法律なんて怖くない!

法律なんて怖くない!

2007年03月06日
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テーマ: ニュース(97028)
カテゴリ: ニュースと法律




まずは、この ニュース をご覧下さい。

放送命令が違憲であることを理由に、NHK市民の会がNHKと国を相手取って訴訟を提起したということです。
調べたところ、 NHK市民の会のホームページ に 訴状の要旨 が掲載されていました。

どうやら、この裁判は、国に対して、放送命令の取り消し、将来の放送命令の差し止め、国家賠償を求め、NHKに対し放送命令に従う義務が無いことの確認を求める訴訟のようです。
内容はともかく、この事件は取消・差止・国賠という行政訴訟のお手本のような事件なので、興味を持ちました(国賠は民事訴訟ですが)。

この裁判で一番争いになるのは、原告適格ではないかと思います。
原告適格とは、原告となりうる資格のことです。誰が一番原告としてふさわしいかということです。
普通、民事訴訟・刑事訴訟では原告適格が争いになることは稀です。売買の当事者でない人が買主に「売買代金を支払え」なんていうことはありえませんし、検察官以外が起訴することはほとんどありません。
しかし、行政訴訟の場合には、相手が国又は公共団体なので、その気になれば誰でも訴えることが出来るような解釈も成り立ちます。国民なら誰でも「○○大臣の処分はおかしい」と言って取消しを求めることは、理論上おかしくはありません。
ただ、それでは事件が混乱しますので、利害関係の濃い人にのみ原告適格を認めることになっています。




(原告適格)
第九条  
1 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき 法律上の利益を有する者 (処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

2  裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。


結局、問題となりそうな法律を解釈して、法律が保護している人にのみ原告適格を認めると言うわけです。
そして、このNHK市民の会は、知る権利の侵害を理由に原告適格を主張しています。
確かに、知る権利とは、表現の自由の裏返しとして憲法上保証されます。いくら表現の自由を保障して、放送の自由を認めても、誰も見られないというのでは無意味だからです。

憲法第二十一条  
○1 集会、結社及び言論、出版その他一切の 表現の自由 は、これを保障する。
○2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。


つまり、NHK市民の会は、放送命令によってバイアスのかかった放送がされて、知る権利を害されたとおっしゃりたいのだと思います。
言い換えれば、憲法上、バイアスのかかった放送をされない権利が保障されているので、原告適格があると言うことでしょう。

しかし、この理屈はかなり苦しいと思います。
そもそもバイアスのかかった放送はされない権利が保障されているのか疑問です。
NHKが放送命令に基づく命令とは別に放送をすれば、知る権利を害されたとはいえません。
現に、放送命令は一定の放送を命じるだけで、命令された以外の放送を禁じるわけではありません。

放送法(国際放送等の実施の命令等)
第三十三条  総務大臣は、協会に対し、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して国際放送を行うべきことを命じ、又は委託して放送をさせる区域、委託放送事項その他必要な事項を指定して委託協会国際放送業務を行うべきことを命ずることができる。


また、放送命令を受けるのはNHKなのですから、放送命令を違憲とするならNHK自身が原告になるべきだと主張するのが筋だとして、あっさり原告適格を否定される可能性もあります。

あるいは、放送命令によって時間が割かれたので、本来観られるべき放送が観られなくなったので知る権利が害されたと構成すれば、かろうじて原告適格が認められるような気がします。ですが、これでも原告になれるというだけで、勝訴できるかはまた別問題です。

国賠については民事訴訟ですから、被害者だと主張する人に原告適格が認められますので、NHK市民の会に原告適格が認められるのは間違いないです。ですが、立証はかなり難しいでしょう。単に、放送命令に基づく放送を観させられて苦痛を受けたというのでは「観なければいいのでは?」と言われますので、「本来見られるべき放送が観られなくなったので、精神的苦痛を受けた」と主張立証する必要があるでしょう。一体どうやって立証するのか想像がつきません。

あと、NHKに対する訴訟は、よく分かりません。
NHKが国に対して、放送義務が無いことを確認すべく確認訴訟を提起するなら分かるのですが、受信者たるNHK市民の会が、NHKに放送義務の無いことの確認を求めると言うのはかなり珍しいケースだと思います。どんな「請求の趣旨」なのか見てみたいです。
これは民事訴訟なのですが、原告適格が争いになる例外的な訴訟になるでしょう。

ただ、訴状の要旨だけ拝見したのでは、私が誤解している可能性もあります。
もし、NHK市民の会の方やその関係者の方がここをご覧になっていたら、是非訴状の全文をアップロードしていただけないでしょうか。
学問的に興味深い事件だと思いますの、よろしくお願いします。



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最終更新日  2007年03月06日 22時22分46秒
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