M-BLstory

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January 28, 2025
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テーマ: 自作BL小説(22)
カテゴリ: BL小説
高校の屋上は風が気持ちいい。昼休み、いつも人気のないこの場所で、俺は一人で過ごしていた。人付き合いが苦手な俺にとって、ここは唯一の安らぎの場所だった。そんな俺の隠れ家に、ある日、突然「侵入者」が現れた。
「ここ、いい風が吹くな。」
低めの声に驚いて振り返ると、クラスの人気者である橘が立っていた。長い前髪を風になびかせ、俺をじっと見下ろしている。その涼しげな目元に、なぜか心臓が跳ねた。
「な、なんでここに…?」
「お前がここにいるって聞いたから。」
さらりと答える彼の言葉に、俺の頭は真っ白になった。橘とは普段、ほとんど話したことがない。俺みたいな地味な存在を、彼が気にする理由なんてないはずだ。
「何か用?」
冷たく見えるように問いかけると、彼は少しだけ笑った。その笑みはどこか挑発的で、俺の胸をさらにざわつかせる。
「用があるかないかって言ったら、あるかもな。」

橘は俺の隣に腰を下ろすと、ふいに顔を近づけてきた。距離が近い。思わず後ずさろうとすると、腕を掴まれる。
「お前、なんでそんなに逃げるんだ?」
「逃げてない…!」
必死に否定する俺を、彼は面白そうに見つめた。その視線の奥に何かを感じて、俺の胸はますます苦しくなる。
「ずっと気になってたんだよ、お前のこと。」
静かな声で、彼が呟いた。心臓が爆発しそうなほど早くなる。俺の顔が真っ赤になるのが自分でもわかった。
「俺じゃ、ダメ?」
その一言に、俺の頭は完全に真っ白になった。屋上に吹く風が二人の間を優しく包み込む中、俺は何も言えず、ただ彼の目を見つめ返すしかなかった。

橘の言葉が耳に残り、俺は息を呑んだ。ふと気づけば、彼の手が俺の頬に触れていた。指先は驚くほど柔らかくて温かい。それなのに、その触れ方はどこか挑発的だった。
「顔、赤いぞ。そんなに緊張してるのか?」
彼の低い声が耳元で響き、思わず身を硬くする。それを見て、橘はくすっと笑った。俺の頬を撫でる指が、そのまま顎に触れ、軽く持ち上げられる。視線が絡み合い、逃げられなくなる。

そう言って、彼の顔がさらに近づいてくる。彼の息遣いが肌に触れるほどの距離だ。逃げるべきだと思うのに、身体が動かない。むしろ、この場に留まりたいと思ってしまう自分がいる。
「こんな近くで見ると、意外と可愛い顔してるんだな。」
からかうような口調なのに、その瞳は真剣だった。ふいに橘の親指が俺の唇をなぞる。少し荒い彼の指先が触れた瞬間、背中にゾクリとした感覚が走った。
「ダメ…こんなの、変だろ…」
「変じゃない。俺は本気だ。」

「嫌なら、止めろよ?」
最後の問いかけに、俺は何も言えなかった。言葉の代わりに、彼を拒まない沈黙が屋上に落ちる。次の瞬間、彼の唇がそっと俺の唇に触れた。
最初は優しく、触れるだけのキスだった。けれど、橘がもう一度唇を重ねると、その熱は次第に深まっていく。彼の手が俺の背中に回り、ぐっと引き寄せられる。その力強さに、体の芯が熱くなっていくのがわかる。
「もっと、お前のことが欲しい。」
耳元で囁かれたその言葉に、全身が痺れるような感覚に包まれる。橘の手が制服のシャツの上からそっと俺の胸元を撫でた。触れられた場所がじんわりと熱を持ち、心拍数がさらに上がる。
「や、やめろって…!」
弱々しく言葉を絞り出すと、橘は満足げに微笑んだ。そして俺の耳元に唇を寄せ、甘く囁く。
「やめろって言ってるわりに、顔、真っ赤じゃん。」
俺は反論する気力もなく、ただ彼の腕の中に収まるしかできなかった。そのまま橘の唇が俺の首筋に触れる。そこに残された感覚が、俺の心をさらにかき乱していく。

橘の唇が俺の首筋をなぞり、その温かさに思わず息を詰める。鼓動は早鐘のようで、身体がどうしようもなく熱を帯びていく。
「橘…やめろって…本当に…」
弱々しく抗議すると、橘は一瞬動きを止めた。けれど、その瞳にはやめるつもりなど微塵も見えない。むしろ、俺の困惑を楽しんでいるようにも見えた。
「本気で嫌なら、ちゃんと言えよ。俺、止まらないぞ?」
耳元で囁く声が低くて甘い。その声に掴まれたみたいで、俺は何も言えない。ただ、橘の目をじっと見つめ返す。
「…お前、こうやって俺に触れられるの、嫌じゃないんだろ?」
言葉が図星すぎて、俺は真っ赤な顔で俯いてしまう。その仕草を見た橘は、また楽しそうに笑った。
「俺のこと、もっと受け入れてくれよ。」
その一言とともに、橘はさらに深く俺を抱きしめた。胸の奥がじんわりと温かくなる。戸惑いはあったけど、彼の腕の中にいると、それさえ心地よく思えてしまう自分がいる。
彼が俺を求めている――その事実がどうしようもなく嬉しかった。
「分かったよ…好きにしろ。」
その言葉を聞いた瞬間、橘は驚いたように目を見開いた後、満足そうに微笑んだ。そして、俺の髪をそっと撫でながら、優しく唇を重ねてきた。さっきまでの挑発的な雰囲気とは違う、温かくて大切にするようなキスだった。
「ありがとな。お前、やっぱり可愛いな。」
彼の言葉に、俺の心は完全に溶かされてしまった。


それから数日が経った。屋上での出来事は夢みたいで、クラスでは今まで通りの距離を保っていた橘。俺も特に話しかけることはなかったけど、廊下ですれ違うたびに、彼は必ず俺に微笑みかける。
その笑顔を見るたびに、心臓が跳ねるのを感じていた。
そんなある日の放課後。誰もいない教室で机を片付けていると、橘がひょっこりと現れた。
「ちょっと付き合えよ。」
強引に手を引かれ、連れて行かれたのは例の屋上だった。あの日と同じ風が吹いている。
「今日、俺がちゃんと言いたいことがあってさ。」
橘は真剣な顔で俺を見つめる。その表情に息が詰まる。
「俺、お前のことが好きだ。もう、からかいとかじゃない。本気で。」
直球の告白に、俺は完全に固まった。言葉が出てこない俺に、橘は一歩近づき、俺の肩に手を置いた。
「お前も、俺のこと嫌いじゃないだろ?」
何か言わないとと思いつつ、俺はただ小さく頷くことしかできなかった。それでも、橘は満足そうに笑って俺を抱きしめた。
「よかった。これからは、俺の隣、空けとけよ。」
彼の温かい声に包まれて、俺はようやく「俺も…」と小さな声で呟いた。橘はそれを聞いてさらに強く俺を抱きしめた。
二人の距離はもう完全になくなり、屋上には風の音だけが響いていた。

その後、俺たちは自然と一緒に過ごす時間が増えていった。誰に何を言われても気にしない橘の姿に、少しずつ俺も自信を持てるようになった。
今では彼が隣にいるのが当たり前になり、俺もその温かさを素直に受け入れるようになった。
橘の隣にいると、世界が少し明るく見える気がする。そんな気持ちを胸に、俺はそっと彼の手を握り返した。





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Last updated  January 28, 2025 11:56:34 PM
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