マックの文弊録

マックの文弊録

2005.09.03
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◇土曜日:旧暦七月三十日 庚寅(かのえ とら)

荘川村合掌造り
♪
ワタナベの、ジュースのもとです もう一杯
憎いくらいにうまいんだぁ~
不思議なくらいに廉いんだッ
・・・・♪


一袋五円也。小ぶりの袋は、開けにくい。じれったくなって袋に歯を立て、歯形を頼りに引き開けると、鮮やかな橙色の粉末が入っている。これをコップに落とし入れて水を注ぐ。そうするとオレンジジュースの出来上がりだ。コップの底には、溶け残った白い粉が沈む。これが掻き混ぜてもなかなか溶けない。少しケミカルな味がしたが、あくまでも鮮やかなオレンジ色の、味も鋭角的な飲み物だった。ジュースの味とはそういうものだったのだ。まさにそれこそがオレンジジュースなのであって、それに感動しつつ(且つ望むらくは、親に隠れて)呑むところに意義があった。(なんの意義だ?)

ともかくも、今のように、フレッシュ・スクィーズなんてものはなかった。第一オレンジや蜜柑を絞って汁が出るのは当たり前だ。それは皮を剥いて袋一つ一つを丁寧に食べていく替わりに、乱暴にも手間を省いただけの、ずぼらで代替的な 蜜柑の食べ方 ・・・・・ に過ぎない。そんなもの当時は決して「贅沢でナチュラルな」ものなどではなかった。

ワタナベのジュースの素には、オレンジの他にグレープもあった。(他にもあったかもしれない。)グレープと言えば葡萄かと言えば、そうではない。カタカナでグレープなのだ。葡萄とグレープはあくまでも似て非なるものだった。
親が出かけて留守の時など、水に溶かさないで、粉のまま舐めることもよくやった。後で舌が染まってこれが中々色を落とすことが出来ずに慌てたものだ。

このCMソングが登場したのは、昭和33年(1958年)。確かエノケンこと、榎本健一が唄っていた。
この年はお湯を注ぐだけで出来上がりという、日清のチキンラーメンも発売されている。日本のFast & Junk Foodのハシリだったわけだ。
チキンラーメンは今でも健在だが、コップにひとかけの氷が入ると豪華だった、あのワタナベのジュースの素はどこへ行ってしまったのだろう。

も
耳輪をしてコック帽を被ったインド人を模したロゴがプリントされた、銀色に輝くパウチに黄色い粉末のカレールーが入っていた。
これは、終戦の年つまり昭和20年の十一月に初めて世の中に出たのだというからその歴史は中々のものだ。愛知県での話しだが、直ぐに我が岐阜の町でも売られるようになったのだろう。

子供の頃親戚の家に遊びに行くと、とにかく夕食に出てくるのはカレーであった。而してこのカレーは必ずやオリエンタルカレーだったのだ。少なくとも僕の郷里の岐阜ではそうだった。何しろ他に選択肢が無かった。
いとこ達と遊び呆けて疲れきった空腹の極みには、ジャガイモと人参がゴロゴロ入った、まっ黄色のカレーは本当に美味しかった。
僕はカレーライスは「和食」だと信じていたくらいだ。

ラ ジオで、そして後にはテレビでも、CMソングが流された。
♪♪♪
懐かしい 懐かしい あのリズム
エキゾチックな あの調べ
オリエンタルの謎姫 香るカレーの夢の味
あーあぁー 夢のひと時 即席カレー
君知るや 君知るや オリエンタルカレー
♪♪♪


最近は、カレールーの種類もずいぶん多様になり、凝り出せばどんなバリエーションを作り出すのも自由だ。しかしカレーというものは、「この間と同じ味」を再現するのは至難である。同じルーを使っても、或いは同じやり方でカレーパウダーから本格的に作り始めても、どこかでちょっとした手順の違いが生じるのだろう、とにかく同じ味は出来ない。
かててくわえて、昔のあの「まっ黄色のカレー」はどうしても今の市販のカレールーでは再現出来ないのだ。

そ したら、岐阜の母の住む近くのスーパーマーケットのカレーコーナーの片隅には、未だ有ったのだ!あの懐かしいオリエンタルカレーが。
買い込んで作ってみたら、昔馴染んだ、ちっとも辛くないまっ黄色の、じゃが芋ゴロゴロのカレーライスがちゃんとできた!(でも子供の頃ほど美味しくはなかった!?)

こういうのは嬉しい。


・・・でも、やはりワタナベのジュースの素には再会することができないでいる。





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最終更新日  2005.09.04 00:09:20
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