マックの文弊録

マックの文弊録

2005.09.19
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カテゴリ: IT世界の話
◇月曜日:旧暦八月十六日 丙午(ひのえ うま)、敬老の日、子規忌
ひるが野湿原(曙草 )
ダ イエーの創業者中内功氏が逝去された。享年83歳でいらしたというから、大往生というべきか。
ダイエーのルーツは「主婦の店」だ。これが我が郷里の町に出現したのは昭和三十年代の末頃だったと思う。長良川の北岸に引っ越した直後、近所に出来た主婦の店に母親が買い物に行って、「もの凄ぅ廉いがね!」と感激していたことを覚えているからだ。ちゃんと調べたわけではない。

それにしても、生鮮食品の小売の世界に切り込んで、伝統的な仕入れの経路を切り捨て、対面販売という古来の売り方を廃し、大規模小売店モデルを開拓して、全国小売業のトップにお立ちになったのだ。そして40年ほどの長きにわたって、企業の巨魁として君臨された。
企業の消長は時の経過という頚木を逃れることはできない。今革新的なビジネスモデルだって何年かすれば必ず陳腐化してしまう時が来る。後付けでダイエーの衰退を論じることはた易いことだか、当事者としての中内さんの力を思えば、商売の世界の片隅に居るものとしては頭が下がる。
ご冥福をお祈りして、合掌。

自 前で会社を作ってからつくづく感じるのは、自分の甘さ、ナィーブさだ。人を信じることのはかなさ、人の信頼をあてにすることの危うさに気づかないで済ますことの出来た「雇われ人」としての日々は如何に 長閑 のどか であったことか。

商売と日本語で言う時、そこには誠実さとか信用とかいう観念が連動する。「良いものを誠心誠意お客様にお勧めする。」「努力を怠らず額に汗して頑張れば自ずと道は拓ける。」商売を行うにおいて、そういう「真実」があるのは疑いの無いところだ。しかし、それはいわば底辺の一 層 レイヤー

つ まりは「商売」には更に別の 層 レイヤー が存在する。このレイヤーでは、恩人や先輩を裏切り、又友や同志から裏切られることは日常茶飯事であるし、当事者としてはこういう事態に陥る事を常に覚悟し、警戒しなければならない。このレイヤーでの「恩義」や「信頼」は常に相対的で、状況によってそれぞれ対極の概念との間で刻々と振れ動く。恩義は負債に、信頼は裏切りに。

このレイヤーの世界での絶対尺度は「金銭的成功」ということでしかないのだ。しかも、「絶対尺度」といったって、それが有効に働くのは極々短い。勝者となった瞬間に、次の敗者になるべき切符を受取ってしまうようなものである。
このレイヤーの世界は、「商売」よりも「ビジネス」とカタカナで呼ぶほうが相応しい。

しかし、「ビジネス」の世界では「商売」の世界より、確実に大きな金が動く。そして「金があれば虚業すらも実業になり得る」というのも、又真実のようだ。

暫 く前、通風発作でSOHOを余儀なくされた時間に、「メディアの支配者」 ※ と云う本を読んだ。これは今年ホリエモンとの確執で話題を集めたフジサンケイグループの創始者である鹿内信隆氏から始まって、現在の総帥日枝久氏に至るまでの、栄枯盛衰、骨肉の確執を書いたノン・フィクションである。上下巻で800頁程にもなる分厚い本だが、足の痛みも忘れて一挙に読みきってしまった。

先の大戦中から戦後の混乱期に至る「何でもアリ」の時代、魑魅魍魎ともいうべき男たちの駆け引きにも大いに圧倒されたが、その後のグループの推移にも瞠目させられた。
色々な読み方もあるだろうけれど、僕としては「スケールの大きな金が動くレイヤーでは、そうでないレイヤーとは全く別のビジネスの論理が働いている」ということを、読んでいる間中意識させられていたのだ。

僕 の会社は、ベンチャー企業ではあるが、何か新技術を発明するものではない。ITのソフトウェアの領域で、優れた技術やソリューションを見出し、それらをうまく組み立てて世の中に出していくのを生業にしようとする会社である。こういう会社である以上、「倒産しそうな町工場を家族皆で支えあって・・・」というProject X的シナリオは成立しない。
だから、社員諸君が額に汗して鋭意販売に意を砕いてくれている一方で、僕自身はどうやって商売のスケールアップを可能にするかに邁進しなければいけない。日頃そういうことが意識の底に常にあるものだから、この本の描く世界を想像して、焦燥に似た感じを抱いたのである。


中内さんも、何度か裏切られた事だろうし、自ら裏切った事も結果的には多かろうと思う。そういう時には実に孤独であったろうと想像する。これは鹿内さんも同様であったろう。所詮そういうものに耐え切れるタフさというものが無ければ、こういうレイヤーは自らの前に姿を表す事もないのだろうと思う。

「商売とビジネス」。今後ビジネスのレイヤーに自ら敢然突っ込んでいく事を思うと、出番を待つ役者のようにどきどきしてくるのである。

※ 「メディアの支配者 上・下」 中川一徳著 講談社 2005年7月 ISBN: 4062124521





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最終更新日  2005.09.20 19:25:11
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