全239件 (239件中 1-50件目)

前回のお話は石田さんとの護身術の訓練に、何時にもまして熱心に取組む清水ちゃんだったのに永田さんの前で後ろを向くことが出来ず、絃冶達をこんわくさせてしまいます「じゃぁ、永田君少し前へ」絃冶が指示する。実は清水の内面では今までにない変化が起きていた。大きな恐怖は相変わらず永田から押し寄せている。丁度恐怖が大きな風船のようになって清水へと迫ってくるイメージなのだが、今日はその風船の隙間から細い糸のようなものが清水に向かって流れてくる。細い糸は自分と繋がり、そして告げていた。今も続く永田の慟哭(どうこく)。―今まで市民を守るために働いているのだと信じていた自分の仲間が、自分達の体面を守ることを第一と言う体質なのだと知った衝撃。―あのときの自分ではベストだと思った選択だったが、小さな女の子の心に負わせた傷はとても根深い。今も癒(い)えることの無いトラウマを背負わせてしまった。あの子は今でも不意に大きな音がすると、ビクッと身体を震わせてその場で固まってしまう。その姿を何度も見た。交差点などで後ろに大人が立つと、緊張で顔が強張(こわば)る。大人が追い越してからじゃないと動けない。その顔を見る度切なくなる。…自分の行動は本当に正しかったのかという疑問―自分は万が一敵が子供だった時、その子を撃てるのか。―わが子を失うと感じた母親の恐怖。あの日から本当は一人で一歩も外に出したくない。出来ることならずっと付いていきたい。学校にさえ行かせたくない。それを必死で押し殺して、ドアを開けて出て行く後姿を笑顔で見送る。この「行って来ます」が生涯で最後に聞く言葉なのではないかという思いから、「車に気をつけるのよ」「慌てて飛び出しちゃ駄目よ」「学校が終わったら真っ直ぐ帰ってくるのよ」「知らない人に声を掛けられても付いて行っちゃだめよ!」玄関の扉が閉まるまで、ずっと声を掛けてしまう。それが分かってしまうから、非番の日に、朝に時間のあるときに、早く帰れたときに…ずっと見守り続けた。もちろん社長にさえ隠している。犯人や犯人の父親への感情は克服した。闇に落ちることはもう決して無い。それは自信を持って言える。しかしこの親子のことは手放す事はできない。見守る事を止める事はできない。彼女の彼女達の心の傷に寄り添って生きたい。ずっと自分に生ある限り。彼女達への共感、悔恨(かいこん)…それらの感情が永田を突き動かし、悲しみで満たしている。それが妄執(もうしゅう)となる事を永田は気付かない。それらの感情が細く長い糸となって清水に流れ込んでくる。いや、清水が自分で吸い込んでいるのだ。正確には一昨日から少しずつ届いてはいた。しかし今日はこれまでとは明らかに違う。具体的で、確実で。心を鷲掴み(わしづかみ)にされているような苦しみ。我が事のように、清水の胸を締め付けてくる。その感情に耐えていた時、慌てて統源が立ち上がった。清水ちゃんは永田さんの心の痛みをどう受け止めていくのでしょうか?にほんブログ村応援ぽちっとお願いします。
2013.05.19
コメント(0)

長いスランプに陥っております私程度で生意気かとも思いますが… やがて、清水が入って居ずまいを正し石田を待っていた。 周りの様子をそれとなく見ていたが、誰も何も言ってこない。 この分だと、不思議なことだがどうやら今日の事は誰にもばれていないらしい。 何故なのか、考えても分からない事なので取り敢えず目の前の事に集中することにする。 清水はぴっと一本張り詰めた糸のような緊張感を持って正座をし 精神の集中を高めていた。 程なくして石田が現れ、清水と向き合いいつものように礼をした。 「清水さん、今日は少し受身だけでなく、攻撃的な動きを覚えていただきます。 固く考えなくても、痴漢撃退用の護身術のような物だと考えて頂ければ結構です」 清水はしっかり頷く。 じっと注意深く清水を観察している3人は、 昨日までの清水とは少し違う…何か集中力と積極性のようなものを感じた。 清水の気持ちに何が影響したのか…眼の力強さが昨日までと違う。 石田もそれを感じ取ったのか、指導にも自然と力が入っていくようだった。 いつもより、ぐっしょりと汗をかいた2人は礼をして石田は道場を出て行き、 清水も一度着替えに道場を後にした。 「…今日のキヨは特に熱心だったようじゃの」 ヒゲを撫でながら統源は目を細める。 「はい。」弦冶の返事は短い。よい事のはずなのに、何故か2人とも表情が固い。 手早く着替えた清水が戻ってきた。 「キヨ、次、いいかな?」絃冶が清水に尋ねる。 清水は表情を引き締めると頷く。 呼ばれた永田が入って来た。 「では、清水、昨日と同じだ、後ろを。」 絃冶の指示に「はい…」と小さく答え、両の手をグッと握り締めると、 じっと永田の顔を見つめていた。 清水はすぅっと細く息を吸い込むと目を閉じた。片足を後ろに引く。 両の手をくっと握りなおす。石田との鍛錬が厳しかったせいか、永田との対面に 冷や汗が流れるのか、床にポタ、ポタと汗が落ちている。 「…?」 昨日はすっと回って見せたというのに、今日の清水は一昨日に 戻ってしまったかのように微動だにしない。 絃冶は「キヨ、昨日の感じを思い出して」思わず声を掛ける。 絃冶をちらりと見た統源はごく小さくため息をつくとまた清水を注視する。 清水はくるりと後ろを向いた。口の中で「ちっ」と舌打ちをしながら。 清水ちゃんの舌打ちなんてキャラに合わないよぉ!って書いてる本人がダメ出ししたりしてにほんブログ村応援ポッチリお願いします
2013.02.17
コメント(0)

おぉ!!30回目でございますぅぅぅここまで来られようとは、ひとえに皆様のお陰でございます1回もコメントを貰えた事のないのに30回目を迎えるなど、前代未聞ではないでしょうか?これは少し寂しいのですが。。。とにかくめでたい!!ありがとうございます また昨日までとは違うルートで支社に向かった為、少し時間が掛かったようだ。 相変わらず、道場では統源も絃冶も由紀も待っていた。 「お待たせしました」静也は頭を下げると、壁の脇へと退いた。 「毎日すまないね」絃冶が優しい微笑みと共に労う(ねぎらう)。 静也はいつものように「いえ」とだけ答えて頭を下げたが、 静也が纏う空気感のようなものが、いつもと違う柔らかな雰囲気だという事に 周りの大人たちは気付いていた。 清水は控え室を出ていつもの様に道場に向かおうとしたが、 角で人にぶつかってしまった。 ボフッ…。身長差のせいでエアバックにでもぶつかったようになり 後ろにのけぞったが危うい所で相手が清水の腕を掴んで引き戻してくれた。 「すみません」思いっきりぶつけた鼻を押さえながら深々と頭を下げる。 相手も慌てて頭を下げた。 「あ、こちらこそ慌てていまして。丁度清水お嬢様に届け物をと、思いまして…」 清水お嬢様って…!あまりの恥ずかしさに真っ赤になりながら 顔の前で思い切り手を振る。 「止めてください、森川で結構ですからっ」 相手は驚いたようだが柔らかく笑うと 「では清水様。お鼻、大丈夫ですか?」と聞いてきた。 「あ、は、はい」慌てて手をどける。 「すみません。赤くなってしまわれたみたいで」と恐縮されて 清水は打って赤いのか何で赤いか分からなくなってしまった。 (今日は鼻ばっかり…) 相手は清水の様子には気付かず、鞄の中から包みを取り出した。 「石田から清水様にお渡しするようにと託(ことづか)ってまいりました。 先日お渡ししたディスクを編集して、少しづつ行えるように プログラムを変えてあるそうです。 ご帰宅後に学業もあるでしょうからと、無理のない程度に変更されている ということです。ギリギリになってしまいまして申し訳ありません」深々と頭を下げる。 という事はこの人は石田さんの部下の人かな。 今日もこの後、直接会うのに?と少し疑問に思ったが 「すみません。業務に関係ないことなのに、ありがとうございます」 深々と頭を下げると相手もそれに習い「それでは」とまた元来た通路を戻って行った その人が角を曲がる時こめかみにチリリと静電気のような痛みが走った。 「つっ」一瞬のことで「…?」すぐ何も感じなくなった。 気を取り直した清水は急いで控え室にそれを仕舞うと道場へ向かった。 今回は清水の鼻の話ばっかりだったような気がしますが…にほんブログ村応援ポチッとお願いします
2013.01.13
コメント(0)

もうちょっとで大晦日ですが、今日も明日も仕事の私です雨だしねぇ。。。明日は寒いらしいしね。。。お休み欲しいです(前回 菜緒ちゃん親子と別れて学校に戻る清水は) 清水はお花が揺れて散ってしまうんじゃないかと心配しながら走った。 バスへと駆け込む。「はぁ。ギリギリかなぁ」静也にばれるわけにはいかない。 バスの中を走りたい衝動に駆られながら学園前の停留所を待った。 ― 闇が笑った ― いつものように校門にもたれて清水を待っていた静也は考えに沈んでいた。 自分の前で立ち止まった気配に目を開けると、 清水が「お待たせ」と言って笑顔で立っていた。 瞬間感じる微細な違和感。 「清水さん、今こっちから来なかった?」 校門の外を指差す。 「まさかぁ、ちゃんといつもと同じように来ましたよ」笑顔で答える。 「ふ~ん」何となく腑に落ちないものを感じる。 誤魔化されているような気がして 「影がこっちの方から来た気がするんやけど」と、再度尋ねてみたが 「またまたぁ!明るいうちから幽霊でも見たとか?」 手をヒラヒラさせながら視線を背ける。 静也は「ぷっ」思わず噴出した笑いを手で覆う (このお嬢さん嘘つくと鼻が膨らむんや) 清水の癖を見つけて笑いをかみ殺した。 「!?」静也の視線がどうも自分の鼻辺りに集中しているような気がして 思わず鼻を隠す。「何よ!なんか付いているの!?」恥ずかしくて静也を睨む 「いや。」と言って背を向けていつもの様に先に立って歩き出したが、 静也の肩が一瞬ククッと笑った気がして「もう!気になるやんか!」と鼻を 押さえながら聞いたが、それきり振り返りそうにも無かったので、 仕方なく後を着いていく 「そんな、いきなり女の子の鼻をガン見するってどういうことよ…。」 口の中でブツブツ文句を言いながら手のひらで隠した小さな鏡で念のためチェックする。 (なんだ、なんにも付いてないじゃない) ほっとして鏡を仕舞うと肩越しに見ていたのか 静也の肩がククッ…と小さく揺れている。 (もう!知らんわ、あほ!)と心の中で悪態を付きながら付いていった。 「それよりその花、持ってるやつどうしたん?」 また鼻かと思わず手をやりかけてコスモスの事だと気付いた清水は慌てて 「桃子ちゃんのお庭のを分けてくれてん」桃子の名前が出た途端、 急に興味を失くした様子の静也は「ふ~ん」とだけ答えた。 「…?」ま、何にせよ誤魔化せたようでホッとした。 なんだか2人の距離が微妙に縮まった気がして私は嬉しいですにほんブログ村応援ポチッとお願いします
2012.12.30
コメント(0)

みなさん、メリークリスマス今日も仕事の淋しいクリスマスでしたぁケーキとチキンは食べたけどね 「はい?」怪訝そうな顔をしている。 「あ、綺麗なお庭ですね。お花がいっぱいで…」にっこり微笑みながら話題を振ってみた。 「ありがとう」と言いながら目が不審いっぱいになっている。 「この花、なんていうはなですか?うちにも植えたくて」 「?…あ、あぁコスモス…だけど。」 「え。」 「あ、あぁコスモスってこんな色も有るんですね、 てっきりひまわりか何かの一種かと…。」 くすっと笑った母親は「そうね黄色のほかにほら、あそこにオレンジのもあるのよ」 と庭の奥を指差して教えてくれた。 「へぇ…」細い首を伸ばして覗き込む清水を見ていると何故か警戒心が薄れて来る。 「1株持って帰る?」 「え?いえ。そんな」大きく手を振る。 「遠慮せんでいいよ。たくさんあるから」 「じゃ、じゃぁお言葉に甘えて」もじもじしている仕草が微笑ましい。 「丁度小さなプランターが有ったと思うから、植え替えてあげる。それ持って帰って」 清水を庭に招きながら、片隅にある手入れするものを収納した可愛い小さな棚を開けた。 どれもこれもさり気無く配置されているが とてもセンスがいい事に気付く。 「本当にステキなお庭…あ、私森川清水と言います」ぺこっと頭を下げる 嬉しそうに微笑みながら「じゃあ、清水ちゃん手伝ってくれる?」 棚の中から見つけてきた植木鉢を差し出した。 「はい!」返事はとても良かったのだが清水にとって初めての事で 受け取ったはいいが何から始めたらよいか迷っていた。 それを察した、母親は「先ずはこの黒いシートを… ほら鉢底に丸い穴が開いてるでしょう? それよりも大きめに切って。」 おぼつかない手つきで教えられたとおりに切っていく。 「そうそう。それをさっきの穴の上に載せて」 なんだか当初の目的を忘れそうになるくらい楽しくなってきた。 「その上に、はいこのスコップを使って」と言って水色のスコップを貸してくれる。 「その白い石を…そうね、植木鉢の4分の1位までいれて」 ごろごろした石をすくう。思ったより軽い事に驚く。 そんな表情を微笑ましげに母親は見ていた(今度あの子とも一緒に植え替えをしよう)そんな事を思いながら。 丁度植え替えが終わり後片付けをしていた時、 「ただいま」カチャンと門扉の開く音と共に菜緒ちゃんが入ってきた。 目を丸くしている。お母さんが他人を家に上げるなんて。 しかも自分の知らない人だ。 驚いたのは清水も同じだった。 考えてみればあれから随分経っている 菜緒ちゃんが自分とそう背丈が変わらなくても、不思議ではないのだが、 自分の中の彼女は5歳のイメージのままだった。 固まっている2人を見て母親は「菜緒、こちら森川清水さん。ご挨拶は?」 と声をかけた。「あ、…こんにちは」ぺこっと頭を下げる。 「清水さん、この子は菜緒です」ニッコリ笑って紹介してくれる。 「あ、お邪魔してます。初めまして。清水です」 「早かったのね」いつもより随分早く帰ってきた娘に声をかける。 「今日から家庭訪問やから…朝ゆったで」少し口を尖らし応える。 「あぁ、そやったね」今日は珍しい事続きだ。 お母さんが私の予定を忘れた事なんて無いのに。 「あぁ!!もうこんな時間!私…」 急にあたふたし始めた清水にもって帰る為の袋を取りに行ってくれた母親は 「気をつけて帰ってね」と声をかけた。 「あ、ごめんなさい。私ったら長々お邪魔しちゃって」と頭を下げる。 「綺麗なお花まで頂いてしまって」 話しながらももう足はその場駆け足を始めそうな勢いだ。 くすくす笑った2人は「また遊びに来て」と言って送り出してくれた。 何度も振り返ってはお辞儀をする清水を見送ると、母親は 「そうだ菜緒。お夕飯の買い物一緒に行かない?」と声をかけながら家へと 菜緒を誘(いざな)った。 「うん」笑顔で答えた菜緒は何だか今日のお母さんはとても リラックスしているように見えた。 (あの子のおかげかな?) えっとぉ。。。キヨミズさんだったっけ。。。名前覚えとこう。。。菜緒は 出掛ける仕度をする母親の後姿を見ながら思った。辛い思いを2人で乗り越えようとしている親子の姿に少しだけほっとする清水ちゃん記憶もない母の事を重ねたりしたのでしょうか。。。にほんブログ村応援ぽちっとお願いしますっ
2012.12.24
コメント(0)

選挙ですね!投票日までがあっという間でこの期に及んでまだ投票先決まってなくてこれをアップしたら投票に行こうかなここで最初にお詫びです。前回まで2回分重複してアップしてしまいました読んでくださってる皆様にご迷惑お掛けしまして申し訳ありませんでした。今後気をつけますので引き続きよろしくお願い致します。 一方清水は本当の所、何となくではあるがあの女の子が統源に気付いて 夢でコンタクトを取るのを止めたように感じていた。 何も根拠はないのだが。 何もかもが手詰まりであるような気がして、苛々する。 出来ることから潰していくしか無い。そう判断した清水はいつもの朝のように バス停に向かっていたが立ち止まって桃子に電話する。 「おはよう。桃子?ごめん、今日私休むわ…うん…先生にうまく伝えてくれる? あ、月森君には内緒にしといて。ほんとごめん…うん、じゃあ」 電話を切ると暫く考えていたが、 市立図書館に向かうバス停に向かった。 そこで自分に付いてくれてるであろうボディガードの存在を思い出した。 さりげなくチラチラ見回したがどう見てもこの街の住人しか居ないように見える。 厄介な事に誰の顔も人数さえも知らないのだ。 だが、このままだと自分の計画が父さん達にばれてしまう。 どうしよう。一歩も動けなくなってしまった。こんな事してる時間無いのに。 焦りばかりが、どんどん膨らんでく。苛々爆発! (もう!!来んといて!)挙句、心の中で思いっきり叫んだ。 だからどうなったとか、何もわからないが。 着いてくるなといわれて、はいそうですかと止めるガードが何処にいる。 まぁそこがまだ子供というところか…しかしそれ以外思いつかないのだから 仕方が無い。 叫んだ途端闇雲にダッシュした。随分走った気がする。 めちゃくちゃに走った後で図書館を目指す。 図書館に着いた清水はデータベースの中から永田の例の事件に関連する 記事を検索して被害者に関連するデータを自分のメモリにインプットしていく。 やはり被害者が当時5歳の子供だったこともあり、情報が少ない。 引越しをしている可能性もある。 …今日は周囲に永田の気配は感じられない。 恐らく自分をガードしてくれているチームに入っていないのだろう。 休暇ならば現場でかち合うと言う可能性もある。 それは最悪のパターンで避けなければならないが、 近くに来れば永田より先に自分が感知できるだろうと考え、 記事に記載されていた住所に向かうことにした。 そこは閑静な住宅街だった。綺麗に整理された道路はさいの目のようで 似たような住宅が広がりどこも似た景色が多い。 清水にとっては迷う恐れが大きい。何処を見ても同じような風景が広がっている。 不安に思ったが仕方が無い。地図を片手に歩いていたが、 幸いな事に住所も名前も以前と変わっていないようだ。 (川村、川村…) 程なくして周りに比べるとこじんまりとした家を見つけた。 そこは、色とりどりの花と大きな木で飾られた庭が目を引く可愛らしい家だった。 表札を確認しようとしたが、当然かもしれないが見当たらない。 と、丁度母親と思われる女性が出掛ける所だったようで、門を開けた。 探すと決めた時から自分のような子供が訪ねて行って話など聞けるのだろうか と不安に思っていた。しかしこれだけはどうしようもない。 それにこうやって顔を合わせられるなど、2度と有るとは限らない 意を決すると「あの、すみません…」と声を掛けてみた。 なかなか大胆な今回の清水ちゃんでしたが、いきなりの訪問相手の方はどう思うでしょう?吉と出るか、凶と出るか…次回に続きますにほんブログ村応援ポチッとお願いします
2012.12.16
コメント(0)

寒いと思っていたら、私の住んでいる所にも初雪の予想が。。。毎年余り降らないのですが、例年に比べても早い気がします。って毎年そう思うんですけど「なんか今年特別寒くない?」。。。早く夏や来い♪ そう言えば、学習しない子だな。 2日続けてあんなに怯えた相手に今日も会うというのに、全く平然としている。 思わず首をかしげて清水の顔をマジマジと見入ってしまった。 気付いた清水は恥ずかしそうに視線を外して「あの…」と困ったように声を掛けた。 しまった!静也は何も無かったように、道場に向かうエレベーターのボタンを押した。 こんな時は知らん顔をするより他無い。 いつも通りを装いながら道場に着くと、いつも通り2人が待っていた。そしてもう一人。 椅子を用意させて統源が座っていた。 事前に聞いていなかった静也は驚いて、急ぎ統源の元に向かう。 「おぉ、静也。今回は手間を掛けてすまない。」 静也は膝を折り、「いえ。長のお言葉とあらば」と答えた。 「うむ。今日は孫の様子を見に来たジジイじゃ。そう固くならんで良い。 いつも通り清水のサポートを頼む」 「はい。失礼します」挨拶を終えるといつもの場所で待機する。 流石に統源の前でもたれ掛かるわけにもいかず、 直立で清水が着替えて入って来るのを待った。 しかし社長も忙しいはずなのに、一体いつまで付き添うつもりなのか。 あんな様子を見せられて気になるのは当然だが、超が付くほどの多忙ぶりだと聞いている。 実害は無いのだから秘書に任せておけば良いものを。 清水は着替えを済ませて道場に戻ってきた。 丁度、石田も入ってきたので合気道の練習を始める。 「良いですか、清水さん。貴方の場合、貴方の方から攻撃を仕掛けるというのは 余り考えられない。不意に襲われるという確率が高いと思われます。 その事からも、今日からは先ず基礎とも言える受身をみっちり身体に叩き込んで もらいます」 そう前置きをしてから、本当に2時間ぶっ通しで羽交い絞められ そして清水はひたすら投げられ続けた。 なかなか上手く受身を取ることが出来ずに、何回も身体を床に打ち付けた。 痛くて体が悲鳴を上げている。 「まだまだ!」石田も汗だくだ。音を上げるわけには行かない。 しかし身体は正直だ、益々思うように動けなくなってくる。 それを見ていた統源はモゾモゾとしていたが、辛抱たまらず 「むむむっ!清水!そんな受身ばかりしとらんでええ!遠慮はいらんぞ! たまには 石田を投げ飛ばしてやれい!!」 握りこぶしに力を入れて両の手を振り上げ、キーっとなって地団太を踏んでいる。 それを見て皆が苦笑をかみ殺す。 絃冶は「父さん血圧が上がりますよ」などと声を掛ける。 恥ずかしくなった清水は「もう。おじいさま」と動きを止めてしまった。 苦笑した石田は「一休みしましょう。」そう声を掛け、床に正座した。 とってもお茶目な面がみれておじいちゃん、かわいい!って思ってしまいました自分で書いてるのにねにほんブログ村ポッチリお願いします^□^
2012.12.09
コメント(0)

とっても寒いです。。。こたつから出たくないなぁ。。。 どこかで見たことがある気もするが、待ち伏せされる覚えは無い。 この感じだと告白されるような甘い雰囲気でもなさそうだ。 「はい?」 「あんた、2日続けて放課後、清水…森川清水を連れ回しているようやけど、 一体、何処に連れて行ってるん?」美人が凄むと結構迫力があるんやな。 「連れまわすって、俺は頼まれて送ってるだけだ。」 「どこに?」 「そんな事は本人に聞けよ」ばかばかしいと言わんばかりに通り過ぎようとする。 そう言えば、こいつ、どうやって俺を待ち伏せしたんだ? いつもの俺はバスだ。。。今日に限っての行動をどうやって…。疑念が浮かんでくる。 今自分が通ってきた校舎の外周のフェンスを視線で辿る。 (あぁ…。)そういえば途中に水泳部のクラブハウスが有った。 なるほど、見つけて先回りしたわけか。 随分とお友達思いだこと。 「あの子は他人を疑うとかいう事を知らへんのよ」腕をぐっと掴む。 意外に強い握力に驚きながらも、なんでこんな事されなきゃいけないんだという 怒りが湧き上がって来た。 「じゃぁ、彼女の父親にでも聞けよ。俺は頼まれただけだ。離してくれ!」 腕を振り払うと、むっとしながら前を向いて女から離れていく。 距離が離れてくっと肩を竦める。 男は美人なら何をされても怒らないと思っているんじゃないだろうか? あんまし理不尽な事言われると、いくら俺だって怒っちゃうよ!と心の中で叫んだ。 面と向かって言えない所が、情けないと思いながら。 その事でもう考える気は更々なくなってしまった。 下校時、またこうして清水を待っている自分に呆れながら、 自分で自分に『約束だから』と言い訳したりしている。 気付くと向こうから小走りで清水が近づいてきた。 「ごめんなさい、お待たせして」少し息を弾ませながらぺこりと頭を下げる。 「いや」少しつっけんどんになってしまった。 今日は昨日までとは違う方向のバス停に向かった。 いつも同じ時間帯に同じ交通機関を使うのは拙(まず)い。 後ろから彼女の戸惑いが伝わってきたが、特に説明はしない。 いつも通り、急に乗って急に降りて。今日は地下鉄を乗り継いで支社まで来た。 特に尾行は無かったように思う。 今日も彼女は地下鉄の中でいそいそと道順を、 いつものお気に入りらしい手帳に真剣な表情で書き込んでいた。 車輌が揺れて書いていた字がミヨ~ンとヒゲのようになってしまったのを見て、 ガックシ来ていた。 思わず吹き出しそうになるのを咳払いで押さえ見てないふりを装う。 親しくなるきっかけを彼女に与えてはいけない。 この子はそれを見つけるとすぐ屈託の無い笑顔で俺のパーソナルスペースにぐっと 入り込んでくるに違いない。あの初めて会ったあの日のように。 「はい」とセキュリティカードを手渡す。 清水ちゃんライバル出現?!…と思いきや、ひたすらマイペースですなぁ応援ポッチリをお願いしますにほんブログ村
2012.12.02
コメント(0)

今日も寒いですなぁ寒いのは苦手です。。。清水たちはまだ秋を満喫中です。。。羨ましい。。では始まります 朝、バスには乗らず、歩いて登校することにした静也は、歩きながら考えていた。 一昨日からの事。 少し冷静になって、考えてみたかったのだ。 家だと小さい妹が「兄さま、兄さま」と何かとじゃれ付いて来て ゆっくり考える時間が持てない。 統源から、依頼が有った時、最初は正直面倒な事を押し付けられたと思った。 しかしお嬢さんの護身術の稽古などまぁ1週間もあれば済むだろうからと、 高を括っていたが、事はそう単純には行かないようだ。 他ならぬ長(おさ)からの依頼でなければ、断っていたものを。 あの清水とか言う娘も変わった子だ。 何だか知らないが、永田とかいう男を極端に恐れて。 自分から見れば、なんという事は無い男だ。 あの細い目の中の眼光の鋭さはさすが元警官という感じはするが。 しかしあの子がそんな事を恐れているのではない事は何となく察しがつく。 だとすれば、何を感じ取っているのか…。 行き途で見る彼女は能天気なお嬢さんそのものだが。 それにあのシールドめいた物はなんなのか… あの子の肩を掴もうとした時に感じた違和感。一瞬拒絶されたかと思った。 しかし実際は水の中に手を入れる感じ…違うな。 こう…もっと…。 ゼリーを指先で押すような感じに近いか。少し跳ね返されるような感覚。 でも難なく入ることが出来る。そして入ってしまえば霧散する。 そして何よりも分からないのは咄嗟に閃いたあの時の自分の感情。 何んとしてもあの子を守らなければ…。 何でそんな考えが過(よ)ぎったのか、全く分からない。 でも、思い過ごしだとは思えないほど、瞬間自分に矢のように鋭く刺さった感情。 2日経っても痛みを覚えるほどの強烈な印象が残っている。 何にせよ、絃冶様に言われるまでもない。触らぬ神にたたり無しって事だ。 清水とは必要以上に接触を持たない、これだな。 そう結論付けた頃、校舎が見えてきた。 無駄に広い敷地を誇るうちの学校は徒歩で通うと相当遠回りをする羽目になる。 些かうんざりしながら最後の角を曲がると人にぶつかりそうになった。 角のすぐ向こうに人が立っていたのだ。 「あ、すみません」咄嗟に避けながら、詫びると、 相手は横目で見て声を掛けてきた。 「月森静也君?」不意に自分の名前を呼ばれて、驚いて相手の顔を凝視した。 相手は腕を組んでフェンスにもたれている。 おぉ…まさか、静也君告白ですかぁ?うむむむむぅにほんブログ村
2012.11.25
コメント(0)

アップしようとしたらなんとメンテ!びっくりです朝ちゃんとアップしようと思ったのに。。。日頃の行いだなこれは精進します 今なら分かる。平気な顔の下で、必死で耐えて、理性を繋ぎ止めて、 逃げ出したいのを必死で我慢している事。 何故、そうしているのかは分からない。 でも今日も自分は昨日までの自分と同じように清水に背を向けて家路に着く。 当然の事なのにどうしてこんなに、辛くなってしまったのだろう。 さっきまで清水を支えていた手をグッと握り締めた。 複雑な思いを抱えながらその場を離れる。 一方、清水達はと言うと、昨日と同じに家路に着くと、 何事も無かったように、普段と同じサイクルで時間を過ごした。 そして、その朝言っていたように、統源が夢見をすると言うので、 邪魔にならないように、皆が早めに自室へ引き上げた。 今晩は念の為、由紀も絃冶宅に泊まる事になった。 その晩は、妙な静寂がこの辺り一帯を包んでいるようだった。 いつも割りと静かな住宅街だが、早い時間にも関わらず テレビの音さえ漏れ聞こえてくることもない。 …長かった一夜は太陽の来光と、共に終わりを告げ、小鳥達のさえずりが 新しい朝を連れてきた。 そんな早い時間に皆が、身支度を整えて顔を揃え、統源が口を開くのを 厳かな様子で待っていた。 「由紀さん、何か飲み物を」と乞われ、由紀がテーブルにお茶を運んできた。 統源はそれを一口飲み、一同の顔を見渡した。 「結論から言おう。わしには清水の夢は見れなんだ。」 予想だにしない言葉に、皆緊張を高めた。 「それは一体…」絃冶がそれだけ搾り出した。 統源が視ようと思って視られない夢などない。 今までも、これまでの転生の記憶にもない。 統源は「キヨ、昨晩例の夢は見たかな?」と清水に問うた。 「覚えていないだけかもしれませんが…見ていないような気がします。」 「うむ…。あるいはそのせいで視る事が出来んかったのかも知れんの。」 ひげを撫でて暫く考えているようだったが、 「何にしても、視れなんだのでは話にならん。すまんが由紀さん朝ご飯を頼めるかの」 と言った。 「はい、すぐに取り掛かります」と答えると慌しく用意を始めたので、 清水は統源と絃冶に「ごめんなさい」と申し訳なさそうに言うと 由紀の手伝いをしにキッチンへと入っていった。 「なに、急いても仕方ない事じゃ。キヨ、気にするな」 統源が穏やかな声で清水をなだめた。 少し元気のないまま、清水は学校へと出掛けていった。 清水が居なくなると、3人は今一度テーブルに着いた。 「父さん、どういうことなのでしょう。本当にキヨは見てないのでしょうか」 心配そうに尋ねる。 「恐らくは、本当に見ておらんのじゃろう。 いくらなんでも清水が本当に見ていて わしに視えんというのは考えられん」 「たまたま夢を見なかったという事でしょうか」絃冶は少しでも楽観的な答えを 統源が導き出してくれる事を期待しているようだ。 「…。」暫く考えていた統源は目を開き 「これまで、眠れなかった日以外は毎日見ていた夢を、わしが夢見をする日に限って 見なかったというのは、偶然と言う事は考えにくい」 「しかし父さん、清水も分かっていた事ですし、実際に夢見をされるのは なにぶん初めての事。 緊張して眠りが浅かったから夢を見なかったという可能性も…」 という絃冶の言葉を統源が遮った。 「キヨの眠りは深かった。それは確かじゃ」 「そう…ですか」もう何を聞いて良いかもわからない その後は大した話しもしないまま会社に向かった。 清水ちゃんに何が起こっているのでしょうね。。。わからないまま次回に続きますにほんブログ村応援ぽっちりお願いします
2012.11.18
コメント(0)

風邪治りませ~ん困ったにゃん頑張っていきま~す 今日から毎日ストレッチを行ってください。やり方はディスクに入れて有ります。 後で渡しますから…。」「ありがとうございます」石田も忙しいだろうのに、わざわざ作ってくれたらしい。 暫くして練習を再開し、絃冶の合図で今日の鍛錬は終了した。 石田が退出していよいよ永田の出番だ。 由紀が呼びに行き、永田が入ってきた。統源の表情が引き締まる。 皆が固唾を呑んで2人を見守る。 「よし、先ずは昨日と同じ位置に着いて。」絃冶から指示に従い2人は向かい合う。 「じゃぁ、キヨそのまま回れ右をして」昨日と同じ事を要求する。静也が1歩前に出た。 清水は暫く永田の目を真っ直ぐ見つめていたが、 ふと目を伏せるとクルッと後ろを向いた。 実に呆気無い位に。 周りが皆驚いた。誰より永田自身が驚いてた。 昨日まであんなに自分に怯えていたのに。 永田は実はこれまでの清水の反応にショックを受けていた。 自分では、もう立派にこの社の人間として務めを果たしているし、 社長に対する忠誠心も誰にも負けない自負がある。 人間としても、洗脳から解放されもう2度と私怨に惑わされたりはしない自信があった。 だが、社長の娘である清水に恐れられる事で、 自分の中にまだ不浄なものが沈殿していると言われているかのように感じていた。 それは永田にとって恐怖であった。 しかし今日、清水は自分に背中を見せた。 言葉では言い表せない感情が押し寄せてきた。 「父さん、今日はここまでで、良いですか?」 清水がそのままの姿勢で絃冶に声を掛けた。 その声で皆が我に帰り、絃冶は 「あぁ…そうだな。今日は大分ハードだったし。ねぇお父さん」と統源に同意を求めた。 「うむ、ここまでにしよう」と答えたので そのまま清水は誰の手も借りずに目の前の 手近なドアから出て行った。 皆が呆気に取られている中で統源だけが 目を細めて歩いていく清水の姿を観察していた。 そして静也にだけ聞こえるように「静也、行け。」と声を掛けた。 「はい。」清水とは違う自分の直ぐ後ろのドアから静かにするりと出た静也は、 ドアが閉まった途端、清水の姿を探して全速力で走り出した。 清水はさっき出てきたドアにもたれ掛ったままうずくまっていた。 走り寄って肩に手を掛けるとまたもやシールドが清水をベールのように 覆っていた事が感じられた。 清水に触れると同時に震えているのに気付いた。 本当は今日も永田の事を怖がっていたのか。 それを必死に封じ込めて、誰にも気取られないように何気なさを装って 背中を向けたのだろう。永田を慮(おもんばか)ってだろうか。 「大丈夫、ありがとう…この事は誰にも言わんといて」 振り向く事なく清水は言った。 「分かった」静也が答えると、清水は立ち上がろうとした。 が、ピタッと動きが止まり 「ごめんなさい。控え室まで腕を貸してもらえる?」と静也に頼んだ。 「大丈夫なのか?」もう一度確認する静也に「少しふらついているだけ。」 「でもそんなところ他の人に見られたくないねん。 気付かれないように他人が来るまでで良いから」 静也は清水の背中から手を回して反対側の腕を取り、 自分の腕で支えると歩き出した。 触れている所から清水の身体が震えているのが伝わってくる。 「そんな無理する事ないだろ」思わず、手に力が入る。 「痛っ。」 「あ、ごめん。」つい力が入ってしまった。 自分は何でこんなにも歯がゆい思いをしているのだろう。 この娘と関わるようになってから分からないことだらけだ。 遂には自分の事すら分からない時がある 清水は今日も、自分の手を離れて、平気な顔をして家へと帰っていくのだろう。 「ありがとう」控え室のドアの前で礼を言うと一人で入っていった。 今なら分かる。平気な顔の下で、必死で耐えて、理性を繋ぎ止めて、 逃げ出したいのを必死で我慢している事。 何故、そうしているのかは分からない。 でも今日も自分は昨日までの自分と同じように清水に背を向けて家路に着く。 当然の事なのにどうしてこんなに、辛くなってしまったのだろう。 さっきまで清水を支えていた手をグッと握り締めた。 複雑な思いを抱えながらその場を離れる。 静也君も複雑な思いを抱えてしまったようです清水ちゃんや静也君に応援メッセージ頂けると嬉しいですにほんブログ村
2012.11.11
コメント(0)

風邪です。。しっかり引いてしまいました熱が下がらないのにこれから出勤です。。。 しかし社長も忙しいはずなのに、一体いつまで付き添うつもりなのか。 あんな様子を見せられて気になるのは当然だが、 超が付くほどの多忙ぶりだと聞いている。 実害は無いのだから秘書に任せておけば良いものを。 清水は着替えを済ませて道場に戻ってきた。 丁度、石田も入ってきたので合気道の練習を始める。 「良いですか、清水さん。貴方の場合、貴方の方から攻撃を仕掛けるというのは 余り考えられない。不意に襲われるという確率が高いと思われます。 その事からも、今日からは先ず基礎とも言える受身をみっちり 身体に叩き込んでもらいます」 そう前置きをしてから、本当に2時間ぶっ通しで清水はひたすら投げられ続けた。 なかなか上手く受身を取ることが出来ずに、何回も身体を床に打ち付けた。 痛くて体が悲鳴を上げている。 「まだまだ!」石田も汗だくだ。音を上げるわけには行かない。 しかし身体は正直だ、益々思うように動けなくなってくる。 それを見ていた統源はモゾモゾとしていたが、辛抱たまらず 「むむむっ!清水!そんな受身ばかりしとらんでええ!遠慮はいらんぞ!たまには 石田を投げ飛ばしてやれい!!」 握りこぶしに力を入れて両の手を振り上げ、キーっとなって地団太を踏んでいる。 それを見て皆が苦笑をかみ殺す。 絃冶は「父さん血圧が上がりますよ」などと声を掛ける。 恥ずかしくなった清水は「もう。おじいさま」と動きを止めてしまった。 苦笑した石田は「一休みしましょう。」そう声を掛け、床に正座した。 清水は正座をする気力も無く体育座りをして水分を補給する。 (もう、おじいさまったら、何をしにいらしたんやろう)赤くなって下を向く。 石田はスポーツドリンクを飲みながら 「清水さん、終わったら直ぐスプレーして筋肉を冷して下さいね。」と声を掛けた。 「はい。」心遣いの細やかな人だ。 「それから、流石に筋力はある程度有るようですが、水泳とは使う筋肉が異なります。 ストレッチを入念にしてもっとしなやかな筋肉を作らなければ。 お帰りになっても今日から毎日ストレッチを行ってください。 やり方はディスクに入れて有ります。 後で渡しますから…。」 「ありがとうございます」石田も忙しいだろうのに、わざわざ作ってくれたらしい。いつも遊びに来てくれて有難うございます。ひと言でもコメントいただければ、嬉しいですにほんブログ村
2012.11.04
コメント(0)

今日は生憎の雨です。無いものねだりで、「雨が好きなアンニュイな大人の女」に憧れる私ですが、どうしても雨は好きになれませんなのに完璧雨女なんですよね 結局下校時、またこうして清水を待っている自分に呆れながら、 自分で自分に『約束だから』と言い訳したりしている。 気付くと向こうから小走りで清水が近づいてきた。 「ごめんなさい、お待たせして」少し息を弾ませながらぺこりと頭を下げる。 「いや」少しつっけんどんになってしまった。 今日は昨日までとは違う方向のバス停に向かった。 いつも同じ時間帯に同じ交通機関を使うのは拙(まず)い。 後ろから彼女の戸惑いが伝わってきたが、特に説明はしない。 いつも通り、急に乗って急に降りて。今日は地下鉄を乗り継いで支社まで来た。 特に尾行は無かったように思う。 今日も彼女は地下鉄の中でいそいそと道順を、 いつものお気に入りらしい手帳に真剣な表情で書き込んでいた。 車輌が揺れて書いていた字がミヨ~ンとヒゲのようになってしまったのを見て、 ガックシ来ていた。 思わず吹き出しそうになるのを咳払いで押さえ見てないふりを装う。 親しくなるきっかけを彼女に与えてはいけない。 この子はそれを見つけるとすぐ屈託の無い笑顔で 俺のパーソナルスペースにぐっと入り込んでくるに違いない。 あの初めて会ったあの日のように。 「はい」とセキュリティカードを手渡す。 そう言えば、学習しない子だな。 2日続けてあんなに怯えた相手に今日も会うというのに、全く平然としている。 思わず首をかしげて清水の顔をマジマジと見入ってしまった。 気付いた清水は恥ずかしそうに視線を外して「あの…」と困ったように声を掛けた。 しまった!静也は何も無かったように、道場に向かうエレベーターのボタンを押した。 こんな時は知らん顔をするより他無い。 いつも通りを装いながら道場に着くと、いつも通り2人が待っていた。そしてもう一人。 椅子を用意させて統源が座っていた。 事前に聞いていなかった静也は驚いて、急ぎ統源の元に向かう。 「おぉ、静也。今回は手間を掛けてすまない。」 静也は膝を折り、「いえ。長のお言葉とあらば」と答えた。 「うむ。今日は孫の様子を見に来たジジイじゃ。そう固くならんで良い。 いつも通り清水のサポートを頼む」 「はい。失礼します」挨拶を終えるといつもの場所で待機する。 流石に統源の前でもたれ掛かるわけにもいかず、 直立で清水が着替えて入って来るのを待った。今回の静也は人間味が出てきて、私は好きです清水ちゃんに応援お願いしますにほんブログ村
2012.10.28
コメント(0)

早いものでもう20回を迎えることが出来ました。いつも読みに来てくださる皆様、本当に有難うございます。心から感謝申し上げます。これからもどうぞよろしくお願いします。 下校時、またこうして清水を待っている自分に呆れながら、 自分で自分に『約束だから』と言い訳したりしている。 気付くと向こうから小走りで清水が近づいてきた。 「ごめんなさい、お待たせして」少し息を弾ませながらぺこりと頭を下げる。 「いや」少しつっけんどんになってしまった。 今日は昨日までとは違う方向のバス停に向かった。 いつも同じ時間帯に同じ交通機関を使うのは拙(まず)い。 後ろから彼女の戸惑いが伝わってきたが、特に説明はしない。 いつも通り、急に乗って急に降りて。今日は地下鉄を乗り継いで支社まで来た。 特に尾行は無かったように思う。 今日も彼女は地下鉄の中でいそいそと道順を、 いつものお気に入りらしい手帳に真剣な表情で書き込んでいた。 車輌が揺れて書いていた字がミヨ~ンとヒゲのようになってしまったのを見て、 ガックシ来ていた。 思わず吹き出しそうになるのを咳払いで押さえ見てないふりを装う。 親しくなるきっかけを彼女に与えてはいけない。 この子はそれを見つけるとすぐ屈託の無い笑顔で俺のパーソナルスペースにぐっと 入り込んでくるに違いない。 あの初めて会ったあの日のように。 「はい」とセキュリティカードを手渡す。 そう言えば、学習しない子だな。 2日続けてあんなに怯えた相手に今日も会うというのに、全く平然としている。 思わず首をかしげて清水の顔をマジマジと見入ってしまった。 気付いた清水は恥ずかしそうに視線を外して「あの…」と困ったように声を掛けた。 しまった!静也は何も無かったように、道場に向かうエレベーターのボタンを押した。 こんな時は知らん顔をするより他無い。 いつも通りを装いながら道場に着くと、いつも通り2人が待っていた。 そしてもう一人。 椅子を用意させて統源が座っていた。 事前に聞いていなかった静也は驚いて、急ぎ統源の元に向かう。 「おぉ、静也。今回は手間を掛けてすまない。」 静也は膝を折り、「いえ。長のお言葉とあらば」と答えた。 「うむ。今日は孫の様子を見に来たジジイじゃ。そう固くならんで良い。 いつも通り清水のサポートを頼む」 「はい。失礼します」挨拶を終えるといつもの場所で待機する。 流石に統源の前でもたれ掛かるわけにもいかず、 直立で清水が着替えて入って来るのを待った。 しかし社長も忙しいはずなのに、一体いつまで付き添うつもりなのか。 あんな様子を見せられて気になるのは当然だが、 超が付くほどの多忙ぶりだと聞いている。 実害は無いのだから秘書に任せておけば良いものを。 清水は着替えを済ませて道場に戻ってきた。 丁度、石田も入ってきたので合気道の練習を始める。「良いですか、清水さん。貴方の場合、貴方の方から攻撃を仕掛けるというのは 余り考えられない。 不意に襲われるという確率が高いと思われます。 その事からも、今日からは先ず基礎とも言える受身を みっちり身体に叩き込んでもらいます」 そう前置きをしてから、本当に2時間ぶっ通しで清水はひたすら投げられ続けた。 なかなか上手く受身を取ることが出来ずに、何回も身体を床に打ち付けた。 痛くて体が悲鳴を上げている。 「まだまだ!」石田も汗だくだ。音を上げるわけには行かない。 しかし身体は正直だ、益々思うように動けなくなってくる。 それを見ていた統源はモゾモゾとしていたが、辛抱たまらず 「むむむっ!清水!そんな受身ばかりしとらんでええ!遠慮はいらんぞ! たまには、石田を投げ飛ばしてやれい!!」 握りこぶしに力を入れて両の手を振り上げ、キーっとなって地団太を踏んでいる。 それを見て皆が苦笑をかみ殺した。もう!統弦じいちゃん大好き!可愛すぎる!!清水ちゃんともども応援よろしくです。それからひと言コメント残していただけると超うれしいですにほんブログ村
2012.10.21
コメント(0)

この所連休続きですね。。。休みじゃない私ですが曜日感覚が狂いっぱなしです。では、いつもより時間が遅くなってしまいましたが始まりますぅ 「ところで、父さんこの状況をどう見ます?」 「…さっきも言ったように、全ては今夜じゃ。だがキヨが夢を見始めて2週間を 超えているようだな。 その辺りから想像するに、まだその少女はその状況に陥っていない可能性も考えられるの」 「やはり、そうでしょうか。あるいは、もう…」絃冶の言葉に由紀は思わず目を伏せる。 自分だってそんな事は考えたくは無いが。 「それに、キヨの異変じゃ。もし今回の夢が正夢もしくは予知夢だとして、 これまでこの様な能力を発現させた事は無かった。 これまで以上に、慎重に見守る必要が有る」 「はい。キヨは何に巻き込まれようとしているんだろう…」沈痛な面持ちで返事をした。 朝、バスには乗らず、歩いて登校することにした静也は、歩きながら考えていた。 一昨日からの事。 少し冷静になって、考えてみたかったのだ。 家だと小さい妹が「兄さま、兄さま」と何かとじゃれ付いて来て ゆっくり考える時間が持てない。 統源から、依頼が有った時、最初は正直面倒な事を押し付けられたと思った。 しかしお嬢さんの護身術の稽古などまぁ1週間もあれば済むだろうからと、 高を括っていたが、事はそう単純には行かないようだ。 他ならぬ長(おさ)からの依頼でなければ、断っていたものを。 あの清水とか言う娘も変わった子だ。 何だか知らないが、永田とかいう男を極端に恐れて。 自分から見れば、なんという事は無い男だ。 あの細い目の中の眼光の鋭さはさすが元警官という感じはするが。 しかしあの子がそんな事を恐れているのではない事は何となく察しがつく。 だとすれば、何を感じ取っているのか…。 行き途で見る彼女は能天気なお嬢さんそのものだが。 それにあのシールドめいた物はなんなのか… あの子の肩を掴もうとした時に感じた違和感。一瞬拒絶されたかと思った。 しかし実際は水の中に手を入れる感じ…違うな。 こう…もっと…。 ゼリーを指先で押すような感じに近いか。少し跳ね返されるような感覚。 でも難なく入ることが出来る。そして入ってしまえば霧散する。 そして何よりも分からないのは咄嗟に閃いたあの時の自分の感情。 何んとしてもあの子を守らなければ…。 何でそんな考えが過(よ)ぎったのか、全く分からない。 でも、思い過ごしだとは思えないほど、瞬間自分に矢のように鋭く刺さった感情。 2日経っても痛みを覚えるほどの強烈な印象が残っている。 何にせよ、絃冶様に言われるまでもない。触らぬ神にたたり無しって事だ。 清水とは必要以上に接触を持たない、これだな。 そう結論付けた頃、校舎が見えてきた。 無駄に広い敷地を誇るうちの学校は徒歩で通うと相当遠回りをする羽目になる。 些かうんざりしながら最後の角を曲がると人にぶつかりそうになった。 角のすぐ向こうに人が立っていたのだ。 「あ、すみません」咄嗟に避けながら、詫びると、相手は横目で見て声を掛けてきた。 「月森静也君?」不意に自分の名前を呼ばれて、驚いて相手の顔を凝視した。 相手は腕を組んでフェンスにもたれている。 どこかで見たことがある気もするが、待ち伏せされる覚えは無い。 この感じだと告白されるような甘い雰囲気でもなさそうだ。 「はい?」 「あんた、2日続けて放課後、清水…森川清水を連れ回しているようやけど、 一体、何処に連れて行ってるん?」美人が凄むと結構迫力があるんやな。 「連れまわすって、俺は頼まれて送ってるだけだ。」 「どこに?」 「そんな事は本人に聞けよ」ばかばかしいと言わんばかりに通り過ぎようとする。 「あの子は他人を疑うとかいう事を知らへんのよ」腕をぐっと掴む。 意外に強い握力に驚きながらも、なんでこんな事されなきゃいけないんだという 怒りが湧き上がって来た。 「じゃぁ、彼女の父親にでも聞けよ。俺は頼まれただけだ。離してくれ!」 腕を振り払うと、むっとしながら前を向いて女から離れていく。 距離が離れてくっと肩を竦める。 男は美人なら何をされても怒らないと思っているんじゃないだろうか? あんまし理不尽な事言われると、いくら俺だって怒っちゃうよ!と心の中で叫んだ。 面と向かって言えない所が、情けないと思いながら。 その事でもう考える気は更々なくなってしまった。だって、だって女の子可愛い子が勝ちに決まってるじゃない!!!思いっきりひがみながら叫んでみたりにほんブログ村
2012.10.14
コメント(0)

先週お休みさせて頂きまして、スミマセンでした台風大変でしたね。うちでは夕方5時ぐらいが一番激しかったんですが、ちょうどその時帰宅している時で、恐ろしい目にあいました。。。今日はいい天気こんな日に仕事なのはどうかとおもいながらも、気分良く行ってみようかと思います 朝、昨夜遅くに帰宅したにも関わらず、由紀はいつもより少し早めに絃冶宅を訪れた。 皆を起こさないようにと、そうっと足音を忍ばせてリビングに向かうと、 由紀は我が目を疑った。食卓に朝食用の食器類が準備されていたのだ。 部屋を見回すと清水がもう服を着替えて庭の樹木に水を撒(ま)いている。 こう言っては何だが、毎朝寝起きの良い方ではない清水は 目覚まし無しでは起きられない それが、こんな時間に起きているなんて、もう今日は天から槍が降ってくるかもしれない。 そんな埒も無い事を考えていると、清水が由紀に気付き唇だけで「おはよう」と言った。 まだ寝ている2人を慮(おもんばか)ってだろう。 笑顔で会釈を返すと庭への窓をそっと開け「お早いですね」と声を掛けた。 「うん、これ終わったら、朝食の準備手伝うよ」 「何か予定でも?」 「あー、うん。後で由紀さんにも聞いてもらいたい話があるねん」と答えた。 何用だろうと思いながらも「わかりました」とだけ答えて由紀も準備に取り掛かる。 程なくして部屋に戻ってきた清水は手を洗うとエプロンを着けた。 その時、客間から統源が起きてきた。 「おはよう」「おはようございます」とお互いに朝の挨拶を交わすと 「清水、やけに早いな。この頃はこんなに早起きなのか?」とやはりその話題になった。 「ううん。いつも寝坊ばかり」と答えると、統源はおかしそうにふぉっふぉっふぉと 声を上げて笑った。 「何だか賑やかですね」と言いながら絃冶も顔を出しそこに清水の姿を見つけると、 部屋の時計を見直し、「どうした清水!熱でもあるのか?!」と声を上げた。 これには「もうっ!」と頬を膨らまし、更にそれを見た3人に笑われ、 少しご機嫌斜めになる。 というわけで、いつもより早い朝食を終えた一同は 清水が話し出すのをコーヒーを飲みながら待った。 コホンと咳払いをした清水は自分の頬を人差し指で軽く掻いて、 「…そんな、改まって聞いてもらうような話じゃなくて…」と思った以上に 聞く体制になって待っている3人に気後れして話し出すのを躊躇っている。 「なぁに、そんなに力を入れんでも。気軽に話せばええ」と統源が助け舟を出す。 「うん」肩を少し動かした清水は 「あのね、前に私が夢を見たって話、覚えている?」と絃冶に聞いた。 そうか、あれから色々有りすぎて、だいぶ前のような気がするが、 そう前の話でもなかったなと思いながら「あぁ」と短く答えた。 そして清水はその場に統源が居なかったので 「女の子が出てきた夢を見たの」と説明をした。 もちろん統源はその話は既に絃冶から報告を受けていたが、 初めて聞くような素振りで「ほう。」と答えた。 「実はね。その日の夢は女の子の顔しか覚えて無かってんけど、あれから毎日 その子の夢を見るようになってん」という清水の言葉に絃冶は瞠目した。 「と言っても、塞ぎこんでいた間は殆ど寝てなかったから…」 「そんな事一言も聞いてないぞ」と言いながら由紀をちらっと見たが由紀も頷いた。 「うん。毎日なんか色々有ったし、何となく言い出すタイミングが無かったというか…」 と困ったように言い訳する清水に「それで?」と統源が先を促す。 「うん。最初の数日は起きたらいつものように忘れてしまってたみたいやねんけど その内少しづつ覚えている事が増えてきて、 どうやら同じ夢を繰り返し見ているらしいって事に気付いてん」 これは只事ではないと肩に力の入る絃冶を目で制すると、統源は事も無げに、 「ふ~ん。お前にしては珍しいのう」とだけ言った。 「うん。その内…あ、音とか声は何も聞こえへんねんけど、なんでかな。 言っている事が何んと無く分かるようになって。 その子、同じ言葉をずっと繰り返してるみたいやねん」 「何て?」 「多分、『助けて』って…ずっと助けてって私に向かって言ってるねん」 清水は皆を見回した。どう思う?と目が問うている。 「彼女以外暗闇で何も見えへんから根拠なんて無いんやけど、 その子の置かれている状況は日を追う毎に悪化している気がする。 切迫して来てる気がするねん…勘、やけど」 絃冶は「う~ん。」と腕を組んで答えあぐねていた。 その時統源が「いいか清水、お前はわしの孫じゃ。お前が見る夢にも何かの兆し あるいは警告が潜んでいるのかもしれんぞ」と清水の目を見ながら答える。 「今夜わしが占ってみるから、そう心配せんでも良いが油断はせんようにな」とだけ 告げた。 「さぁ、清水さんそろそろ仕度を…」と丁度良いタイミングで 由紀が清水に声を掛ける。 「…はい。」皆に話して胸の痞(つか)えが取れたのか、 さっぱりした表情でリビングから自室へと向かった。 「キヨ、今日も鍛錬に来るんだぞ!」 「はぁい」特に嫌がる風でもなく用意をし、 元気に「行ってきま~す」と叫ぶと玄関をいつもの様に勢いよく閉めて出て行った。 「まぁ…元気が良いのは良いことだな…」コーヒーを啜りながらぽつりと言う統源に 2人は「ハハハ…」と乾いた笑いを返した。まぁ…元気な清水ちゃんにまた会いに来てくださいねぇ一言でいいので感想頂けたら嬉しいです。日本一コメントもらえないブログかもしれません。。。ううっにほんブログ村
2012.10.07
コメント(0)

毎回、小説をアップするにあたり、何処まででその回を終わりにするのか、本当に悩みます次が気になる~って状態で終わりたいのですが、そこが難しい。すごく長くなってしまったり、短すぎるやろって事に。毎回悩みの種です。今回も悩みながら、結論の出ないまま、取り敢えず始まります 清水は言葉通り急いで入ったらしく、髪の毛を乾かす間もなく戻ってきた。 「はは…。清水。そう急がんでも、今晩は泊まっていく事にしたから、 髪を乾かしてきなさい。風邪を引いてしまうやろ」また目を細めて声を掛ける。 「そういう事で由紀さん、急なことで手間を掛けるが…」 「いえ、とんでもございません」と微笑むとお風呂の用意をしに出て行った。 清水は清水で「やった~!」と統源の手を握ると、自室へと入っていった。 「宜しいんですか?寺を空けて」 「うむ。留守は頼んで来たから問題ない」 という事は初めからそのつもりだったという事か。 それならそうと先程の電話で言ってくれれば良いのに。 「会長お風呂の用意が出来ました。何時でもどうぞお使い下さい」と 由紀が声を掛ける。 「ありがとう。いつも由紀さんには世話になるねぇ」よっこいしょと 声を掛けながら立ち上がり浴室へと向かった。 絃冶は由紀に統源が消えた方を見ながら声を抑えながら話しかけた。 「キヨはどうしてしまったんだろう。まるで2つの人格が在るようだ…」 言った自分の言葉にギョッとして目を見張り由紀を見た。 「私には、よく分かりませんが、清水さんは怯えている自分を いつもの自分に戻そうとしているように見えます。上手く言えませんが。 それより気になるのは、清水さんの永田さんに対する言葉です。 何を言おうとしているのか。 そもそも昨日は口を利く事すら出来ない程に怯えていたというのに。 彼の中に何かを視たのでしょうか」 「うん。それは俺も気になっていた」 清水が部屋に戻って来たのでそこで話は不自然に中断する。 清水は一向にそのことを気にする風もなくソファに座ると、 まるで昨日の映像をリプレイしているかのように、 膝を抱えたままぼうっと座って動こうともしなくなった。 「清水さん、お水は?」と由紀が声を掛けると、「あ。」と言って 自分で冷蔵庫から水を取って来たが飲むでもなく、 先程までと寸分変わらぬ姿勢で機嫌良さそうに座っている。 そんな清水を見て2人は段々不安になって来ていた。 「キヨ?今日は道場に来る時、静也君と昨日の話とかはした?」と絃冶は聞いてみた。 すると表情はそのままに首を振って否定する。 「ふ~ん…」次の言葉が見つからず、絃冶は当惑していた。 その間も清水はニコニコとしながら部屋を見るとは無しに見ている。 だが何処にも焦点があっていないようだ。 こうなって来ると只事ではないと2人も感じ始めていた。 その時「あぁ、良い湯じゃったぁ」と言いながら、統源が風呂から上がってきた。 2人の雰囲気を見るなり何も言うなと視線で制し、 清水には「おぉ、清水。わしも何か飲み物を貰おうか」と声を掛けた。 その途端スイッチが入ったかのように、いつもの清水へと戻り、 冷蔵庫からお茶を運んできた。 それから夜、寝室に引き上げるまで、清水は何の違和感も感じさせなかった。 しかし絃冶と由紀にはその事がかえって不安を増してしまった。 何か知っているのかと問いたげな視線を向けてきた絃冶に、 「まぁ、もう少し待ちなさい」と厳しい顔で制すると、 「もう夜も遅い、年寄りにはキツい。由紀さんすまんが休ませて貰う事にしようかの」と 声を掛けた。 「はい。お部屋のご用意は出来ております。では、わたくしはここで失礼致します」と 暇(いとま)を告げた。 「うむ」と短く応えると部屋へと引き上げていった。 「何が年寄りだ、都合の良い時だけ年寄りになって」と珍しく文句を言う絃冶に 笑いながら目礼をすると、由紀は帰っていった。 本当なら自分もこの家に泊まって推移を見守りたいだろうに、出来た女性である。 自分のそばに由紀のような女性が居てくれる事を、心から幸運だと感じる絃冶だった。うん?爺さん只者ではないな?って感じでしょうか?次回も爺さん出てきます応援ぽちっとお願いします。それから、それから、コメントどうぞヨロシクお願いします。感想などなんでもokですまってまぁすっっにほんブログ村/
2012.09.23
コメント(0)

この頃、事務の仕事が立て込んで、ほかの事になかなか手が回りません。なのにゲームをしちゃう私。。。あほぉ!!…気を取り直してさぁ、始めますよう どう解釈したら良いのだろう。永田に遭う毎に清水の不可解な言動は増えていく。 静也も何も言わず出て行こうとしたので、呼び止めた。 「あ、静也君今日はどうだった?またシールドを感じたかい?」 「はい。昨日と同じ気配を感じました。」 「そうか…」 「しかし、今日はその気配が消えるのは昨日より早かったと思います。 俺が元の位置に戻ったら、薄れていたみたいです。 手を肩に掛けようとした時、そんなに抵抗を感じませんでしたから。」 「…分かった。ご苦労様、もう帰ってくれて良いよ。ありがとう」 労いの言葉を掛けつつも絃冶の頭は半分思考の中に沈んでいるようだった。 静也は「失礼します」とだけ言うと出て行った。 そう言えば、静也は昨日あれからの清水の様子などを聞くことをしなかった。 ここに来るまでの道中に清水本人に聞いたのだろうか? …とにかく報告をしなければ。 統源に電話を掛ける。 今日の経緯を詳しく話し、清水の回復を待ってこのまま家へ連れて帰ると告げた。 統源は了解しあっさりと電話を切った。 社長室に戻り、早速防犯カメラの映像をチェックしたが、 昨日と同じで可視できる情報は、やはり皆無だった。 念のため科学分析班に連絡し赤外線など可能な限りのチェックを指示する。 昨日の様子からするとそろそろ清水が回復する頃だろうと踏んで、別室へと向かった。 ノックをして入っていくと、清水の顔色は幾分ましになっていた。 それでも「どうだ?」声を掛けてみたが、まだうなずくくらいしか出来ないらしい。 「もう、ご自宅へお連れしようかと思います」と由紀が答えたので、 「そうだな…。キヨ、立てるか?」と聞いた。 清水は微笑んで、椅子の手すりに摑まり立ち上がった。それを由紀が支える。 由紀は車の手配を済ませていたようで、玄関につけてあるという事だった。 車内でもそれとなく観察をしていたが、 清水の反応は昨日と同じで、車に乗った途端に 落ち着きを取り戻しつつあるようだった。 これをどう判断したら良いのか。 単に永田の居る社屋から離れたからなのか。 この社長専用車が、一国の総理専用車並みの装甲を備えていると 知っているからなのか。 横顔を見ながら、考えているうちに自宅へと到着した。 念のため清水の腕を取りながら、玄関に入ると、草履(ぞうり)が目に入った。 清水はぱっと顔を上げると「おじい様!」と声を上げ、時折ふらつきながらも ぱたぱたとリビングへと走っていった。 そして、統源がソファに腰掛けているのを見つけると後ろから抱きついた。 「おじい様。どうしたのですか、急に?」顔を覗き込みながら、嬉しそうに聞いた。 後から続いて入ってきた絃冶も多少呆れたように「どうしたんです?突然。」と聞いた。 2人に尋ねられた統源は清水の頭をよしよしと撫でながら、 「うむ。近くに用事が出来てな。その帰りじゃ。早う帰ってきてくれて良かった。」 (このタヌキ爺)と思いながらも 「前もってご連絡いただければ迎えを遣しましたのに」 と絃冶は言った。 「要らん。要らん」と手を振りながら、 「折角近くまで来たんやから、キヨの顔を見てから帰らんとな。 なかなか会えんのじゃから、淋しゅうていかん」ニコニコと眉尻を下げる。 「会長、ご無沙汰を致しております」入り口の所で頭を下げている由紀に 「おぉ、由紀さん。いつも愚息が世話を掛けてすまんのう」と声を掛ける。 由紀は苦虫を噛み潰したような絃冶の顔をみてクスクスと笑いをかみ殺しながら、 「今、お茶を」とキッチンへと向かう。 統源は目を細めながら清水に「ここに座りなさい」と自分の横を示した。 「はい。」嬉しそうにニコニコしながら座った清水を見て 「少し顔色が悪いのではないか?鍛錬がきつ過ぎるのではないのか。」 と心配そうに声を掛ける。 「ううん。今日から本格的に合気道の師範の先生にご指導を受けたから、 少し疲れただけ」と答えた。 責めるような視線を絃冶に向けた後「そうか、そうか」と満面の笑みを清水に向ける。 清水の居ない所では結構厳しく教育や鍛錬の事を言ったりするのに、 本人を前にすると、この通りである。 好々爺よろしく、くしゃくしゃの笑顔を浮かべている。 本当に可愛くて仕方が無いのだ。 「あ、おじい様、まだお時間大丈夫ですよね?ウチこのままじゃ汗臭いわ。 ささっとシャワーを浴びてきます。待っててくださいね」と言い統源が頷くのを 見届けるとパタパタと廊下を走って急いで着替えを掴むと風呂へと入っていった。 それを見送った統源に「コホン」と咳払いをして注意を自分に向ける。 「なんじゃ」途端にいつもの厳しい顔に戻る。 今日の事を改めて説明しながら、PCで防犯カメラの映像を統源にも見せる。 「…。」終始無言で映像を見ていた統源は、 「やはり映像では何んとも言えんな。明日はわしも立ち会おう」と言い出した。 これには由紀も含めて驚いた。 統源が寺を空けることは殆ど皆無である。 自分が考えているより、それほど深刻な事態だという事だろうか。 それからは永田の様子、人となりや社内の近況を尋ねたりする程度だった いやぁ、ラブリー爺さんの登場です清水ちゃんが居る時のギャップが半端ない、めっちゃお茶目な爺さんです爺さん、爺さんと連呼すると本人へそを曲げますのでこの辺で…どうぞ応援ポチリをお願い致しますにほんブログ村
2012.09.16
コメント(0)

この頃うちのキジちゃんは、甘えたちゃんで困ります。一人で居る時はちゃんと自分でお水飲むみたいなんですが、ほんの少ししか飲まなくて心配で顔の前に水を持って行っても飲まないので私の指を濡らして鼻先に持って行くと凄い勢いで舐めたので何回もしてたら、その日から日課になってしまいましたバカ私、仕事進まんやろ!!では、今回も始まりますぅ 扉を開けて昨日と変わらず永田が歩いてきた。 清水から距離を置いて立ち止まった。 この時点で清水が昨日と違って拒否反応を示さないのを見て 「よし、キヨ、この状態で後ろを向いてみなさい」絃冶が言った。 永田に背中を向けろと言うのだ、清水は胸の前で拳を握り締めて、恐怖に耐えた。 一歩足を後ろに引いて回れ右をしようとしたが、どんなにしかりつけても 体が言う事を聞かない。 背中を見せたが最後、殺されてしまうのではないかという程の恐怖が襲う。 皆が黙って清水の動きを見守っている。 気持ちばかりが焦る。背中を冷たい汗が流れ落ちた。 「…よし静也君、清水との間に入ってくれ。」絃冶が呼びかける。 無言で背中を壁から引き剥がすと永田と清水の間に割って入った。 実際には長身とは言え、中学1年生の静也と永田では身長差がかなりある。 静也の向こうに永田が見えるのだが、静也が間に入ると大きな壁か何かが 出現したように、永田の気配が全く感じられなくなった。 そこでようやく後ろを向くことが出来た。 静也とは不思議な人だと、その時初めて実感する。 なぜか全てを預けられるような気がした。 そこで絃冶は静也を清水にそうと気付かれない様に、永田の後ろに移動するように 指示する。 静也は足音を殺して横にスライドする。と、永田の後ろに回り込むまでも無く、 清水は昨日と同じ気配を感じてしゃがみ込んでしまった。 静也は思わず、また元の位置に戻り、後ろから清水に近寄って両肩を掴んだ。 はっと振り返った清水の顔は血の気を失い紙のように真っ白だった。 静也の顔を見た途端また清水の周りに感じる結界めいたものは消えた。 だが、また膝から崩れそうになる。 目配せした絃冶は由紀に昨日の部屋へと連れて行かせようとした。 しかしそこで、今日は永田が退出していないことに気づく。 永田をじっと清水が見つめていたのだ。 どうしたというのだ。絃冶はキヨに声を掛けようか迷った。 「…つっ…!」(何…これ)まるで心臓を鷲摑(わしづか)みにされたような痛み。 最近自分が感じた痛みとどこか似ている気がする…切なくて、苦しくて、どうしたら 良いか分からなくなる程の慟哭。 周りを見回すと永田が胸の辺りにそっと手を当てている。 (永田さん?) (これは、永田さんの痛み?)共鳴しているのだろうか。 何がこんなに苦しいの?「…くっ…。」自分の胸を押さえる。 「清水さん?!大丈夫?」由紀が怪訝そうに声を掛けながら急いで駆け寄る。 清水は由紀を手で制し、下を向きながら 「もしかして、あの事?」悲しそうな顔をして清水が本当に小さく呟く。 永田は僅かに眉を動かしたが、それはとても小さく周りにはそれまでと変わらず 無表情にしか見えなかった。 これ程までに社長の近くに居る人物だ。 肉体的にも精神的にも特殊な訓練を受けている。 必要とあらば喩え仲間が目前で殺されたとしても、顔色一つ変えずにいる事が出来る。 喩え身の内ではのた打ち回っていたとしても、表面的には感情の回路を遮断できる。 まるで兵士そのものだ。 清水は目を伏せ由紀に付き添われ道場を出て行った。 「どうしよ…。」清水の呟きは声にはならず、誰の耳にも届かなかった。 永田はじっと清水を目で追っていたが、怪訝そうに見ている絃冶の視線に気付き 目礼をすると道場を後にした。ソルジャー永田!君は良くやっている!私は君が好きだ!という事で永田さんの活躍をもっと描きたいのでどうぞポッチリお願いしますにほんブログ村
2012.09.09
コメント(0)

おはようございます^^最近ゲリラ豪雨?って思うような雨にうんざりしています。これは何?秋に近づいてるの?私は晴れが好き!「雨が好き」っていうアンニュイな女性に憧れるけど…如何ともしがたいんですよねではでは 始まります~ 「もしもし、夜分にすみません。絃冶です。清水の事で少しお話が…はい」 絃冶は帰宅してからの清水に感じる違和感や、言動の不可解さを父に話し、 その間、統源はただじっと聞き入っていた。 「うむ。清水の事に関してはまだ、あちら側の人間と接触を持ったのは 初めてのケースで判断材料が乏しすぎる。 明日以降も、注意して良く見ておく事じゃ。 逐一報告をな。」 「はい」何か統源の返答に素っ気無さのようなものを感じて不審に思いながらも 電話を切った。 何にしても明日だ。明日に備えて今日は早めに休もう。 翌日、また放課後、清水は静也に連れられて、道場へとやって来た。 特別緊張している風でもなかったが、今日は着馴れない道着を着ているので その事に気が行っているようだ。 裾を引っ張ってみたり、襟を正したり、ソワソワとしている。 静也のほうは全く関係ないという体(てい)でまた壁にもたれて目を閉じている。 やがて奥の扉から石田が入ってきた。 「初めまして、石田です。」気さくで優しそうなおじさん、という感じだ。 「森川清水です。お忙しいのにすみません。宜しくお願いします。」ペコっと 頭を下げる。 「初めに言っておきますが、お嬢さんの手習いに付き合うつもりはありませんから。 フワフワした気持ちで臨んで頂くのでしたら、このお話は 無かった事にしてただきます お父上からのお話では、護身術を教えてほしいという事でしたが、 私が手解きをする以上『道』を極めるつもりで取組んで頂きたい!」 自分との温度差を感じて驚いていた清水だったが、教えを請うのだから 生半可な心持ではいけないのだろうと思い直し「宜しくお願い致します」と答えた。 石田の言葉を苦笑と共に聞いていた絃冶だったが、 「任せる」というと道場を出て行った。 2時間ほど初歩の初歩から教えてもらって、膝が笑って立てなくなった。 やっと休憩にしようと言われた時、再び絃冶が入ってきた。 「今日はこのくらいにしよう。石田、有難う。」 「はっ。」礼をすると「清水さん。では…」と清水と向かい合い 「有難うございました」とお互い礼をした。 石田が道場を後にして、これで今日は帰れると思っていたが、 絃冶が「清水、永田君に入ってもらうよ」と言った。 清水ははっとしたが、首肯で答える。 清水ちゃんは永田さんに何を感じているのか。次回お楽しみに清水ちゃんに応援のポチを、どうぞお願いしますにほんブログ村
2012.09.02
コメント(0)

すみません。今日は泣き通しです。普段あまり泣くのが分かっている番組は観ないのですが。。。嵐がパーソナリティーじゃぁ仕方ありません。。。ではでは。。。はじまります。 夕食は由紀も交えて、いつものように和やかに進んで行った。 特に清水も黙り込む事も無く由紀に話し掛けられたら、笑って受け答えを したりしている。 由紀が食器を下げて、食後のフルーツを持って来てくれると、 絃冶はまた先ほどの話を再開した。 「静也君のことは覚えていたかな」まずは当たり障りのない所から話のきっかけを作る。 「うん。一度会ったことが有るような気がする」 「あぁ、そうやな、親戚ゆうても、遠縁やからな」 「まだ小さかった時」清水は梨を口に運びながら答えた。 「法事の時だ。社に来る間、何か話はした?」 「ううん、あの人無口みたいやね」第一印象は余り良くなかったらしい。 前回会った時は、すれ違った程度だったから今回が初見と言っても良いだろう。 「ところで、今日の彼は永田君というのだが…」 絃冶は清水の様子を観察しながら話題を替えてみた。 「うん」ところが清水はなんでもないように頷いた。 「なんで、彼が入ってきた途端にしゃがみこんだんだ?」 「さぁ。…何かがブワっと覆い被さって来た気がしたから、咄嗟に…」 「何か?」 「うん」どうやら清水自身にもそれ以上のことは分からないようである。 逆に「あの人、どんな人?なんで私の練習相手に選ばれたん?」と聞いてきた。 絃冶はすこし迷ったが 「永田君はな、実は何年か前まで警察官やった。」と話し出した。 「へぇ…若く見えるけど」美味しそうに梨を頬張りながら、話に乗ってくる。 「事情があって、懲戒免職になった」 「懲戒免職って…じゃあ何か悪い事をしたって事?あの人お父さんの会社の人やろ。 そんな人雇って良いん?」 「まぁ、懲戒といっても、上司の制止を聞かずに犯人に発砲したからやから。」 「それって十分、悪い事なんちゃうの」 「その犯人は逃亡の途中で母親と一緒に歩いていた、5歳の女の子を 人質にとってその子に拳銃を向けたんだ。 袋小路に追い詰めた警官は上司と永田君と同僚との5人。 上司は犯人が国会議員の息子だからと、最初から及び腰だったらしい。 犯人が遂に引き金に指を掛けたのを見て、永田君は拳銃を向けたんだが、 上司は永田君にやめるように言ったらしい。 双方膠着(こうちゃく)状態になって、人質の限界が近いと判断した永田君は、 犯人の太腿に発砲。 直ぐに同僚がその隙をついて無事女の子を保護したそうだが、 その発砲が正当なものだったのか、後々問題にされたらしい。 まぁ議員である父親からかなりの圧力が掛かったらしい。 過剰防衛の責任を取らされて、クビだそうだ」 「それで、うちに来たん?」 「いや。まだ警官になったばかりだった彼は警察が正義を貫けない事に憤り、 絶望したそうだ。人一倍正義感が強く、使命感に燃えていたんやろうな。 どこで嗅ぎつけてきたのか、そこに付け入った、ある組織に巧妙に マインドコントロールされ利用されていた。 他方、例の犯人は、信じられない事に執行猶予がついて直ぐ出て来た。 そこで、議員はそのバカ息子と家族の警護を、我が社に依頼してきた」 「えぇ?もちろん断ったんやろ?」 「あぁ、何度かはな。しかしバカ息子を自由にしておく事で、 永田君を犯罪者にしてしまう可能性が有ったし、 何よりあのバカ息子、再犯の可能性だって十分考えられる。 そうなったら一般人にも危害が及ぶ可能性もあったからな、 ウチで受けることにしたんだ。」 「ふぅーん」何か言いたそうに形の良い唇を尖らせた。 「その時から、永田君からの我が社に対する脅迫が始まった。 警備対象から手を引けと言ってな」 絃冶も梨を食べて「甘い!」と笑みを浮かべた。 「そんな人を自分の身内に引き込んだの?」 「ああ。勿論、大分時間は掛かったさ。 彼が脅迫してくる度に少しずつコンタクトを取ったんだ。今の自分がしている事は、 あのバカ息子と同じ犯罪であり、 守りたいと思う社会正義とは相反するものだという事。 どんな事情があろうとも、我々は私刑を下す事は出来ないのだという事。 まぁ、そんな事は永田自身が一番分かっていた事だろうと思うが。 分かってる事が、理性の届かない所に記憶の届かない所に 追いやられてしまうのが、洗脳の怖い所やな。 実際には洗脳されていたとは言え彼は正義感の人一倍強い警察官だったんだ。 だからこそあの犯人と警察組織を許すことが出来なかった。 ところが自分の現実の行動との間に有る矛盾を本当は彼自身が心の底では 一番分かっていて、気付かない振りをしてたんやな。 本当は苦しんでいたんだ。 我々は根気強く接触する度に、彼に対して説得を続けた。 やがて彼は我々の話を受け入れ、組織から受けた洗脳を解くプログラムを受けた。 結局2年掛かったな。 我々と彼が目指す社会正義は同じ線上にある。 徐々に我々と共に任務を行い、正式に社員として、受け入れてから3年になる。 その間に2年の、まぁ言わば研修期間を経ている。 まぁ、まだまあ新人だがポテンシャルが違うからな。 今では優秀な警備員だ。実力は折り紙つきさ」 「ふ~ん」 「だから、明日からも今日のメンバーで鍛錬を行おうと思う。 それから、合気道の師範でもある石田という者にも基本を教えて貰うように 手配をしてあるから、そのつもりでな。」 「はーい。ご馳走様ぁ」というとあっさり自室へ引き上げて行った。 絃冶は思わず引き止めて、本当に良いのかと尋ねたくなるのをぐっと飲み込んだ。 今日の清水は本当に分からない。やはり父に相談した方がいいのだろうか。 思い悩んだ末に、由紀にねぎらいの言葉を掛け、もう帰るように言うと 書斎へと入っていった。清水ちゃんが見せた変化はこれから何を起こすのか。。。多感な思春期の少女である清水ちゃんの思いとは。。。なんてカミングスゥンみたいな感じで今回は終わります清水ちゃんに応援のポチっとお願いします にほんブログ村
2012.08.26
コメント(0)
もうすぐ、出勤時間です。嵐目当てで、朝から24時間観てますが、号泣です。やばいです。。。目が真っ赤です。千の風聞いて更に号泣。。。今日、小説のアップは夕方頃になりそうです。ちょっと立ち直る時間が必要です^^;すんません。
2012.08.26
コメント(0)

今日はアップする時間が遅くなってしまってごめんなさいこのところ、雷鳴る鳴る豪雨降る降るびっくりするわぁ怖すぎるぅ。PC急に消えたもう!何日続く気!?今の所めっちゃ晴天気分良く今回もはじめましょうか。。。 「清水さん、お風呂が沸きましたよ。気分はどう? 大丈夫そうなら、ゆっくり浸かって来たら?」と由紀が声を掛けてきた。 清水は言われるがままに、着替えを取りに自室へと入っていったが、まるで 心ここに有らずというような様子に、由紀は酷く不安を覚えた。 清水が浴室へと消えるまで見守っていたが、やがてお湯の音が聞こえてくると、 絃冶の書斎へと向かった。 ノックをすると「はい」と短く返事があったので、「失礼します」と声を掛けて 由紀は入っていった。 仕事を片付けると言っていた絃冶だったが、机の上には何も出てはいなかった。 「あの、清水さんの事なのですが…」そう切り出すと、絃冶は自分の正面の椅子に 座るように示した。 「どうも様子がおかしいのです。社内ではあんなに怯えていたのに、家に着いてから、 まるで何か憑き物でも落ちたかの様にぼうっとなされて。」 「何か言っていたか?」 「いいえ。今お風呂に入っていますが、私がお風呂を勧めた時も、返事も なさらず、目も虚ろで…ただ、ぼうっと立ち上がって、用意をして お風呂に入って。」 「そうか…」由紀の言葉にそう答えたきり、絃冶は黙り込んでしまった。 正直、絃冶にも今の清水の心情が理解出来ずにいたのだ。 ただ怖い思いをしたというだけなら、今までの清水ならあれだけ怯えれば、 車に乗った途端泣き出すものと思っていた。 だが、そういった様子も無くただ窓の外を見ているのだ。 隣に座って肩を抱いていたが、震えるという事も無かった。 「そうだな、今までの清水とは様子が違いすぎる」 絃冶は自分のあごを擦りながら、暫く考え込んでいたが、 絃冶のプライベート用の携帯が鳴り出したので、由紀は目礼をすると、書斎を出た。 液晶を確認する「はい。父さん」 「絃冶か。今日清水に永田を会わせたそうだな」 「はい。」 (まだあれから数時間しかたっていない。相変わらずだが父の早耳には舌を巻く) 「清水が能力(ちから)を発動させたというのは本当か?」 (…?誰がその事を…一番考えられるのは…静也と言ったところか) 「能力(ちから)と言えるかどうか…まだ先程の事で、分析も進んではおりませんので。 ただ、永田を見た途端清水はしゃがみこんだのですが、静也君によると キヨを立ち上がらせようと肩を掴んだ時、彼女の周りにシールドの様な物を感じた という事でした。」 「お前達は見たのか」 「いえ。我々の眼には視えませんでした」 「うむ。結界か。今までには無かった現象だな。」 「はい。」 「やはり鍛錬には、静也の同行が不可欠という事か」 「…はい。」 「致し方ない。だが鍛錬はあくまでも、一般的な護身術の鍛錬の範囲を逸脱するのでは 無いぞ。 それと、解っているとは思うが、静也との接触は必要最低限にな。 細心の注意を払ってくれよ」 「はい。それは静也君にもくれぐれもと伝えてあります。ではまた何か分かり次第、 ご報告します」携帯を切ると絃冶は大きく息をついた。 親子とは言え、このようなやり取りを父とするのは、何時までたっても緊張する。 しかし、清水の様子の異変を無意識とは言え伏せてしまったのは あれで良かったのか。 別に隠し立てなどする必要など無いのだし、言えば良かったのだろうが。 夕食の時にでも清水と話をしてから、また父に電話しても遅くは無いだろうと 結論付けた。 デスクに向かい、秘書に電話を掛けるとPCに先ほどの道場の 防犯カメラの映像を送るよう指示した。 データはすぐに送られてきたので、何重にも掛けられたロックを外し、 画面に見入った。 道場内には今日に合わせて3台のカメラを増設してあった。 画面を6つに区切り、それぞれ違う角度から映し出された道場の様子をチェックする。 その内でも最も清水が良く見える画像を選び最大画面にする。 例の件はそう長い時間ではなかった。 何しろ永田が入ってきた直後に清水はしゃがみこんでしまったのだから、 肝心な所はものの数分といった所だった。 その部分を何度も繰り返してみたが、やはり画像にはそれらしきものは 映っていなかった。 「駄目か…」目頭を抑えながら椅子にもたれかかった。 やはり清水本人に話を聞いてみる他に無さそうだと判断して、書斎を出る。 清水はもう風呂から上がって、部屋着のワンピースに着替え、ソファに座っていた。 「キヨ、良いかな?」声を掛けてみる。 若干いつもより動きが緩慢なようだが、少なくとも外見からは特に異常は 見受けられなかった。 「今日は疲れただろう。」 コクンと頷く。 (まさかショックで口が利けないのだろうか。)心配が絃冶の頭を過ぎった。 「あの時の事は覚えてるか?」 コクン…また頷く。やはり声を出さない。 だが帰って来た時よりも、瞳に力が戻っている事に絃冶は気づいた。 「そうだ、由紀さんに夕食にしてもらおうか?」 話題を変えてみた。 すると「うん」と答えて、キッチンにいる由紀にご飯にしようと伝えに行った。 そして夕食のテーブルの準備を手伝いだした。 こうして見ると、いつもの清水と変わったところは見受けられない。 (あれだけのショックを受けていたのに…) その事に絃冶も何かしらの違和感を感じたが、それが何なのかは分からなかった。この所、疲れて頭が固まっていますお仕事ちょっとしたら、すぐ気分転換したくなります。。。このままではキヨちゃんの続きが…脳みそに栄養を…とたっぷり甘いものは食べてるのになぁそんなこんなではありますが応援ぽちっとお願いしますっにほんブログ村よろしくです
2012.08.19
コメント(0)

今日の献立?この季節うっかり母の問いかけを聞き流していると、夜ご飯に1/6に切ったスイカだけが食卓にのぼるなどという目を疑う光景に出くわす事になる可能性があります2度ほどその光景に固まった事があります。。。 エレベーターは地下5階で停まった。 地下2階からはボタンが隠されていて 先程のセキュリティカードを スキャンさせないと押せないようになっているようだった。 エレベーターが停まった。 目的の階に着いたようだが、扉が開く様子も無い。 静也は再びカードをスキャンした後にモニターに映し出された 警備員らしき人物に名前と行き先を告げる。念の入ったことだ。 私なんかにこんな大げさな所を使わせてくれなくたって良いのに。 扉を2つ抜けるともの凄い広さの「道場」についた。 清水の想像していたものとは全然違い、何かの大会の会場かと思う広さである。 どう考えても自分は場違いだ。 「やぁ、来たな」道場の中央に父と由紀とが待っていた。 「静也くん、ご苦労だったね。面倒を掛けてすまない」手を差し出しながら 父さんが静也に声を掛ける。 「いえ」一言だけ答えると、絃冶の手を握り返した。 本当に無口な男である。 (少なくとも、私の周りには居ないタイプやわ) 内心ため息をつきながら2人を見ていた。 すると静也は近くの壁際に退くと腕を組み壁にもたれて、目を閉じてしまった。 また、あれか。 「静也君だとお前の鍛錬にならんだろうから、他の人に頼んでおいたんだ」 「?」どういう意味だろう。 父が振り向くと同時に近くの扉から見知らぬ男性が入ってきた。 「キヨ、この人は永田真二さんといって…会社…新入社……で………確か……」 その男性を認識した途端、清水は自分の身に何が起こったのか理解できなかった。 父さんの声が遠のく、所々聞こえないと思ったら、 足元の床がすっぽり無くなって闇が口を開けた。 まるで自分の周りに四角いバリアみたいなのが有るように、周りと隔絶されたようだ。 そして、総毛だった清水は自分の腕を抱いて、しゃがみ込んでしまった。 清水の異変に気付いた3人が駆け寄る。 そして静也が清水の居た四角い空間から清水を引っ張り出した。 それを胡乱(うろん)気に見ていた永田は「今日はこれで失礼します…」と 言い置いてまた扉から出て行った。(まさかこれ程とは)絃冶は驚いていた。 そしてガタガタと震えている清水の背中を抱え込んだ。 「大丈夫か、清水?」 目を見開き、口に手を当ててただじっとしている清水を見て 由紀に「すまない、キヨを休ませてくれ」と託した。 由紀は「はい」と答えると、道場の隣の部屋へと清水を支えて連れて行き、 ソファに座らせた。 そして、温かいハーブティを淹れて清水に勧めた。 まだ震えて上手くカップを持てない清水に薄い毛布を持ってきて掛けてやる。 道場に残った絃冶は暫く清水の出て行った扉をじっと見ていた。 「感応力が以前に比べて強くなっているのだろうか?」 静也は「わかりません。ですが、永田さんは大丈夫なはずだったのでは無いのですか?」 少し声が詰問的になってしまう。 「ああ、我々の更生プログラムを受けて2年、それから以降、 我々の為に尽力してくれる様になってもう、5年が経っている。 彼の中に闇が残っているとは思えないのだが」 目まぐるしく考えを巡らせる。 「しかし、彼女は無意識のようでしたがシールド、というか結界を 張っているようでした。明日からはどうされるおつもりですか?」 立て続けに質問をする静也に苦笑いを返すと、暫く思案を続けていたが 思い切ったように 「明日もここで、君と永田に手伝って貰う。宜しく頼むよ」 それだけ言うと携帯を手に取り、由紀に連絡を入れた。 静也は信じられないというような顔で絃冶の事を見ていたが、 もうその話は終わったと言わんばかりの絃冶の態度にため息をつくと 元来た扉から出て行った。 由紀は車を社の玄関に回すよう手配し、絃冶と清水を乗せて、清水の家へと戻った。 車内で気遣わしげに清水を見ていた絃冶だったが、何も聞くことはしなかった。 清水は清水で車窓を流れ去る街を見ているようだった。 家に着き、由紀はいつもの日常と変わらないように、お風呂の用意をしたり、 夕食の用意に取り掛かった。 敢えて自分は日常を保つことで清水を落ち着かせようとしているようだ。 清水は自室に入ろうともせず、リビングのソファに座ると、 由紀のテキパキと動く様を見ている。 絃冶は仕事を片付けると言って書斎に入っていった。 清水はぼうっと由紀を見ている様では有るが、 その実、目には何も映ってはいなかった。 只、自分の内面を見つめているのだった。 さっきの感情は何だったのだろう? あの人は一体何者だろう。 あの人が道場に入ってきた時、感じたものは何だったのだろう。 自分の行動はどれも、自分の意志とは関わり無く、 故(ゆえ)に自分の事ながら理解が出来ないでいた。 少し強面(こわもて)なかんじがしたが、あの人が特段悪い人だと 言うわけでも無さそうだし、 第一自分は初対面のはずだ。 本当に危ない人物なら父さんが自分に引き合わせたりはしないだろう。 なのに、抽象的だがあの瞬間、黒いものにブワッと覆われるような気がして、 咄嗟(とっさ)にしゃがみこんでしまったのだ。 今になって思えばその「黒いもの」というのもさっぱり実体が掴(つか)めない。 分からない事だらけの気持ち悪さが残ったが、 あの時感じた「恐怖」のような感情はきれいさっぱり、抜け落ちていた。永田という新しい登場人物が…次回以降どのように清水ちゃんと絡んでくるのかな?私も楽しみですってか…お尻に火がボワッと着いてます早う書かねば。。。読んでくれる人が増えたらいいな。。。次回を楽しみにしてくれる人がいてくれたらいいな。。。応援ポッチリお願いしますにほんブログ村
2012.08.12
コメント(0)

遅くなっちゃいましたぁ今日は実は祖母の13回忌早いものです。家に親戚の方が来られました。甥が可愛い盛りで。。。ウチの親に孫が居ないのが申し訳ないな。。とか思ったり。朝早く実はあと少しでアップと言う所まで来てたんだけど、消えちゃいました。ハハ…もう一回やり直しです 楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまう。 久しぶりの水の感触はとても心地良いものだったが、 清水にとっては一限だけの授業は、物足りないものだった。 また部に戻りたいという思いが高まるが、それを心の中に収める。 自分で決めた事だ。 気持ちを切り替えて授業を終えると友達と別れて、 校門のところで、静也と落ち合った。 「お待たせしました。」ぺこっと頭を下げたが、顔を上げるともう静也は歩き出していた。 小走りで追いつくと、少し後ろを歩く、他人とこんな位置で歩くのは初めての経験だ。 大概は父だったり、友達とだったりだから、並んで歩く。 2人きりでこんな風に知り合いの背中を見ながら歩くのは新鮮だった。 バス停までもうすぐだ。 バスはそう待つことも無く到着し、乗り込んだはいいが、 空席があることに気付いた清水はどうしたものかと、一瞬迷った。 しかし、静也がつり革に摑まったので、自分もそれに倣って横に立った。 (そうだよね、ちょっと横に並んで座るのは、正直気まずいかも…) それにしても、校門の所から静也は一言も口を開かない。無口な人なのだろうか。 それともこんな風に清水の面倒を見るのを内心億劫に思っているのか。 何か話しかけるべき?迷っていると、 もうすぐ次のバス停というギリギリのタイミングで不意に静也が窓枠の 押しボタンを押した。 (あ、降りるのか)バス停の名前を確認する。 この分だと明日からは自分一人で通わないといけない可能性が有る。 道順を頭に入れとかないと。道を覚えるのが割りと苦手な清水は、 メモでも取ろうかと真剣に考え始めていた。 街中を少し歩いて、今度は電車へ乗った。 この電車なら、駅は違うが友達とショッピングに出掛けるのに何度か利用した事がある。 相変わらず立ったままの静也だったが、自分は立ったままメモを書くわけにも行かず 静也の目の前の席に座ると手帳にこれまでの道順をメモした。 手帳は可愛く!とこだわっている清水は走り書きなどしない。 移動中の揺れる電車の中で、出来るだけキレイに可愛い字を書こうと集中した。 まだ時間に余裕が有りそうなので、手帳用のシールも選んで貼った。 (よし!)とまぁまぁの出来に満足していると、静也が「早く!」と声を掛けてきた。 どうやら降りるらしい。 もうちょっと早く声を掛けてくれれば良いのに…と思いながら、 慌ててペンケースと手帳を鞄の中に仕舞う。 清水が立ち上がるのを待っていた静也は出口の方にゆっくりと移動した。 この時清水は初めて、静也がそれとは分からないように気を配りながら、 周りを警戒していることに気付いた。 静也は単なる道案内ではなく、警護も担っていたのか。 暢気に構えていた自分が気恥ずかしくなる。 そう言えば、さっきのバス停で降りたのは自分達だけだったから、 警護は静也だけなのだろうか?自分も周りに気をつけなければと、緊張していると、 コンコースの外れの人の少ない場所に清水を誘導した静也が振り返って言った。 「君は普通にしてて。今日はいいから。君が警戒すると露骨すぎる」 そう言いながらも、人の流れの方に自分は立ち背中で清水を隠している。 清水は恥ずかし過ぎて、頷くのがやっとだった。 2人はまた歩き出し、清水は先程までと同じ様に、少し後ろを着いていく。 父さんの話では、本社は学校からは交通の便が悪いので、 比較的近くにある支社の道場を使わせてもらうことになっていると言っていたが、 まだまだなのだろうか? 駅を出て一本裏通りに入ると、先程までの駅前通りの華やかなイメージとは違って、 オフィス街という様な、様相を呈している。 オフィスビルが立ち並ぶ中、その中でも大きめのビルに静也は入って行く。 受付と二言三言、言葉を交わすと、セキュリティカードを2人分受け取ってきた。 絃冶から事前に聞いていたのだろうか、受付の女性がにこやかに清水に会釈をしてくれた。 ビルの中は思っていたほど無機質ではなく、そこここにグリーンが配置されていたりで、 とても居心地の良い空間になっていた。 なんだか、リラックス出来る。 静也は案内をしてくれる人が付く訳でもなく、勝手を知っているようで、 ズンズン進んで行く。 周りを見回していて遅れを取った清水は慌てて後を追った。 エレベーターの前まで来ると、静也が小さく呟くのが聞こえた。 「緊張感の欠片も無いんだな」 磨き上げられたドアに映った静也の顔をビックリして見上げた清水は、 やっと口を開いてくれたと思ったらこれかと、 暗澹(あんたん)たる気分になるのだった。夜遅くなってしまいましたが、今回もポチリ応援を宜しくお願いします にほんブログ村
2012.08.05
コメント(0)

今日、本屋さんの仕事の帰り道、暑すぎて汗だくぅって思って汗を拭いていたら、家に着いた途端、あ、鼻水が…鼻水って熱すぎても出るんか…PPPP昨日のブログ「8.5回目」が短かったので、今回も早々9回目アップしま~すではいっきまぁす -夏の終わりに- 「まや~ 日焼け止め貸してぇ。忘れてしもた~」勢い良く清水が教室に入ってきた 「おはよ~」 「ん~」鞄をゴソゴソ探していた麻耶(まや)はそれをぽ~んと投げてよこした。 「あんた、鼻の穴広がってんで。登校早々、もう体育の準備かいな」 クスクスとおかしそうに清水を見る。 「プール、4限やで、今から塗っとくん?」 今日の体育が水泳で朝からテンションが上がっている清水をからかっているのだ。 「美白、美白!いやぁ、シミは怖いからなぁ」そんな事お構い無しの清水は鼻歌でも 歌いそうな雰囲気である。 「しっかし、なんで今時、うちって屋内じゃないかねぇ、小学生じゃあるまいしサ」 舞は清水の机の上に腰掛けて足をブラブラさせている。 「もうお肌曲がっちゃうやろぉ」と言いながら 別に本気で心配してるわけでは無い様だ。 舞も清水程ではないが、色白だ。赤くはなってもまたすぐ褪めて元の色白に戻る。 「でも、今日はプールって感じじゃ無くなぁい?」 「やんなぁ、最高気温25度やってよ、水泳部のプールは屋内やねんから 使わしてくれたら良いのになぁ」麻耶は気乗りしてないようだ。 「水温何度よ」清水は身を乗り出し手で日の光を遮りながら、 窓の外を見ながら満面の笑顔である。 「って言いながら、もう待ちきれへんって顔してんでぇ、清水」 「ほんま、清水って水泳好きやんなぁ」 「ふふん。まぁね」 授業で泳げるのも、あと2回か…。ゆっくりではあるが、季節は秋へと向かっている。 まだ夏の終わりだというのに…。部活を辞めてそんなに時間はたってはいないのに…。 部活をしていた時は一年中真っ黒に日焼けをしていたというのに…。 自分はもう肌が白くなってきている。 まるでそれまでの自分を脱ぎ捨てていくようで、この頃は鏡を見ると少し淋しい。 桃子は、朝練終わっただろうか。そろそろ教室に来る頃だ。 清水にとっては、昨日までと確実に違う今日が始まる。 その事で、内心緊張をしているが、今は友達とのいつもと変わらない時間を楽しみたい。… せめて放課後までは。 だから大好きな水泳の授業の事だけ考えていようと思っていた。 「ちょっと、清水、あの子呼んでるみたいやで」麻耶の目線を辿ると、 廊下の端の窓にもたれて、腕を組んだ月森静也が待っていた。 「あ、」何事かと見ている友達に曖昧な笑顔を残して廊下に出る。 「はい?」 静也とは遠い親戚で、同じ学年なのは知ってはいたが、 何故か校内で顔を合わせた記憶は無い。 確か以前に1度会ったことが有るくらいだ。 その時も余り話をした記憶など無い。 廊下の壁から背中をはがすと唐突に「今日から帰りは一緒に帰ることになったから」 と言い出した。 「え、えと…何も聞いてへんけど…」戸惑って答えると、 「道場の場所とか知らんやろ?じゃあ放課後校門の前で」それだけ言うと 自分の教室へと歩いていった。 清水は自分が返事すらせずにポカンとしていたことに気付いて、顔を赤らめる。 そのまま、教室に戻っていくと、頬の赤さを勘違いした麻耶達が興味深々な顔をして 待ち構えていた。 他のクラスメート達も行儀良く騒いだりはしなかったが、明らかに高揚し、 耳がダンボになっている。 本当に何もないのだから、堂々としていれば良いのだろうが、 衆目を集めていると思うと、余計に赤くなってしまう。 (あかん、これじゃますます誤解させてしまう)自分でも分かっているのに… 「フフフ…清水」舞ったら意味ありげな笑いをする。 「あれ、C組の…なんて名前だっけ」知ってるくせに。 「月森君」 「あ、そうそう、月森君。何て?まさか…告白?」 「キャーッ」それを聞いた隣の席の大木さんが黄色い声を上げる。 慌てて「シーッ、シーッ」人差し指を立てて制すると 「違う違う!」と周りに聞こえるくらいの声で否定する。 少し声のトーンを落とすと「月森君とは親戚やねん。家の事でちょっとね」 と濁しながら答えた。 「ふぅぅ~ん」半分以上は信用していないと言わんばかりの三日月のような 笑いを目に浮かべている舞を軽く睨む。 「ホントやってば」 その時「おはよ~」何も知らない桃子がいつもの感じで教室に入ってきた。 助かった~。と安堵した清水は「おはよ~」と何も無かったように応えると そのまま話題を流そうとした。 しかしそこは女子学生。そう簡単にはこの手の恋バナを終わらせてはくれない。 「なぁ、なぁ桃子、今な、清水ゆうたら、C組の月森君に廊下に呼び出されてな」 口元を押さえながら、くすくすっと笑う。 「コソコソ話をしてる思うたら、真っ赤になって帰ってくるねんで。」 「なぁ~。それでどないしたんって聞いても家の用事って誤魔化しやんねん」 キラーパスが麻耶から舞へと繋げられる。 困った顔をする清水をチラッとみると 「あぁ、この前言うてたあのお家の仕事の手伝いってやつ?今日からだっけ?」と 事も無げに桃子が聞いた。 「うん。」桃子の絶妙なフォローにビックリしながら清水が答えると、 「何?お家のお手伝いって?」と2人は不思議そうな顔で聞いた。 「あ、うん、ちょっとの間お父さんの会社の雑用を手伝わなあかんねん。 初めて行く場所やから月森君に連れて行ってもらうことになってて」 「なんやぁ、あんたが真っ赤になるから、何か有るんかと思うやんか」 つまらなそうに舞が小さな口をとがらす。 「ごめん、ごめん。なんか皆に見られてるような気がして、緊張しちゃって」 てへっと舌を出し後頭部を手でくしゃっと掻いてみせる。 途端に興味を失ったクラスメート達はそれぞれの話へと戻っていった。 清水はホッとしながら目で桃子にありがとうと伝えた。 私としてはいよいよ生き生きとした清水が動き出した感じです。 清水ちゃん達の成長を書いていけたら…そう思っています いつもながら たくさんの人に知っていただきたいので ご協力ポチっとをお願いしますっっにほんブログ村
2012.07.30
コメント(0)

今年に入って2回目の軽い熱中症になってしまいましたとにかく異常だ昼間の暑さピッチ早すぎ前回突然 統源から宣託を受けた若き日の絃冶のお話の続きです今回短めですが…朝起きたらぐるぐるです。頑張ってアップして行きますぅ 「今月の吉日に社内の重役達に、民間刑務所の事業に打って出る事を伝える。 お前はこれと思える者少数精鋭で準備室を立ち上げよ」 「今月…」 「ただし、その者達には厳重に緘口令を。重役以外の者には、まだ洩らしてはならん。」 「わかりました。」 「それまでにまずお前は、準備室の立ち上げと平行して、重役達の中に獅子身中の虫が 居ないか、調査するのじゃ」 「えっ!そんな…重役の皆さんはお父さんが、直接この人ならばと 選りすぐってこられた方達じゃありませんか。それを私などが…。 あの方々の中にそのような人物が混じっているとはとても思えませんが。 それによりによって、手始めが重役の方々とはいくらなんでも。」 「絃冶よ。悲しい事じゃが、人の心は時によってうつろうもの。かの時は正真正銘 心に一点の曇りもなかった者が、今も変わらないとは限らん。 この重要事項をこのタイミングで万が一にも外に洩らすわけには、 絶対にいかんのじゃ。」 「…わかりました。早速、準備に着手いたします。」絃冶は一礼すると 社長室を出、自室へと戻っていった。 「絃冶、すまん。今のお前には荷が勝ちすぎているのは、分かっている。 急に全てが動き出し混乱しているだろう。しかしわしは信じておる。 お前を信じておる。」 絃冶の出て行った社長室で茶を見つめながら、統源は静かにひとり呟いた。 先程も書きましたように、短めになってしまった今回ですが、 次回よりいよいよ本編に入っていきます。 ここまで長い前書きに付き合ってくださって有難うございます。 本当に長かったです。 前の時のように出来るだけ早く次回をアップしたいと思っていますので 引き続き宜しくおねがいしますっ にほんブログ村応援ぽっちりをお願いしますっ
2012.07.29
コメント(0)

いやぁ、昨日の突然の雨にはホント参りました。細かい雨粒が強い風に乗ってドンドン吹き込んできました。本を濡らさない様にするの、大変でした。それでは8回目お付き合い下さい それにしても統源が言うからには勝算あっての事であろうが、 これはまた大きく出たものだ。 「先の津波で大きな被害を出して、流石のあの知事も庁舎を再建する気は内心は 無い様じゃしのう」ニッと人の悪い笑いを浮かべる。 多額の税金を注ぎ込んで、耐震防災工事を施したのだから、県民の防災の拠点としても 何ら問題は無いと知事は反対する専門家を向こうに強気の発言を繰り返してきたが、 ハワイ沖の地震による津波で半壊となり 「それ見たことか」と非難ごうごう受けているのである。 とは言え、大金を注ぎ込んで、この有様では、次の買い手も見つからず、 「取り敢えず県民の生活の再建が先決だ!」という逃げ口上で、 旧庁舎跡地に仮庁舎を 建設。業務を行っている。 おおっぴらには言わないにしても大半の職員は、いや県民も この新庁舎が復旧されても、もう戻ることは無いだろうと見ている。 その上、周りに有った企業の工場なども多額の被害を受け、 撤退を余儀なくされている所が殆どである。 確かに今なら、通常では考え付かないような額で手に入れる事が出来るだろう。 しかし、津波に対する脆弱性(ぜいじゃくせい)を露呈してしまったあの建物を、 手に入れてどうしようというのだろう。 「お父さん、あそこは…巨額を投じてまで手に入れる価値があるとは、 とても思えません。 現に県はギリギリまで落とした額を暗に各所に打診しているようですが、 どこも手を上げる所は無いと聞いています。」 「うむ。あのままではな。しかし早急に手を打たねばならん。 その為にはあそこしか無い。 わしが先日視た占いでは10数年ほど先に、民間の刑務所が出来る。 それを、我が社でも参入していこうと思っておる。」 「それは…」あまりの事に絃冶は絶句する。 確かに広大な土地が必要だが…。 「今回の姫巫女の転生は、今までに無い危険なものになるだろう。覚悟せよ。」 「はい」 「その託宣を受けてから、わしはずっとどうすれば、我が姫巫女を守れるか、 他の長老達と協議を重ねてきた。 もうこれまでのような、生半可な事では、守りきれん。 姫巫女はこの世に生を受けて、直ぐにこの世を去ってしまうかも知れん。 もっと言えば、わしらは、永遠に姫巫女を失ってしまう事にもなり兼ねんのだ」 「10年…」余りにも短い時間だ。 「グズグズとしている猶予は無いぞ。我が社の全勢力を上げて、買収する。 その後、箱物は全て一から建設する。防災対策の方は、もう新堂に手配を頼んである。 先の世に姫巫女が去った時から、 彼の研究所で世界最新の防災技術の研究開発に取組んできた。 わざと世間の衆目を集めないようにしてきたが、 新堂の所の技術は折り紙つきじゃ。 なに、あのような所にあのように高い建物を作ったのが、そもそも間違いなんじゃ。 土を盛って高さを上げる。強度の面などから弾き出した階数に。 まぁ新堂にその辺は任せればよい。」 「ところで、何故(なぜ)刑務所などに参入を?」 「うむ。我が社は他のセキュリティ会社とは比べ物にならないほど 武闘訓練を強化して来たし、セキュリティ会社として、 今まで培(つちか)ってきたノウハウが有るが、 前代未聞の敵を想定しなければならない今回の場合、 最大級の武装を合法的かつ、衆目を集めず行使するには、 刑務所の警備という名目が一番だと考えたからじゃ。」 「流石に、拳銃や銃器の使用はガードマンには許可されませんからね」 「うむ。異形の者なら衆人の面前で滅する事も可能であろうが、 やつらの殆どは少なくとも姿かたちは人と変わらん、というより人の中に潜んでいる。 鬼を滅していても、人殺しと見分けはつかん。 この時代益々我らが不利じゃ。 そしてもう一つは、刑務所という一種独特な閉鎖的空間で、 我々の完全なる結界を作り出し、それをカモフラージュにするつもりなのじゃ。」 「なるほど」もうそこまで、構想は進んでいるのか。流石としか言い様が無い。 「分かっているとは思うが、世間の注目を集めるのは非常に拙い。 なるだけ長く、姫巫女の事は敵に隠し果(おお)せなければならない。 そこで、我々は民間刑務所としては遅いくらい、6、7番目位に設立する事を目途に、 規模も平均より少し劣る位の方がよい。 そこで、夢咲島じゃ。表立っては低層階の建物にし、受刑者の施設にしつつ その地下に巨大な施設を建設する。 本社と島との交通網も海上を渡る橋とは別に海底に極秘裏の通路を設ける。 この構想を実現した時点で、わしは社長職を辞する。 その後を引き継ぐのは、お前だ。 わしはある山寺に篭もり、姫巫女を守護する仕事に専念せねばならない。 そうなれば易々ここに出てくるわけにもいかない。 覚悟せよ。姫巫女の生死はお前の双肩に掛かるといっても過言ではない。 先ず、手始めに人員の洗い出しから始めよ。 念には念をじゃ。 主要ポストは、これまで共に転生を繰り返してきた、我らの同胞で固めるのじゃ。 どの部署も端々の人員までお前の目で見て直接選別するのじゃ。 10年かけて、何度も何度も振るいを掛けろ。 お前の目を養え。準備は今日から早速取り掛かれ。」 「はい。」あまりの重責に立ちくらみがする様だったにほんブログ村今回、少し物語がファンタジー感が出て来たかなって思っていますキヨちゃんの物語をもっと知っていただけるようにぽちっとお願いします
2012.07.22
コメント(0)

ー昨日6.5回目をアップしたばかりなのですが、早速7回目をアップすると言う神業を披露してみたいと思っちゃいましたぁ!ほんじゃぁいっきまぁすっー - 回想 - 絃冶(げんや) コンコン 「…入れ」 「失礼します」社長室に入るとその部屋の主、統源(とうげん)は背中を向けて、 外の風景を見ていた。 「お話があるとか」 「うむ。まぁ座れ。」振り向きながら、自分も絃冶の前の椅子に腰掛ける。 「失礼します」秘書がお茶を運んできたので、出て行くまで待った。 「何か有りましたか?」 「うむ。今日占いが出た」 この場合、朝の情報番組の「今日の占いカァウントダゥ~ン!」などと言うのではない。 統源は特殊な能力というのか夢による占いを得意とする。 政財界ではお抱えの占い師に重要な決定をする時、占って貰うという人が 実は結構居るらしい。 統源はそれが自分で出来るのだ。 しかし今回はどちらかというと託宣というような形だったようだ。 統源の占いには2種類有るらしく 曰(いわ)く、自分で占おうと思って床に就き夢で占いを行うものと、 意図せず夢の中で誰かしらからのお告げのように受け取るものがあるらしい。 いずれにしても、それを駆使して一代で森川グループを大きくしてきたのだ。 もちろん絃冶は統源の占いを100%信じている。 「仕事の件ですか?」 「いや…今回は託宣じゃ。良いか、よく聞け。 これから10年後、いよいよ姫巫女がこの時世にお生まれになるという事だ」 「それは…」あまりの事に絃冶は言葉が続かない。 自分達が気の遠くなる様な時を待ち望んだ事。 その時の為、統源も自分も生まれた時、事実に覚醒した時から、 準備を整えてきた。時は満ちつつあるという事なのだろうか。 「それで父さん、やはり、私たちの準備が功を奏し姫巫女を迎える準備が整った… ということなのでしょうか?」 勢い込んで絃冶は聞いた。 しかし統源の顔は浮かない 「残念じゃが、生まれいずる姫巫女を取り巻く環境に 大して変化は無い。 この世にご出生された時から姫巫女は常に危険に晒されてしまうじゃろう。 わし等が着々と準備を重ねている間、あやつらも姫巫女を永遠に葬る計画を進めて きたという事じゃろう」 出来る限りの準備に手を尽くしているというのに、まだ万全とは程遠いのか。 100年を超える時を待ち望んできたというのに。 「前回雲母(きらら)殿が姫巫女を身ごもられた時は有事じゃった。 この世は多くの国を巻き込む大戦へと突き進んでおる時じゃった。 まだ受け入れ態勢の十分整わぬ中であったが、 姫巫女は自分が世に出る必要を感じたのじゃろう。 しかし…しかし雲母(きらら)殿諸共やつらの兇刃に命を奪われてしまった。」 統源はぎりっと唇をかんだ。 「母体の中で命を落とすという事はそれまでの転生でも初めての事。 よもやわしらは姫巫女を永遠に失ってしまったのではないかと、恐怖と無力感に 苛まれてしまったものじゃ。」 「しかし、我々は望みを捨てなかった。必ずや戻ってきてくださると…さらに強固な 守りを固めるべく…」弦冶が両の拳を白くなるまで握り締めた。 「そうじゃ、それからの長い永遠とも感じられる長い年月… そして遂に雲母(きらら)殿が転生を果たされた。 何時の世も姫巫女の母となられる雲母(きらら)殿。 わしらは姫巫女の転生を確信した。 今回は絶対に前のような失態は許されぬ。絶対にな」長い眉毛に 半ば遮られた統源の小さな瞳が若者のような生気で燃え上がる。 「そこでじゃ、次の手に出ようと思う。 わしはO県の所有している庁舎周辺を買い取ろうと思うとる。 あの横にある人工の島、夢咲島も含めてな」 絃冶は厳かな神託を受けたように感じた。にほんブログ村今回もちょっと短めですが、何故統源達が民間刑務所に参入する事になったのかなどこれからの話の根幹に関わる部分になってくるかと思います「やっと回顧編が終わったと思ったらまた回顧編かい」と突っ込みたくなっている方もいらっしゃるかと思いますが…次は誰の回顧編って事は無いと思いますので…今の所…
2012.07.16
コメント(0)

ーいやぁ昨日の「嵐にしやがれ」良かったなぁ大ちゃんかっこよかったしぃ、かわいかったしぃもう最高ぉっすんじゃぁ、6.5回目行っきまぁすー 「迎えに来たの。さぁ、帰りましょ」由紀の笑顔を見てホッとした。 心配して迎えに来てくれたのだ。 スッと力が抜ける。思っていたより自分は肩に力が入っていたようだ。 「ありがとう。でもいつから居たの?いつ出てくるかも分からへんのに。」 「待つのも、秘書の仕事の内ですから。」ルームミラー越しに笑うとエンジンを掛けた。 清水は由紀の心遣いが本当に嬉しかった。 帰る道すがら、清水はまた考えに沈んだ。 今までの数日間、怖いとは思ってはいたが、実感が伴ってはいなかったのだと知った。 誰かが守ってくれる…まだまだ甘く考えていたのだ。 友達と居るから大丈夫とか言っていたが、 その友達が巻添えにならないとも限らない。 私の代わりに怪我をしたらどうする…。 自分の事ばかり考えてそんな事にも考えが及ばなかった。 もう、断る事は出来ないのかも知れない。 夏休みもあと少しで終わる。 覚悟の時だと清水は思った。断腸の思いとはこの事を言うのだろうか。 知らずに噛み締めていた唇に血が滲んだ。 それでも結局決意を父に伝えるのに3日を要した。 言おう、言おうと思いながらも、言い出せなかった。 口にすれば最後、後戻りは出来ない。 …そう言えば明日は部の大会だ。桃子に応援に行くと約束をした日だ。 明日、大会が終わったら桃子に誰よりも一番最初に伝えよう。 詳しく説明は出来ないけれど、心を込めて伝えよう。 それから顧問の先生に退部届けを出そう。 そう決めて父にも自分の意志を伝えた。 それまで、何も言わなかった絃冶だったが、 それを聞いて「そうか、ごめんな」と謝った。 父さんも辛かったんだな。 翌日、応援席に清水の姿を見つけた桃子(とうこ)は、精一杯手を振った。 「頑張るから!」そう叫んだ。「頑張って~!」精一杯笑顔で応える。 必死で応援している間、久しぶりに頭の中が空っぽになって スッキリしたような気がした。 5位に入賞した桃子は、表彰式の後まっすぐに自分の元に来てくれた。 清水は先ずはお祝いの言葉を掛け、長い間何も言わずに休んだ事を詫びた。 桃子は泣いていた。入賞の嬉しさの涙なのか、 それとも清水に対しての涙なのか判然としなかったが、 思い切って家の都合で退部する事になったと告げた。 話の間じっと清水の目を見ていた桃子は、清水の予想に反して 清水を問い質すような事はしなかった。 ただ「どうしても辞めなあかんの?」と聞いた。 「ごめん。でもこの大会に出られなかった事とは 命に掛けて関係ないから」と答えた。 「同じ部では無くなっても、桃子ちゃんへの友情は変わらないから」 桃子も頷いた。「私だって!ずっと変わらへん」 顧問の先生には散々思い留まるように言われたが、 清水の意志が固いと見たのか、しぶしぶながらも承諾してくれた。にほんブログ村いつも、読んでくださって有難うございます。今回の6.5回目 少し短めでしたが、回顧編ー清水ーは今回まで次回の清水ちゃんは…今回区切りとして、ちょっと短くなってしまいましたので次回は早めにアップしようかと予定しています。どうぞごひいきにお願いします出来るだけたくさんの方に清水ちゃんを知って頂きたいので、ぽっちりにご協力お願いします。
2012.07.15
コメント(0)

ー久しぶりの気持ち良い青空です!もうテンションでは気が付けば6回目になりました。では始まります ドアを開け入っていくと、ベットに腰掛けて明美が待っていた。 おばさんは遠慮して、部屋には入らずドアを閉めた。 久しぶりに見た明美の顔は何だか印象が違って見えた。 「明美ちゃん…大丈夫?怖かったやろ?…」そう声を掛けると、 「キヨお姉ちゃん…」言葉が続かず、明美の目にじわっと涙が浮かんだ 「うん」そう言うと明美は清水に抱きついた。 「怖かったね…ごめんな、来るの遅くなっちゃって。」きゅっと腕に力を込める。 明美は肩が震えていたが、やがて声を押し殺して泣きだした。 暫くそのままでいたが、 「明美ちゃん?もしかして今まで泣くのとか我慢してたん?」 顔を覗き込んで聞いてみる。 明美は嗚咽を漏らしていた。 「そうか。お父さんたちに心配を掛けるからって…。でもな、泣いて良いんやで。 当たり前や、もの凄く怖い目に合ったんやから。」 それでも、声を殺して必死に泣き声を母親に聞かせまいとしている。 「明美ちゃん、そんな無理をしたら心が壊れちゃうよ。息、苦しいやろ。 それに、おじさんも、おばさんも却(かえ)って心配になっちゃうよ。 思った事、言いたい事、全部吐き出しちゃって良いんやで」 ゆっくり、ゆっくり話しかけていると、遂に明美は堰を切ったように 大声を上げて泣きじゃくった。 清水は黙って明美が気の済むまで泣かせてあげようと思った。 優しく髪を撫でる。 明美は暫くしそうしていたが、少しして、しゃくりあげながらも ぽつりぽつりと当時の事を話し出した。 「ホンマに…。殺されると思ってん。」 「うん」自分は肯く位しか出来ない。 「黒い袋を頭から被せられてな。何も見えへんくて…暑くて… その内、息が苦しくなってきて…」 「うん」 また、ブルっと明美の体が震える。 「私、もう怖くて、怖くて泣き出してしもうて…。」 掛ける言葉が見つからず、いたわる様に頭を撫でた。 「そしたら…犯人の内の一人が急に怒りだしてん。泣くな!言うて地面かなんかを 棒みたいなので叩いたみたいで…」思い出すのも辛いのだろう。顔がゆがむ。 「大丈夫?」と聞いた。 少し呼吸を整えるとぎこちなく肯く。 「私、今まで今回の事、誰にも話してへんねん。警察の人にも…」目を伏せる。 「お父さん達に心配掛けたくないんも有るけど、よう話さんくて…」 「そうか、話そうとしたら詳しい事まで思い出さなあかんもんな」また頭を撫でる。 「うん…それで、ガキって音がしてなんかの破片が飛んできて、目の横に当ってん」 「えっ?」驚いて手を引っ込めた。 怪我はないと聞いていたはずだが。 「大丈夫なん?」 「うん、傷自体は大した事無いねん。けど…血が…スゥって流れてきて …怖くて泣く事も出来ひんくなって…」 「…どの辺?」と明美の指差した所の髪を横に除けて見ると 確かにガーゼが貼ってある。 「大丈夫。お医者さんは痕は残らんやろうって…」 さっきからずっと自分の爪を見つめながら、話をしていた明美がやっと顔を上げた 力なく微笑む。私にまで気を使うこと無いのに…。 「それから仲間同士の喧嘩が始まって…私、怖くって小さくなってるしか無かった」 その後の話を聞くにつれ、まだ小学生の明美は自分が想像していたよりも、 ずっとずっと怖い思いをさせられたのだと実感した。 それを、家族に心配させまいとして、自分の中に押し込めていたのだ。 明美が救出されたのは本当に奇跡的な事だったように感じた。 どれだけ辛かっただろう。 清水は自分の事のように感じ涙が溢れてきた。 どの位そうしていたかは分からないが、明美の様子から まだこれ以上は話せないのだろうと判断した清水は、 リビングに行かないかと誘った。 「明美ちゃんの大好きなアトマンジュのケーキを買ってきてん。 一緒に食べようと思って。どう?」 コクンと肯いたので、背中を抱えて一緒に部屋の外に出た。 ドアを開けると、目を真っ赤にしたおばさんが廊下で待っていた。 明美の泣き声が聞こえていたのだろう。 何となく照れくさそうに下を向いている明美をそっと前に押してやる。 「さぁ、清水ちゃん、明美。清水ちゃんの持って来てくれたケーキを用意するから、 皆で頂きましょう。」と言って嬉しそうにキッチンへと入っていった。 明美は美味しいと言って、ケーキを食べてくれた。 「あぁ、やっぱり不思議。。。前から感じてたけど、 キヨお姉ちゃんが側にいてくれるだけで、何となく体も心もスーッとするわぁ」 そう言われて「そう?」ちょっと照れる。 「マイナスイオンみたいやね」クスッと笑いながら言われた。 また近いうちに必ず遊びに来るからと約束して、 暗くならない内にお暇(いとま)する事にした。 玄関の外でおばさんは 「今日は本当に有難う。清水ちゃんのお蔭で明美も少し落ち着いたみたい。また来てね」と 言ってくれた。 おばさんが電話でコンシェルジュを呼んでくれ、 彼女はエントランスの外まで送ってくれた。 マンションの外に出ると「プッ」と短くクラクションが聞こえた。 そちらの方を見てみると、由紀が車の運転席から降りて来た。 「迎えに来たの。さぁ、帰りましょ」由紀の笑顔を見てホッとした。 心配して迎えに来てくれたのだ。 スッと力が抜ける。思っていたより自分は肩に力が入っていたようだ。 「ありがとう。でもいつから居たの?いつ出てくるかも分からへんのに。」 「待つのも、秘書の仕事の内ですから。」ルームミラー越しに笑うとエンジンを掛けた。にほんブログ村今日の清水ちゃんはいかがだったでしょうか?何かメッセージをいただければ本当に嬉しいです。ぽっちりお願いしま~す
2012.07.08
コメント(0)

どう考えても納得できない。 けど、どう言えば辞めなくて済むのかも分からない。 …そうだ。桃子はどう思うだろう。よりによってこのタイミング。 私が選手に漏れたから辞めると言い出したと思わないだろうか? 本当の理由を話した所で、やっぱり少しはその理由も入っているんじゃないかと 勘ぐってしまうんじゃないだろうか? 第一、父が刑務所を経営している事は、誰にも話してはいけないと固く口止めされている。 その事は教師の間でもごく限られた人物しか知らされていない。 そういう無理を通す為に、おじい様の友人が理事長と校長を兼任する今の学校に 通っているのだ。 父にとって、父の会社にとって、自分は正しくアキレス腱なのだ。 生き甲斐を無くして、その上、桃子との友情にまでひびが入ってしまったら 自分はこの先どうやって生きて行ったら良いのだろう? 枕を顔に押し当てて、一晩中泣き明かしてしまった。 自分は酷い顔をしているだろう。目なんか痛くて殆ど開けられない。 部屋から出る気も起きず、由紀が声を掛けてくれても返事をする事も出来なかった。 気力も体力も抜け落ちてしまったようだ。 頭痛がひどい。 声を掛けるのを諦めた由紀の足音がリビングの方へと遠のいていく。 それから結局ずっと清水は部活を休み、部屋に籠もった。 虚しい時間だけが過ぎていく。涙も涸れ果てた。 直ぐにでも鍛錬を始めると言っていた絃冶も、何も言わなかった。 その間、昼も夜もずっと自分の事ばかりを考えていた清水は1週間が過ぎた頃 唐突に明美の事を思い出した。「明美ちゃん…」 どうしているだろう。 父の会社の所為(せい)で、もの凄く怖い思いをした筈だ。 ご両親が付いているとは言え、心細く思っているだろう。 会いに行かなくては。 重い心と体を引き摺(ず)りながら、清水はごく簡単に出掛ける仕度(したく)をした。 今まで失念していたなんて、最低だ。 唇をキュッと噛み締め、ドアを開ける。 ドアの音に由紀が慌てて顔を出した。 「清水さん、出掛けるの?」 「…うん…。」 「ちょっと待って、これを持って行って」パタパタとリビングに急いで戻っていった 由紀は、手にスタンガンを持って出てきた。 少し迷ったが「…うん」それを受け取るとバックに仕舞った。 「ちょっと…明美ちゃんのお見舞いに行ってくるわ」それだけ言うと、何となく 気まずくて由紀と目を合わせられないまま「行ってきます」とだけ言うと玄関を出た。 「いってらっしゃい」気遣わしげな由紀の声が聞こえた。 なるべく人通りの多い道を選んだほうが良いのだろうか…などと考えながらも 遠回りをする気力も無く、いつもは使わないがタクシーを捕まえることにした。 大通りに出ると程なくして、タクシーに乗り込むことが出来た。 歩いている時は辺りをそれとなく気にしてはいたが、 座席に座ってしまうと、頭の中を占めるのは、やはり部活の事ばかりだった。 はじめて父さんの仕事を疎ましく思ったりもした。 何故、自分がこんな目に遭わなくてはいけないのか…。 優しい父。本当に自分が人質にされてしまったら…社長としての立場との板挟みで、 苦しむだろう。それは十分に分かっている。 考えはあの時から堂々巡りを繰り返している。 答えは出ない。 いや…選択の余地は無いのかもしれない。自分で認められないだけで。 窓の外に目を向けていた清水は、大分走った所で、 自分が見舞いの品も用意していない事に気付き、 慌てて明美の好きなスイーツの店の名を告げて寄ってもらうように運転手に頼んだ。 藤堂のマンションに着いた清水は、マンション入り口のガラス戸に映る自分の姿を 念のためチェックしてから、藤堂の部屋のボタンを押した。 「はい」インターホンに藤堂のおばさんが出てくれた。 「こんにちは、清水です。突然すみません。明美さんのお見舞いに…」 「あら、清水ちゃん。どうぞ、上がってらして」自動ドアのロックを開けてくれる。 エントランスでいつものコンシェルジュが笑顔で出迎えてくれた。 そのままエレベーターに乗り込もうとすると、コンシェルジュは 「お部屋までご一緒させていただきます」と言って一緒にエレベーターに乗り込んできた。 こんな事は初めてだ。少し警戒心がムクムク頭をもたげたが、 襟の紋章が見慣れた父の会社の物なのを見て、このビルのセキュリティーを 父の会社が請け負っている事を思い出し、ひとまず言う通りにした。 それでもかばんの中の、スタンガンをギュッと握る。 斜め後ろに立ち、彼女を観察する。 華奢に見えるけど、この人も何か武術を習っているのだろうか? そんな事を考えている間に最上階でエレベーターが停まった。 彼女は外を確認すると先に出てドアを押さえてくれた。 「どうぞ」 「ありがとうございます。もうここで…」断りかけたが、 コンシェルジュはニコリと微笑んだだけで、付いてきた。 部屋の前まで来るとおばさんが出迎えてくれた。 「いらっしゃい、清水ちゃん。よく来てくれたわね」 突然の来訪にもかかわらず快く招き入れてくれる。 部屋に入りながら後ろを見ると彼女はドアの横で周囲に気を配っていた。 「ありがとう。ご苦労様です」おばさんは彼女に声を掛けるとドアを閉めた。 パタン。ドアが閉まる。室内の見通せるところには誰の姿も見えない。 シンと静まり返っていた。 「さぁ、どうぞ上がって」そういっておばさんはリビングへと通してくれた。 「あの、おじ様は…」藤堂氏の姿が見えない。 「あぁ、もう一昨日から出社しているの。 社長はもう少し明美の側にって仰ってくださったんだけど…」 「そうですか…あ、あの、これお見舞いというか…」 来る途中に用意したお菓子を手渡した。 「まぁ、ありがとう。さぁ座って。外、暑かったでしょう?今冷たい物でも入れるね」 とソファを勧めてくれた。 「はい」ソファに座っておばさんを待つ。 アイスティを淹(い)れて、戻ってきたおばさんに「あの…明美ちゃんは?」と聞いてみる。 「ごめんなさいね。退院してから滅多に部屋から出て来なくて。 別に閉じ篭っているとか、私達が入るのを嫌がるとか言うんじゃないんだけど」 ふぅと小さくため息をついた。 「あ、まだそんなに日にち経っていないのに私ったら。」 思いつきで急に訪ねた事を謝った。 「ううん、凄く嬉しいねんよ。気に掛けてくれてありがとうね。 今、明美に声を掛けてくるから、待っててね」と言って腰を上げた。 「あ、いえ。今日はこのまま帰ります。明美ちゃんにはまた日を改めて 会いに来ますから」と慌てて断ったが 「大丈夫。少し待ってて。清水ちゃんが来てくれたのに、 このまま知らせずに帰ったとなったら、後から私が怒られちゃう」と笑顔でいうと 明美の部屋へと行ってしまった。 いたたまれない気持ちのまま、待っていると、程なく戻ってきたおばさんは 「明美が清水ちゃんに自分の部屋に来て欲しいって言ってるんやけど、良い?」と聞いた。 「あ、はい」急いで立ち上がり、後ろを付いて行く。 部屋の前まで来ておばさんが清水に譲ったので、ノックする。 コンコン…「明美ちゃん?」声を掛けると、 「はい、どうぞ。」思ったよりも力強い声が返ってきた。 清水ちゃん達の事、もっと他の方にも知っていただきたいので、宜しかったらポチッとお願いしますにほんブログ村
2012.07.01
コメント(0)

店を出ると辺りはすっかり暗くなってしまっていた。 (あちゃ!) 「じゃあ、明日ね!」桃子といつもの角で分かれた。由紀は心配しているだろうか。 急いで家路に着くと「由紀さん、ただいまぁ。」 お小言を覚悟して勢い良くドアを開ける。 と、父の革靴が目に入った。 「あれ?お父さん帰ってたん?」 「ん?あぁ、お帰り」携帯を切りながら、振り返った。 「遅かったじゃないか」少し怒ってる? 父が家に居るのは久しぶりだった。 半月ほど前から会社で何か有ったらしく、殆(ほとん)ど家に帰ることは無かった。 一度荷物を取りに戻ったらしいが、自分がまだ学校の時間だったので、 顔を合わせられなかった。 その間由紀さんがずっとついていてくれたので、さして淋しくは無かったが、 父は長期間家を空けるという事が滅多に無いだけに心配だった。 「ちょっと、キヨ座って」と呼び止められた。 「うん。ちょっと鞄置いてくるね」…なんだろ。 急いで部屋着に着替えてリビングに行くと由紀さんが夕食を用意してくれていた。 「お腹空いたでしょう?先にお食事を済まされては如何(いかが)ですか?」 「…そうしよう」父は黙々と食事を進めた。 何だか変だ。 父さんは元々そうおしゃべりな方ではないが、それでも料理を用意してくれた由紀さんに 何も声を掛けないなんて珍しい事だった。 早々に食事を終えた父は、お茶をゆっくり飲みながら、2人が食べ終えるのを待っていた。 何だかどこに入ったのかも分からないような感じで食事を終え、父の話を待った。 由紀さんが席を立ち、食器を下げて行った。 「キヨ、大切な話だ。まずは長い間、留守をしてしまってすまなかったね」 「ううん」居住(いずま)いを正す。 「実は、我が社に半月くらい前脅迫状が届いてな。」 「えっ?」意外な話にびっくりした。 だから父さん家に帰れなかったのか。 「まぁ、仕事の性格上、そういった事は今回が初めてと言うわけでは無いけどな。」 何だか不安になった清水は由紀の顔を見た。 由紀はいつもと変わらず優しく頷いてくれる。 「それで?」 「うん。まぁ、それが爆弾付きでな」 えっ?! 苦笑しながらもなんでも無いことの様に話す父に思わず「爆弾?」と聞き返した。 清水の父は民間の刑務所を経営している。 確かにそのような脅しを受けるのは、想定内だと言えるだろうが。 清水にすれば父さんは滅多に自分の前で仕事の話はしないから、 頭では分かっているつもりでいても、これまでは実感が伴わなかったのだ。 「だぁいじょうぶだ。うちのセキュリティはしっかりしているし、 ちゃんと、包みを空ける前に検知して処理もした。けが人も居ない」 それを聞いて少し安堵のため息をつく。 父は元々セキュリティ会社を経営しているだけあり、刑務所はもちろん 社屋も鉄壁の警備体制を敷いている。 会社に何か有ればそれこそ顧客の信頼を失ってしまう。 「しかし脅迫が失敗をしたと知った犯人が再び行動を起こしてな。 社内は無理そうだと踏んで狙いを変えたようだ。藤堂の娘さんを誘拐したんだ。」 父の声に怒気が混じる。 清水は余りの事に瞠目する。 「うそやろ!そんな…」明美ちゃんが? 副社長の藤堂さんとは家族ぐるみの付き合いだ。 娘の明美ちゃんとも何度もうちなどで顔を合わせているし、来年には自分と同じ中学を 受験すると決まっていて、一緒になるのを楽しみにしていたのに。 青ざめた清水に、安心させようと側に来て肩を抱いた父は 「びっくりさせてすまない。だけど大丈夫。それも昨日で無事解決した。 もちろん明美ちゃんも怪我も殆(ほとん)どなく救出できた。」 「ホント?」やっと息をつく。 「あ!で、犯人は?」 「詳しい事は分からんが、後は警察の仕事だ」 「でも、問題はこれからの心のケアのほうでしょうね」珍しく由紀が口を挟んだ。 「そうだな。随分怖い思いをさせてしまった。 キヨも少し落ち着いたら、様子を見に行ってくれるかな?」 「うん。もちろん」明美ちゃんの気持ちを思うと居ても立っても居られない気持ちだった。 「まだ念のため、明日までは入院して貰ってるから」 そういう父の顔を見上げると疲労の色が色濃く見えた。 「大変やったんやね」何んと声を掛けて良いか迷ってそれだけ言う。 ふっと笑って父は「まぁな」と言って肩をポンポンと叩きながら席に戻った。 長い沈黙に耐えかねて清水が話しかけた。 「あ、ねぇねぇ、それはそうと今日、部の大会の選考会やってんけどな。 桃子ちゃんが選手に選ばれてんよ。 ウチとホンマ、タッチの差ぁやってんけどなぁ。 惜しかったわぁ。頑張ったのに。…ま、今回は桃子ちゃんに譲るっちゅう事で…」 気分を変えるように、肩をすくめワザと明るく話す清水を 由紀が気遣わしげに見ていた。 「そうか…その事なんだが、キヨ。部活は今日で辞めなさい」 清水は暫く父が何を言い出したのか分からなかった。辞めなさい? 「なんで?なんで、辞めなあかんの?」びっくりしすぎて思考が追いつかない。 まだ、1年生だし、まさか勉強に専念しなければならないほど成績が悪いという事は 無いはずだが。 「さっきの話の続きだが、犯人は逮捕されたが、それで一網打尽に出来たとは限らない ヤツらがグループの一部だとすると、また次の手を打ってくるかも知れん。 次はお前を狙うかも知れない。」 そうか…ブルっと背中を悪寒が走る。怖い。けど、それと部活とは…。 「実は、明美ちゃんの件が発覚してから、もうキヨにはガードを付けてあった」 「…全然気付かなかった…」今まで通りの普通の生活を送っていたと思っていたのに。 「うちのは優秀だからな」ふっと笑う。 「キヨなどに気付かれるようなヘマはしない」 「じゃあ、じゃあ、良いやん!」勢いよく椅子から立ち上がる。 「ボディガードの人には申し訳ないけど、今のまま付いてもらえれば、部活だって…! 今日までだって無事だったんだし。優秀なんでしょう? いつも友達と一緒に居るようにする。 今日みたいに遅くなる事は絶対しないから。約束する! 今日は特別やったから」必死に食い下がる。 水泳は自分の生き甲斐だ。それは父さんだって十分に分かっている筈だ。 それを辞めるなどと考えた事もない。 「お願い、お父さん!」 「駄目だ。明日、早速退部届けを出しなさい。 言いにくければ、私から先生に話をしてもいい」 「あ、明日?」そんな…変だ。 うちは父一人娘一人だからか、父は私の自主性を重んじてきてくれた。 小さい頃からずっと何かを決める時も、いつも一人前の人間として意見を聞いてくれた。 こんな風に一方的に意見を押し付けてきた事など無い。 「なんで?いくらなんでも急すぎるよ!」涙が後から後から溢れてくる。 「そうや!休部、休部は?何も辞めんでも良いやん。 今回の件が解決するまでは、父さんの言う通り、大人しくしているから。ね?」 何とか説き伏せなければ。 「すまない、キヨ。でも駄目だ。万全を期さなくてはいけない。 24時間いつも守れるに越した事は無いが、スキを衝かれる可能性だって有る。 特に学校に居る間は。 ガードも流石(さすが)に校内までは自由にお前について回る訳にはいかない。 これからは自分の身くらい自分で守れるようになってくれなくては。 分かってくれ、キヨ。お前が心配なんだ。 明日から始める。始業式以降も学校から帰ったら道場で護身術を習うんだ。」 「は?」もう取り付く島も無い。 縋(すが)るように由紀を見るが、由紀は辛そうに目を伏せているだけだった。 「それに、これはじい様の決定でも有るんだ」固い声で父が言った。 「…!」だめだ。最後通告と言う訳か。 何故かおじいちゃんの「決定」はうちでは絶対だ。 何があっても覆(くつがえ)った事はない。 「あり得ない」清水は、ぼそっと言ってふらつく足元で部屋に戻って行った。ランキングに参加しています^^よろしかったらポッチリお願いします。にほんブログ村
2012.06.26
コメント(0)

きよみず とうこやっとこ、清水ちゃん&桃子ちゃんが登場しました~長い前振りでしたねぇ…我ながらやっと前振りが終わったと思ったら次は回顧編です。少しづつ清水ちゃんの人となりが分かって頂けると思います。*******************先日、直ぐ近所の整体の先生のところに行ったのですが。。。「はい、ぷうげんさんこちらへどうぞ~」と先生に呼ばれて靴を脱いでマッサージの台の上に上ってふと、自分の脱いだ靴が目に入った途端、体中の力が抜けて台の上でふにゃあってなってしまいました。病院まで左右別々の靴を履いてきたんです。しかも右はスニーカー、左はスリッポン…なんで気付かなかったんやろ「あかん、もうあかん、ほんまにあかん、あかんわぁ。。。」ショック!ショック!。。。「あ、ぷうげんさん!もう少し前に行かないと落ちちゃいますよ」と先生に言われはぁ~いと言いながら前にずれました。「まぁ、ぷうげんさんが入って来た時から気付いてたけどね」といわれて更に脱力。。。恥ずかしくて、恥ずかしくて。。。「どうやって帰ろう~」って困っていると、他の患者さんが「片方の足怪我してるって感じなら大丈夫よ」って笑いながら教えてくれました。「その手が有った!」ちょうど整体医院だし!帰ったら父が「お母さん玄関で固まってたで、何で片方ずつしか靴無いの?」って。人事だと思って笑いおって!プンスカ「履いてて違うの分かれへんの?」って聞くから「分かったら履き替えるわ」って答えたら「お母さん、『あの子は、もう…』って言ってたで」と言われて、遂にぐうの音も出なくなったので「お父さんのせいや!」と言い放っておきました。
2012.06.22
コメント(0)
― 回想 ― 清水 「?」…何、ここ…? 真っ暗だ。 自分が目を開けているのかどうかさえ、分からない様な暗闇。 何も見えない。 何も聞こえない。 いや。ふと気付いた。さっきから聞こえている唯一の音…。 気付いた途端、最大音量で聞こえるザッ、ザッという途切れ途切れの音。 これは?音のする方を探ってみると 自分の耳の中から聞こえる? …自分の血の流れる音…? 自分がどこか床の上に座っているという事しかわからない。 暫く躊躇していたが思い切って「どこ?」声に出してみた。声がかすれる。 誰も答えない。 本当の闇は人を不安にさせる。 自分の血流の音がこんなにもうるさいなんて。 このままでは、おかしくなってしまいそうだ。 ふと、気配を感じた。思わず身を固くする。 気のせいだったのか。あれきり何も感じない。永遠とも感じる時間…。 「…だれ?」恐る恐る聞いてみる。 と、唐突にそれまでの自分を見ているもう一人の自分と入れ替わったような感覚。 暗いのは変わりないが、闇の中にボヤっと白い女の子と思われる顔が浮かび上がる。 「だれ?」誰何(すいか)を繰り返す。 不思議とこんな状況にも関わらず、その子の事は怖いとは感じなかった。 そっか、目隠しをされてたんや。 その子を見て、自分のさっきまでの状況を理解する。 自分とその子が入れ替わったんだ。 じゃあ…これは夢か。 その時その子が、何かを訴えるように口を動かしている事に気付く。 相変わらず声は聞こえない。 「何?」 暗くてよく見えない 「…あ?…?え?」 何回も繰り返しているようだ。 「何?」 もどかしく思いながら、目を凝らす。前かがみになる。 その途端、突然のぐるっと足元がひっくり返ったような目眩(めまい)にも似た感覚…。 もの凄いだるさと共に目が覚める。 体が重い。 気が付けば「ピピピ…ピピッ」目覚ましが鳴り続けている。 「夢…。」 最っ悪だ 起き上がってそのまま暫く座っていたが、仕方なく部屋を出て洗面台に向かう。 歯を磨きながら鏡の中の自分を見て、更にテンションはだだ下がりだ。 う~わ。ひどいクマ!こんなんじゃ外に出られへん。今日マジ休もうかな。 …父さん病気じゃない限り休ませてくれへんし、 仮病を使おうものなら、由紀さんが盛大に心配するやろうし。 他の理由を考えたが…ダメだ、頭が回らない。 諦(あきら)めのため息と共に顔を勢い良く洗う。 いつもなら、これで目が覚めるというのに、今日のはなかなかにしぶとい。 とにかく、着替えなくちゃ。 「おはよう」 「お父さん、おはよう」言いながら大きな欠伸をしてしまう。 「なんだ、寝不足か?まさかあれか?」と言いながらゲームをする真似をして見せた。 「違うて。ちゃんと寝たんよ、ん~、起きぬけの夢見が悪かったからかな」と言いつつ また欠伸をかみ殺す。 「ん?珍しいな、お前が夢を見るなんて。滅多に見ないんだろ?」 「うん。…まぁね」 「怖い夢でも見たか?」新聞を畳みながら、聞いてくる。 「ん~…嫌な夢やったみたいやけど、よく覚えてへん 見たことの無い女の子が出て来てんけど、その子…なんか…凄く怖がってたみたい」 さっきまで鮮明だと思っていた、夢の断片は、 女の子の顔だけを残して、どんどん手の届かない彼方へと逃げていった。 「ふ~ん」と父は訝しげに頷いた 「はい、はい。清水(きよみず)さん、お早うございます。今朝はパンケーキよ。 早く食べないと時間無いんじゃない?」と言いながら、 由紀さんがお皿を運んで来てくれた。 「わ~!ええ匂いしてるなぁって思っててん。おなか空いた!ありがとう!」 嬉しそうにほおばっている清水はもう夢の話など、忘れてしまっているようだ。 由紀はニコニコと清水を見ながら、オレンジジュースを注いでくれている。 時間が無いと言いながら、全部平らげた清水は途端勢い良く椅子から立ち上がった。 「ご馳走さま~!」と言いながら、玄関へと走っていく。 「行って来ま~す!」ガチャン!バッタン!と大きな音を立てて出て行った。 「ふ~ぅっ」絃冶(げんや)はため息をついた。 「おかしいなぁ…誰に似たんやろ」と呟く弦冶に、 ニッコリと笑いながら「清水さんは、社長にそっくりですわ」と答えた。 由紀さんは父さんの会社の秘書の人で、清水の家の事も何かと手伝ってくれている。 生まれたばかりに母を亡くした清水にとっては、母のような姉のような人であり、 父さんも早くプロポーズすれば良いのに、と常日頃から思っている。 今は晩婚が珍しくないとは言え、由紀さんも、もうそろそろ適齢期とは言えない 年齢に差し掛かりつつあるのだ。 あんなに綺麗な女性を働かせるだけ働かせて…父さんの奥手にも程が有る。 まだ清水が小さかった頃、めっちゃストレートに聞いたことがあった。 「お父さん、由紀さんお嫁さんに来てくれないの?」…あれはいけなかった。 いくら私が小学1年生のガキンチョだったとは言え、余りにもストレートすぎた。 キッチンからリビングに行くまで3回こけかけ、1回は小指を家具にぶつけて 悶絶(もんぜつ)していた。 普段の父からは想像も出来ない。 涙目の父を見て、見てはいけない物を見てしまったような気がしたっけ。 かなり気まずい思いをしたな。お互い。 「わっ!バス来てるやん!」 バス停の手前で信号待ちをしているバスを見つけて、清水は全力ダッシュした。 バス停で清水に気付いた桃子(とうこ)が手を振っている。 「早う、早う!清水っ!信号変わってしまうでー!」 「はっ。はっ。お、おっはよ、はっ…桃…子ちゃん」息が上がってしまった。 「おはよう」桃子(とうこ)が先にバスに乗り込んでいく。 バスのステップを上がりながら 「ふぅ~。何とか間に合ったぁ。これ逃すと、次のじゃアウトだもんねぇ」と言った 「今日はほんま信号無かったら、間にあわへんかったなぁ」と言う桃子と並んで座る。 汗をハンカチで拭いながら、息を整える。 清水達が乗り込むバスは都心とは逆方向のため、乗客は殆どが同じ学校の生徒達が占め、 さながらスクールバスのようだ。 反対車線のバス停にはビジネススーツに身を包んだ大人たちが長い列を成している。 それを見るとは無しに見ながら「何だか、今日は夢見が悪くてさぁ。」と呟いた。 「で、寝坊したってか?」意地悪く聞く。 「う、ん、まぁね」 「大体、最近運動不足なんちゃう?あのくらいの距離。 なんで、水泳部辞めたん?あんた、めっちゃ泳ぐん好きやん。」 何気なさを装いながら、桃子が聞いてくる。 「や、やだなぁ。まだあれからちょっとしか経ってへんのに、そんな早く落ちひんて。 今朝はホンマに体がだるくって…。」笑顔が引きつる。 さっきまでと違う汗が出て来た。 「まさか、夏風邪?」 「ううん。違うと思う」 「また始めたら良いやん。あんましブランク空けると取り返すんキツイで」 もう何回も繰り返した話だ。 「うん。ウチがもっと器用やったらそうするねんけどなぁ」ため息混じりに答える。 「って、あんた帰宅部やん」ちらりと横目で睨(にら)む。 「ん…。」 その話題になると困ったように目を逸(そ)らしてしまう友人の横顔に、 「うちは一緒に泳ぎたいんやけどな」と小さく呟く。 桃子の気持ちは、分かってる。 小学生の頃から始めた水泳教室。そこで初めて桃子に会った。 お人形のようなくりくりした大きな瞳の女の子。 通い始めたのも、ほぼ同じ時期で、家も近所だった事もあり、 教室を通じて一番の親友になれた。 「中学に行ったら、一緒に水泳部に入部しよう!」って約束をして、その通り、 真っ黒に日焼けして、部活に通っていた。 1学期の終わりに近づいた頃、夏休み終盤に開催される大きな大会のレギュラーに 1年生から一人だけが選ばれると顧問の先生から発表された。 お互いに励ましあって、レギュラー選考の為の記録会まで、猛練習をした。 そしてその日…桃子がレギュラーに決まった。 清水は確かに悔しかったけど、それ以上に桃子が選ばれた事が心の底から嬉しかった。 自分の事のように嬉しかった。 桃子の頑張りは自分が一番知っている。 だから心から「おめでとう」をいう事が出来た。 二人抱き合って喜んでしまって、他の1年生の雰囲気に「しまった」と顔を赤らめた。 帰り道、二人きりになると、桃子は前を向いたまま一度だけ「ごめんね」と 小さな声で言った。 清水は「何ゆうてんの。ウチほんまに嬉しいねんで。」と言いながら、 背中をパシッと叩いた。 「そりゃ、悔しくないって言うたら嘘になるけどさ。 ウチだって全力出し切れたし! ほ~んのちょっと今・日・は桃子の方が早かったけどな。(笑) でも、次はウチが取るからな!大会ウチの分まで頑張って。応援してるから!」 という私の言葉に、嬉しそうに頷いた桃子は「ありがとう、頑張る!」と言うと もうそれ以上その話はしなかった。 「そや、お祝いにパフェ食べて帰ろうか!」清水の誘いで 帰り道の途中にある店によってイチゴパフェを食べて、おしゃべりを楽しんだ。 またいつも通りの2人だった。
2012.06.21
コメント(0)
大きな花火を打ち上げて見せた わけだが、 今回の事案はやはり長い間うやむやにしてきた問題だけに、難題は山積であった。 ハード面1つとっても、受刑者の収容人数に限りがあるのは事実で、 これは加藤議員の人気だけでは如何(いかん)ともしがたいものであった。 また、既得権を脅かされる官僚の抵抗も根強く、 一部には、同じ与党内からも 族議員達が表立っての反論をする者、 また裏から手を回す者が出てきた。 結局、法案を実質成立させるには、段階を踏む必要があるという結論に落ち着き 次の様に大まかな概要が示された。 1、あくまでも国営の刑務所だけでは収容しきれない受刑者の受け皿として、 民間の企業が経営する刑務所を設立する 2、成人の無期懲役刑を廃止する代わりに懲役に期限を設けない、「終身刑」という 刑罰を新設する。 終身刑とは、犯した罪により受刑年数を足していき、上限を設けない。 -つまりは懲役200年、300年などもあり得るという事だそうだ。- 3、民間の刑務所の設備が整い受け入れ態勢が整った段階で 16歳以上の未成年についてもこの「終身刑」を摘要する。 4、設備、人員の整った民間刑務所の内、国で定めた基準をクリアした施設のみ 精神疾患による犯罪者の内、責任能力を有さない為、無罪判決を受けた者の中で、 再犯の可能性が高いと裁判所が判断した者、 また病的な衝動により犯罪を繰り返す、更生が実質困難な犯罪者を、 終身にわたり、収容、収監する医療刑務所の設立を許可する。 これに関しては定期的に行う複数人の精神科医全員の意見一致の判定により、 完治と認められれば、出所を許可する 但し、出所後も移動の制限や、体内に埋め込まれたチップにより行動を監視される。 5、これまでの受刑者は服役中、その後刑期を終えた後の社会復帰、 更生を目的としたプログラムが主となっていたが、 この新しい終身刑の成年の受刑者は、特別に情状酌量が認められるもの以外、 原則として皆、日々を刑務官の監視下においての労働に従事し、 その対価は国への税金と刑務所の維持費として全額支払う。 6、未成年の受刑者に関しては、矯正教育と通常の通学と同じ学科教育を受けながら 週1日を労働日とし、労働に従事する。これの対価は刑務所の維持費として 全額支払う。 また受刑者が18歳に達した時点で、成年受刑者と同じ処遇へと移行する。 これらにより、成年者の労働力を確保しながら、危険人物を世に出さずに、 国費を潤(うるお)す一石二鳥となる。というのが加藤議員率いる 超党派のグループ「あるべき日本の姿」の主張であった。 これだけの重要法案ではありながら、可決成立は異例のスピードで進んでいった。 やはり、当初の予想通り業務の内容の特殊性などからしても、申請するのは、 民間の警備会社が大半を占めた。 可決から10年。 先ずはモデルケースとして、東北地方に第一号の刑務所が設立される事となった。
2012.06.15
コメント(0)
先日、夕方から結構な雨が降っていました。出先からの帰りで、私は晴雨兼用の傘を持っていたので、それを差して帰っていました。我が家の隣はお店なのですが、その軒先で既にびしょぬれな感じの自転車に乗った女の子(?)高校生とか学生さんかな?困ったように前を見ています。まだまだ止みそうもないのに。。。と気になった私は、雨傘を取ってきてその子に貸しました。最初遠慮していたけど、「いつでも良いよ、この道もう通らない?」って聞いたら「いえ」と答えたので、「通ったついでにそこの門に掛けて置いてくれたら良いから」と言って渡しました数日後門に傘と共にお菓子のプレゼントが置いて有りました。お顔もしっかり見たわけじゃないし、お名前を見ても、珍しいお名前ではなかったので心当たりが無くて御礼を言いたいのですが、言えないのが。。。私のブログを読んで下さる可能性はかなり少ないと思うのですが。。。「Tさん、どうもありがとう」
2012.06.14
コメント(0)
もう、ドキドキものでブログに載せました。どのぐらいの量をアップするか何度も迷ってしまったり。。。そう、お気付きになられた方もいらっしゃいますでしょうねいってか、皆さん思ってらっしゃるかと。。。最初登場人物の紹介の後「次回から清水ちゃんのお話がはじまりま~す」みたいなことが書いてあったりしたのですが、いざ蓋を開けてみると、清水の「き」の字も出てきておりませんねぇ。。。というより、主要人物まだ1人も出てきておりません前振り長!っと思わずにもう少し、お付き合い下さいませってまだつづくんかいいえ、あと、もうすこしなんで。。。皆様よろしくお願いします~
2012.06.11
コメント(0)
SPEAR 表裏一体は交わるのか、平行線を辿るのか 今からそう遠くない未来、この国は『死刑制度』という根本的な問題を 見事に棚の上に放っぽって、無期懲役刑を撤廃した。 この法案の成立の中心になったのが、その頃、将来は総理を約束されていると 言われていた若手議員のホープ加藤正樹議員だ。 彼はそのルックスとカリスマ性で芸能人並みの人気振りを呈していた。 彼の行く所、常に黄色い声援が飛び交っている。 加藤議員はいつもマスメディアを巧みに活用し、この日もTVショーで熱弁を振るった。 「我々は今の刑法では、加害者の人権ばかりが擁護され過ぎているのではないかと 考えます。 勿論、罪を憎んで人を憎まずと言うのは、大前提に有ります。 しかし、現実問題、彼らよりも更に養護されるべき被害者やご遺族の権利は 軽んじられていると言わざるを得ません。 皆様、ご自分の事に置き換えて考えてみてください。 もし…貴方の大切なご家族が、殺されたりしたら… これまでも、幾度と無く議論は提議されてきましたが、未だにわが国では、 殺した人数によって刑が決まるという、理不尽がまかり通っています。」 彼は曇りの無い瞳で聴衆を魅了した。 気のせいではないだろう。スタジオの中で熱気の渦が彼を中心に回り始めている。 「誤解を恐れずに申し上げれば、一家皆殺しなら死刑。 でも例えばお父さんだけなら?懲役何年ですか?ご両親共なら無期ですか? それを妥当だと貴方なら言えますか? 遺族感情から言えば、喩(たと)え死刑が確定したとしても、 満足など出来るわけも無い。 それなのに、何年で出所して来るかも分からない刑を言い渡されて、 国が犯罪者を罰してくれないなら、自分の手で…と考えても おかしくないのではないですか? 只(ただ)しかし、わが国ではもう何百年も前に「あだ討ち」を禁止されている。 つまり復讐は許されないわけです。」 心なしか彼の目にうっすら涙が滲んでいるように見える。 正にこの歯に衣着せぬ物言いこそが政治家らしくないと好感を呼んでいた。 「確かに、裁判員制度が導入されてから、所謂(いわゆる)プロの裁判官とは、 また違った一般の人々の感覚が判決に反映されるようになりました。 結果、凶悪犯罪に対して重罪を科す傾向が見られるようになっています。 しかしながら、裁判員に選出された方々はそれぞれに、 公正性と被害者への心情の狭間に揺れ動き、苦しんでおられる。 それは判決が出てからも続くのです。 真剣に議論を繰り返しても、限られた時間の中で、 他人の生命を左右する決断を自らの責任で下さなければならない。 たとえ、相手が重犯罪を犯した人間であったとしても、 人の命は重いものです。 『生ある限り、生きて罪を償(つぐな)い続けて欲しい』と思うのは 当然の事だと思います」 一呼吸置くと、拳を握り締めた議員は効果的に一際力強い声で叫んだ。 「それなのにですよ!」 会場の空気がピシッと音を立てたような気がした。 「無期懲役と言いながら、受刑者が全員死ぬまでずっと刑務所に 収監されるわけではありません!情けない話、刑務所の定員の問題から、 素行の良かった、模範囚(もはんしゅう)は短い刑期で こちら側に出て来る訳ですよ。 それがたとえ、本当に心から改心し、被害者への謝罪、 ご遺族の無念に応えようと、 贖罪(しょくざい)に努めた結果だとしても、遺族はすんなり 受け入れられるでしょうか? 正直、私なら良く頑張りましたねと言う自信は有りません。 そうでは有りませんか?皆さん!」 難しい話を、ひらたぁ~く小学生にでも分かるように話す事を 常(つね)から心掛けていると公言している加藤議員は、 かなりな事をアイドルのように爽やかな顔で言ってのけた。 加藤議員をマスコミの前で批判すると、 国民の殆(ほとん)どを敵に回すというような風潮になりつつあるわが国は、 マスコミを含めて今から何十年か前に犯した間違いを 綺麗さっぱり忘れたかのように、その再演を演じようとしているようだった。 彼はメディアを効果的に使ったパフォーマンスを繰り返し、 国民が望んでいる話題性のある事案を、一つ解決して見せた。 それまで、多くの議員が見てみぬ振りをして来た問題を、 取り敢えず国民の側に立ってド派手に批判してみせる。 その後は誰が反対しようと、 「国民の支持」という伝家(でんか)の宝刀(ほうとう)を振り上げて 法案が成立するまで、その者達をなぎ倒し、突き進んでいく… という事が最近繰り返されていた。 そして、彼を批判した政治家は、先の選挙でマスコミによって 「反対勢力」と位置づけられ、ことごとく落選の憂き目を見たのだ。 まだ、総理でもない、主要閣僚でもない一介(いっかい)の議員が これほどに影響力を持つとは、末恐ろしいものである。 彼が率いるグループが達成した主だった成果は冷静に見てみると数える程なのだが、 目の前の派手なパフォーマンスに惑わされる。 政党の方では無く、自分達国民の方を向いて考えてくれている。ソウ言ウ、カユイ所ニ手ガ届クトイウカ…気持チ良インダヨネ、、ソノ時ハ。ソノ中ニ毒ガ混ザッテイル事ニ渦中ニ居ル時ハ、ナカナカ気付カナイ。…ソノ後ノ顛末(てんまつ)ハ多クノ国民ガ夢カラ覚メタ時ニ気付クノダ。
2012.06.10
コメント(0)
皆さんは、ケセランパサランってご存知ですか私は…全然知らなかったんです。いつもお世話になっている整体院の先生に聞いてみると「懐かしいなぁ!!」と、おっしゃるので、「えぇっ先生もご存知なんですか」と訊ねると、「え、大分前に随分話題になりましたよ」とのお返事。。。うそひょっとして知らないのは私だけ?「まぁ、ツチノコみたいな未確認の物って感じでしょうかね」「では、真っ黒クロスケ(トトロに出て来る)みたいな感じですか?」頭の中は?だらけになっちゃいました。なんでケセランパサランの話になったかというと、私が運転している途中、突然助手席に座っていた妹が「あ、ケセランパサラン!」と特に何の感動も感じさせないテンションで言ったので「え?何」と聞き返しましたが、「だから、ケセランパサラン。。。今フロントガラスの前をつつつ。。。と」見てないだって運転してたもん。でも前見てたのに、ちらりとも見ないなんてぇぇぇ見てみたい、見てみたい~とっても気になります。
2012.06.09
コメント(0)
清水と云う女の子のお伽噺。 森川 清水(きよみず)…中学1年生。 友達の 沢村 桃子(とうこ) 小森 麻耶(まや) 水谷 舞(まい) という3人。 月森 静也(しずや)、同じ中学に通う、清水の遠縁の親戚にあたる男。 お互い中学に入るまで、殆ど会った事が無い。が 清水を守るように絃冶から頼まれている。 …守る?さて、何から守るのか。 森川 絃冶(げんや)、清水の父。「MKカンパニー」と言う会社の社長。 民間のセキュリティー会社と刑務所を経営。 森川 統源(とうげん)、清水の祖父。占いを得意とする。胡散臭い気もするが、 それで生計を立てている訳では無く、元々「MKカンパニー」の創業者だが、 森川の会社を勇退し和歌山県の、とある山寺に篭っている。 藤村 由紀、絃冶の秘書で清水たちの家事など身の回り全般を手伝う。次回から、清水(きよみず)ちゃん達の話が始まります。
2012.06.08
コメント(0)
いつもそんな事を言っているような気がしますが…本当に久々で、ブログも色々な事が変わってしまってビックリしてしまいました。何をどうすればよかったかしら。。。。手探りです。最近の話題といえば日蝕でしょうか。。。もう古い?私が勤めている本屋さんにも日蝕を見るメガネを、と言ってご来店して下さったお客様が多々。。。特に日蝕の3日前から結構な数。。。色々お店を回っているが何処も売り切れてしまって…という事でうちにも来てくださったそうですが、残念ながら当方も売り切れ。。。正直こんなに注目度が高くなるとは、思っていなかったんですよね。かく言う私も手に入らず、溶接用の面を通して見ました。後で左目が少しチクチクしたので、お勧めできませんが。金環日蝕は見えませんでした。金星ちっさい ところで…最近少し文章をPCで書いていまして。。。誰かに見てもらいたいと思っていたのですが、やっぱり、恥ずかしくて。。。なかなか決心がつきませんでした。でも、やっぱり少しでも読んでもらいたいって思って、アップして見ることにしました。なので…文章をアップする時は、ブログの背景を変えて分かりやすくしようかと思っています。フィクションではないので今日は、取り敢えず話に出て来る人たちを紹介したいと思います。興味を持って下さったら、嬉しいです。
2012.06.08
コメント(0)
バレーボール、日本選手の皆さん頑張ってくれていますねぇ~とってもいい試合を見せて貰っています男子の試合も中継して欲しいです男子には男子の面白さが有りますよね越川選手が海外へ行ってしまって、雄姿を見れる機会って大きな大会ぐらいなんですもの。。。くすん
2010.10.31
コメント(0)
明日、台風が接近するそうで、心配ですウチ、古いんで。。。寝てて気付いたら屋根無かったなんて事にはならないでしょうか?強風って聞くたびに真剣に心配しています早く、通り過ぎてくれないかしらん明日は早朝から仕事です。。。こんな日ぐらい配達しなくて良いって事にならないかなぁ。。。
2010.10.29
コメント(0)
![]()
またまた、やっちゃいましたぁおっ取り寄せ~楽天最安値に挑戦中!楽天最安値に挑戦1缶あたり61円!アメリカ産ノンアルコールビールテキサスセレクト350ml缶(Texas Select)【summer0816】【YDKG-t】円高還元【2010_野球_sale】おいしかったですよ~実は、最近私ノンアルコールビールにはまっています。カロリー低いし、運転できるし。。。色々飲みくらべましたが、オールフリーが私的には、良いですね。カロリーオフのビールの中で酸味が気になるものがあって、ちょっと苦手なんです好みの問題だと思うんですけどね。その点、美味しかったです
2010.10.28
コメント(0)

急に寒くなっちゃって、本当に何を着て良いのか。。。悩んじゃいます。。。冬生まれな私ですが、冬は苦手です。。。秋の装いでは寒すぎる感じです。。。台風も来てるとか秋が短かったなぁ。。。せっかく秋の装いにぴったりかと思うネックレスを作ったんですけどねぇ冬のタートルネックとかにも合いますよね
2010.10.27
コメント(0)
今月は、嵐のDVDを買っちゃいました~CDは持っているんですが、聞いているうちに、やっぱ映像が見たくなっちゃって。。。それから、写真集も。。。1冊きりしか入って来なかったんですけど。。。買っちゃいましたぁ本屋さんに居るとうかうかしてたら、いくら買ってもキリが無いくらいに、嵐の載ってる本って入ってくるんですよねぇ。。。どこで目を瞑るか。。。毎月悩みます。いつもは少ししか入ってこない本はお客様優先で、私達は自粛って事も有るんですが、今回は例外ってことで。。。1ヶ月頑張った自分へのご褒美ですぅ
2010.10.25
コメント(0)

お店にいつも、持ち込んでいるビーズアクセサリーですが、中々伺えなくて、3ヶ月に1回位しか、新しいものを持って行けてないのですが。。。この間持って行ったものです。。。エスニックが良いと思って持って行ったのですが。。。ちょっと写真が遠くて分かりづらいかも知れませんが。。。
2010.10.22
コメント(0)
昨日、新しく始まったドラマを観ました。。。実は、ジツは、ワタクシ、『嵐』の大ファンなんですぅカ~ミングア~~ウトだからという訳ではないのですが。。。順調に観ていたのですが、浅野温子さん演じるお母さんが「うつ」になるシーンになった途端、涙が止まりませんでした。。。悲しいと思った訳ではなかったんです。。。辛いと感じたわけではないと思います。。。上手く言えませんが、う~ん気持ちがかき乱されたような感じです。。。グルグルでした。。。観る前に「大丈夫かな?。。。」って少しは思ったりしてたんですが、正直、自分の反応にビックリです。。。病気による反応なのか。。。何なのか。。。わかりませんがそれにしても、ニノは演技が上手いなぁ。。。
2010.10.20
コメント(0)
![]()
頼んじゃいましたよ~!ふんわりスフレからとろ~りカマンベールカスタード!「レビューを書く」で"ちょこっとプレゼント"をお届け先にお付けしてます♪【送料込み】フォンダンフロマージュ【チーズケーキ】【赤い風船】【送料無料_0921】【smtb-ms】【販売個数12万個突破!!】いやぁ~食べちゃいましたねぇ~初めて頼んだのですぅ実は、昨日の夕方に届いておりました。届いた途端に食べたかったんですけど。。。解凍に冷蔵庫で半日かかるという事で。。。待ちに待ちましたよぉ母と二人で食べました~。。。2人分でジャストサイズじゃないでしょか。。。という事で、お父ごめん。。。お父が歯医者に行っている間にこっそり食べちゃったい!。。。次回は必ず3分割するからさぁ。。。許してくれろ。。。真ん中はとろ~り。。。カマンベールの濃厚カスターでもぐるりは、割とあっさり目の生地になっているので、最後まで飽きることなく完食母談:紅茶が合いますなぁまた、頼みますねぇ。。。
2010.10.18
コメント(0)
全239件 (239件中 1-50件目)


![]()