M-BLstory

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February 2, 2025
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テーマ: 自作BL小説(22)
カテゴリ: BL小説
第六章:牙を剥く闇

柊は九条に引かれるまま、辰巳会の本家へと向かった。

車の中、九条は一言も喋らない。助手席に座る柊は、車窓の外を流れるネオンを眺めながら、ただ彼の横顔を見つめていた。

「……本当に来るつもりか?」

唐突に九条が呟く。

「もうここまで来たんだ、引き返す気はないよ」

柊が淡々と答えると、九条は舌打ちした。

「……お前みたいな奴が、この世界に関わるとロクなことにならねぇ」

「そうかもな。でも、アンタを放っておく方がロクなことにならない気がする」



***

辰巳会の本家に到着すると、すでにそこは異様な緊張感に包まれていた。

組員たちが慌ただしく動き回り、玄関先には血の跡が点々と残っている。

「九条さん! さっきまで敵対組織の連中が押し入ってきて、数人が負傷しました!」

迎えに出た若い組員が、息を切らしながら報告する。

九条は険しい顔で奥へ進む。柊もついていくが、周囲の視線が明らかに彼に向けられているのを感じた。

「おい、若頭。そいつ、誰だ?」

大柄な男が眉をひそめながら、柊を見て言う。

「……関係ねぇよ」

九条が短く答えると、男は納得いかない顔をしながらも口をつぐんだ。

柊は、ここが完全に“別の世界”であることを肌で感じていた。



「……やっぱり、こんな場所にいるべきじゃないんじゃないか?」

ふと、そう言葉がこぼれた。

九条は歩みを止め、ゆっくりと柊を振り返る。

「……俺に、それ以外の生き方ができると思うか?」

柊は真剣な瞳で九条を見つめた。



即答だった。

「……俺と一緒に来ればいい」

九条の表情がわずかに揺れる。

「俳優になれとは言わない。でも、こんな世界にいなくても、生きていける場所はある」

「……」

九条は目を伏せ、ふっと小さく笑った。

「お前、本当に変わってんな……」

「よく言われる」

柊が肩をすくめると、九条は少しの間黙っていたが、やがて小さく溜め息をついた。

「……もし、俺がこの世界を捨てたら、お前が責任取るのか?」

「もちろん」

即答する柊に、九条は少し驚いたように目を見開いた。

そして次の瞬間——。

「——九条さん! 敵がまた動きました!」

慌ただしい報告が飛び込んでくる。

九条はすぐに表情を引き締め、柊を振り返った。

「……話の続きは、これが片付いてからだ」

「……分かった」

九条は拳銃の安全装置を外し、静かに呟く。

「……行くぞ」

そして、闇に紛れるように彼は駆け出した。

柊もまた、彼の後を追い——新たな世界へと踏み込んでいった。

次章予告:敵対組織との抗争が激化する中、柊と九条の関係が決定的な瞬間を迎える——。
選ぶのは、光か、闇か——。
運命の歯車が、ついに大きく動き出す。





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Last updated  February 2, 2025 11:28:40 PM
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