作っていた!
といっても、偽札では有りませんぞ。当時の大蔵省の しょうしきょく というところの立派なお役人で、ちゃんとした大日本帝国認定の正規のお金を製造していたのである。

父が子供の頃は、今の王子にあった官舎で両親と合計七人に及ぶ兄弟姉妹とかなり優雅な暮らしをしていたのだそうだ。それが、父親が難病を得るに及んで、名医を求めて転々とし、最終的に父親が逝去した地である岐阜に一族は落ち着いた。
兄達が、役所のつてで静岡の製紙会社に職を得たのに対し、我が父は「自分は子供の教育に携わりたい」と、岐阜の師範学校を卒業して教師になった。小学校の社会科の先生である。

七人の兄弟の中では、父が最も家長的な性格を持っていたようで、寡婦となった母親(僕にとってはお祖母ちゃんだ)に頼られ、三人の妹と一人の弟の生活の面倒を一手に見ていたのだというから、えらい。


父は中々優秀な教師だったようで、校長になった時期も同僚よりはかなり早かったそうだ。校長というと大体一校における任期は三年から四年だが、この間に学校の経営を行うことになる。この辺にも父の才能はあったようである。

しかし最後には、一種の政争に巻き込まれたようで、本来のエリートの歩む道からは外され、知的障害児童を対象とする養護学校の校長に転出した。当時の父親の鬱屈した気分は、子供の僕にも何となく伝わり、今でもその当時の家の雰囲気を覚えている。しかし、彼はどこかでその気持ちを振り切ったようで、その後退職までの数年間は一貫して、いくつかの養護学校の経営に専心したのだ。

父親が亡くなったのは彼が八十一歳の時だから、現役を退いてもう二十年以上経っていたけれど、お葬式には300人以上もの元の教え子や同僚などが集まり、葬儀屋が驚いていたことを覚えている。

母親の希望で、香典は父親が勤めた四つの養護学校と福祉施設に寄付することになった。長子としての僕は、父親の部下だった方の先導で、母親と共にこれらの施設を回って歩いた。

そこで聞く父に関する話は、僕の全く知らぬものばかりで、等しく父に対する
深い感謝に満ちたものであった。丁寧に語られる一つ一つの話をうかがいながら、肉親であっても、本当の意味で親を理解してはいないものだと痛感した。

その中の一つの施設では、知的障害者に対する世間の無理解を縷々訴えられた。単純軽作業ならば充分に健常者と同等に、或いは健常者以上に熱心に真面目にこなすことが出来るのに、偏見の故に雇用されない。だから施設には学齢期をとっくに過ぎた人たちがどんどん滞留するようになる。「どうか、息子さんの会社でも雇っていただけませんか。」ということだった。僕は当時或るガイシケーの会社の社長だった。その名刺をご覧になってのことである。

しかし、当時の僕の会社は彼らを雇用する力など無かった。単に毎日毎月汲々として毛唐の作ったIT製品を、計画通りに販売していくのがやっとのことだった。まことに不肖の息子である。「あぁ、まだまだ親父を抜くどころではないなぁ。」と自らの非力を慨嘆すると共に、それまで全く知らなかった父の努力の跡に粛然としたものだ。

父の命日はさすがに忘れないが、誕生日は忘れはしないものの意識に昇ってくることは最早稀である。それを釈迦楽教授のブログが思い出させてくれた。
感謝である。

それにしても、自らも元は教師で、貧窮の時代から一貫して連れ添ってきた母である。父が亡くなってさぞかし気落ちするだろうと心配であったが、何のことは無い、四十九日が過ぎる頃から最早嬉々としてご近所のお仲間と色々なところに遊びにお出かけになる。それも、自らがリーダーとしてご近所を仕切っておられる。鴛鴦の別れを慮って勝手に心配して損した。








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最終更新日  2005.08.13 20:50:15
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